はるひのの、はる [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
大きくなったユウスケの前に、「はるひ」という名の女の子が現れる。初対面のはずなのに、なぜか妙に親しげだ。その後も「肝試しがしたい」「殺人の相談にのって」と無理難題を押し付ける。だが、ただの気まぐれに思えた彼女の頼み事は、全て「ある人」を守る為のものだった。時を超えて明らかになる温かな真実。ベストセラー「ささら」シリーズ最終巻。
「ささら さや」 (幻冬舎文庫)
「てるてるあした」 (幻冬舎文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
に続く、シリーズ最終巻です。
(「ささら さや」には空白が、「はるひのの、はる」には読点が使われていることによって、シリーズのタイトルが順に、6文字、7文字、8文字と増えていっているのを楽しく感じました。そういう狙いはないんでしょうけれど)
これまでのシリーズ2作を読んだのはずいぶん前で、中身は例によって忘れてしまっているのですが、「はるひのの、はる」 (幻冬舎文庫)を読んでいるうちに、おぼろげに思い出してきました。
シリーズの世界がしっかり構築されているから、ですね。
ミステリの手法が惜しげもなく投入されていますが(ちょっと変な表現かもしれませんね)、読んだ感触はミステリではなく、ああ、いい話を読んだなあ、というもの。
このシリーズの、というよりは、加納朋子の作品の特徴ともいえるポイントですね。
読んだ感触はミステリではないと申し上げましたが、謎はちりばめられていますし、なにより「はるひ」と名乗る女の子の正体は、本書における最大の謎として全体の底に流れています。(ただし、読者が見当をつけるのは容易ではありますが)
幽霊が出てくる、ということでファンタジックな物語であることは自明ではありますが、現実の世界に寄り添って世界が構築されている安心感もあります。
温かな真実というあらすじの紹介文が境地を楽しみに、ぬくもりに包まれた物語世界を楽しんでいただけたら、と思います。
<蛇足>
けれど母が喜んでくれるから、一生懸命に手伝った。(18ページ)
それはこの上なく幸福な気づきであった。(55ページ)
こういう語が出てくると、ささくれのように感じられて味気ない思いをするのですが、もうこれは普通の正しい日本語なんだとあきらめるべきなのかもしれません......
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