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幽霊解放区 [日本の作家 赤川次郎]


幽霊解放区

幽霊解放区

  • 作者: 次郎, 赤川
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/02/02
  • メディア: 新書


<カバー袖あらすじ>
「宇野さん、夕子さん、またお世話になってしまって」と、沙知子が言った。「とんでもない」と、私は言った。「もっと早く真実が知れたら良かったですがね」

宇野と夕子が、食事をしていたレストランに、死んだはずの男から「予約」の電話が入った。この男は、少女が遺体で発見された際に、店の主人の証言によって、逮捕され、現場検証の直後にトラックにはねられ即死していた。「死者からの予約」はホンモノなのか!?
大好評“幽霊”シリーズ第27弾。


幽霊シリーズの2019年1月に出た新刊(第27弾)ですが、ひとつ前の第26弾「幽霊協奏曲」 (文春文庫)は感想を書かずじまいでして、この前に感想を書いたのは、第25弾「幽霊審査員」 (文春文庫)(感想ページへのリンクはこちら)ですね。

この「幽霊解放区」には
「ふさがれた窓」
「忘れな草を私に」
「悪夢の来た道」
「悪魔の美しさ」
「行列に消えて」
「手から手へ、今」
「幽霊解放区」
の7話が収録されています。

もう赤川次郎に指摘しても仕方がないことかもしれませんが、悪者のすることがちょっとありえないレベルになってしまっていて興醒めですね。
顕著なのが表題作「幽霊解放区」。
一軒家が火に包まれ、放火が疑われている、というのに、
「町の誰かが、土木業者に依頼して、ブルドーザーで、焼け跡を片付けてしまったんですよ。」(266ページ)
「町の人は、その跡地にアッという間に公演を作ってしまったんですよ」(267ページ)
いくらなんでも、これはないですね。焼け跡を警察や消防が調べる前にこんなこと、到底ありえない。
現在の警察・消防機構が機能しているなら、絶対起こり得ない。
また、たとえ起こったとしても、「町の誰かが」なんてレベルでとどまることなく、司直の捜査はきっちり及ぶはずです。
さらに、私有地であったでしょうに、どうやって公園を作ったのか......
悪者の非道さを強調するためなのでしょうが、無理筋も極まれり。
こんなことが行われるくらい、閉鎖的な町、あるいは村であることを説得させられるような設定、描写もありません。
幽霊シリーズでは、初期作に、こういうありえないことが起こる田舎の事件が描かれていましたが、そちらはそれなりの説得力があったように思っています。
これでは、明らかな作家としての後退現象でしょう。
特に捜査や真相追及が主眼のミステリでこれは困ります。

それと、もう昔の本のことはすっかり忘れてしまっているので、勘違いかもしれませんが、宇野警部のキャラクター、変わってきていませんか!?
「忘れな草を私に」や「行列に消えて」では、若手の警察官や刑事を怒鳴りつけたりしているんですよね。強面キャラだったかなぁ、とちょっと不思議に感じました。

幽霊シリーズは、デビュー作でもありますし、今一度、デビューのころの志に立ち返って、大切に書いていってほしいなぁ、と思いました。




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