SSブログ

吸血鬼と伝説の名舞台 [日本の作家 赤川次郎]

吸血鬼と伝説の名舞台 (集英社オレンジ文庫)

吸血鬼と伝説の名舞台 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
観劇に訪れた正統なる吸血鬼の末裔フォン・クロロックと娘のエリカ。クロロックは脇役を演じた若手女優の演技に惹かれる。同様に劇団の大御所女優もその若手女優に自身の当たり役の跡をつがせることを宣言! 重圧を感じながらも必死に稽古に励む彼女に怪しい影が迫り……!? 表題作の他、『吸血鬼と幻の女』『吸血鬼選考会』の2編を収録した大ヒットシリーズ最新作!


「吸血鬼はお年ごろ」シリーズ 第36弾。オレンジ文庫第4弾です。あいかわらずうすーい本です。
と、このシリーズへの感想について恒例の出だしとなりました。
毎年新刊が出ていますが、これだけ薄いのなら(行間も一行あたりの文字数もすくなく、ぱっと本を開いた印象は、スカスカ、です)、2年か3年に新刊を出すくらいのペースでよいのではないかと思ってしまいますね。
コバルト文庫で出ていた昔の作品も次々と集英社文庫で復刊(?) していますが、その際には合本してもらいたいな、と思います。

前作「吸血鬼の誕生祝」 (集英社オレンジ文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)収録の「明日はわが身と吸血鬼」の感想で、このシリーズにしては極めて珍しく、超常現象とかこの世ならぬものとか黒魔術(のようなもの)とかが出てこないことを指摘しましたが、今回の「吸血鬼と伝説の名舞台」収録の「吸血鬼と幻の女」にも「吸血鬼選考会」にも出て来ません。表題作の「吸血鬼と伝説の名舞台」もややネタバレ気味ではありますが、微妙な仕上がり。
もう一度いいますが、これだと、このシリーズの作品にする必要ないんじゃないかな。

数多くのシリーズ作品を抱える赤川次郎作品の中で、かなり明確な特徴をもっていたシリーズなのですから、そこは大切にしていってもらいたいなぁ、とそんなことを考えます。

そんななか、表題作「吸血鬼と伝説の名舞台」の怪現象(?) はかなり新しい発想ではないかと思いました。似たような発想の作品もないではないような気もしますが、すっと思い出せません。
ただ、この作品の着地がよくわからないんですよね。これで解決になっているのでしょうか? 


nice!(16)  コメント(0) 
共通テーマ:

吉祥寺の朝日奈くん [日本の作家 な行]

吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫)

吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫)

  • 作者: 中田 永一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2012/12/12
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
彼女の名前は、上から読んでも下から読んでも、山田真野(ヤマダマヤ)。吉祥寺の喫茶店に勤める細身で美人の彼女に会いたくて、僕はその店に通い詰めていた。とあるきっかけで仲良くなることに成功したものの、彼女には何か背景がありそうだ…。愛の永続性を祈る心情の瑞々しさが胸を打つ表題作など、せつない五つの恋愛模様を収録。


「百瀬、こっちを向いて。 」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続く中田永一の第2作、とこういう書き方でよいのでしょうか?
中田永一は、乙一の別名義ですし...

表題作のほかに
「交換日記はじめました!」
「ラクガキをめぐる冒険」
「三角形はこわさないでおく」
「うるさいおなか」
が収録されています。


冒頭の「交換日記はじめました!」は、ちょっとこちらと波長が合わなくて、少し心配になりましたが、そのあとの作品からはすっと世界に溶け込めました。

「ラクガキをめぐる冒険」は十四歳のときのできごとを八年後に振り返って行動を起こす主人公・桜井千春の物語ですが、遠山くんまでたどり着く道筋も、十四歳の時のエピソードも、効果的な小道具である油性マーカー・マッキーも、そしてラストのサプライズ(というほどでもなく、予想された結末ですが)も、ピタリと、中田永一(乙一)ならこうでなくちゃ、と思えました。

「三角形はこわさないでおく」も素敵で、この三角関係の当事者になりたいくらい。
でも、ぼくだったら、当事者になってしまったらさっさと三角関係をこわしてしまいそうですけどね。

「うるさいおなか」はお腹が鳴ってしまう少女、という主人公の立ち位置が気の毒ですが、そこにするっと入り込んでくる春日井君のすばらしさにしてやられてしまいます。
ラストの「同じような変態が身内にもいたというのがまずおどろきであり、」(224ページ)で笑ってしまい、続けて書かれている「日本も、もうだめか、と感じた。」のくだりでは爆笑してしまいました。

表題作でラストを飾る「吉祥寺の朝日奈くん」は、タイトルにもなっている朝日奈くんが主人公で視点人物・僕、です。
この朝日奈くん、住むところに困っているという話をすると新しいバイト先でしりあった女の子から、簡単に「うちに来なよ」と告られるような人物で、「顔、きれい」とかルックスがいいとかハンサムとか言われる人物です。自分とまったく異なる境遇の人物なのですが、しっかりしっかり感情移入できてしまいました。
そして中田永一なら、というより、乙一ならお手のもののひねりに、どっぶり浸ることができました。
ラストで朝日奈くんのモノローグでの感慨は、いつまでも味わっていたいな、と思えるものでした。


「百瀬、こっちを向いて。 」感想に書いたコメントをここでも繰り返しておきます。
やっぱり乙一、いいですね。
中田永一名義の作品も、さらに別名義の作品も追いかけていきたいです。



nice!(20)  コメント(0) 
共通テーマ:

バルコニーの男 [海外の作家 マイ・シューヴァル ペール・ヴァール]

バルコニーの男 刑事マルティン・ベック (角川文庫)

バルコニーの男 刑事マルティン・ベック (角川文庫)

  • 作者: マイ・シューヴァル
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
ストックホルム中央の公園で女児の死体が見つかった。彼女は前年、不審な男に話しかけられ、警察に証言を残していた。そのわずか二日後に別の公園で新たな少女が殺害され、ストックホルム市民は恐怖に打ち震えた。連続少女暴行殺人事件に、刑事マルティン・ベックは仲間と事件に取り組むが、手がかりは三歳の男の子のたどたどしい証言と、強盗犯の記憶のみ。捜査は行き詰まる――。警察小説の金字塔シリーズ・第三作!


「ロセアンナ」(角川文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「煙に消えた男」(角川文庫)(感想ページへのリンクはこちら
に続く、マイ・シューヴァル ペール・ヴァールーによる、マルティン・ベックシリーズ第3作です。

今回の事件は連続少女暴行殺人事件。痛ましい事件ですね。
一種の通り魔的事件なので、手がかりもほとんどなく、捜査が難航する、という構図の作品です。

読み終えた感想は、誤解を恐れずにいうと、
「この作品、ミステリなのかな?」
というものでした。
別の表現でいうと
「この小説、警察小説ではあっても、警察ミステリじゃないんじゃないかな?」
もちろん、警察小説は広義のミステリの範疇ですから、この「バルコニーの男」 はミステリに位置付けられるわけですが、おもしろさの主眼が、ミステリにはない気がしてなりません。普通の小説?
あらすじにも書いてある、三歳の男の子のたどたどしい証言のくだりなどは、ミステリ風味がちょっぴりしますが、あまりにもあっさり扱われています。
作品の冒頭、バルコニーの男の場面から始まっているのも、ミステリ的にはいろいろと料理のしがいのあるオープニングのようにも思えるのですが、その後とりたてて重視される気配もありませんし、作者はミステリとしてのおもしろさを重視していないような気がします。

それよりは警察の面々の方がよほど重点がおかれているようです。
マルティン・ベックやコルベリといったお馴染みになってきた捜査官以外にも、この「バルコニーの男」 で初お目見えだと思われる、グンヴァルド・ラーソンとか、複雑そうなキャラクターで注目株ですよね。

ミステリ味が薄くても、ぐんぐん読ませる力を持った作品で、優れたシリーズだと再認識しました。
シリーズ次作は「消えた消防車」 (角川文庫)で、楽しみです。
<2020.11訂正>
シリーズ次作は
「笑う警官」 (角川文庫)でした。失礼しました。


<蛇足>
「新聞と宣伝郵便物ばかりだ」(288ページ)
思わず失笑。宣伝郵便物って... 今どきダイレクトメールと言わない人いますか?
せっかくのスウェーデン語からの新訳。こなれた日本語にしましょうよ。


原題:Mannen pa balkongen
作者:Maj Sjowall & Per Wahloo
刊行:1967年
訳者:柳沢由実子


nice!(22)  コメント(0) 
共通テーマ:

黒い睡蓮 [海外の作家 は行]


黒い睡蓮 (集英社文庫)

黒い睡蓮 (集英社文庫)

  • 作者: ミシェル・ビュッシ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/10/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
モネの《睡蓮》で有名な村で発生した、奇妙な殺人事件。殺された眼科医は女好きで、絵画のコレクターでもあった。動機は愛憎絡み、あるいは絵画取引きに関する怨恨なのか。事件を担当するセレナック警部は、眼科医が言い寄っていた美貌の女教師に話を聞くうちに、彼女に心惹かれていく。一方、村では風変りな老女が徘徊し……。『彼女のいない飛行機』で人気を博した著者の傑作ミステリ。


「このミステリーがすごい! 2018年版」第5位。
「2018本格ミステリ・ベスト10」第4位
この「黒い睡蓮」 (集英社文庫)は2015年に翻訳された「彼女のいない飛行機」 (集英社文庫)が話題となったミシェル・ビュッシの作品で、「彼女のいない飛行機」 よりも前に発表された作品のようです。
舞台はノルマンディーの村ジヴェルニー。モネで有名なところですね。

書き出しは
「ある村に、三人の女がいた。
 ひとり目は意地悪で二人目は嘘つき、三人目はエゴイストだった。」(11ページ)
そして前語りにあたるこの部分の結部は
「いちばん若い三人目の女はファネットといい、二人目の名前はステファニー・デュパン、いちばん年寄りのひとり目の女、それはこのわたしだ。」(13ページ)
いかにも怪しげですよね。
三人の女それぞれに起こるそれぞれの出来事が綴られていくのですが、つながりはどうなっているのかな、というのが興味の焦点となります。
ミステリを読み慣れた人なら、ある程度見当をつけて読み始めることでしょう。
ところがその見当を裏切るような記述があちこちに。
とするとこちらの考え違いなのかな、と思いつつ読み進む。

それぞれの物語、エピソードがとても興味深かったですね。
絵に活路を見出す少女ファネット、捜査する警察署長と関係が深まっていく学校教師ステファニー、そして過去を回想しながら”観察者”として村を徘徊するわたし。
舞台がジヴェルニーだけに、モネやモネの作品が底流に流れているのも素敵です。ジヴィルニー自体もたっぷり描かれます。

ミステリとしての仕掛けはどうだったか、というと、訳者あとがきでは「大技」と書かれています。
前例はいっぱいある手法・仕掛けですが、一歩前に進んだ感じがします。少なくとも前例よりは踏み出して作り上げられているとは思いました。
ただ、原文がどうなっているかわかりませんが、読み返せばいわくあげな前語りはアンフェアと言わざるを得ないですし(そもそも「三人の女がいた」というのがアウトですしね←ネタバレにつき色を変えています)、本文中にもアンフェアと思えるところがあちこちに。
この仕掛けを成立させるためにもっとも重要なポイント(名前の違いや犬ネプチューンの扱い←ネタバレにつき色を変えています)も説明はされているもののかなり苦しいです。
それでも、アンフェアにならないように、そしてそれらしいヒントをちりばめようとした努力の跡はしっかりうかがえますが。

ただ、この作品についてはミステリとしてアンフェアでも構わないのかもしれないな、という気がしました。
というのは、ちょっとネタバレ気味になりますが、この仕掛けが明かされたときに、三人の女それぞれの物語が違った景色に見えてくるからです。このためだったら、多少のアンフェアは受け入れようではないですか! とそんな気分。

モネに彩られた作品で、芸術作品もあちこちに出てきます。
「モネの『睡蓮』を見ていると、なんだか絵のなかに吸いこまれ、突き抜けていくような気がするでしょ? 井戸のなかか砂の穴にでも、落ちていくみたいに。それがモネの狙いだったのよ。よどんだ水を描くこと、一生の出来事が目の前を通り過ぎていくような印象を与えることが。」(299ページ)
睡蓮を見てもちっともそんなことを思わない芸術オンチなので、こんなことを言われると恐れ入るしかないのですが、しかもこの発言者が11歳くらいの少女(ファネットです)と来ては...

分厚い作品ですが、一気読みしました。
「彼女のいない飛行機」 にも期待します。

<蛇足1>
「アマドゥ・カンドゥに聞いた話だが、十年前、日本の片田舎にモネの家やノルマンディ風の花園、水の庭をそっくり模した庭園ができたのだそうだ。」(248ページ)
と書いてあったので、ネットで調べてみました。
高知県の北川村にある「モネの庭 マルモッタン」(勝手リンクですがHPにリンクを貼っています)のことのようです。
北川村「モネの庭」マルモッタンは、1999年に「アカデミー・デ・ボザール終身書記アルノー・ドートリヴ氏から、それまでは門外不出であった〈モネの庭〉の名称をいただく事となった」うえ、「印象派の巨匠クロードモネが43歳から生涯の半分を過ごした、フランス・ジヴェルニーで丹誠込めて作り上げた〈モネの庭〉を再現した庭として2000年に開園」したとのことです。
なんだかすごいですね。
ちょっと行ってみたくなりました。

<蛇足2>
「ジヴェルニーから一キロ以上ある、人里離れたきれいな場所だ。イラクサの島で待ち合わせるというのは、考えれば考えるほどいいアイディアだと彼女は思った」(449ページ)
「一キロ以上ある」という表現から、一キロちょっとの距離にあるということになります。
人に見つからないよう密会するのなら、ちょっと近すぎるのではないでしょうか? 本筋とは関係ないですが気になりました。

<蛇足3>
「アンティークショップの前で大人たちの一団が、日本語だか韓国語だか、わけのわからない言葉を話している。わたしは動物園の恐竜みたいなものだ。」(551ページ)
日本人が揶揄されているなぁ、と感じないでもないですが、ひと昔前ならこうでも、今なら「中国語だか韓国語だか」と書かないと実情に合わないでしょう。
観光地出会うのは、日本人より圧倒的に韓国人、中国人が多いですから...
それと、動物園の恐竜って、どういうことでしょうか? 動物園に恐竜はいないような...




nice!(16)  コメント(0) 
共通テーマ:

ミステリー・アリーナ [日本の作家 深水黎一郎]

ミステリー・アリーナ (講談社文庫)

ミステリー・アリーナ (講談社文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/06/14
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
嵐で孤立した館で起きた殺人事件!  国民的娯楽番組「推理闘技場(ミステリー・アリーナ)」に出演したミステリー読みのプロたちが、早い者勝ちで謎解きに挑む。誰もが怪しく思える伏線に満ちた難題の答えはなんと15通り! そして番組の裏でも不穏な動きが……。多重解決の究極 にしてミステリー・ランキングを席巻した怒濤の傑作!!


あらすじにミステリー・ランキングを席巻と書いてありますが、帯もすごいですね。
本格ミステリ・ベスト10 (2016年国内・原書房) 第1位
ミステリが読みたい! (2016年版国内篇・早川書房) 第3位
週刊文春ミステリーベスト10 (週刊文春2015年12月10日号国内部門) 第4位
このミステリーがすごい! (2016年版国内編・宝島社) 第6位

読み終わってみて、作者の狙いはよくわかりましたし、各種ベスト10で高評価なのも理解しましたが、残念ながら好き・嫌いでいうと、好きではないですね。

まず娯楽番組内での推理クイズ、なわけです。ここが好きではない最大のポイント。
多重解決ものは好きなんです。最初に読んだ「毒入りチョコレート事件」 (創元推理文庫)には本当にしびれたものです。
でもね、それをゲーム形式にして劇中劇、作中作の枠組みでやるのはどうもねぇ。
ゲーム形式ということは、実際に起こった事件、という裏付けがなく推理合戦をするわけですから、現実的というか現実性というかの担保がそもそもないんですよね。
そしてその劇中劇、作中作を作った人というのがいるわけで、使いかたによっては、なんでもあり、な状況になってしまいます。ルールも後から勝手に追加できそう。
これだと、推理の楽しみが減ってしまうような気がするんですよ。
作中作の方が、現実性がない方が、ピュアに論理に淫することができる、という意見もあるとは思うんですが、すっきりしないんですよね...
その点は作者も意識されていることがわかる部分があちこちにあります。
そして多分その点を逆手に取って、ロジックに淫したというのか、この設定を突き詰めたというのか、そうですね、多重解決ものの極北にたどり着こうとした、というのがこの作品の狙いなんだと思います。
収録されている「文庫化のためのあとがき」に狙いが説明されてはいますが。

もう一つ。あらすじに「番組の裏でも不穏な動き」と書かれている部分。
おもしろい発想だな(と言うと人でなしかと思われてしまいそうですが)と思ったのですが、これ、この物語に必要でしょうか?

ついでに突っ込んでおくと...
出題者側は予想される解決をあらかじめ想定して物語を作っている、という設定になっています。
15ある解決案、となっていますので(数は確認していません)、15通り想定した、という風に書かれていますが、15通り用意してもだめで、それぞれの解決がどの順序で出てくるのかによっても、話の流れは変わってしまうので、15通りの解決の並び方を想定すると、15の階乗、すなわち約1兆3700億通りのストーリーを用意しておかなければならないことになります。
もちろん、ある程度は順番も予想できるとはいえ、たとえばほぼ半分の8個の解決案でも4万通り。5個にしても120通りのストーリーの用意が必要です。
無理じゃない??

と好きではないこと(とアラ)をるる述べましたが、好きではないけれども、たとえば年間ベストを選ぶ際には、本書を選ぶと思います。
本当にすごい作品なんですよ、これ。各種ベスト10で高評価なのも納得の作品です。
ミステリファンなら、読み逃すのがもったいない傑作だと思います。
ただなぁ...どうしてもなぁ...この傑作を「大好き」と言えないのがとても残念。

<蛇足>
「俺はこの<車に乗っていてもうちょっとで死ぬところだった自慢>を、<学生のテスト前の勉強してない自慢>や<サラリーマンの寝てない自慢>、それに<いい年をした大人の若い頃はワルだった自慢>などと並ぶ、世界の四大どうでもいい自慢とひそかに名付けている」(34ページ)
おもしろい!

<蛇足2>
平清盛が「たいらきよもり」、平将門が「たいらまさかど」と「の」が入る理由が説明されていて勉強になりました。(317ページ~)
まず天皇から賜った本姓というのがあり、これが一族の名前。
子孫が枝分かれして増えると区別するために、住んでいる土地の名前や官職名にちなんでつけたのが名字で、これは家の名前。
で、本姓のときに「の」をつけ、名字のときは「の」をつけない。
徳川家康のフルネームは、徳川二郎三郎源朝臣家康で、徳川が名字、二郎三郎が通名、源が本姓、朝臣が姓(かばね)、家康は諱、と説明されています。元々の名字は松平で、藤原氏の胤になるが、源氏の嫡流に近い新田家の《得川》を買い取って、それ以降徳川と名乗った、と。
で、豊臣秀吉の豊臣は天皇から下賜された本姓だから、〈とよとみひでよし〉と読むのが正しい、そうです。


nice!(20)  コメント(0) 
共通テーマ:

エラリー・クイーンの冒険 [海外の作家 エラリー・クイーン]


エラリー・クイーンの冒険【新訳版】 (創元推理文庫)

エラリー・クイーンの冒険【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大学に犯罪学の講師として招かれたエラリーが、その日起きたばかりの殺人事件について三人の学生と推理を競う「アフリカ旅商人の冒険」を劈頭に、「一ペニー黒切手の冒険」「七匹の黒猫の冒険」「いかれたお茶会の冒険」など、多くの傑作を集めた巨匠クイーンの記念すべき第一短編集。名探偵による謎解きを満喫させる本格ミステリ全11編に加え、初刊時の序文を収録した完全版。


創元推理文庫で始まった中村有希さんによる新訳のエラリー・クイーンの国名シリーズ。
「ローマ帽子の謎」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)から始まって、「アメリカ銃の謎」 (創元推理文庫)まで6冊順調に進んできて、次はいよいよ「スペイン岬」だ!と勢い込んでいたら、新訳が出たのはこの「エラリー・クイーンの冒険」 (創元推理文庫)でした。
今月には「Xの悲劇」が予定されていますね。
(ちなみに、「アメリカ銃の謎」 (創元推理文庫)は感想を書けていません。その前の「エジプト十字架の謎」 (創元推理文庫)までの5冊は書けていたのですが...)

この「エラリー・クイーンの冒険」 は11作収録の短編集です。
「アフリカ旅商人の冒険」
「首吊りアクロバットの冒険」
「一ペニー黒切手の冒険」
「ひげのある女の冒険」
「三人の足の悪い男の冒険」
「見えない恋人の冒険」
「チークのたばこ入れの冒険」
「双頭の犬の冒険」
「ガラスの丸天井付き時計の冒険」
「七匹の黒猫の冒険」
「いかれたお茶会の冒険」

帯に推薦コピーがついています。
「名探偵エラリー・クイーンの<精緻にして意外性に富んだ推理>を堪能できる本格ミステリ短編集の精華。まさに論理の冒険。クイーンがすごいのは長編だけではない!」有栖川有栖
「なぜ、誰もがクイーンを目指すのか。この一冊に答えがある。ミステリ史上最も知的な十一の冒険譚。拍手の準備をお忘れなく。」青崎有吾
贅沢ですねぇ。
「エラリー・クイーンの冒険」 にふさわしい豪華さです。

昔読んでいて再読になるわけですが、ほとんど覚えておらず、だいたい初読のように楽しめました。自らの記憶力の悪さに乾杯です!
いずれも端正ですよね。最後の「いかれたお茶会の冒険」はお茶目、というべきかもしれませんが。

しかし、エラリー・クイーンって気障で嫌味ですねぇ。
頭のいい人は往々にしてそうなのかも、という気もしますが。
若いころはそれが格好良くも見えたように記憶しますが、今読むとちょっと...という感じがしないでもない。

巻頭の「アフリカ旅商人の冒険」からして嫌味です。
学生を連れて犯罪学の実地研修、だから上から目線で嫌味いっぱいというのは仕方ないのかもしれないんですが、殺人現場でやりたい放題。父親であるクイーン警視の威を借りているとはいえ...
間違う学生用にいくつかの手がかりが撒かれているのがおもしろいですね。それぞれ興味深い推論が出て来ます。最後にエラリーが指摘する手がかりも楽しいですね。
しかし、「スパーゴは南アフリカに一年間過ごしていて、服はほとんど現地で買っているはずだ」(49ページ)
というのはいくらなんでも思い込みに過ぎない気がします。たった一年なら前から持っている服も使われますよねぇ...

「首吊りアクロバットの冒険 」は、最後の決め手となる手がかりがおもしろい。
この手がかりで犯人と犯行の状況が特定されるのですが、作者は手がかりと犯行状況とどちらを先に思いついたんでしょうね??

「一ペニー黒切手の冒険」は、貴重な一ペニー切手の隠し方が印象的ですが、個人的にはとても希少な切手を隠すのにこの方法は使う気になれないような... どうなんでしょうね?

「ひげのある女の冒険」は、クイーンお得意のダイイング・メッセージ物で、女性の肖像画にひげを書き加えたというものなんですが、そして、解説で川出正樹が
「論理的で無理がなく、数あるクイーンのダイイングメッセージものの中でも一、二を争う傑作」
と述べていますが、これタイトルを見ただけでダイイング・メッセージの意味、想像つきませんか?
あと
「万が一、犯人に気づかれたとしても、恐怖をまぎらわしたくて落書きしたと解釈してくれるでしょうしね。まあ、気づかれない可能性の方が高かったでしょう」(155ページ)
なんてエラリーも言っていますが、犯人絶対気づきますよ、そして消すか肖像画を処分するかされちゃいますよ、確実に。
しかし、この作品の注目は事件でも謎解きでもなく...
おいおい。エラリー・クイーン、看護婦をナンパしようとしていますよ。連絡先を聞き出して...

「三人の足の悪い男の冒険」は、現場で見つかった足の悪い男のものと思われる足跡三組という手がかりが印象的な作品ですが、事件よりも...
「たいへん興味深いです。実に興味深い」(213ページ)
とエラリー・クイーンが言う場面があります。あなたは、ガリレオ湯川博士ですか?

「ガラスの丸天井付き時計の冒険」のエラリー・クイーンもかなり嫌味ですね。
「代数学のもっとも基礎の知識しか持たない高校二年生でさえ解ける方程式レベルの簡単さだよ」(347ページ)
「常識というものを持ちあわせている人間ならだれでも、あの事件を解決できる。五から四を引いた答えが一になる、というレベルの問題だ」(同ページ)
いや、こんなこと言わなくてもいいじゃない?
しかも事件の手がかりが、誕生石だとかある特殊な事情だとかなんだし、そこまで「簡単」というほどの事件ではないと思うんですよね...

しかし、いずれの作品も、手がかりと犯人を突き止めるロジックがすっきりしていて素晴らしいですよね。
長編のように怒涛のように畳みかける謎解きはないですが、キラッと光る要素がかならずある。
ミステリを読む楽しみは、このきらめきに出会うことなので、まさにミステリファンにとって至福の短編集だと改めて思いました。


<蛇足>
「腹立たしげに嗅ぎたばこ入れを取り出して、たばこをひとつまみ、鼻の穴に詰めこんだ。」(33ページ)
とあって、えっ、と思ってしまいました。
嗅ぎたばこ、といえば古典ミステリではちょいちょい出て来ますが(「皇帝のかぎ煙草入れ」 (創元推理文庫)なんてタイトルの名作もありますしね)、実物は見たことがなく、使いかたも知りませんでしたので。
嗅ぐといっても、鼻の穴に詰めるんですね...なんかちょっと怖いです。



原題:The Adventures of Ellery Queen
作者:Ellery Queen
刊行:1934年
訳者:中村有希


nice!(21)  コメント(0) 
共通テーマ:

リヴァトン館 [海外の作家 か行]


リヴァトン館 上巻 (RHブックス・プラス)リヴァトン館 下巻 (RHブックス・プラス)リヴァトン館 下巻 (RHブックス・プラス)
  • 作者: ケイト モートン
  • 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
  • 発売日: 2012/05/10
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
老人介護施設で暮らす98歳のグレイスの元へ、新進気鋭の女性映画監督が訪れた。「リヴァトン館」という貴族屋敷で起きた70年前の悲劇的な事件を映画化するため、唯一の生き証人であるグレイスに取材をしたいと言う。グレイスの脳裏に、リヴァトン館でメイドとして過ごした日々が、あざやかに蘇ってくる。そして墓まで持っていこうと決めていた、あの惨劇の真相も……。死を目前にした老女が語り始めた、驚愕の真実とは? 気品漂う、切なく美しいミステリ。<上巻>
母とふたりのさみしい暮らしから、上流社会のメイドに。戸惑いつつも、優雅な生活と人々に惹かれていくグレイス。無邪気なお嬢様達、贅沢な料理、心おどる晩餐会……厳格な執事の小言も苦ではなかった。だが、迫りくる戦争で状況は激変する。慌ただしく月日は流れ、グレイスはリヴァトン館とともにたくさんの秘密を抱えこんでゆく。それが、大切なお嬢様をあの悲劇へ導く羽目になるとは知らず――。巧みな伏線と見事な筆致で世界中のミステリファンを魅了した物語。<下巻>


あらすじでお分かりになると思いますが、イギリスのお屋敷で働くメイドの目から第一次世界大戦前後の暮らしぶりを描く小説です。
悲劇的な事件が起こった館。うーん、魅力的な舞台ですね。
「イギリス詩壇の新星が社交界の盛大なパーティの夜に、暗い湖のほとりで自殺する。目的者はふたりの美しい姉妹だけ、彼女たちはその後たがいに二度と口を利かなくなる。ひとりは詩人の婚約者で、もうひとりは愛人とうわさされていた。すごくロマンティックだわ。」(上巻30ページ)
と現代の時点で若き映画監督が語り手であるグレイスに語るのですが、そうなんですよね、ロマンティック。
お屋敷、社交界、執事、メイド、貴族。
いろいろな面で窮屈な生活だったのでは? と思いつつ、ロマンティックに思えます。
事件の背景が、少しずつ、ゆったりと語られる。このテンポも時代や舞台にピッタリです。
登場人物が限られているので、果たして何があったのか、を考えるのはさほど難しくないことだと思いますが、この叙述パターンだと、先の予想がたとえついてしまっても、あまり問題にならないような気がします。もちろん、作者の筆力あっての話ではありますが。そしてその筆力は、確実にあります。

作者ケイト・モートンによる著者解題に
「わたしはかねてより読者として、また研究者として、本書のようにゴシック風の技法を用いる小説に興味を持ってきた。過去につきまとわれる現在。家族の秘密へのこだわり。抑圧された記憶の再生。継承(物質的、心理的、肉体的な)の重要性。幽霊屋敷(とりわけ象徴的なものが出没する屋敷)。新しいテクノロジーや移ろいゆく秩序に対する危惧。女性にとって閉鎖的な環境(物理的にも社会的にも)とそれに伴う閉所恐怖。裏表のあるキャラクター。記憶は信用ならないこと、偏向した歴史としての性格を帯びること。謎と目に見えないもの。告白的な語り。伏線の張られたテクスト。」(下巻328ページ)
とありまして、(当然ですが)ケイト・モートンはこれらの技巧を意識的に使いこなしています。
訳者あとがきに
「戦争の世紀の黄昏ゆく貴族社会、古きよき英国の静かな崩壊の歴史」
と書いてありますが、この滅びの予感が一層物語を魅力的に、ロマンティックに感じさせてくれているのでしょう。

ところでグレイス。
最初はシャーロック・ホームズのファンで、ひそかに読むのが喜び、だったのですが、途中で宗旨替えします(笑)。
「わたしがもうシャーロック・ホームズには傾倒していないのをハンナが知ることはないだろう。ロンドンでわたしは、アガサ・クリスティの作品と出会ってしまっていた。」(下巻47ページ)

そしてこの「リヴァトン館」 上・ 下巻 にクリスティ本人も登場します! (下巻108ページ~)
「当時はまだ『スタイルズ荘の怪事件』 一冊しか発表してなかったが、すでにわたしの想像の世界では、エルキュール・ポワロがシャーロック・ホームズに取って代わっていた。」(下巻108ページ)

池田邦彦のコミック「シャーロッキアン!(4) (アクションコミックス)」の感想(リンクはこちら)にも書きましたが、クリスティやクロフツはコナン・ドイルと活動期間が少しですが重なっているんですよね。改めて思いました。

ケイト・モートンは、
「忘れられた花園」〈上〉 〈下〉 (創元推理文庫)
「秘密」〈上〉 〈下〉 (創元推理文庫)
「湖畔荘」〈上〉〈下〉(東京創元社)
と翻訳が進んできていますね。楽しみです。

<蛇足1>
本書、なぜか「リヴァトン館」だと長い間勝手に思い込んでいました。不思議。
あと、カバーや後ろ側の見返しに、リヴァトン館の「館」の字に「やかた」とルビがふってあって、びっくり。
「リヴァトンかん」と呼ぶんじゃないんですね。

<蛇足2>
「ハンナとエメリンは、括弧の起こしと閉じにように両端にいる」(上巻231ページ)
“(”と“)”のこと、起こし、閉じ、というんですね。よく使うのに呼び方を知らずにいました。





原題:The Shifting Fog (英版タイトル The House of Riverton)
作者:Kate Morton
刊行:2006年
訳者:栗原百代








nice!(23)  コメント(0) 
共通テーマ:

THE MOUSETRAP [イギリス・ロンドンの話題]

もう1ヶ月ほど前のことになってしまいましたが、5月6日に St Martin's Theatre に、THE MOUSETRAP (演劇)を見てきました。

DSC_0072.JPG

THE MOUSETRAP といえば世界一ロングランを続けている演目です。
脚本は、アガサ・クリスティ。
上の写真はパンフレット(プログラム?)です。

原作は、短編(中編?)「三匹の盲目のねずみ」。
ハヤカワ版ですと、「愛の探偵たち」 (ハヤカワ・クリスティー文庫)に収録されているようです。

愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/07/15
  • メディア: 文庫

もっともWikipediaを見ると、
「もとは王太后メアリー・オブ・テックの80歳の誕生日を祝うラジオドラマとして1947年にBBCの依頼により執筆した「三匹の盲目のねずみ」を、1950年にクリスティ自身が短編小説化、さらに1951年に戯曲化した。戯曲化に際し、同名の戯曲が他にあったため、題名を『ねずみとり』に改めた。」
ということなので、原作、ということでもなさそうですが。

かなり昔に、子供の時分に原作を (上で紹介したのとは違い、創元版「クリスティ短編全集 (3) 二十四羽の黒ツグミ」でしたが)読んでいます。
とはいえ、英語がおぼつかない人間には演劇は強敵です。
20年ほど前にも一度この劇を見ているのですが、原作もうろ覚えの状態で、劇の中身はさっぱりでした...それでも雰囲気は楽しみましたけどね...
ということで、今回は事前に戯曲をチェックすることに。

The Mousetrap: A Samuel French Acting Edition

The Mousetrap: A Samuel French Acting Edition

  • 作者: Agatha Christie
  • 出版社/メーカー: Samuel French Inc Plays
  • 発売日: 2012/05/02
  • メディア: ペーパーバック

日本語版も出版されていますね。
ねずみとり (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ねずみとり (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/03/16
  • メディア: 文庫

100ページにも満たない薄い本なのですが、これすら挫折するのでは、と恐れていましたが、なんとか通読。
では、いざ出陣! St Martin's Theatre

DSC_0002.jpg

劇場の写真は後日昼間に撮ったものですが、実際は夜(開演19:30)に行きました。
この季節まだまだ明かったです。

上演中は撮影禁止なので、幕開き前にパチリ。

DSC_1976.JPG

こういう雰囲気です。
2階席の最後列だったのですが、とてもよく見えましたよ。

事前予習の甲斐あってか、話がよくわかりました!
こころなしか、セリフもちょいちょい聞き取れているような...

原作(?) のタイトル、「三匹の盲目のねずみ」(Three Blind Mice)というのは、クリスティお得意のマザー・グース(You Tubeで見つけたのでリンク貼っています) から来ています。
劇中でも登場人物がハミングしたり、歌ったりします。
でも、この曲馴染みがなかったです... しかもなんか暗そうな曲だし...

ちょっと無理のある展開かなぁ-関係者が都合よく舞台となる Monkswell Manor に集まりすぎですよね-、と思いますが、登場人物がかなり限定された中でのサプライズ(真相を知ってはいましたが)、そして、上演後のカーテンコールで、犯人役の俳優が
「これであなたも仲間なんだから、真相をばらしたりしないでね」
という恒例のシーンまで、しっかり楽しめました!

St Martin's Theatre の中に入ったところに、連続上演記録のカウンターがあります。

DSC_1978.JPG

5月6日時点で、27,795回目の上演ということですね。

ちなみに、St Martin's Theatre から南に少し下ったところに、アガサ・クリスティーの記念碑(Agathe Christie Memorial)があります。
こちらも後日写真を撮ったのであげておきます。

DSC_0004.jpg
DSC_0006.jpg



nice!(18)  コメント(2) 
共通テーマ: