牧神の影 [海外の作家 ヘレン・マクロイ]
<カバー裏あらすじ>
深夜、電話の音でアリスンは目が覚めた。それは伯父フェリックスの急死を知らせる内線電話だった。死因は心臓発作とされたが、翌朝訪れた陸軍情報部の大佐は、伯父が軍のために戦地用暗号を開発していたと言う。その後、人里離れた山中のコテージで一人暮しを始めたアリスンの周囲で次々に怪しい出来事が……。暗号の謎とサスペンスが融合したマクロイ円熟期の傑作。
ヘレン・マクロイの長編第8作です。
前回マクロイ作品の感想を書いた「小鬼の市」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)では、なかなかウィリング博士は登場しませんでしたが、この「牧神の影」 (ちくま文庫)では最後まで登場しません(笑)。
あらすじに「円熟期」とあるので、あれっと思ってしまいました。
ヘレン・マクロイのデビューは「死の舞踏」 (論創海外ミステリ)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)で1938年、最後の作品が「読後焼却のこと」 (ハヤカワ・ミステリ)で1980年ですから、この「牧神の影」 は1944年刊行と初期に書かれた作品といってもいいのでは、と思ったからです。
「円熟期」ってなんとなく晩年近いものを連想してしまいませんか?
(なお「小鬼の市」の感想で、何冊目かというカウントを間違えていたので訂正しました)
ただ、タイミングの問題はあるにせよ、「牧神の影」の内容は円熟という単語で形容してもいいかな、と思えました。
いつも暗号が出てくるとその部分は飛ばしてしまうのですが(暗号がメインといえる竹本健治の「涙香迷宮」 (講談社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)ですら暗号部分は飛ばし読みしていた体たらくです)、今回はヘレン・マクロイの作品ということで、ちゃんと(?) 普通に読みました。
がんばって読んだのですが、暗号部分の真価はわかりません......
正直、この暗号だったら、専門家がわからない、あるいは思いつかないということはないのでは? と思ってしまいました。
コロンブスの卵的な感じも受けませんでしたし。
暗号についてのエピソードもかなりの量を占めているので、力が入っていることは想像できるのですが。
お馴染みのウィリング博士が出てこないから、というわけではないですが、サスペンス調です。
(ひょっとしたら精神科医であるウィリング博士に暗号というのは...と思ったのかもしれませんね。「牧神の影」で暗号を解読するのは素人の若い女性ですけれども。)
しかしなぁ、本当に人里離れた山の中のコテージで若い女性が一人で過ごそうと思うかなぁ、という点はかなり気になりますが、作者も女性ですし、そういうものなのでしょうね。
もっとも、そのおかげで、主人公アリスンが不安に襲われる部分がとてもサスペンスフルになっています。
原題「Panic」(パニック)通りですね。それを「牧神の影」と訳しているのはとても美しくて素晴らしいですね!
このサスペンス部分がとてもよかったですね。
戦争(第二次世界大戦)が色濃く反映された物語になっていまして(そもそも暗号も軍のためですし)、舞台は山奥のコテージなのに、背景が複雑なものになっています。
怪しげな登場人物、不安を掻き立てる山中の描写.......
主人公アリスンの心細さが一層掻き立てられるものがたくさんあります。
サスペンス旺盛な一方で、謎解きはちょっとあっけなく感じられますが、それだけサスペンスが強烈ということなんだと思いました。
<2020.10.27追記>
この作品は、「2019 本格ミステリ・ベスト10」第5位でした。
<蛇足1>
「なにかを膝に投げれば、女なら膝を開いたまま、スカートで受け止めようとする。だが、男なら、膝に投げられれば、反射的に膝を閉じる。でないと、物はズボンの脚の間に落ちてしまうから。」(161ページ)
おもしろい着眼点ですが、当時は女性はスカートを履くもので、ズボンを履くことはなかったのでしょうね......
<蛇足2>
「彼は集産主義の調和の美に惹かれた経済学者の一人だった。」(323ページ)
集産主義がわからなくて調べました。Wikipedia ですけれど。
生産手段などの集約化・計画化・統制化などを進める思想や傾向。対比語は個人主義(個人主義的自由主義経済、自由放任経済など)。主な例は社会主義やファシズムなど。
原題:Panic
作者:Helen McCloy
刊行:1944年
翻訳:渕上痩平
亀と観覧車 [日本の作家 樋口有介]
<カバー裏あらすじ>
ホテルの清掃員をしながら夜間高校に通う三代川涼子、十六歳。怪我で働けない父と鬱病の母がいて、家は生活保護を受けている。ある日、セレブが集う「クラブ」に誘われた涼子は、そこで、小説家だという初老の男に出会う。「ヘンな人」でしかなかったその存在が、彼女の人生を静かに動かしていく――。一筋縄ではいかない、一気読み「純愛」物語!
うーーん、樋口有介の作品なので、難なく、いや、むしろ心地よく読み進めましたが、なんといったらよいのでしょうね?
変わった作品だなぁ、というのが正直なところ。
まず、ミステリ、ではありません。
「本書は、谷崎潤一郎生誕一三〇周年記念作品として、二〇一六年に中央公論新社より刊行された書き下ろし長編を文庫化したものです。」
と巻末にあります。
谷崎潤一郎ですか......むかし、教科書に載っていた作品でしか知りません......
だから、どのあたりが谷崎潤一郎を偲ぶところなのか、さっぱりわかりません。
視点人物の涼子がとても変わった子でして、少々持って回った語り口にのせられているうちに、あれよあれよと物語は変な方向へ。
谷崎潤一郎の作品って、こんな感じなんでしょうか!? そんな筈ないですよね。
樋口有介の作品でなかったら、到底手にも取らず、読みもしない感じの作品だったので、よい経験になりましたが......
樋口有介の普通の作品を楽しみに待ちます!
タグ:樋口有介
SOTUS S その2 [タイ・ドラマ]
昨日の続きで、タイのボーイズラブ・ドラマ、「SOTUS S」 の感想です。
物語は......
社会人と学生という関係になった二人。以前のように会うことはできず、すれ違いが増えている(多分)。
アーティットの会社では嫌な先輩(というよりはずるい先輩、あるいは悪い先輩というべきですね)や怖い人がいたり......
一方、コングホップに想いを寄せる新入生がいたり、アーティットに想いを寄せる先輩女性社員がいたり。それに対しては、コングホップはきっぱり、アーティットもやんわりと(?) 断るんですけどね。アーティットの方は断るというより、相手の女性が気づいたという方が正しいかも。
しかし、エピソード的にはちょっと大企業とは思えないところが多々ありますね、この会社。大丈夫かな? 心配してしまいます。
コングホップの素性(?) が明かされるのも大きいポイントですね。
金持ちのぼんぼん臭は最初からしていたのですが、いやあ、社長御令息でしたか。しかもかなりの大企業。
コングホップのお父さん、アーティットの仕事上で大きなつながりが出てきます(EP5やEP11)。
今回、コングホップがアーティットの勤めるオーシャンエレクトリックにインターンとして行く話(EP6~)とか、アーティットの隣の部屋に引っ越す話(EP6)とか、さすがに事前にアーティットに言うべきだったと思いますね。
基本的に、コングホップとアーティットを比べると、圧倒的にアーティットがわがままで自分勝手なので、コングホップに非があることはほとんどないんですが、この2つのエピソードは違いますね。
なかなか伝えるチャンスがなかったということかと思いますが、かなり大きなトピックスなんだから会う機会が減っているとはいえ、伝える方法はあるはずですし、そりゃあ、アーティットも怒るだろうな、と。
父親のことについてはまだ同情の余地はありますけれど。
でもこの程度の仲違いはかわいいもので、この物語で最大の危機は、社員旅行の海でキスしているところを写真で撮られ(EP9)、しかもその写真が社内で広まってしまう(EP11)ことにより引き起こされます。
これ、結構きつい状況ではあるので、アーティットの態度がおかしくなってしまうのは理解できるのですが、コングホップとの関係に与えるダメージは甚大ですね。
事態を知ったコングホップが部屋の前でアーティットと話すシーン(EP12)を経て、思い出の SOTUS の会場での別れ話(EP12)に至ります。渡されていたギアをアーティットに返してしまうんですから......
コングホップのこういう姿は、このシリーズでは珍しい。
特にこのシーンは、涙を見せますから、なおさらです。
そして、そしてクライマックスの、インターンの送別会でのコングホップのスピーチのシーン(EP12)。
スピーチ中のところへ、アーティットが出ていって割り込んでみんなの前で......
アップの写真も載っけてしまおう。
しかし、アーティット、勇気を出してがんばったねー。
一旦返されてしまったギアをアーティットが後日どうしたか、かなり素敵なアイデアでしたね(EP13)。
ちょっとうらやましくなりました。
これ以外で印象に残っているシーンをいくつか。
まず、コングホップがSOTUSの指導者に選ばれるためのテストの場面(EP1)。
試験官として模擬演習の新入生役となったアーティットが、例の「嫁にする」発言をコングホップに対してやり返してみせるのですが、見事に逆襲されます。コングホップの方が一枚も二枚も上手ですね(笑)。
会社の飲み会で、アーティットの世話を焼きすぎるコングホップにアーティットがキレた後の帰り道のシーン(EP7)も好きです。
どうしてそんなにゆっくり歩いているのかと聞かれたコングホップの答えが琴線に触れました。
通常押しまくるコングホップが弱気になるシーンって、シリーズを通して珍しいんですよね。貴重なシーンです。
デイとティウでは、デイがSOTUS の継承式に行かなかった理由をティウに告げるシーンもお気に入りです(EP7)。
ティウのセリフがよかったですね。
会社での出来事については、あれこれ疑問が残るところもありますが、まあ、そこはドラマなのでさらっと流してしまうのがよいのでしょうね。
ある意味、コングホップが押して押して押しまくる「SOTUS」から、視野が拡がって多面的な物語になったといえるかもしれません。
「SOTUS S」、おもしろかったです。
(「SOTUS」を観ずに「SOTUS」だけ観る人はいないかもしれませんが、当たり前のことながら、「SOTUS」を先に観ておく必要があると思います)
<蛇足>
物語の最後に、希望していた生産部への異動をアーティットが断る(というよりは購買部に残ることを選択する)場面があります。
長期的に見てどちらがよかったのかはわからないのですが、希望の異動がかなう可能性をもらったのに見逃してしまうのはあまり得策ではないなぁ、と思ってしまいました。
めぐり来たチャンスは掴まなきゃだめだよ、アーティットくん。
(ふと思ったのですが、アーティットにチャンスを譲ってくれたCEOの甥っ子がやっぱり生産部へ行くことになって、購買部の人材不足はちっとも解消しないのではなかろうか、とそんなことまで考えちゃいました)
物語は......
社会人と学生という関係になった二人。以前のように会うことはできず、すれ違いが増えている(多分)。
アーティットの会社では嫌な先輩(というよりはずるい先輩、あるいは悪い先輩というべきですね)や怖い人がいたり......
一方、コングホップに想いを寄せる新入生がいたり、アーティットに想いを寄せる先輩女性社員がいたり。それに対しては、コングホップはきっぱり、アーティットもやんわりと(?) 断るんですけどね。アーティットの方は断るというより、相手の女性が気づいたという方が正しいかも。
しかし、エピソード的にはちょっと大企業とは思えないところが多々ありますね、この会社。大丈夫かな? 心配してしまいます。
コングホップの素性(?) が明かされるのも大きいポイントですね。
金持ちのぼんぼん臭は最初からしていたのですが、いやあ、社長御令息でしたか。しかもかなりの大企業。
コングホップのお父さん、アーティットの仕事上で大きなつながりが出てきます(EP5やEP11)。
今回、コングホップがアーティットの勤めるオーシャンエレクトリックにインターンとして行く話(EP6~)とか、アーティットの隣の部屋に引っ越す話(EP6)とか、さすがに事前にアーティットに言うべきだったと思いますね。
基本的に、コングホップとアーティットを比べると、圧倒的にアーティットがわがままで自分勝手なので、コングホップに非があることはほとんどないんですが、この2つのエピソードは違いますね。
なかなか伝えるチャンスがなかったということかと思いますが、かなり大きなトピックスなんだから会う機会が減っているとはいえ、伝える方法はあるはずですし、そりゃあ、アーティットも怒るだろうな、と。
父親のことについてはまだ同情の余地はありますけれど。
でもこの程度の仲違いはかわいいもので、この物語で最大の危機は、社員旅行の海でキスしているところを写真で撮られ(EP9)、しかもその写真が社内で広まってしまう(EP11)ことにより引き起こされます。
これ、結構きつい状況ではあるので、アーティットの態度がおかしくなってしまうのは理解できるのですが、コングホップとの関係に与えるダメージは甚大ですね。
事態を知ったコングホップが部屋の前でアーティットと話すシーン(EP12)を経て、思い出の SOTUS の会場での別れ話(EP12)に至ります。渡されていたギアをアーティットに返してしまうんですから......
コングホップのこういう姿は、このシリーズでは珍しい。
特にこのシーンは、涙を見せますから、なおさらです。
そして、そしてクライマックスの、インターンの送別会でのコングホップのスピーチのシーン(EP12)。
スピーチ中のところへ、アーティットが出ていって割り込んでみんなの前で......
アップの写真も載っけてしまおう。
しかし、アーティット、勇気を出してがんばったねー。
一旦返されてしまったギアをアーティットが後日どうしたか、かなり素敵なアイデアでしたね(EP13)。
ちょっとうらやましくなりました。
これ以外で印象に残っているシーンをいくつか。
まず、コングホップがSOTUSの指導者に選ばれるためのテストの場面(EP1)。
試験官として模擬演習の新入生役となったアーティットが、例の「嫁にする」発言をコングホップに対してやり返してみせるのですが、見事に逆襲されます。コングホップの方が一枚も二枚も上手ですね(笑)。
会社の飲み会で、アーティットの世話を焼きすぎるコングホップにアーティットがキレた後の帰り道のシーン(EP7)も好きです。
どうしてそんなにゆっくり歩いているのかと聞かれたコングホップの答えが琴線に触れました。
通常押しまくるコングホップが弱気になるシーンって、シリーズを通して珍しいんですよね。貴重なシーンです。
デイとティウでは、デイがSOTUS の継承式に行かなかった理由をティウに告げるシーンもお気に入りです(EP7)。
ティウのセリフがよかったですね。
会社での出来事については、あれこれ疑問が残るところもありますが、まあ、そこはドラマなのでさらっと流してしまうのがよいのでしょうね。
ある意味、コングホップが押して押して押しまくる「SOTUS」から、視野が拡がって多面的な物語になったといえるかもしれません。
「SOTUS S」、おもしろかったです。
(「SOTUS」を観ずに「SOTUS」だけ観る人はいないかもしれませんが、当たり前のことながら、「SOTUS」を先に観ておく必要があると思います)
<蛇足>
物語の最後に、希望していた生産部への異動をアーティットが断る(というよりは購買部に残ることを選択する)場面があります。
長期的に見てどちらがよかったのかはわからないのですが、希望の異動がかなう可能性をもらったのに見逃してしまうのはあまり得策ではないなぁ、と思ってしまいました。
めぐり来たチャンスは掴まなきゃだめだよ、アーティットくん。
(ふと思ったのですが、アーティットにチャンスを譲ってくれたCEOの甥っ子がやっぱり生産部へ行くことになって、購買部の人材不足はちっとも解消しないのではなかろうか、とそんなことまで考えちゃいました)
SOTUS S その1 [タイ・ドラマ]
今日の感想は、タイのボーイズラブ・ドラマ、「SOTUS S」 です。
「SOTUS S」 は、
「SOTUS」 (感想ページはこちらとこちら)
の続編です。
「SOTUS S」 の「S」は "sequel" ということで続編を意味するようです。日本風にいうなら「続 SOTUS」というところでしょうか。
日本語というと、いつも見ている YouTube のページが英語仕様となっているので気づいていなかったのですが、言語を日本語にしてみたところ、「SOTUS」のタイトルは「ソータスザシリーズ~鬼の先輩と新入生君~」となっているのですね。
どなたか訳されたのかわかりませんが、なかなかのタイトルですね......「鬼の先輩と新入生君」とは......英語仕様で観ていてよかった。
「SOTUS S」の方は「ソータス エス ザ シリーズ」。続、ではないのですね。
日本語の字幕もついています。
「SOTUS S」 に話を戻しまして、EP1からEP13まで全13話。だいたい各エピソード45分くらいです。
2017年12月から2018年3月にかけて放送されたようです(MyDramaListからの情報です)。
この告知、下の「SOTUS」のものと比べるとおもしろいですね。
工学部のユニフォームを着ているのがアーティットからコングホップに、シャツにネクタイ姿がコングホップからアーティットに変わっています。
実年齢に合わせて役柄を入れ替えたわけではなく(笑。アーティット役のクリストの方がコングホップ役のシントーよりも1歳若いらしいです)、「SOTUS S」では、コングホップは大学の上級生となり SOTUS を仕切る側に、一方アーティットは卒業して社会人として大企業(という設定になっていると思われます) Ocean Electric (オーシャンエレクトリック)で働き始めています。
オープニングは、アーティットの試用期間が終わり、正社員となる初日。コングホップがアーティットを起こしてあげるシーンから。
その後、コングホップたちが SOTUS に挑むシーン。
SOTSU の内容は以前と比べるとかなり合理的なものに変更されています。コングホップたち、偉い!
それでもまだ理不尽に思える部分は残っていますが......ぎりぎりセーフ、ぎりぎりアウトという境界線でしょうか?
それでも、楯突く新入生はいます。
上の画像の最前列左がその新入生Dae(デイあるいはデー)。
演じているのは Pattadon Janngeon、愛称は Fiat。
彼と対峙するのが Tew(ティウあるいはテュー)。上の画像の中段一番左です。
演じているのは Korn Khunatipapisiri、愛称は Oaujun。愛称より Korn の方が呼びやすそうですが。
同じ学籍番号0058のラインの先輩・後輩にもなります。
前作「SOTUS」でも、コングホップ(とアーティット)のライン(0062)のつながり(は描かれていましたが、ラインのつながりというこのシステム、おもしろい仕組みですよね。「SOTUS S」 の中でも、コングホップのラインの集まりはあります(EP5)。
デイは、反抗的な役どころ、ではあるのですが、ティウのお節介?(とコングホップとの会話) が重なっていくうちに気持ちに変化が出てくるという流れになっていまして、視線と表情でその動きがわかるようになっていて、いい役者さんだなぁ、と思えました。途中急激に仲が深まるのですが、観ていて無理なく受け入れられました。
ラストエピソード(EP13)で、デイの方からティウの手を取るシーンはなかなかよかったですね。
中段左から2人目はエム。
「SOTUS」の頃から注目していたエムくんですが、「SOTUS」でメイのこと好きだと言って恋人同士になったのかと思いきや、オープニングの段階ではまだその手前でうろうろ(笑)。しっかりしろー。
でも、SOTUS の継承式(また海です! EP4)でようやく。
しかしなー、エムがこんなに独占欲が強いやつだったとは......ちょっとがっかりしていたりして。
アーティットサイドの右側二人は、いろんなドラマによく出てくる俳優さんですが、実は「SOTUS S」でそれほどメインストーリー絡みで活躍されるわけではありません。ちょいちょい出てはきますけど。
人気があるのでポートレートが使われたのでしょうね。
で最前列真ん中は、「2gether」の Dim先輩だ!
このドラマでは、アーティットの会社の生産部長 Yong(ヨン)。
ちなみに、Green も生産部のメンバー Cherry(チェリー)として出演しています(笑)。
ヨン部長の相手役をつとめるのが、最前列右のインターン生 Nai(ナイ)。
演じているのは Krittanai Arsalprakit、愛称が Nammon。
好意を持っている状態からなかなか踏み出さない(踏み出せない?)様子がリアルに思えました。
しかし、見事なほどに男だけの告知ですね。ボーイズラブだから、当たり前なのでしょうけれど。
と、またもや中途半端ですが、明日に続きます。
「SOTUS S」 は、
「SOTUS」 (感想ページはこちらとこちら)
の続編です。
「SOTUS S」 の「S」は "sequel" ということで続編を意味するようです。日本風にいうなら「続 SOTUS」というところでしょうか。
日本語というと、いつも見ている YouTube のページが英語仕様となっているので気づいていなかったのですが、言語を日本語にしてみたところ、「SOTUS」のタイトルは「ソータスザシリーズ~鬼の先輩と新入生君~」となっているのですね。
どなたか訳されたのかわかりませんが、なかなかのタイトルですね......「鬼の先輩と新入生君」とは......英語仕様で観ていてよかった。
「SOTUS S」の方は「ソータス エス ザ シリーズ」。続、ではないのですね。
日本語の字幕もついています。
「SOTUS S」 に話を戻しまして、EP1からEP13まで全13話。だいたい各エピソード45分くらいです。
2017年12月から2018年3月にかけて放送されたようです(MyDramaListからの情報です)。
この告知、下の「SOTUS」のものと比べるとおもしろいですね。
工学部のユニフォームを着ているのがアーティットからコングホップに、シャツにネクタイ姿がコングホップからアーティットに変わっています。
実年齢に合わせて役柄を入れ替えたわけではなく(笑。アーティット役のクリストの方がコングホップ役のシントーよりも1歳若いらしいです)、「SOTUS S」では、コングホップは大学の上級生となり SOTUS を仕切る側に、一方アーティットは卒業して社会人として大企業(という設定になっていると思われます) Ocean Electric (オーシャンエレクトリック)で働き始めています。
オープニングは、アーティットの試用期間が終わり、正社員となる初日。コングホップがアーティットを起こしてあげるシーンから。
その後、コングホップたちが SOTUS に挑むシーン。
SOTSU の内容は以前と比べるとかなり合理的なものに変更されています。コングホップたち、偉い!
それでもまだ理不尽に思える部分は残っていますが......ぎりぎりセーフ、ぎりぎりアウトという境界線でしょうか?
それでも、楯突く新入生はいます。
上の画像の最前列左がその新入生Dae(デイあるいはデー)。
演じているのは Pattadon Janngeon、愛称は Fiat。
彼と対峙するのが Tew(ティウあるいはテュー)。上の画像の中段一番左です。
演じているのは Korn Khunatipapisiri、愛称は Oaujun。愛称より Korn の方が呼びやすそうですが。
同じ学籍番号0058のラインの先輩・後輩にもなります。
前作「SOTUS」でも、コングホップ(とアーティット)のライン(0062)のつながり(は描かれていましたが、ラインのつながりというこのシステム、おもしろい仕組みですよね。「SOTUS S」 の中でも、コングホップのラインの集まりはあります(EP5)。
デイは、反抗的な役どころ、ではあるのですが、ティウのお節介?(とコングホップとの会話) が重なっていくうちに気持ちに変化が出てくるという流れになっていまして、視線と表情でその動きがわかるようになっていて、いい役者さんだなぁ、と思えました。途中急激に仲が深まるのですが、観ていて無理なく受け入れられました。
ラストエピソード(EP13)で、デイの方からティウの手を取るシーンはなかなかよかったですね。
中段左から2人目はエム。
「SOTUS」の頃から注目していたエムくんですが、「SOTUS」でメイのこと好きだと言って恋人同士になったのかと思いきや、オープニングの段階ではまだその手前でうろうろ(笑)。しっかりしろー。
でも、SOTUS の継承式(また海です! EP4)でようやく。
しかしなー、エムがこんなに独占欲が強いやつだったとは......ちょっとがっかりしていたりして。
アーティットサイドの右側二人は、いろんなドラマによく出てくる俳優さんですが、実は「SOTUS S」でそれほどメインストーリー絡みで活躍されるわけではありません。ちょいちょい出てはきますけど。
人気があるのでポートレートが使われたのでしょうね。
で最前列真ん中は、「2gether」の Dim先輩だ!
このドラマでは、アーティットの会社の生産部長 Yong(ヨン)。
ちなみに、Green も生産部のメンバー Cherry(チェリー)として出演しています(笑)。
ヨン部長の相手役をつとめるのが、最前列右のインターン生 Nai(ナイ)。
演じているのは Krittanai Arsalprakit、愛称が Nammon。
好意を持っている状態からなかなか踏み出さない(踏み出せない?)様子がリアルに思えました。
しかし、見事なほどに男だけの告知ですね。ボーイズラブだから、当たり前なのでしょうけれど。
と、またもや中途半端ですが、明日に続きます。
予告殺人 [海外の作家 アガサ・クリスティー]
<カバー裏あらすじ>
その新聞広告が掲載された朝、村は騒然となった。「殺人をお知らせします。10月29日金曜日、午後6時半…」。誰かの悪戯か、ゲームの誘いなのか? 予告の場所に人々が集い、時計が6時半を示したとき、突如闇が落ち、三発の銃声が轟いた! 大胆かつ不可解な事件にミス・マープルが挑む、クリスティーの代表作。
今年はアガサ・クリスティー デビュー100周年、生誕130周年ということで、早川書房のクリスティー文庫で新訳刊行が6ヶ月連続で企画されています。
その第一弾が5月に出たこの「予告殺人〔新訳版〕」 (クリスティー文庫)です。
本書はミス・マープル物で、ずいぶん昔に旧訳で読んでいます。
クリスティーの生み出したうち、特に知られている二人の名探偵、エルキュール・ポワロとミス・マープルを比べると、個人的にはポワロ贔屓で、ミス・マープルにはあまり感心してこなかったこともあって、新訳が出るのを機に読み返してみようと思ったのです。
「予告殺人」も、殺人予告が新聞に出る、ということしか覚えていない(!)こともありましたし。
まず、ミス・マープルの本拠地、セント・メアリミード村じゃないのですね、舞台は。
だから、舞台となるチッピング・クレグホーンの人から
「あの老婦人は詮索好きよ。それに、何を考えているのかよくわからなくて不気味だわ。まさにヴィクトリア朝時代の人間ね」(284ページ)
と評されています。うわっ、正しい評だ(笑)。
少なくともこの「予告殺人」では、ミス・マープルは、地味、なんですよね。
事件の中心でしっかり捜査するというのではなく、事件の周辺をうろちょろしている感じ(それでも事件を解決する、というか見通しているのだから大したもの、なんですが)。
そりゃあ、感心しないよなー、と気づきました。
でも、最終章の絵解きの段階でミス・マープルが指摘する数々の手掛かりは、感じがいいんですよね。
こういうのを味わう余裕が、当時のぼくにはなかったということでしょう。もったいない。
犯人当てそのものは、ちょっと単純でしたね。
内容を全くといってもいいほど覚えていないというものの、潜在意識に残っていたのか(大げさな......)、真相は相当早い段階で見当がつきました。
「殺人をお知らせします」という新聞広告というキャッチ―なアイデアに寄りかかっている、というか、逆にそのことが犯人当てでは弱点になっているように思えました。
そして、ネタバレになりかねないので伏字にしておきますが、「予告殺人」を読み終わって、「ゼロ時間へ」 (クリスティー文庫)を読み返したくなりました......
<蛇足1>
訳者の羽田詩津子さんはベテランの翻訳家ですが、この作品で変わった(新しい?)表記、訳し方をされています。
「『すてきなダイニングですね』とか(もちろん、ちがいます。暗くて狭いひどい部屋ですもの)。」(88ページ)
「ヒンチ(ミス・ヒンチクリフのことです)は暖炉の前に男みたいに足を広げて立っていました」(102ページ)
「ダシール・ハメットの物語で知ったんですのよ(甥のレイモンドによれば、ハメットはいわゆるハードボイルドの分野では、三本の指に入る作家だと考えられているそうですね)。」(157ページ)
「でも、ベルがわたしよりも先に亡くなったら(奥さんはとても病弱な人で、長く生きられないだろうと言われていました)、ランドルの全財産を相続すると知ったときは、とても感動したし、誇りに感じました。」(189ページ)
会話文で、括弧()を使うというのは斬新だと思います。普通だと、括弧なしで流して訳すでしょうね。
今回の羽田さんの訳文も、括弧を気にせず、そのまま読み下せるようになっていますーーということは、括弧を使わない、普通の訳し方でもよかった気がしますが......
<蛇足2>
「牧師さんにご返事を書かなくては」(309ページ)
ここを読んで、おっと思いました。
「お返事」ではなく「ご返事」だったからです。
以前このブログのコメント欄で「ご返事」と書いたとき、「お返事」「ご返事」で悩みました。どちらともとれるように「御返事」と書けばよかったと思ったものです。
どちらとも使うので、どちらを用いてもよいようです。
<蛇足3>
「あっという間に、三幕のものすごく滑稽な喜劇を書き上げたんです」
「なんていうタイトルなんだ?」ー略ー「《執事は見た》?」
「まあ、そんなようなものだけど……ええと、《象は忘れる》というんだ。ー略ー」
「象は忘れる」パンチがつぶやいた。「象は忘れないんじゃないかしら?」(450~451ページ)
ちょっとニヤリとしてしまいました。「象は忘れない」 (クリスティー文庫)という作品がクリスティーにあるからです。
まさか、この「予告殺人」の執筆の頃から、「象は忘れない」 の構想を練っていた、ってことはないですよね!?
原題:A Murder is Announced
著者:Agatha Christie
刊行:1950年
訳者:羽田詩津子
球体の蛇 [日本の作家 道尾秀介]
<カバー裏あらすじ>
幼なじみ・サヨの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった。白い服に身を包み自転車に乗った彼女は、どこかサヨに似ていた。想いを抑えきれなくなった私は、彼女が過ごす家の床下に夜な夜な潜り込むという悪癖を繰り返すようになったが、ある夜、運命を決定的に変える事件が起こってしまう――。幼い嘘と過ちの連鎖が、それぞれの人生を思いもよらない方向へ駆り立ててゆく。最後の一行が深い余韻を残す、傑作長編。
読み始めてすぐ思ったのが「暗い」ということ。
主人公私の一人称でつづられるのですが、暗いですね。
「何かをわざと忘れるほど難しいことはない。思い出したくないと、いくら願っても、記憶の回路はふとしたきっかけで接続され、青いダイオードのように頭の中を冷たく照らす。思い出の陰影が頭蓋骨の壁に浮き出して、私はその陰影を眼球の裏側で凝視する。
瞼を閉じても、目をそらすことなどできない。」(6ページ)
こう書かれていて、思い出したくない過去の物語であることが示されます。
しかも、この主人公がまた暗いのですよ......
あらすじにもありますが、思いを寄せる女性がいる家の床下に夜な夜な潜り込む、というのですから、常識的な単語で表現すると、変質者、ですね。(もともと、アルバイトでシロアリ・害虫対策の仕事をしているので、地下に潜る行為は慣れたもの、という設定ではあるのですが)
自分の父親から見放された少年が、隣の家族に拾われ、家族を手に入れたのに、自らの手で失っていく、という物語になっており、どうやっても明るくはならない物語なのかもしれませんが、主人公の性格がまた拍車をかけているようです。
印象に残っている部分ではあるのですが、
「同情が一種の快感なのは、責任が伴わないからだ。」(132ページ)
「無根拠といえばそれまでだが、信頼なんて、きっとすべて無根拠なのだ。それだからこそ、裏切られてしまったとき、相手への恨みと同じくらい、自分が厭になるのだろう。」(271ページ)
などという述懐もまた、暗い、ですよね。
タイトルの「球体の蛇」。
蛇は、巻頭の「星の王子さま」 (岩波文庫)の引用からです。
ゾウをこなしているウワバミ、ですね。
球体は、スノードーム。この物語にスノードームは何個も登場します。
スノードームの中の雪だるまを見て「ずっと、硝子の中にいなきゃいけないんだもんね。」と言ったサヨ(41ページ)。
スノードームの中に入れたら「いつも綺麗な景色だけを見ていられる」から幸せかも、と言った智子(151ページ)。
主人公を彩る女性・女の子とスノードームは密接に関連づけられています。
この、蛇とスノードームがラストで結びつき、同時にサヨと智子の観方の違いが昇華していくのは、さすが道尾秀介、見事だなぁと思いました。
でも、やっぱり、ナオが可哀想な気がしてなりません。
<蛇足>
おろし金と半ペタの大根を取り出して(23ページ)
半ペタ? わからず辞書で調べました。2分割した一つのことを指すのですね。
調べているときにわかったのですが、作者ご本人が Twitter でコメントされているのですね。
タグ:道尾秀介
時限病棟 [日本の作家 た行]
<カバー裏あらすじ>
謎の死の真相を掴み
廃病院から脱出せよ!!
目覚めると、彼女は病院のベッドで点滴を受けていた。なぜこんな場所にいるのか? 監禁された男女5人が脱出を試みるも……。ピエロからのミッション、手術室の男、ふたつの死の謎、事件に迫る刑事。タイムリミットは6時間。大ヒット作『仮面病棟』を超えるスリルとサスペンス。圧倒的なスピード感。衝撃の結末とは――。医療ミステリーの超傑作、文庫書き下ろし!
「仮面病棟」 (実業之日本社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2作です。
シリーズといいましたが、同じ病院の建物を舞台にしていて、それぞれ独立した作品ではありますが、やはり「仮面病棟」 の中身に触れますので、先に「仮面病棟」を読まれることをお勧めします。
「仮面病棟」はおもしろく、一気読みしました。
この「時限病棟」 (実業之日本社文庫)も一気読みでした。
「仮面病棟」の感想にも書きましたが、同じことを感じました。
「ちょっと安直かな、と思うところもないではないですが、非常にスピーディーな中で、よく考えられていると思いましたし、楽しい作品でした。」
リアル脱出ゲームを模したかのようなストーリーは、ちょっとどうかな、と思わないでもなかったですし、蓋を開けてみれば因縁話、復讐劇というのもありふれているな、と思ったのですが、この作品の場合、大きな欠点とは言えないと感じました。
というのも、読者は、どうしても「仮面病棟」を思い起こしながら読み進んでいくと思うんですよね。
状況は違うのですが、「仮面病棟」と似通った構造を持った作品になっています。
だから、「仮面病棟」で売りのサプライズの仕掛けをどう変えるか、というのが腕の見せどころとなってくるのだと思うのですが、そのあたり、「時限病棟」の仕掛けにはニヤリとしてしまいました。
「仮面病棟」と「時限病棟」は対になる作品なんですね。
知念さんの他の作品も読んでみたいですね。(いつになるかわかりませんが......)
<蛇足1>
「仮面をかぶっていたんだよ。ハロウィンとかでかぶるような気持ち悪いやつを。……ピエロの仮面だった」(69ページ)
ハロウィンでピエロ? ちょっとイメージがなかったのですが、わりと人気の仮装のようですね。
<蛇足2>
「占いに興味が無くても、自分の星座ぐらい知っているはずです。」(302ページ)
こういうセリフが出てきますが、意外と知らない人多いと思うんですが......
地下迷宮の魔術師 ロンドン警視庁特殊犯罪課 3 [海外の作家 あ行]
<カバー裏あらすじ>
午前3時、殺人課のステファノポウラス警部の電話で、ぼくはたたき起こされた。「まっとうな警官なら仕事にとりかかる時間だよ」若い男の死体が、地下鉄ベイカー・ストリート駅の構内で発見されたのだという。すぐに駆けつけて調べてみると、魔法で作られた陶器のかけらで刺されていた。こんな時間になぜ、どうやって地下鉄に入りこんだのか? 捜査を続けるうち、ぼくは古都ロンドンの地下迷宮へと迷いこんでいった……
「女王陛下の魔術師」 (ハヤカワ文庫FT)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
「顔のない魔術師」 (ハヤカワ文庫FT)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
に続くシリーズ第3弾。
前作「顔のない魔術師」を読んだのが2017年12月なので、約2年半ぶりにシリーズを読みました。
もともとシリーズの設定が、パラレルワールドというか、現代のロンドンに、もう一つの神霊世界(?)のロンドンが二重写しにしている世界観となっているところ、今回はさらに地下世界が広がっているというぜいたくさ!
巻頭にロンドンの地図が掲げられ、各章の章題がロンドンの地名になっています。
これ、在ロンドンのこのタイミングで読んでよかったと思いました。
地名が馴染みのあるものが多く、わくわくして読むことができました。
でも、まさか実際のロンドンの地下鉄の駅やその近くに、地下道や地下室につながる経路は設定されていないでしょうねぇ(笑)。
具体的な駅名が記載されているので、ちょっと確かめに行ってみようかな。でも、仮にそんなところがあったとしても近づけないようになっているんだろうな。
こういうばかばかしい想像を巡らせるのも楽しいですね。
昔ながらの冒険小説的世界に浸れます。
もうひとつこの作品が楽しいのは語り口。
主人公であるぼく=ピーターの余裕のある語り口が魅力ですね。
ファンタジックな作品世界とこの語り口のバランスがなかなかいいです。
ピーター属する特殊犯罪課と普通の捜査課の面々、イギリス鉄道警察、さらにはFBIの特別捜査官まで出てきて捜査陣も賑やかですし、さらに魔術師に、川の女神に、台湾から来た道教の術士(マオイスト)まで登場して、どんどん作品の奥行きが拡がってきているようです。
楽しみ。
楽しみなんですが、シリーズはいまのところ、残すところ
「空中庭園の魔術師」 (ハヤカワ文庫FT)
だけになってしまいました。
原書ベースでは第8巻まで出ているようですので、続巻もぜひぜひ訳してください!
<蛇足1>
「ゲートから手の届くほんの少し先の壁に、外出用のボタンがあった。」(69ページ)
ドアを開ける際、壁に設置してあるボタンを押してから開ける仕組みがかなりあり、そのボタンのことをここでは「外出用ボタン」と訳してあるのですね。
たしかにあのボタン、日本語でなんと呼ぶのでしょうね? 英語ではそのまま Exit Button ですが。
<蛇足2>
ダイニング・クラブというのは、五〇年代から六〇年代にかけて、上品ぶった学生たちが破滅的な恋愛関係や、ロシア人をスパイしたり、現代の風刺作品を発明していないときにおこなっていた余暇の過ごし方だ。(95ページ)
ちゃんと「~たり、~たり」となっていないことを置いておくとしても、この文章わかりにくいですね。
破滅的な恋愛関係、ロシア人をスパイすること、現代の風刺作品を発明することのそれぞれの関係、つながりがわかりません。並列関係なのでしょうか? やはりちゃんと「~たり、~たり」を守った日本語にしておけばもう少しわかりやすくなったのではと思います。
金子司さんの訳は個人的にはとても読みやすいと思っているので、ここは少々残念です。
<蛇足3>
「お茶でもどうです? ヴァレンカのお茶の腕前はじつに信頼できますぞ。レモン入りのがお好みだとすればですがね」(102ページ)
うわぁ、イギリス人らしい嫌味たっぷりなセリフだ、と笑ってしまいました。
ヴァレンカというのは、スラヴ系のなまりがある、ロシア人かウクライナ人だろうとされている住み込みの看護婦です。
イギリスでは基本的にレモンティーを飲みませんので、このセリフの嫌味がエスカレートしますね(笑)。
このあと
「ヴァレンカが紅茶を運んできた。ロシア流に、ミルクは入れずにレモンを添え、グラスで出された。」(104ページ)
というシーンが続きます。
あ、ロシアン・ティーというと日本ではジャムを入れた紅茶のことを指しますが、あれはおそらく日本だけで、イギリスではロシアン・ティーはレモンティーを指します。
<蛇足4>
相手がいかがわしい上流階級を演じるつもりなら、こちらもコックニーなまりの警官の一線を越えるつもりはない。(102ページ)
イギリスに階級が根強く残っていることを示すエピソードですね。
なまりや使う単語で階級が知れます。「イングリッシュネス」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)で触れられている通りですね。
<蛇足5>
「国立近現代美術館テイト・モダンのお膝元となった場所に。この建物は有名な赤い電話ボックスを設計したのと同じ男によって、もともとは石油を燃料とした火力発電所として建設された。」(151ページ)
テート・モダンと電話ボックスが同じ人の設計とは知りませんでした。(余計なことでですが、電話ボックスだと日本語では設計といわないような気がしますね......)
調べてみると、サー・ジャイルズ・ギルバート・スコットという人のようです。
<蛇足6>
主人公であるぼくは、MRI検査を受けてこう書いています。
「ぼくはこの機械に慣れてきたに違いない。磁気コイルがハンマーのように打ちつける音にもかかわらず、ぼくはスキャンの最中にすっかり眠りこんでいた。」(402ページ)
MRI。海堂尊のバチスタシリーズでいう「がんがんトンネル」ですね。
たしかにうるさいことはうるさいのですが、実はぼくも受けたとき寝てしまった記憶が......
意外とうるさくても眠れるものですよ(笑)。
原題:Whispers Under Ground
作者:Ben Aaronovitch
刊行:2012年
翻訳:金子司
それでもデミアンは一人なのか? [日本の作家 森博嗣]
それでもデミアンは一人なのか? Still Does Demian Have Only One Brain? (講談社タイガ)
- 作者: 森 博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/06/21
- メディア: 文庫
<裏表紙あらすじ>
楽器職人としてドイツに暮らすグアトの元に金髪で碧眼、長身の男が訪れた。日本の古いカタナを背負い、デミアンと名乗る彼は、グアトに「ロイディ」というロボットを探していると語った。
彼は軍事用に開発された特殊ウォーカロンで、プロジェクトが頓挫した際、廃棄を免れて逃走。ドイツ情報局によって追われる存在だった。知性を持った兵器・デミアンは、何を求めるのか?
ここから8月に読んだ本の感想です。
森博嗣の新しいシリーズ、WWシリーズの第1作です。
前までのWシリーズとはかなり近しい地続きですが、登場人物が変わっているのですね、とあらすじを読んで思ったのですが、そうではありませんでした。
Wシリーズのハギリとウグイたちが名前を変えて登場しているようです。
あらすじのグアトがハギリ、ロジがウグイですね。
ハギリは、引退して穏やかな生活を送ろうとしているようですが、そうは問屋が、いや森博嗣と読者が卸しませんね(笑)。
Wシリーズとの間でどのくらい時間が空いているのかわからないのですが(なにしろこの世界では基本的に人間は死ななくなっていますから)、シームレスにすっと世界に入っていけます。
タイトルにもなっているデミアンがもたらした騒動で、グアトの思索がぐっと進んだようです。
「人間ではないもの、人間が作ったものが、人間以上に人間らしくなり、人間以上に正しく生きる世の中が来る。きっと来るだろう。否、もう来ているのかもしれない。
子供が生まれないというだけのことで、人間は後れを取った。歩みを止めたのかもしれない。つまり、進化していない、ということだ。その間に、ウォーカロンも人工知能も人間を追い越していくだろう。彼らは常に生まれ変わっている。人よりも早く進化しているのだ。」(210ページ)
これは、なかなかの世界観ですよね。そしてそれをグアトは美しいと捉える。うーん、すごい。
「電子空間に生を受けた者たちは、皮膚のようなものはない。どこからが内側で、どこからが外側といった位置的な境界が明確ではないからだ。電子の生物たちは、個という概念も将来曖昧である。これも内か外かが定義できないためだ。」(225ページ)
と人間と電子空間の存在の違いを確認した後でもたらされる思索はスリリングですね。
「トランスファが活動することが、共通思考そのものだともいえる。」(228ページ)
だからこそ、
「ある一人の人間を、電子社会へ招き入れる。その人は刺激を受けて、つぎつぎに新しい発想をしました。このことが、まるでトランスファの裏返しであり、似ていると思います。先生は、向こうから見れば、トランスファなのです。」(234ページ)
というオーロラのセリフとなるわけですね。
停滞し技術が飽和している世界は、突破するために発想というアクシデントに期待するしかない。
これには時間がかかる。
「だから、全体の時間を遅く設定したんだ」「マガタ博士の共通思考が、これまでの人類史の時間に比べて、遅い速度設定になっているように感じたのですが、そこで調節しているというわけですよ」(236ページ)というグアトのセリフには眩暈がしそうです。
マガタ博士すごい。
そして森博嗣、すごい。
デビュー作である「すべてがFになる」 (講談社文庫)の頃から、ここまで考えておられたのでしょうか?
否、この質問の仕方は正しくないですね。
きっとデビューに関係なく、森博嗣さんが以前から考えてこられた全体像を、さまざまな作品を通して少しずつ小出しに(?) されていっているだけなのでしょうね。
ここからさらにどこへ連れて行ってくれるのか、とても楽しみです。
Wシリーズのように英語タイトルと章題も記録しておきます。
Still Does Demian Have Only One Brain?
第1章 一つの始まり One beginning
第2章 二つ頭の男 Two headed man
第3章 三つの秘策 Three secrets
第4章 四つの祈り Four prayers
今回引用されているのは、アイザック・アシモフ「ファウンデーション」 (ハヤカワ文庫SF)です。
創元推理文庫版では、「銀河帝国の興亡」というタイトルですね。
<蛇足1>
森博嗣の作品では、たとえば「コンピューター」は「コンピュータ」と表記されています。
なので、カタカナ表記の語末の長音符号(音引き)は書かないのかな、と思っていたら、
71ページに「コーヒーを淹れましょうか?」
となって、あれっと思いました。
ほかにも、
インタビュー(114ページ)
パトカー(148ページ)
スロー(158ページ)
スキー(260ページ)
などで語末の長音記号が出てきます。
また、ロータリィ(194ページ)、エネルギィ(200ページ)、ストーリィ(229ページ)のような表記もあります。
一方で、ディナ―ではなくディナ(148ページ)、シャッターではなくシャッタ(同148ページ)、サーバーではなくサーバ(158ページ)となっています。
語末の長音符号については以前にもあれっと思ったことがあって、
「ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity?」 (講談社タイガ)(感想ページへのリンクはこちら)では、トウキョー
「天空の矢はどこへ? Where is the Sky Arrow?」 (講談社タイガ)(感想ページへのリンクはこちら)では、シチュー
と書かれていたことについて触れました。
これ、今回改めて調べて(?) みると、工学分野ではごく普通の表記で、JIS(日本工業規格)や学会・協会でも標準となっている書き方があるようです。
「2音の用語は長音符号を付け、3音以上の用語の場合は長音符号を省く」というルールらしいです。
森博嗣さんはこれを採用しているのかな?
コーヒー、スロー、スキー、シチューは2音なので長音符号が使われているのですね。
パトカーは、パトロールカーの略で合成語。本来のカーが1音だからでしょうね。
インタビューは3音以上ですが、スペルの違いかな? ロータリィなどの「ィ」表記もスペルによるのでしょうね。
でも、ディナ、シャッタ、サーバあたりは2音なので長音符号を使うところなんじゃないかな、なんて思ったり。
ちなみに、1991年に発表された内閣告示「外来語の表記」では「英語の語末の-er,-or,-arなどに当たるものは原則としてア列の長音とし長音符号を用いて書き表す」とされています。これを受けてJISのガイドラインも2005年以降は「長音は用いても省いても誤りではない」という内容に修正されているそうです。
<蛇足2>
カタカナ表記ということでは、
クルマやキュースというのも出てきます。
今と時代も違いますし、ここに出てくる車や急須はわれわれの思い描く車や急須とは違うのですよ、ということを暗示しているのでしょうか?
<蛇足3>
帯に、講談社タイガの近刊案内が書かれているのですが、
小島正樹の「ブラッド・ブレイン2 闇探偵の暗躍」 (講談社タイガ)が、「ブレッド・ブレイン2」と誤植されているのに笑ってしまいました。
パン探偵? それはそれでおもしろいかも。
TharnType その2 [タイ・ドラマ]
タイのボーイズラブ・ドラマ「TharnType」の感想の続きです。
(その1とその2があまりにもアンバランスになるので、その1 を一旦公開したあと修正して一部その2に組み入れました。すでにご覧になった方にとっては一部重複してしまうことになってすみません)
ストーリーは......
大学生活を始めた Type。サッカー部で活躍できそうで、また、寮の同室 Tharn もいいやつで、いい大学生活が送れそうだ、と思っていたら、Tharn がゲイだと判明。
ゲイが嫌いだと公言し、ゲイをディスる言動を繰り返してきた Type としては、ゲイとは一緒に暮らせないと憤慨。
部屋替えをしようとしますがダメで、Tharn を追い出そうと画策。
この Type の追い出し作戦が、もう小学生のケンカなみの幼稚さで笑えます(とはいえ、やられたら相当迷惑だし、嫌な行為ですけどね)。
対する Tharn は本当にいいやつで、反撃らしい反撃はしない。ちょっとしたいたずら程度のことはしますけどね。
次第に、Type の抱えるトラウマ(この単語あまりにも安直に使われるのでよくないな、と思うのですが、便利なので使ってしまいました)、ゲイ嫌いになった理由の片鱗が少しだけわかってきます。
これらのエピソードでも、Tharn はすごくいいやつなんですよね。
次第に Type の気持ちにも変化が.....
で、Type (の気持ち)が軟化したところで、一気に縮まるんですよね、距離が。
しかも、性的に。
仕掛けるのは Tharn なんですけど(機を見るに敏ということでしょうか?)、ちょっとびっくりです。
「俺のテクニックが気に入ったと正直に言えよ」
なんて恐ろしいセリフが飛び出します(EP3)。
そんななか、Type はゲイの先輩と揉め事を起こしてしまい、ネット上でもさんざん叩かれ窮地に。
Type は Tharn にトラウマを打ち明ける。
Tharn は Type を助けてやる。Tharn オトコマエです。
でね、でね、ここがすごいところなんですが、お礼に? Type は Tharn と寝るというのですよ。借りは作りたくないと言って(EP4)。
いやあ、この展開はあり得ないですよ、普通。
つまりは、この段階までにはすでに Type の気持ちは Tharn に向いていた、とそういうことですよね。
しかし、お礼に寝るって、ある意味失礼な申し出ですよね......
Tharn は Type のことが最初から好きだったようなので、渡りに船、なのかもしれませんが、あくまで Type は自分勝手というのがポイントなんでしょうね(Tharn が Type のことを好きだというのは Type に伝わってはいましたが)。
でまあ、身体の関係ができてしまったわけで、1回だけだぞ、なんて言っていても1回だけで終わるわけもなく......
で、ぐっと仲が進展する。
いいのか、それで と思わないでもないですが、この物語世界だとありなんでしょうね。
Type はこのあと女の子と事に及ぼうとしてできなかったりして、すっかり Tharn 一筋みたいになっちゃいますし。
その後は、Tharn が久しく友達を連れていっていないバンド演奏先であるバーに Type を連れて行くわ(EP5)、寮を出て二人で暮らすことにするわ(EP7)、だまし討ちみたいに Type が Tharn の家族と会わされるわ(EP9)......
2人の仲を疑う Techno を躱しつつもほのめかしたり(EP7)、 Techno に現場?を押さえられたり(EP9)、 Lhong に付き合っていることを知らせたり......(EP9)
お決まりの嫉妬とかも出てきますし......観ている方は微笑ましい。
しかし、「2gether」 の Sarawat といい、この 「TharnType」 の Tharn といい、惚れた弱みというのか、結構相手がわがままで自分勝手でも、受け入れちゃうんですよね。
ボーイズラブではこういうパターンが多いのでしょうか?
こうやってラブラブ(死語)の世界に浸っていくのかなぁ、と思っているとですね、このドラマ、とんでもない展開を見せます。
Tharn と Type の仲を引き裂こうという陰謀がめぐらされるのです。
たかが大学生の恋愛に「陰謀」とは大げさな、と思われるかもしれませんが、まさに陰謀と呼びたくなるような黒さです。いきなりのダークサイド。
こんなストーリー展開になるとは......
この流れに、 陰のある弟の Tar が関係してくるのですよ。
Tar はもともと Tharn とつきあっていたんですね。
兄の Tum が、Lhong と Tharn のバンドのギターをやっていて、その関係で Tar と Tharn は知り合いになって、つきあったと。でも結局は別れてしまった。
道理で「Love by chance」で、兄の Tum が Type にやたらと絡んでいたわけですよ。直接 Tharn には聞けないから。
陰謀の黒幕(?) の見当はかなり早い段階でつくと思うのですが、さすがにここでその正体を明かしてしまうのはミステリではないにせよエチケットに反すると思うので伏せておきます。
ふわっとしたボーイズラブの穏やかな世界に浸っていると思ったら、思いきり黒い世界が隠されていたとは。
EP11、EP12の怒涛の展開はすごいです。
特に、EP11のエンディングで黒幕の正体がはっきりしてからの EP12 は圧巻。
それまでにちょっとしたギミックが仕掛けられていたこともEP12 でわかります。
やはりクライマックスは、黒幕との対決シーンですね。
いまこの感想を書こうとして観返したのですが、すっかり見入ってしまいました。
こういう話が好きだというと人格を疑われそうですが、好きです。
本筋とずれるのですが、個人的に気に入ったシーンとして、Type が帰省して旧友 Kom に会うシーンがあります(EP7)。
海岸近くのバー(?) でゲイに声をかけられたあとのシーンですが、その後の Type に大きな影響を与えるシーンだと思います。
最後に、視聴者サービスでしょうね、時間をぐっと3年進めて「Love by chance」よりもあとの頃に設定して、Pete と Tin が登場します。
このとき、Tin はすっかり Can とカップルが成立しているような感じで話していますね(笑)。
個人的に気に入った Lhong 役の Kao が歌う主題歌(?) も気に入りました。
Official MV ではなく、英語の歌詞がついた動画を引用しておきます(オフィシャルMVに映像に歌詞をのっけてあるだけのようですが)。
というのも、この歌詞、結構意味深だからです......
物語を観終わってから、歌詞に注目してみてください。
このシリーズ、好評だったようで、シーズン2が予定されています。
(その1とその2があまりにもアンバランスになるので、その1 を一旦公開したあと修正して一部その2に組み入れました。すでにご覧になった方にとっては一部重複してしまうことになってすみません)
ストーリーは......
大学生活を始めた Type。サッカー部で活躍できそうで、また、寮の同室 Tharn もいいやつで、いい大学生活が送れそうだ、と思っていたら、Tharn がゲイだと判明。
ゲイが嫌いだと公言し、ゲイをディスる言動を繰り返してきた Type としては、ゲイとは一緒に暮らせないと憤慨。
部屋替えをしようとしますがダメで、Tharn を追い出そうと画策。
この Type の追い出し作戦が、もう小学生のケンカなみの幼稚さで笑えます(とはいえ、やられたら相当迷惑だし、嫌な行為ですけどね)。
対する Tharn は本当にいいやつで、反撃らしい反撃はしない。ちょっとしたいたずら程度のことはしますけどね。
次第に、Type の抱えるトラウマ(この単語あまりにも安直に使われるのでよくないな、と思うのですが、便利なので使ってしまいました)、ゲイ嫌いになった理由の片鱗が少しだけわかってきます。
これらのエピソードでも、Tharn はすごくいいやつなんですよね。
次第に Type の気持ちにも変化が.....
で、Type (の気持ち)が軟化したところで、一気に縮まるんですよね、距離が。
しかも、性的に。
仕掛けるのは Tharn なんですけど(機を見るに敏ということでしょうか?)、ちょっとびっくりです。
「俺のテクニックが気に入ったと正直に言えよ」
なんて恐ろしいセリフが飛び出します(EP3)。
そんななか、Type はゲイの先輩と揉め事を起こしてしまい、ネット上でもさんざん叩かれ窮地に。
Type は Tharn にトラウマを打ち明ける。
Tharn は Type を助けてやる。Tharn オトコマエです。
でね、でね、ここがすごいところなんですが、お礼に? Type は Tharn と寝るというのですよ。借りは作りたくないと言って(EP4)。
いやあ、この展開はあり得ないですよ、普通。
つまりは、この段階までにはすでに Type の気持ちは Tharn に向いていた、とそういうことですよね。
しかし、お礼に寝るって、ある意味失礼な申し出ですよね......
Tharn は Type のことが最初から好きだったようなので、渡りに船、なのかもしれませんが、あくまで Type は自分勝手というのがポイントなんでしょうね(Tharn が Type のことを好きだというのは Type に伝わってはいましたが)。
でまあ、身体の関係ができてしまったわけで、1回だけだぞ、なんて言っていても1回だけで終わるわけもなく......
で、ぐっと仲が進展する。
いいのか、それで と思わないでもないですが、この物語世界だとありなんでしょうね。
Type はこのあと女の子と事に及ぼうとしてできなかったりして、すっかり Tharn 一筋みたいになっちゃいますし。
その後は、Tharn が久しく友達を連れていっていないバンド演奏先であるバーに Type を連れて行くわ(EP5)、寮を出て二人で暮らすことにするわ(EP7)、だまし討ちみたいに Type が Tharn の家族と会わされるわ(EP9)......
2人の仲を疑う Techno を躱しつつもほのめかしたり(EP7)、 Techno に現場?を押さえられたり(EP9)、 Lhong に付き合っていることを知らせたり......(EP9)
お決まりの嫉妬とかも出てきますし......観ている方は微笑ましい。
しかし、「2gether」 の Sarawat といい、この 「TharnType」 の Tharn といい、惚れた弱みというのか、結構相手がわがままで自分勝手でも、受け入れちゃうんですよね。
ボーイズラブではこういうパターンが多いのでしょうか?
こうやってラブラブ(死語)の世界に浸っていくのかなぁ、と思っているとですね、このドラマ、とんでもない展開を見せます。
Tharn と Type の仲を引き裂こうという陰謀がめぐらされるのです。
たかが大学生の恋愛に「陰謀」とは大げさな、と思われるかもしれませんが、まさに陰謀と呼びたくなるような黒さです。いきなりのダークサイド。
こんなストーリー展開になるとは......
この流れに、 陰のある弟の Tar が関係してくるのですよ。
Tar はもともと Tharn とつきあっていたんですね。
兄の Tum が、Lhong と Tharn のバンドのギターをやっていて、その関係で Tar と Tharn は知り合いになって、つきあったと。でも結局は別れてしまった。
道理で「Love by chance」で、兄の Tum が Type にやたらと絡んでいたわけですよ。直接 Tharn には聞けないから。
陰謀の黒幕(?) の見当はかなり早い段階でつくと思うのですが、さすがにここでその正体を明かしてしまうのはミステリではないにせよエチケットに反すると思うので伏せておきます。
ふわっとしたボーイズラブの穏やかな世界に浸っていると思ったら、思いきり黒い世界が隠されていたとは。
EP11、EP12の怒涛の展開はすごいです。
特に、EP11のエンディングで黒幕の正体がはっきりしてからの EP12 は圧巻。
それまでにちょっとしたギミックが仕掛けられていたこともEP12 でわかります。
やはりクライマックスは、黒幕との対決シーンですね。
いまこの感想を書こうとして観返したのですが、すっかり見入ってしまいました。
こういう話が好きだというと人格を疑われそうですが、好きです。
本筋とずれるのですが、個人的に気に入ったシーンとして、Type が帰省して旧友 Kom に会うシーンがあります(EP7)。
海岸近くのバー(?) でゲイに声をかけられたあとのシーンですが、その後の Type に大きな影響を与えるシーンだと思います。
最後に、視聴者サービスでしょうね、時間をぐっと3年進めて「Love by chance」よりもあとの頃に設定して、Pete と Tin が登場します。
このとき、Tin はすっかり Can とカップルが成立しているような感じで話していますね(笑)。
個人的に気に入った Lhong 役の Kao が歌う主題歌(?) も気に入りました。
Official MV ではなく、英語の歌詞がついた動画を引用しておきます(オフィシャルMVに映像に歌詞をのっけてあるだけのようですが)。
というのも、この歌詞、結構意味深だからです......
物語を観終わってから、歌詞に注目してみてください。
このシリーズ、好評だったようで、シーズン2が予定されています。
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