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オー! ファーザー [日本の作家 伊坂幸太郎]

オー!ファーザー (新潮文庫)

オー!ファーザー (新潮文庫)

  • 作者: 幸太郎, 伊坂
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/06/26
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
父親が四人いる!? 高校生の由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性溢れる父×4に囲まれ、息子が遭遇するは、事件、事件、事件--。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説。


この「オー! ファーザー」 (新潮文庫)、カバー裏のあらすじを読んで、おやおや、A・J.・クィネルの「イローナの四人の父親」 (新潮文庫)みたいだな、と思いましたが、全然違う話でしたね、当たり前ですが。
なにより、巻末にあるあとがきによれば、伊坂幸太郎は「イローナの四人の父親」をご存知なかったようです。

引用したあらすじに、面白さ400%とありますが、これ、父親一人につき100%のおもしろさということでしょうか(笑)。
読んでみると、こういう計算にも一理あるかな、と思える楽しさでした。

帯に「あれも伏線これも伏線の伊坂マジック」と書かれていまして、それはそうなのですが、伊坂ワールドの場合は、伏線というよりもむしろ、エピソード、エピソードがどんどん有機的に結びついていくさまがマジックな気がします。(それを伏線というのだよ、ということかもしれませんが......)

この「オー! ファーザー」でも、出てくる事件、事件がしっかり連関していくのを見る楽しみがいっぱいです。

ミステリだと、思いもよらない結末や事件の全体像に強く惹かれるのが普通ではないかと思うのですが、伊坂ワールドの場合は、びっくりするような結末とか想像を超えた真相というよりはむしろ、数多くのエピソードがどんどん組み合わさっていくのを見つめる楽しみ、というのか、結末とか真相の見当がたとえついたとしても、それが仕上がっていく過程を楽しむのが王道の気がしています。

「伊坂ワールド第一期を締め括る」と書かれていますが、この後作風が変化したのでしょうか?
そのあたりに気をつけながら、今後の作品を読んでいきたいです。



<蛇足1>
「一生懸命、重い本を運んで、汗をかいて、」(78ページ)
「僕が騙されて、一生懸命走って学校に来るのを」(276ページ)
「富田林さんが特に怒るのが、太郎の湿疹の悪口を言われたり、自分の名字を馬鹿にされることなんだよな。」(97ページ)
「当時のそのクラスでは、両親が離婚していたり、父親が事故で亡くなっているような生徒が特別珍しくなかったから」104ページ)
「それから鑑みるに、自分たちの影響についてはどう評価しているのだ」(115ページ)
気になる表現のオンパレードですね......
新潮社のような出版社でも、一生懸命や「~たり、~たり」の不整合や鑑みるの使い方は、校正で正さないのですね。もう正しい日本語として認知されているということでしょうか。残念です。
「~たり、~たり」については、151ページにかなり長い文章できちんと使われていますので、見逃しだったのかもしれませんが。

<蛇足2>
「爽やかな笑顔で、『わたし、絶対に二股はかけていないから』って言った」
「四股だったんだからな」(102ページ)
主人公由紀夫の父たちが母のことを考えて語るシーンなのですが、おいおいエラリー・クイーンかよ、と笑ってしまいました。









タグ:伊坂幸太郎
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