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憂国のモリアーティ 9 [コミック 三好輝]


憂国のモリアーティ 9 (ジャンプコミックス)

憂国のモリアーティ 9 (ジャンプコミックス)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
犯罪卿の過去それは禁断の果実──
“ジャック・ザ・リッパー事件”を仕組んだ張本人、大英帝国一のメディア王・ミルヴァートン。
事件以来、ウィリアムを警戒しその周辺を探っていた彼は、貧民街の“とある少年”が貴族相手に起こした、“裁判”へとたどり着く…。
ウィリアムとルイスの過去の記録が今、解き明かされる──。


シリーズ第9巻。
表紙は、フレッドですね。このキャラクター好きなので、今回の表紙はうれしいですね。

#32 モリアーティ家の休日 (The Tea Party)
#33、34 ロンドンの証人 第一幕、第二幕(The Merchant of London Act1, Act2)
#35 ロンドンの騎士 第一幕(The White Knight of London Act 1) 
を収録。

「モリアーティ家の休日」は、週末屋敷でティーパーティを開かないといけなくなってしまったモリアーティ家を描きます。
見目麗しい男性の揃うモリアーティ家を訪れ、口説く(?)チャンスと張り切るご令嬢たちをどう捌くか、というのがテーマです。
モリアーティ家の打ち合わせで「皆一丸となり力を合わせ…この難局を必ず乗り越えなければならない……」って、そんな大層な話ですか!? まあ、社交界のための会など、大層には違いないけど。

「ロンドンの証人」は、英文タイトルが「The Merchant of London」であることからわかりますとおり、「ヴェニスの商人」の本歌取りですね。
英文タイトルと違って、日本語タイトルが「証人」になっているのもおもしろい。
「肉を1ポンド切り取る際には一滴の血を流す事も認められない」という、あの「ヴェニスの商人」に出てくる、世界で一番有名な裁判をひっくり返そうというのですから、気宇壮大です。おもしろい。
ちゃんとひっくり返しています。
この作品のポイントとなる点については、いままで読んだこと、観たことないのですが、おもしろい着眼点で、立派ですね。
ただ、あえて難点を挙げておくと(ネタバレですので、伏字にします)、舞台はイギリスですから、人体の肉は "flesh" で、たしかに動物の肉も "flesh" と言いますが、レストランで肉を注文する際に "flesh" という単語は使わないと思いますので、英語で論証がきちんと成立するかどうか微妙かもしれません。日本語ならではの論証ということになるでしょうか。
この裁判は、若き頃、というか幼い頃のウィリアムとルイスの起こした裁判で、モリアーティたちに疑いを抱いたメディア王・ミルヴァートンが、その記録に探りを入れます。
切り裂きジャック事件で図らずも対決したミルヴァートンとモリアーティたちですが、いよいよ本格的な対決の幕開きとなるようです。

「ロンドンの騎士」は「憂国のモリアーティ 10」 (ジャンプコミックス)に続きますので、感想はまとめてそちらで、と考えていますが、平等実現を目指す下院議員ホワイトリーが登場します。
手段は違えど、モリアーティたちと志が同じ、というわけで、お手並み拝見。
もちろん、ミルヴァートンも逆の立場で絡んできそうです。
楽しみです。







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Xの悲劇 [海外の作家 エラリー・クイーン]


Xの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫)

Xの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
鋭敏な頭脳を持つ引退した名優ドルリー・レーンは、ブルーノ地方検事とサム警視からニューヨークの路面電車で起きた殺人事件への捜査協力を依頼される。毒針を植えつけたコルク球という前代未聞の凶器を用いた大胆な犯行、容疑者は多数。名探偵レーンは犯人xを特定できるのか。巨匠クイーンがロス名義で発表した、不滅の本格ミステリたるレーン四部作、その開幕を飾る大傑作!


創元推理文庫で始まった中村有希さんによるエラリー・クイーンの新訳は、
「ローマ帽子の謎」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)から「アメリカ銃の謎」 (創元推理文庫)まで国名シリーズが6冊順調に進んだあと「エラリー・クイーンの冒険」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)になり、その次はこの「Xの悲劇」 (創元推理文庫)でした。

旧訳版でも読んでいるのですが、今回新訳で読んで、いろいろと発見がありましたね。
そもそも記憶力が壊滅状態なので......
覚えていることは、
1) 路面電車が現場だったこと
2) 凶器が印象的だったこと
3) 犯人を突き止める論理を楽しめたこと
4) ダイイングメッセージが印象的だったこと
そして、世界ベスト級の傑作と名高い「Yの悲劇」よりも、「Xの悲劇」の方がよいのではないかと思っていたこと。

イメージですが(あくまでイメージです)、エラリー・クイーン登場の国名シリーズとドルリー・レーン登場の悲劇シリーズの印象を比較すると、国名シリーズは軽妙で乾いた感じ、悲劇シリーズは重厚、重苦しい感じでした。
たしかに重苦しさはあったのですが、再読してみて、お茶目というのか、重厚とは言い切れないものを感じました。

そもそものドルリー・レーンの人物設定自体が、元シェイクスピア俳優というところから重厚さを感じがちですが、軽やかなものになっていたのですね。
朝六時半に起きて三キロ泳いだりしていますし(178ページ)、自分の屋敷ハムレット荘で、ほぼ全裸(腰に白い布を巻いているだけ)で日光浴しているシーン(396ページ)でも、肉体美が紹介されます。ふーん、そういう設定だったんだ。
老俳優ってことで、年老いたよぼよぼ爺を想像してしまっているのですが、年齢は60歳。そんな歳でもないですしね。

だいたい、ドルリー・レーンがサム警視に変装して勝手に捜査してしまう(~206ページ)、なんて!(覚えていなかった)
ドルリー・レーンの耳の状況については「いまでは自身の声色を思いどおりに調節することさえ困難なほど悪化し」(15ページ)と冒頭の紹介のところで書かれていて、耳がまったく聞こえないようです。顔を似せることだけでも、化粧による扮装では限界あると思いますが、それに加えて、耳が聞こえないのに、どうやってサムの話し方をまねしたんだ!? 無理だろう、と思えるところからして、この作品が重厚さを狙ったものではないことがわかりますよね。
エラリー・クイーンは、まじめな顔してふざけているのですね、悲劇シリーズでは、きっと。
だいたい作者名も最初はバーナビー・ロスとしていて、覆面かぶってエラリー・クイーンと対決してみせた(「読者への公開状」480ページ~)、というのですから、そもそも遊びっ気満載だったんですよね。

ブルーノ地方検事が
「クォド・エラト・なんとかかんとか」(235ページ)
なんて、エラリー・クイーンを意識したかのようなセリフをいってふざけるのもその例ですよね。

また聞きのまた聞きの、しかもうろ覚えで恐縮ですが、どこかで、三島由紀夫がドルリー・レーンのことをきざだと言っていた、というのを読んだ覚えがあります。
昔は、ドルリー・レーンをきざとは、不思議だな、と思ったのですが(エラリー・クイーンならともかくね)、今回「Xの悲劇」 を読み返して、ぎざだ、と思いました。
この人、俳優だったからでしょうか? 目立ちたがり屋ですし、いろいろとやってくれますよね。上の変装もそうですが。
「ブルーノさん、役者を相手にするなら、芝居がかった演出がつきものと心得てください」(178ページ)と、ドルリー・レーン自ら言うくらいですもんね。

事件の方は、やはり最初の事件の凶器が印象的ですよね。
ニコチン毒を利用したものですが、
「ニコチンは購入されたものではなく、シリングが言ってた例の殺虫剤を煮詰めた手作りのやつらしい。」(117ページ)
と説明されていて、なぜかはわからないのですが、この作品のニコチンは、殺虫剤ではなくタバコを煮詰めたりしてできたものだと思い込んでいました。なぜだろう?
注目はこの凶器、極めて扱いにくそうであること、ですよね。そのため、ある小道具が(ネタバレを避けるため何かは書きません)注目されるのですが、それでも扱うのは無理だと思いますし、作中で説明されるやり方でうまく殺せるのかどうか疑問を感じました。満員の路面電車で可能かな?

この路面電車での殺人ばかり覚えていたのですが、ほかにも殺人は繰り返されるのですね。
興味深いのはいずれも公共交通機関で起こること。
路面電車、フェリー、ローカル線。
ダイイング・メッセージは有名なものですが、ローカル線での事件のもので、その絵解きは、まあ、どこまで行ってもこじつけですね。
それでも、死ぬ間際にメッセージを残す理由づけがちゃんとされているのは、さすがですし、ラストでとても鮮やかな印象を残す仕掛けになっていて、かっこいい。

あまり覚えていなかったものの、謎解きが素晴らしかったことは印象に残っていたのですが(だからこそ「Yの悲劇」よりも、「Xの悲劇」の方が上だと思い込んでいたわけですが)、今回読み返してみたら、最初の事件の凶器もそうですが、あちこちに無理がある犯行だな、と思いましたね。
鮮やかな謎解きとかっこよさに気を取られて、前に読んだときには、その点に思いが至らなかったのかもしれません。
それでも、ミステリに無理はつきものですから、この作品が堅牢な本格ミステリだという見方には変わりはありません。

「Xの悲劇」 の新訳で、ずいぶん印象が変わりました。
シリーズの残りの新訳を読むのがとても楽しみになってきました。「Yの悲劇」と、改めて比べるためにも。


<蛇足1>
「ウッド様でしたらたしかに当行のお客様でいらっしゃいます。」(198ページ)
銀行員が警視に答える場面です。ここは丁寧な銀行員であれば、「当行」ではなく「弊行」と言ってほしいところですね。

<蛇足2>
「わたくしが? とんでもないことでございます」(362ページ)
執事が答えるシーンです。
「とんでもありません」とか「とんでもございません」と言わないあたり、ちゃんと躾の行き届いた執事ですね。素晴らしい。



原題:The Tragedy of X
作者:Ellery Queen(Barnaby Ross)
刊行:1932年
訳者:中村有希




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伯林星列 ベルリン・コンステラツィオーン [日本の作家 な行]


伯林星列 上 (徳間文庫)伯林星列 下 (徳間文庫)伯林星列 下 (徳間文庫)
  • 作者: 野阿 梓
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2011/05/07
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
一九三六年、ベルリン。留学中の十六歳の少年、伊集院操青は、叔父継央の歪んだ欲望の魔手に堕ちた。娼館に身を落とされ、若く美しい肉体にあらゆる性技を調教されることとなる。一方、二・二六事件が「成功」した日本では、内閣参議となった北一輝が元衆議院議員の黒澄幻洋に独ソ関係の調査という極秘任務を与え、ベルリンに派遣する。異才が満を持して放つ、最高の問題作品。<上巻>
黒澄は操青に告げる。君は生きた貢ぎ物になるのだ。身につけている技倆――性技を最大限に発揮して、私の目的のために活かしてもらう……。少年はその若さで絶望を知り、哲学的諦観を知っていた。大戦前夜。軋む列強の関係。ナチス内部の権力闘争。日本政府を掌握した皇道派と北一輝の思惑。暗躍するイギリス、ソ連の特務(スパイ)たち。時代の波に翻弄され続ける操青の運命は……!? <下巻>


野阿梓を読むのは久しぶりですね。
「兇天使」 (ハヤカワ文庫JA)(感想ページはこちら)以来、およそ8年ぶりです。
「兇天使」も、かなりがんばって読んだ感がありましたが、この「伯林星列」(上)(下) (徳間文庫)もがんばって読みました。正直いうと、相当苦労して読みました。

趣味が違う、ということなのでしょう、少年操青(みさお)の調教シーンが延々と続きまして、読むのがつらかった......
被虐、S&M、何と呼ぶのが適切なのか、ぼくにはわかりません。
物語上の要請は確かにあるのかもしれませんが、ここまで長々と繰り広げられるとちょっと堪らないですね。
しかも、事実なのか作者の創作なのかわかりませんが、
「ズクが属しているキクユ族の習俗の一つであった。少年時に、成人儀式の割礼(ベシュナイドゥング)のさい、亀頭包皮の上部のみを切りとり、下部は残すのである。その結果、彼らの陽物は異形をたもちながら発育する。すなわち亀頭下に異貌の肉垂れが下がっている形となるのだ。」(99ページ)
などとされている登場人物ズクが責め手として登場し、いや本当に読むのがつらかった。
(ちなみに、キクユ族というのはアフリカ東部、現在のケニアを中心とした地域に住む民族で、実在するようです)
この不思議な割礼はラストでも再び登場し、読者に強いインパクトを残すことになっています。
「まろびでた陽物(ファラス)は、まだ完全には怒張していなかったが、少年との情交への期待にか、すでに半ば弩形(ゆみなり)に反った亀頭下部から陰嚢にいたるまで、薔薇色と赤紫色とが斑になった、ある種の蜥蜴の肉垂れにも似た、鋸歯状の皮膜が垂れ下がっていたのである。」(396ページ)
うーん、まったくイメージできません。どういう形なんだろ?

この操青のエピソードがかなりの比重を占めているのでつらかったわけですが、このパート以外の部分は、二・二六事件が成功した日本を背景に、第二次世界大戦の行方がドイツを中心に描かれます。
ミューラーやアイヒマン、ハイドリヒという実在の人物も活躍(?) しますし、ベルリン・オリンピックなども印象的に登場します。
ソ連とドイツの駆け引きや戦況をめぐる各国の思惑が交差する展開は、面白かったですね。
こういうフィクションは好みなので、この部分だけで通してほしかったと思ってしまいましたが、それでは野阿梓の作品である意味がないのでしょうね......

また、第二次大戦ごろのドイツを舞台にしていますので、ユダヤ人問題から逃れることはできません。
「おそらく西欧社会には知られていないが、ユダヤ人社会の中にも根強い差別があるのだ。
 欧州、特に独逸や東欧諸国に住む東方ユダヤ人(オストユーゲン)はアシュケナージと呼ばれ、一般的にナチスの宣伝で、悪趣味な画などによって 戯画的に描かれる白人系ユダヤ人は、これである。
 だが、アシュケナージは、宗教的にはともかく、人種的には(ナチスの人種差別主義(ラシスムス)には皮肉にも反して)純正ユダヤ人ではない。すなわち、古代パレスティナの力国家喪失による民族乱離の道をたどって世界中に散らばった「旧約聖書」の民、セム族の末裔ではないのだ。そもそも、アシュケナージは、純正ユダヤ人が聖典としている「旧約聖書」「ゾハール」「タルムード」のうち、「タルムード」しか読まない。」(351ページ)
などという記載もあり、知らなった身にはたいへん勉強になりましたし、ユダヤ人問題が複雑であることをあらためて知る機会にもなりました。

タイトルの意味は、最後にわかるようになっています。
「うわべは関係のない人々が出会い、何ごとかをなし、そして別れてゆく。あたかも星座のように、実際には果てしもなく遠い距離をおいて互いに離れていたはずが、角度をかえてみれば、それは一つの関係に見えてしまうのだ。思えば、われわれもまた、この伯林という都市でそのようにして出会い、関係を持ち、そして別れてゆく宿命だったのかも知れぬな。地上の、伯林の星列(ベルリン・コンステラツィオーン)とは、きっとそのようなものなのだろう。」(380ページ)
これまでの来し方を考えると、感慨深い黒澄のセリフなのですが、黒澄と操青については離れているのではなく、実際に交差しているので、ちょっとたとえとしては適切ではないのではなかろうか、と思ってしまいました。

上下巻あわせて800ページを超える大作で力作なのだとは思いますが、残念ながら、趣味に合いませんでした......


タグ:野阿梓
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The Gifted Graduation EP12 [The Gifted [タイ・ドラマ]]

タイのドラマ「The Gifted Graduation」の感想の続きです。
今回はEP12 です。
例によってストーリーを明かしてしまうので、ご注意ください。




EP11の感想で書いた通り、Grace のポテンシャルが開花します。
おもしろい能力ですね。過去や未来の自分と通じ合えるというのですから。
校長の手により開花するというのがなんとも皮肉でよい仕上がり。
未来の立場から、校長の負けを宣告する、とは。
校長は、未来は現在によって変えられると抗弁しますが、さて、いわゆるタイムマシン・パラドックスはどう考えたらいいんでしょうね? (物語の本質ではないので、ドラマでは意識されません)

M6 The Gifted の他のメンバーの活躍も、いよいよ本格化。
プンによるウイルスを無効化する機械、オームの活躍......
そして注目すべきは、ポム先生と Chanon 先輩。
いいではないですか。
教育省はすっかり影を潜めて、基本的にはリッター ウィッタヤーコム校の人たちの戦いという構図。
当事者が多くて錯綜していたのが、エンディングへ向けて絞られてきました。よしよし。
構図は、校長 vs 残り全員 という感じへ。
校長がいかにも強大な敵なので、これくらいがいいのかも。

M6 The Gifted の仲間たちの仲も、なんだかよくなってきています。
明らかな和解のシーンも、プンによるウイルスを無効化する機械に合わせて登場。
Korn のキャラクターが有効に活かされています。
パンとウェーブはちょっと外れたところで活動していますが、EP7で爆発したパンへの不満は解消しているのでしょうか?? ちょっと気になります。

個人的になによりうれしかったのは、オームの活躍。
いやあ、EP12 のエンディングはオームの見せ場でしたねぇ。

ここまで校長が強大な敵として描かれると、つまるところ、校長を倒せばよいのでは = オームの能力を使って、最初から校長を消しちゃえばよかったのでは、と思ってしまうのですが......
それをさせないために、教育省とか出して風呂敷を拡げたのは、その目くらましだったりしたのでしょうか??
まあ、これは冗談に近い話ですけれど。

残るは EP13 だけで、相当盛り上がってきました。
ウイルス Nyx-88 に罹ってしまった生徒をどう治癒するか(プンの機械は治癒できるけれども、同時に能力も失うことになってしまう)など、まだまだ解決しないといけない問題点が数多く残っています。
残り1回でどうまとめてみせるか、とても楽しみです。


いままでの感想をまとめておきます。
The Gifted EP1
The Gifted EP2~4
The Gifted EP5~7
The Gifted EP8~13

The Gifted Graduation EP1~3
The Gifted Graduation EP4~6
The Gifted Graduation EP7
The Gifted Graduation EP8
The Gifted Graduation EP9
The Gifted Graduation EP10
The Gifted Graduation EP11





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dele 2 [日本の作家 本多孝好]


dele2 (角川文庫)

dele2 (角川文庫)

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/06/15
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
『dele.LIFE』(ディーリー・ドット・ライフ)は依頼人が死んだときに動き出す。託された秘密のデータを削除するのが、この会社の仕事だ。所長の圭司の指示を受け依頼人の死亡確認をする祐太郎は、この世と繋がる一筋の縁を切るような仕事に、いまだ割り切れないものを感じていた。ある日祐太郎の妹・鈴が通っていた大学病院の元教授から依頼が舞い込む。新薬の治験中に死んだ鈴。その真相に2人は近づくが……記憶と記録をめぐるミステリ、待望の第2弾。


「dele」 (角川文庫)(感想ページはこちら)につづくシリーズ第2弾です。
この「dele2」 (角川文庫)のエンディング、まるでシリーズ完結みたいな感じだったんです。「dele3」 (角川文庫)がすでに出ているので、シリーズが続いていくことについては安心できたのですが。

「アンチェインド・メロディ」
「ファントム・ガールズ」
「チェイシング・シャドウズ」
の3編収録の連作短編集です。

「アンチェインド・メロディ」の依頼者が削除してほしかったものは楽曲データ。依頼者の弟が売れてるバンド「コリジョン・ディテクション」のギター&ボーカルの横田宗介で、データは「コリジョン・ディテクション」の曲のものだった。
最後に圭司が解き明かす真相を、いいな、いい話だなと思ったのですが、いま考えるといい話と思ったのは間違い、いい話と思ってはいけない話なのかもしれませんね。
ミステリとして派手に仕立てることも可能なプロットですが、さらっとこういう形に落とし込んであるのは、やはり本多孝好ならではですね。

「ファントム・ガールズ」は事務所に女子中学生ナナミが乗り込んでくるところから始まります(厳密には乗り込んでくる少し前から、ですが)。ナナミは、今回の依頼人波多野愛莉(24歳)の隣人で、唯一の友人だった、と。
愛莉が消したかったのは何か、ナナミはそれとどう関係があるのか、などはエチケットとして触れません。
この作品60ページほどなのですが、話の展開が見事です。
コンパクトに、テンポよく、淀みなく、話が進んでいって、ああ本多孝好いいなぁ、と思える着地にたどりつきます。

最後の「チェイシング・シャドウズ」は本書の半分以上を占める中編で、言ってみれば、祐太郎自身の事案。
そしてこの事案は、祐太郎と『dele.LIFE』の、そして祐太郎と圭司の関係を変容させてしまう......
この作品もド派手な展開に持ち込むことが可能なプロットなのですが、非常に落ち着いた、静謐、とでも呼びたくなるような雰囲気を湛えています。
祐太郎のたどり着く境地こそが本多孝好を読む楽しみなんだと思えますが、同時にとても淋しい気持ちにもなります。淋しいけれど、決して嫌な感覚ではない。

このあと、どうやって「dele3」 (角川文庫)が成立するのか見当もつきませんが、とてもとても楽しみです。





タグ:dele 本多孝好
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雲をつかむ死 [海外の作家 アガサ・クリスティー]


雲をつかむ死〔新訳版〕 (クリスティー文庫)

雲をつかむ死〔新訳版〕 (クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
パリからロンドンに向かう飛行機のなかで、金貸し業を営む女性が変死体で発見された。その首には蜂に刺されたような傷があったが、偶然乗り合わせたポアロは、床から人工の毒針を拾い上げる。衆人環視の客室内で、誰がいつ、どうやって犯行に及んだのか? 大空の密室を舞台とした不可解な事件にポアロが挑む。


今年はアガサ・クリスティー デビュー100周年、生誕130周年を記念した早川書房のクリスティー文庫の6ヶ月連続新訳刊行第2弾です。
「予告殺人〔新訳版〕」 (クリスティー文庫)に続くのは、この「雲をつかむ死〔新訳版〕」 (クリスティー文庫)

この作品は、子供向けに訳されたもので読んだのが最初でした。
そのあと、大人向けのものを、創元推理文庫で読みました。その邦題は「大空の死」

今回新訳なった「雲をつかむ死」を読んで、驚きの連続でした。
いやあ、もう、あきれるくらい覚えていない。

飛行中の飛行機の中で殺される。
これは覚えていました。
蜂が飛んでいる。
これも覚えていました。
しかし、それ以外は、まったく......
飛行機の中で推理するんじゃないかとまで思っていたのです。全然違う。
さらに、覚えていないどころか、間違った記憶まで抱いていた......アナフィラキシーショックを扱った作品だと思い込んでいました。なぜだろう?

なのですごく新鮮に楽しめました。
また、ポワロ(クリスティー文庫の表記ではポアロですが、個人的趣味でポワロと書きます)もののなかではつまらないほうだ、と思い込んでいたのですが、いやいや、ちゃんと読みどころの多い作品ではないですか。
再読してよかったぁ。

飛行機の中で金貸しが死ぬ。
蜂が刺したのかと思われたが、毒針が発見される。さらに吹屋筒まで見つかって......
その後35ページの段階で、乗客はみんな飛行機を降ります(笑)。
ジャップ警部がやってきて、ポワロと組んで捜査にあたります。またフランス警察のフルニエ警部も捜査に加わります。
そうなんです。イギリス、フランス両国にまたがる捜査となります。
尋問、尋問で展開が単調になってしまうのを防ぐ効果があります。

単調になるのを防ぐといえば、美容院助手ジェーンのロマンスっぽい話も盛り込まれています。
またポワロはジェーンの相手役とおぼしき歯科医のノーマンに捜査の手伝いまでさせます。

真犯人が突き止められると、クリスティーが巧妙に犯人を隠していたことがわかります。
(解説で阿津川辰海がネタバレしつつ、技巧を解説しています)
たしかに、綺羅星のような傑作群と比べると分が悪いかもしれませんが、十分立派な作品だなあと思いました。
やっぱり、クリスティーはおもしろい!


<蛇足1>
「探偵小説家ってやつは、いつも警察を小ばかにしてるし……警察の仕組みがまるでわかってない。そうさ、連中が書くものに出てくるような調子で上役にものを言ったりしたら、明日にも警察からたたき出されてしまうでしょうよ。」(60ページ)
ミステリに対する割とよくある批判をジャップ警部が言うのですが、「白魔」 (論創海外ミステリ)(感想ページはこちら)を思い出してしまいました。

<蛇足2>
水着姿(だったと思います)の写真を見てたじろぐ老人にポワロがいうシーンがあります。
「それは、最近、太陽には肌のためになる作用があるということが発見されたせいですよ。これは、たいへんに都合がいいことだ。」(172ページ)
都合がいい、というところには苦笑ですが、いまでは太陽は避ける人が多いので、時代を感じさせますね。

<蛇足3>
作中の探偵小説家のセリフです。
「わたしにはわたしの推理方法があるからだよ、ワトソンくん。ワトソンくんなんて呼んでも気にしないでください。悪気はないんです。ところで、間抜けな友人を使うというテクニックがいつまでもすたれないのはおもしろい。個人的には、わたしはシャーロック・ホームズの物語はかなり過大評価されてると思うんです。あの作品のなかには、誤った論理が、じつにおどろくほどのたくさんの誤った論理がでているんだから」(245ページ)
なかなか大胆なコメントですね。
クリスティーの本音でしょうか?

<蛇足4>
「秩序と方法をもってひとつの問題にせまるなら、それを解決するのに困難などあるはずがないのです--絶対にね」(260ページ)
ポワロのセリフですが、ちょっと意味がつかみにくいですね。
「方法」は「ちゃんとした」方法くらいに語を補わないとわかりにくいですよね。

<蛇足5>
「ある事件をしらべたときに、全員がうそをついていたことがありますよ!」(314ページ)
ポワロのセリフです。
おもわず作品の発表年を調べてしまいました。
そうです。あれ、です、あれ。あれの方が「雲をつかむ死」より先に発表されていますね。


原題:Death in the Clouds
著者:Agatha Christie
刊行:1935年
訳者:田中一江





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教会堂の殺人 Game Theory [日本の作家 周木律]


教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
訪れた者を次々と死に誘う狂気の館、教会堂。失踪した部下を追い、警察庁キャリアの司は館に足を踏み入れる。そこで待ち受けていたのは、水死・焼死・窒息死などを引き起こす数多の死の罠! 司の足跡をたどり、妹の百合子もまた館に向かう。死のゲームと、天才数学者が求める極限の問いに、唯一解はあるのか!?


堂シリーズの第五作です。
今回は、このシリーズの中でも異色作です。
十和田只人のあやしさに拍車がかかっていますが、そこが見どころなのでしょうね。

書いておかなければと思うのは、本書はいわゆる館ミステリではない、ということです。
館で事件が起こって、その謎を解く、という展開ではありません。

なんだか、ミステリというよりも、ちょっと古めの子供向けの不思議なお話、あるいは不条理なお話にこういう感じの作品があったような。
ミステリとして期待する作品とは、かけ離れたものになっていると言わざるを得ないと思います。
あらすじに「死のゲーム」とありますが、まさにそれが描かれているだけ、です。

残念ながら、ぼくはこの作品に否定的な立場ですが、作者は文庫版あとがきの中で
「物語がこんなことになってしまったのではなく、こういうふうに物語が動くからこそ、シリーズは全体として成立する、いやむしろそうでなければ成立しない、と強く信じているのだ」
と書いておられるので、以降、お手並み拝見です。←偉そうなコメントですみません。

「このシリーズがどこに向かっていくのか、興味あります!」と前作
「伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~ 」(講談社文庫)」の感想で書きましたが、方向性によっては読まなくてもいいかな、と思えてきましたね、この「教会堂の殺人 ~Game Theory~」 (講談社文庫)の感じだと。
とはいっても、読むとは思いますが。



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The Gifted Graduation EP11 [The Gifted [タイ・ドラマ]]

タイのドラマ「The Gifted Graduation」の感想の続きです。
今回はEP11です。
例によってストーリーを明かしてしまうので、ご注意ください。




EP10で、校長がなんとも強大な敵として大きく再クローズアップされました。
こんなに強大では、勝てないんじゃと思えるほど......

EP11の前半は、Grace、Time、Third たちの活躍です。
活躍、というよりは、活動、程度の表現の方がふさわしいかもしれませんね。
Grace の能力が発揮され始めますが、それがどういう能力なのか、今一つわからないように進んでいきます。
ここではないどこかに意識(?) が飛び、誰かに乗り移られたようになっているのですが、さて、どういう能力なのでしょうね?
その乗り移られた Grace は、オームに白羽の矢を立てたよう。うむ、目の付け所がいいですね。
オームは自然に周りに相談しますしね。
Grace はオームに、プンに相談するように告げます。

一方で、校長の野望 = 生物兵器ともいえるウイルス Nyx-88 を使って、The Gifted 全体を支配下に置き、言うなりにさせようという陰謀が明らかに。
パンとウェーブは校長の魔の手にかかり、自分たちはウイルス感染させられてしまいます。
仲間をウイルス感染させないことと引き換えに、校長の言うことを聞くという取引を。

なんとかしなければと仲間と話しているオームのところへ、パンとウェーブがやってきて、こうするしかない、と。
でも、オームは Grace たちが入手した謎の図面をもとに、パンプンとウイルスを無効化する機械(!) を作って校長に対抗しようと......(まあ、オームは頼むだけ、ですけどね)
<<間違って、プンと書くべきところをパンと書いていました。すみません>>

次回以降 Grace のポテンシャルがフル回転しそうです。
また、ある意味無力化されたようなパンとウェーブとは別に、M6 The Gifted の他のメンバーが活躍しそうなのも楽しみです。
残るはEP12 と EP13 の2回だけ。
どう話を転がしてくれるのか、ワクワクしながら待ちます。


いままでの感想をまとめておきます。
The Gifted EP1
The Gifted EP2~4
The Gifted EP5~7
The Gifted EP8~13

The Gifted Graduation EP1~3
The Gifted Graduation EP4~6
The Gifted Graduation EP7
The Gifted Graduation EP8
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Kiss [タイ・ドラマ]

タイのドラマ「Kiss」の感想です。



「The Gifted Graduation」の放送が始まっていたので、その前編である「The Gifted」の感想を先に書きましたが、「He is coming to me」(感想ページへのリンクはこちらこちら)の次に観たのがこの「Kiss」です。

SOTUS」、「SOTUS S」 を観て気になっていた俳優 New の出演作を観ようと。

「Dark Blue Kiss」という作品がとても評判がよさそうなので、それを観ようと思ったのですが、
「Kiss」
「Kiss me again」
「Dark Blue Kiss」
と続くシリーズだというので、順に観てみることに。
というわけで、「Kiss」です。
「Kiss the series」と書かれていることが多いようですが、the series って連続ドラマであることを示すだけなので、タイトルとしては「Kiss」なのかな、と思います。

2016年1月から4月にかけて GMM 25 で放映されたようです。
(これまたいつものように、MyDramaListの情報です。)
YouTube に、GMM TV によりアップされています。
EP1 から EP16 まで、各エピソード50分くらいです。
YouTubeでは、各エピソード5分割されていまして、合計80本ですね。
残念ながら日本語の字幕はなく、英語字幕で観ました。
YouTube ↑ のリンクは、GMM TVの Kiss のリストのページです。

俳優 New 目当てで観たのですが、彼はこの「Kiss」では脇役です。
正直、あんまり出てこない...... でもあんまり出てこないにも関わらず「Kiss」で強い印象を与えたから、次の「Kiss me again」での扱いが大きくなり、「Dark Blue Kiss」では正真正銘のメインですからね。すごい。

rVz4pf.jpg

Kiss」のメインは、この告知の4人。

一番左は Thada(タダ)。
演じているのは Jirakit Thawornwong、愛称が Mek。
不愛想で無骨な感じがよく出ています。
その隣が Sandee(サンディ)。
強気で自立心に富む女性です。凛々しい。
演じているのは Lapassalan Jiravechsoontornkul、愛称が Mild。
この二人は、New 演じる Kao(カオ)の大学の同級生です。
New 演じる Kao の相手役 Pete (ピート)と、もう一人 June(ジューン)が加わった5人が仲間ですね。
ついでに書いておくと、Pete (ピート)を演じているのは Tawan Vihokratana、愛称が Tay。名前のところに Instagram のリンクを貼ってみました。
「The Gifted Graduation」にも、校長の若い頃のエピソードの中に出てきますね。
June(ジューン)を演じているのは Nachat Juntapun、演じているのは Nicky。
5人の中ではコメディ部門担当ですね。盛り上げ役。かつ、緊迫した場面での緩和剤。素晴らしい。

[Eng Sub] Kiss the Series รักต้องจูบ _ EP_3 [2_5]_Moment.jpg

この写真の一番左が Pete (ピート)。こっそり(?) つきあっているという設定なのですが、Kao(カオ)がさりげに肩を組んでいますね(笑)。
Kao(カオ) の隣、Thada(タダ)との間にいるのが June(ジューン) です。

告知に戻って、Sandee(サンディ)の右の女性が Sanrak(サンラック)。
Sandee(サンディ)のお姉さんです。こちらも大学生ですが、インターンをする頃です。
きれいなんですけど、あー、はっきり言って、バカです(失礼)。しかも強烈にバカ(重ねて失礼)。
演じているのは Worranit Thawornwong、愛称が Mook。
一番右が Na (ナー)。
Sanrak(サンラック)のインターン先の社長、というよりは、Sandee(サンディ)、Sanrak(サンラック)の長姉であるSansuay(発音が難しいですね。サンスェイかな?)の元カレ、という説明の方がいいかもしれません。あっ、元カレではないのかも。同級生?
演じているのは Sattaphong Phiangphor、愛称が Tao 。
非常に整った顔立ちですが、どことなく幼い印象を与えるのがポイントですね。
ちょっとNoble なところのある役が似合いそうです。

この2組がそれぞれカップルになるまでを描いています。
それぞれの当事者に対して、恋人あるいは思いを寄せている人が存在するというややこしい状況になっています。

Thada(タダ)、Sandee(サンディ)の方は、大学生らしいドタバタというか、狂騒曲というか、おもしろいです。
オープニングが、酔っぱらった次の朝、二人が同じベッドで目を覚ますところからです。
そこを同級生 Pete (ピート)に見つかってしまい、大騒動の始まり、始まり~。
二人の性格が災いし、素直になれない二人を、周りがひっかき回す様子は楽しかったですね。
また性格的にこの二人お似合いだと思いました。

しかし、一方の Sanrak(サンラック)、Na (ナー)の話は、ダメでしたね。まったくダメ。
もう、Sanrak(サンラック)がバカすぎて話にならない。見ていて、イライラします。
バカゆえに可愛いと思えるシーンもないではないのですが......
恋愛関係がバカなのは、まあしょうがないでしょう。愛は盲目ともいいますし。
彼氏に騙されているとも知らず信じ切っている、というのは、かなりあからさまなのにな、とは思うもののあり得るとは思うので。
でも恋愛関係だけではなく、そもそもバカなんですよね、彼女。バカなくせに、ちゃんと相談もしない。人の言うことも聞かない。
これは脚本が悪いんでしょうね。
インターンでの仕事ぶりなんか、もうひどいとしかいいようがない。ここまでバカだと、インターン以前に大学、いやそれどころか高校にもよく入れたな、と思います(タイの教育制度でどこから入試があるのか知りませんが。彼女の頭では入試は到底突破できないでしょう)。
驚いたことに、バカなのは彼女だけではないのです。受け入れる会社側もバカ揃い。
大事な契約(感じからすると社運がかかっているような契約です)が Sanrak(サンラック)のせいでおジャンになるというエピソードがあるのですが、有能だとされている人(Sanrak(サンラック)の指導員です)が、そのままSanrak(サンラック)に任せきりで契約の場を迎えるだなんて絶対あり得ない。
こんな会社早い段階で倒産してしまっていたことでしょう。
恋愛面、仕事面すべてのエピソードが関係者が揃いも揃ってバカでないと起こりえないものになっていまして、興ざめ。正直、観るのがつらかったですね。
BGMとしてテーマ曲が「Kiss Kiss Kiss~」と能天気に流れると腹が立つくらいです(笑)。
なので、Sanrak(サンラック)、Na (ナー)のパートは観る価値なしです。

観る価値なし、はさすがに言いすぎですね。
このパートで観る価値があるというと、Sanrak(サンラック)の彼氏 First 役が「2gether」の Dim先輩で、Sanrak(サンラック)の友人で First のことを彼氏にふさわしくないと確信している Noina 役が「2gether」の Green だということでしょうか。
First って本当に嫌な奴になっていまして、よくこの役を引き受けましたね。自然に嫌な奴に観えますので、俳優としての実力なんでしょうね。そういえば、いままで紹介していませんでしたね。演じているのは Sivakorn Lertchoochot、愛称 Guy です。
あと、「2gether」でチアリーダーの部長役をやっていた女優さん(Phakjira Kanrattanasoot、愛称 Nanan)が、Na (ナー)の彼女(?) 役で出ていまして、あまりの変貌ぶりにびっくりします。化けるということでしょうか。確かに、化粧って、化けるという文字を使いますもんね......


で、肝心の? New のパートは、Kao(カオ)と Pete (ピート)がつきあっていることを周りに隠しているという設定なので、物語のスパイスとして効果的に使われていましたね。
ちょこちょこっとエピソードが盛り込まれていて、出てくると、おおっと思えます。
ちょっと出てくるだけでもかなり印象的に扱われているのですが、やはり中でも、仲間に付き合っていることが知れてしまうシーン(EP14
がいいですね。
そのあと、June(ジューン)にからかわれつつも、カップルとしてふるまうシーン(EP15)も楽しい。

[Eng Sub] Kiss the Series รักต้องจูบ _ EP_15 [2_5]_Moment.jpg

このシーン、照れるというシーンなんですが、これ、演じているんじゃなくて、本当に照れているように見えます(笑)。また、June(ジューン)もとてもナチュラルです。とてもいいシーンだなと思えます。

ということで、この「Kiss」は、Kao(カオ)と Pete (ピート)を隠し味に、Thada(タダ)と Sandee(サンディ)の物語を楽しむのがよいと思います。


<蛇足>
本当に蛇足なんで恐縮ですが、 Sanrak(サンラック)、Sandee(サンディ)の家ってブティックをやっているのですが、

[Eng Sub] Kiss the Series รักต้องจูบ _ EP_1 [3_5]_Moment.jpg

上の写真、わかりにくいですが、店の名前がたぶん左手の「ORDINARIEZ」で、ドアの右奥に221Bと書いてあるの、拡大すると見えるでしょうか?
住所(通りのナンバー)なのではないかと思うのですが、221B。いいな、と思ってしまいました。



<2020.12.3追記>
続編の感想へのリンクを。
Kiss me again その1
Kiss me again その2





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ロードサイド・クロス [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


ロードサイド・クロス 上 (文春文庫)ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
路傍に立てられた死者を弔う十字架――刻まれた死の日付は明日。そして問題の日、十字架に名の刻まれた女子高生が命を狙われ、九死に一生を得た。事件は連続殺人未遂に発展。被害者はいずれもネットいじめに加担しており、いじめを受けた少年は失踪していた。尋問の天才キャサリン・ダンスは少年の行方を追うが……。大好評シリーズ第二作。 <上巻>
ネットいじめに端を発する事件は殺人にエスカレートした。犯人は失踪した少年なのか? ダンスは炎上の発端となったブログで報じられた交通事故の真相を追う。ネット上の悪意が織りなす迷宮。その奥底にひそむのは悪辣巧緻な完全犯罪計画。幾重にも張りめぐらされた欺瞞と嘘を見破った末、ダンスは意外きわまる真犯人にたどりつく! <下巻>


ここから10月に読んだ本の感想です。

「このミステリーがすごい! 2011年版」 第9位
「2011本格ミステリ・ベスト10」第9位
週刊文春ミステリーベスト10 第3位。

「スリーピング・ドール」 (上) (下) (文春文庫)(感想ページへのリンクはこちら)に続き、尋問とキネシクス(証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し分析する科学)のエキスパート、キャサリン・ダンスが主役をつとめるシリーズ第2作。
その前に、リンカーン・ライムシリーズである「ウォッチメイカー」 (上)(下) (文春文庫)(感想ページへのリンクはこちら)にも出てきましたので、登場作としては3作目です。

タイトルになっているロードサイド・クロスとは、あらすじにもある通り「路傍に立てられた死者を弔う十字架」です。これが一種の犯行予告になっている事件です。
「路肩の十字架」と40ページには書かれています。

あらすじには触れてありませんが、この事件と同時に、「スリーピング・ドール」 (上) (下) 事件の余波が描かれています。
それは、重度の火傷を負い死亡したファン・ミラー刑事の安楽死容疑で、キャサリンの母イーディが逮捕されてしまうというもの。ハーパー検事のスタンドプレーという趣があるものの、予断を許しません。
(伏せるべきかな、とも思いましたが、上巻の半分くらいからスタートするエピソードなのでここに書いておくことにします)
こちらは、どうしても母親のことを疑ってしまう、少なくともその可能性は否定できないと考えてしまうキャサリンの苦悩と、母親との確執が焦点になります。
母親との問題は下巻374ページになって一応の解決をみるのですが、なかなか難しい問題ですね。

ロードサイド・クロス事件の方は、あまりにあからさまなかたちで話が進んでいくので、「こんな平凡な話のわけがないよな」と読者が思ってしまいます。
それを承知の上で話を転がしていくのが、いつものジェフリー・ディーヴァーなのですが、ちょっと今回はディーヴァーにしてはひねりが足りないような気がしました。
とはいっても、それがこの作品の欠点というわけではありません。
そもそもディーヴァーにしてはひねりが足りない、というだけで、普通よりはそれでもひねってあります。
また、ひねりを抑えた分、話がわかりやすく、くっきりしてきました。
たとえば追われる高校生トラヴィスのエピソードは、シンプルになった分イメージがつかみやすくなりました。

キャサリンのプライベートもなにやらあわただしい感じになってきましたし、シリーズのこの後が楽しみです。



<蛇足1>
「リスかウッドチャックか、そのくらいの大きさでした」(266ページ)
ウッドチャックって、身近な動物なんですね。

<蛇足2>
「SF系のゲームだ」
ダンスにとっては説明になっていなかった。「え、何系?」
「ママ、サイエンス・フィクションだよ」
「ああ、空想科学(サイファイ)ってことね」
「違うってば。ママ、古すぎ。いまはSFって言うんだよ」(下巻34ページ)
勉強になります。

<蛇足3>
「『攻殻機動隊』? さあね、二十回か、三十回か……続編も同じくらい見た」(58ページ)
アニメーションの古典になっているということですね。

<蛇足4>
「完全にゲームの世界に浸れるこういった”ポッド”の故郷は、日本だ。子供たちは、外界と完全に遮断された暗いブースにこもって何時間でもコンピューターゲームをプレイし続ける。社会との接点はネットのみという”引きこもり”人口の多さで知られるっ国でこういったものが生まれたのは、必然と言えそうだ。」(126ページ)
なんだか書き方からして、ジェフリー・ディーヴァーは日本に良い印象を持っていないような気がしてなりませんね。







原題:Roadside Crosses
作者:Jeffery Deaver
刊行:2009年
翻訳:池田真紀子





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