無気力探偵~面倒な事件、お断り~ [日本の作家 か行]
無気力探偵~面倒な事件、お断り~ (マイナビ出版ファン文庫)
- 出版社/メーカー: マイナビ出版
- 発売日: 2016/06/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
<カバー裏紹介文>
「事件らしいけど、俺は早く帰りたい」
究極にやる気のない探偵現る!
高2の霧島智鶴はどんな難題も解決できる天才だが、最大の欠点は究極に無気力なこと。 そろそろ進路も考えねばならず、労力を使わず頭脳を働かせるだけで稼げる仕事はないか? と考える日々。そんな彼のもとに失敗で現場捜査を外された落ちこぼれ刑事や、同級生の揚羽、柚季らが次々と事件を持ち込む。ダイイングメッセージの謎、誘拐、脱出ゲームでの事故などに挑み・・・? やがて、彼の隠された過去が明らかになり─。
2024年11月に読んだ最初の本です。
楠谷佑「無気力探偵~面倒な事件、お断り~」 (マイナビ出版ファン文庫)
「ルームメイトと謎解きを」 (ポプラ文庫)の評判が良さそうなので購入したときに、ふとデビュー作から読んでみよう、といつもの悪い癖が出て購入しました。
あとがきによると、小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていたものらしいです。
目次をみると、第一章、第二章・・・・・となっていますが、それぞれ独立したお話で、それらを通して主人公である無気力探偵の霧島智鶴が変貌していく(?) という流れです。
第一章 ダイイングメッセージはいつの時代もY
第二章 割に合わない壺のすり替え
第三章 限りなく無意味に近い誘拐
第四章 どことなく無謀なハウダニット
第五章 霧島智鶴のコールドケース
第一章「ダイイングメッセージはいつの時代もY」は、章題にもなっているダイイングメッセージそのものはあまり面白くない(ただし、高校生にはふさわしい謎になっていて、そこはポイント高いと思います)のですが、その周辺を固める細かな手がかり群がいいな、と思いました。
それにして熱海刑事、べらべらと事件のことを高校生にしゃべりすぎ(笑)。それなりに言い訳が用意されてはいますが、いくらなんでも、ねぇ......──といいつつ、そうでないと智鶴が事件の詳細を知ることはできないからやむを得ないのですが
第二章「割に合わない壺のすり替え」で智鶴が展開するロジックがなかなか興味深いもので、これを突き詰めた作品を読んでみたくなりました。犯人を最終的に追い詰める手がかりも、気が効いています。この手がかりも、高校生にふさわしくて(もちろん大人にも分かる内容です)ポイント高いです。
第三章「限りなく無意味に近い誘拐」は、熱海刑事の従妹が誘拐されたという大事件。刑事のくせに警察に通報しないというのは、いくら誘拐でもちょっとなぁ、と思ってしましましたが、そういう前例のミステリはそれなりにありますので、これは難癖というものですね。
誘拐の真相自体はありふれていて、とりたてていうこともないかな、と思いましたが、ここでも犯人を追い詰める手がかりが気が効いていてよかった。堂々とさらしてある手がかりが最後に効いてくる、というのにしびれますね。
第四章「どことなく無謀なハウダニット」はクイズ形式の脱出ゲーム最中に発生した殺人事件。
一見無差別殺人に見える、というのがミソなので被害者以外を護る仕組みが欲しかったところですが、これはないものねだりでしょうね。
ちょっと気になったのは、(文字の色を変えます)インビジブルインクで書かれた文字は強烈に光るので、他の参加者に気づかれると思われることと、他の参加者のカードにも書かれていないかどうか被害者が確認するのでは、と思われることでしょう。
この作品の場合の注目点は、事件そのものよりも、本書全体の底流になっている智鶴自身の物語に相照らすものがある、というところかと思います。
最後の第五章「霧島智鶴のコールドケース」は、章題どおり、智鶴自身の物語を扱っています。
時雨沢刑事部長に絡んだ枠組みにはさすがに無理があるように思えましたが、ずっと懸案だった智鶴の父の行動原理あたりギリギリのところに収めているのは長所だと思います。
過去の事件の真相も、意外と(と言っては失礼ですが)鮮やかに思いました。こちらの当事者視点の物語も読んでみたいな、という気になりました。
あとがきで作者は「本格ミステリ」をリスペクトしていると書かれています。
デビュー作である本書のあちらこちらに、その「本格ミステリ」志向がしっかりと感じられて、とても楽しかったです。
「ルームメイトと謎解きを」は、期待して読むことにします──その前に、もう一つのシリーズ「家政夫くんは名探偵!」 (マイナビ出版ファン文庫)も読んでみるかな......←こうやって積読本が増えていく(笑)。
最後に本書のカバーに、あちらこちらでお目にかかる、ワカマツカオリさんのイラストが使われていて、これまた、いいですね。
<蛇足>
「一センチ違いくらいなら、大きいにせよ小さいにせよ、無理なく履ける」(28ページ)
大きいのならともかく、一センチ小さいと「無理なく履ける」とは言えない気がします。
タグ:楠谷佑
透明な一日 [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
結婚の承諾を得るため千鶴の実家へ赴いた幸春は、千鶴の父・久信が前向性健忘という記憶障害に陥っていることを知らされる。数日後、幸春の知人が公園で何者かに襲われ命を落とす。当初は強盗事件と思われたものの、悲劇はこれだけでは終わらなかった・・・・・。十四年前の放火事件との関係は、そして幸春と千鶴の結婚の行方は? 多重どんでん返しの末に明らかになる驚愕と感動の真相。
2024年10月に読んだ6冊目の本です。
北川歩実の第6作「透明な一日」 (創元推理文庫)。
北川歩実の作品の感想を書くのは初めてですね。
北川歩実のデビュー作「僕を殺した女」 (新潮文庫)は、新潮ミステリー倶楽部から出た単行本を買って読んで、実はよくわからなくて、でも面白く感じ、なんだか気になって何度も読んでいる作品です。未だにすっきり全部わかっているわけではないのですが......
その後北川歩実作品としては
「硝子のドレス」 (集英社文庫)
「模造人格」 (幻冬舎文庫)
「猿の証言」 (新潮文庫)
「金のゆりかご」 (集英社文庫)
とのーんびり読み進めていますが、いずれも面白く読んでいます。
前作「金のゆりかご」を読んだのが、手元の記録によると2002年ですから、22年ぶりです。
記憶、精神、知能といった領域に強い関心を抱いている作家で、この「透明な一日」で扱われているのは、前向性健忘。
解説で千街晶之も指摘していますが、前向性健忘を扱った作品は、視点人物が前向性健忘に罹っているというものが多いところ、この作品は前向性健忘の当事者の視点をとっていないことが特徴になっています。
タイトルの「透明な一日」というのは、前向性健忘の状態についての説明から取られています。長いけれど引用します。
「脳の中になる記憶の保管庫には、情報が分水整理されて収まっているの。複数のジグソーパズルを一度崩してしまって、似た形のピースをまとめて分類して保管してある。そんな状況で。ある出来事を思い出すということは、一つのパズルを組み直すこと。
Aというパズルを組み立てるためには、Aのピースを集めて来なくてはならないけど、本来は、各ピースがどのパズルのものかわかるように色が付けてある。
竹島さんの記憶障害は、この色を付ける機能がなくなった状態なのね。
昔のパズルには色があるけど、新しいパズルには色がない。
だけど新しいパズルも、保管はされてるの。ただ、どれがどれやら区別が付かない。
一九九三年一月六日のパズルには色が付いていたはずなんだけど、ほとんどのピースから色がはがれてしまった。
ほんのいくつかのピースにだけ、まだ色が残ってる。
白いピースってことにしましょう。その白いピースを手がかりに、形を合わせていけば、透明なピースの中から、本来白だったはずのピースを捜せる。そうやって、一部だけなら組み立てることができるかもしれない。」(496~497ページ)
これはかなり後に説明されるのですが、この前向性健忘の特徴が見事にプロットに活かされています。
視点人物は、14年前の幼い頃、放火で母を失った幸春。
健忘になっているのは、幸春の婚約者である千鶴の父・久信。千鶴、久信は幸春と同郷で、連続放火とみられる放火で千鶴の母(=久信の妻)も焼死していた。
アパートの大家の息子であった木村泰典は、幸春の父や久信とともに真相究明をしようとしたが実らず。
その後東京で偶然再開した幸春と千鶴は(このとき泰典とも再会している)、交際を始め今に至るという状況で、結婚の承諾を得るため久信のところを訪れた幸春は前向性健忘のことを知る。
その後泰典が殺される事件が発生し......
この後の展開に引き込まれました。
非常によく巧まれた作品で、どうしてもっと話題にならなかったのだろうと不思議な思いに駆られるくらいです。
368ページで僕が到達する思考には、目を見開かされました。
登場人物が前向性健忘であるからこそのアイデアで、前向性健忘をこういうかたちでミステリに使えるのか、と。これはとても斬新なアイデアだと思います。
作者は、この上なく素晴らしいこのアイデアをさらっと乗り越えてしまいます。驚愕。
その後、ある意味で常識的な真相を提示してくるのですが(といいつつ、尋常ならざる犯人像で、こちらはこちらで恐ろしくなります)、この真相であればこその、あの印象的なラストシーンになっています。
この真相、残酷なもので、状況をかなりしっちゃかめっちゃかなものにしてしまうものでして、一体どうやって(物語の)決着をつけるんだろう、と読んでいて途方に暮れるようなものなのを、見事な決着をつけています。
多くの人に読んでみていただきたいと思いましたが、品切れなんですよね......
もったいない。
かにみそ [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
全てに無気力な20代無職の「私」は、ある日海岸で小さな蟹を拾う。それはなんと人の言葉を話し、小さな体で何でも食べる。奇妙で楽しい暮らしの中、私は彼の食事代のため働き始めることに。しかし私は、職場で出来た彼女を衝動的に殺してしまう。そしてふと思いついた。「蟹……食べるかな、これ」。すると蟹は言った。「じゃ、遠慮なく……」。捕食者と「餌」が逆転する時、生まれた恐怖と奇妙な友情とは。話題をさらった「泣けるホラー」。
2024年7月に読んだ3作目(4冊目)の本です。
第20回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作。
倉狩聡の「かにみそ」 (角川ホラー文庫)。
あわせて「百合の火葬」を収録しています。
表題作であり受賞作でもある「かにみそ」は、なんか、とんでもない小説を読んだな、という気分でした。もちろん、褒め言葉です。
そんなバカな、と言いたくなる話なのですが、心地よく読んでいるうちに世界になじんでしまいます。
蟹が人を食う、というかなり怖い話なんですが、あっさり読み進めてしまいます。
構成がカチッと考えられていて、タイトな小説だと感じました。
雰囲気は、上で引用したあらすじで十分掴んでいただけると思われます。
やはりなんといっても、蟹。この蟹が、なんともチャーミング。
また、蟹が紡ぎ出す言葉に、さまざまなことを考えてしまいます。
『今までおれが食べたひとたちって、みんな理由もなく・・・・・や、あるのかもしれないけど、イライラ怒ってる感じだったんだよねぇ。なんでだろうね、そういうやつ見るとさ、ふふ、食べたくなるの。・・・・・でもさ、そういうやつらさ、おれが嚙んだとたん、すぅって力が抜けて、怒りが別の何かに置きかわるんだ。何にかわるか、わかる?』
続けて
『おまえ、死ぬのなんか怖くない、って思ってるでしょ。考えてみなよ。きっとわかるよ。おれ、本当の悟りってきっとアレだと思うんだ。おれもいつか味わうんだろうな。きっとね。ちょっと楽しみなんだよね』(「かにみそ」69ページ)
というあたりとか、含蓄深そうですよね。
(蟹のセリフはかならず二重括弧『』になっているのも、単なる区別にとどまらずなにかを表しているのだと思うのですが、これという回答を思いつきません)
『おれは、腹が減ったら色んなもの食べるけど、ともだちは食わないよ』(「かにみそ」91ページ)
というのも、主人公との間・関係を保つためのセリフにとどまらず、とても大きな意味を持ったセリフで、ラストの主人公の感慨と併せて、しみじみ考えてしまいました。
この妙な読後感、いろんなかたに味わってみてもらいたいと思いました。
同時収録の「百合の火葬」も独特で、こちらはかなり気持ち悪い話(あっ、「かにみそ」も普通にいったら、相当気持ち悪い話なのですが、そう感じませんでした)。
父親の死後、幼い頃に分かれた母親のような体で急に現れ住み込んでしまう清野も気持ち悪ければ、タイトルにもなって、徐々に本領(?) を発揮してくる百合も気持ち悪い。
こちらも、物語の構成がとてもしっかり組み立てられていて、すごいなと思いました。
倉狩聡という作家さんは、「いぬの日」 (角川ホラー文庫)という作品も書かれているようなので、こちらも読んでみたいな、と思いました。
<蛇足>
「この石は那智黒という高直なものだと、自慢げに語った誰かの声が、つい昨日のことのように思い出される。」(「百合の火葬」135ページ)
「高直」は知らない単語でした。
蒼煌 [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
芸術院会員の座を狙う日本画家の室生は、選挙の投票権を持つ現会員らに対し、露骨な接待攻勢に出る。一方ライバルの稲山は、周囲の期待に応えるために不本意ながら選挙戦に身を投じる。会員の座を射止めるのは果たしてどちらか。金と名誉にまみれ、派閥抗争の巣と化した“伏魔殿"、日本画壇の暗部を描く。
2024年5月に読んだ11冊目の本です。
黒川博行の「蒼煌」 (文春文庫)。
この感想を書こうとして気づいたのですが、黒川博行の作品の感想を書くのは初めてなのですね。意外。
今は亡きサントリーミステリー大賞の第1回、第2回の佳作を
「二度のお別れ」 (創元推理文庫) (創元推理文庫)
「雨に殺せば」 (角川文庫)
と2年連続で受賞し、その後
「キャッツアイころがった」 (創元推理文庫)
で第4回大賞を仕留めた作家です。
その後20作品ほど追いかけて読んでいたのですが、売れっ子作家になられてちょっと遠ざかっていました。
出版順で言うと次はこの「蒼煌」だったのですが、近ごろ本屋さんの棚で見かけることもなくなってきていまして、ひょっとして品切れ状態になるのでは? ということで、探して入手して読みました。
引用したあらすじにも書いてあります通り、芸術院会員の座を狙う選挙戦の裏(?) を描いています。
これが、まあ、すさまじい。
芸術院の選挙って、実際にこういうものなのか? というキワモノ興味で読んでも、そうじゃなく読んでも、十二分におもしろい。
主要人物として出てくる候補者(?) の室生が、典型的な薄っぺらい人間で(描写が薄っぺらいということではありません、念の為)、読んでいて呆れるくらいなのですが、それでいて素晴らしい絵を描くというのが、とてもおもしろい。
健全な肉体には健全な精神が宿る、というのが嘘っぱちなように、素晴らしい芸術を生み出す人間も素晴らしい人格を備えているわけではないにせよ、この室生の性格は、本当にひどい(笑)。ザ・俗物。
「室生は思考に幅がないから、すぐに決めつける。根が田舎者だから京都人らしいさらりとしたつきあいができず、若いころから絵描き仲間との諍いが絶えなかった。絵描きは総じて思い入れが強く頑固だが、だからこそ、食える保証もないこの世界に入って、一生絵を描きつづけていくのだろう。」(298ページ)
なんて書かれていて、傍から見ていると可哀そうになるくらいですが、周りも一筋縄ではいかない、あやしい、老獪な人物。
それはそれは醜い争いが繰り広げられます。
デパートの美術部も絡むのですね。お金が動く世界だから当たり前ですか......
ミステリ的な興趣は薄い作品ですが、それでも、票読みの過程ではちょっぴりミステリ心をくすぐられるところがありニンマリ。
途中政治家や怪しげな画商(政商?)が絡んでくるのも、生臭さの強調かなと思っていたら、それがラストへのプロットと密接に絡みついていて、なるほどー、と感じました。
ベテラン(作家)の技、ですね。
個人的には、薄汚い選挙戦にのめりこんでいく、あるいはのめりこまざるを得なくなる人物やそれに飛び込んでいく、あるいは巻き込まれていく人物だけではなく、その身近にいつつ選挙戦とは距離を置いた立場で見ている人物(とくに、室生の対立候補である稲山の孫娘梨江)の視点が一部取られていることに、居心地の良さを感じました。
とても面白く読みました。
また、黒川博行の本、手に取ってみたいと思います。
ところで、日本芸術院は、小説を含む文芸も対象ですね。
日本芸術院には第一部美術、第二部文芸、第三部音楽・演劇・舞踏、の三部が置かれ」(63ページ)と説明され、
「第一部の選挙運動はすごいけど、第三部もすごいらしいね。お金も飛び交うんやて」
「文芸は運動しないの」
「噂は聞かへんね。小説家や詩人はそういうことを軽蔑するんでしょ」(201ページ)
という会話が交わされたりしています。
文芸は、こういう選挙戦ないんですね(笑)←だから、美術もあるとは限らない!
タグ:黒川博行
伽羅の橋 [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
介護老人保健施設の職員・四条典座(のりこ)は、転所してきた認知症の老女・安土マサヲの凄惨な過去に驚く。太平洋戦争の末期、マサヲは自分の子ども二人と夫を殺したというのだ。事件の話は施設内で知られ、殺人者は退所させるべきだという議論になる。だが、マサヲが家族を殺したと思えない典座は彼女の無実を確信、“冤罪”を晴らすために奔走するが──!? 傑作本格ミステリー!
2024年3月に読んだ2冊目の本です。
叶紙器「伽羅の橋」 (光文社文庫 )。
第2回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。
昭和二十年八月十四日、終戦間近の大阪を襲った大空襲のさなかに起こった事件を平成六年に解く、というストーリーで、謎解き役を務める主人公:四条典座が、猫間川とそこにかかる橋の来歴や残されていた手紙を手掛かりに、図書館での調べものや老人たちへの聞き込み、そして古い住宅地図の探索と、一歩、一歩真相に迫っていく様子を楽しむことができます。
これ、実際に作者がこの作品を書くための調べ物をこのような形で少しずつ迫っていったのでは? と思えてきます。
これが楽しい。
不可能興味の焦点は、空襲下で京橋から桃谷までどうやって二十分という短時間で移動できたか、という点にあり、103ページに地図が掲げられているとはいえ土地鑑がないとわかりづらいのが難点ですが、ハーレー・ダヴィッドソンを祖とする九七式側車付自動二輪とか暗渠とか、さらには桃谷地区を襲った水害被害まで、徐々に徐々に真相に迫っていきます。
物語のクライマックスは、阪神淡路大震災。
大阪の空襲と悲劇・惨事が二重写しに。
この中、典座が謎解きを関係者にしてみせ、細かな手がかり、ヒントを着実に回収していきます。
気になった点を挙げておきますと、視点がうろうろしてしまう点。
特に当事者の視点で物語ってしまうと、その段階で真相を明らかにすべきに思えてしまいます。あまりに作者にとって都合の良い視点の切り替えです。
心の中に踏み込まなくても、サスペンスは十二分に高まったように思うのでここは残念。
(この点以外でも視点がちょくちょく切り替わって分かりづらい箇所がところどころに)
気になる点はあるものの、戦争そして震災を背景としたイメージが強く印象に残りますし、謎を追い、解いていく楽しさにあふれた作品でしたので、また新作を発表してもらいたい作家さんです。
<蛇足1>
「制服のジャージから私服のジャージに穿き替え、〇ニクロのワゴンセールで買った、一枚五百円なりの白Tシャツを着て、スクーターにまたがった。」(122ページ)
あからさまにユニクロですが、小説の地の文で「〇ニクロ」という表記は珍しいように思います。
<蛇足2>
「元々料理をしなかった東にとって、連れ合いこそが文字通り竈神(かまどがみ)だったということかと。」(311ページ)
竈神という語自体は知っていましたが、ここのように台所を預かる主婦そのものを指す例は知りませんでした。
おもしろいですね。
<蛇足3>
「ずっと、みなさんのお話を、ドアの外でうかがっておりました。申し訳ないことでございます」(508ページ)
「申し訳ない」を丁寧にいうには、「申し訳ありません」「申し訳ございません」ではなく、「申し訳ないことでございます」である、と説いている文章を読んだことがあります。
ループ・ループ・ループ [日本の作家 か行]
ループ・ループ・ループ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 桐山 徹也
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2020/04/07
- メディア: 文庫
<カバー裏あらすじ>
昨日と同じ光景が繰り返される学校で、俺は時間がループしていることに気づく。しかし、俺にはループを引き起こすような出来事に心当たりがない。きっと俺は、この “物語" の主人公ではなく、“モブキャラ" として誰かのループに巻き込まれているのだ。そう考えた俺は、このループの原因となっている人物を探しはじめた。すると、他にもこのループに気づいた生徒たち俺の前に現れて──。
2024年2月に読んだ11冊目の本です。
2017「このミス大賞」隠し玉「愚者のスプーンは曲がる」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)でデビューした桐山徹也の第2作「ループ・ループ・ループ」 (宝島社文庫)。
引用しておいていうのもなんですが、上のカバー裏のあらすじ、暮妙にネタを割ってしまっている気がしてしまいます。
主人公は俺:橋谷郁郎。高校二年生。
11月24日が繰り返されることに気づく。
大通りで事故に巻き込まれた隣のクラスの玉尾里佳を助けたところ、次の日(といっても改めて繰り返される11月24日ですが)、玉尾もループに気づく。
そして蔵原貴久が階段から転落するのを助けたところ、その次の日、蔵原も異変に気づく。
3人は原因を突き止めようとする。
ここまでで58ページ──日付はいずれも11月24日とはいえ、3日間が経過しています。とてもテンポよく、心地よいリズムで一気に語られます。
勘のいいひとなら、ここまででこの作品の仕掛け(狙い)に気づくと思いますが、あまりにスムーズに、楽しく読んでいたので、しっかりスルー。
作者が堂々と明かす171ページに来るまでまったく思い至らず、ストーリーに没頭していました。
この物語の底流に、1年前に学校の女生徒が二人死んだことが流れています。
一人は飛び降り、もう一人は連続殺人の被害者。町で若い女性が首を絞められて殺されるという事件が三年ほど前から続いているという。
体育館の横に現れる長い黒髪の女生徒、学校で噂される呪いの赤いくまのストラップ、いじめ、周りをうろつく不審者.......
ループに絡んでいろんな要素がちりばめられています。
繰り返されるループとどうつながるのか(つながらないのか)、どうしてループが起ったのか。
ずっと読者の目の前にほうり出してあったことから、鮮やかに紐解かれていく出来事。
そしてなるほどと思わせるエンディング(このクライマックスをなるほどと言ってはいけないのかもしれませんが)。
振り返って落ち着いて見直してみるとプロットもちりばめられた事件もツッコミどころはあるのですが、非常によくたくらまれた作品で、十二分に楽しめました。
「愚者のスプーンは曲がる」に続いて、個人的に大当たりです。
このあと作品は出ていないようですが、ぜひぜひ、新作をお願いします。
タグ:桐山徹也
こめぐら [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
必要か不必要かはどうでもいいのだ。したいからする。これは信念なのだ──密やかなオフ会でとんでもない事態が発生、一本の鍵を必死に探す男たちを描く「Aカップの男たち」、うそつきキツネ殺害事件の犯人を巡りどうぶつたちが推理を繰り広げる非本格推理童話「どうぶつの森殺人(獣?)事件」などノンシリーズ作品に、猫丸先輩探偵譚「毒と饗宴の殺人」を特別収録した全六編。
2023年12月に読んだ4冊目の本です。
倉知淳の「こめぐら」 (創元推理文庫)。
倉知淳の作品の感想を書くのは久しぶり。「片桐大三郎とXYZの悲劇」(文春文庫)(感想ページはこちら)以来ですね。
基本的にはノンシリーズものを集めた短編集で、「なぎなた」 (創元推理文庫)と2冊同時刊行でした。
読み出してから創元推理文庫特有の英文タイトルが
「Jun Kurachi's Mystery World 2」
となっているのを見て、うわっ、間違えた「なぎなた」を先に読むべきだったか、と思いましたが、短編集なので逆でも問題なかったですね──と信じています。
収録作品は
「Aカップの男たち」
「『真犯人を探せ(仮題)』」
「さむらい探偵血風録 風雲立志編」
「遍在」
「どうぶつの森殺人(獣?)事件」
「毒と饗宴の殺人」
の6つ。
「Aカップの男たち」の馬鹿馬鹿しさたるや堂に入っていまして(変な表現ですが)、この謎解きだとかなり殺伐とした結末になりそうなところを、無難に着地させているのがすごいなと思いました。
しかし、この同好の士は、生きづらそうですね......
「『真犯人を探せ(仮題)』」と「さむらい探偵血風録 風雲立志編」は、作中作、劇中劇という趣向になっていまして、この種の作品があまり好きではないので少々残念。
巻末に付されている「単行本版あとがき」を読むとよくわかるのですが、両作とも、いわば楽屋落ち的な趣向を盛り込んでいるところが注目点でしょうか。
「遍在」は集中では異彩を放つ作品で、ある意味、倉知淳らしくない感じがします。貧乏家庭(?)内のいざこざが、こんな大きな話になろうとは......
「どうぶつの森殺人(獣?)事件」は、お伽噺的な舞台で動物さんが出てくる世界で起こる事件を描いています。
特にミステリとしてカチっと作ってあるわけではないのですが、最後に使われる犯人特定の決め手には驚きました。
「ミステリーランド」の1冊として出してもよかったんじゃないかなぁ......
「毒と饗宴の殺人」は、ボーナストラックということで猫丸先輩登場。
倉知淳はさらっと大胆な仕掛けをするので大好きで、奇想がさらっと炸裂(これも変な表現ですが)するのがいいのですが、この作品で使われているアイデアは、いくらなんでも無理かなぁ。
いや、現実世界で似たような例はあることは知っていますし、それがミステリに仕立てられても当然ということなのですが、個人的に受け入れがたいというか、納得しづらい内容なんですよね。
読んでいて泡坂妻夫の諸作を思い起こしたりもしたのですが、あちらもこちらも「そんなバカな」と思うような着地に落ち込むのですが、納得感の点で差があるように思いました。似たようなアイデアなんですけどね。
家族パズル [日本の作家 か行]
2023年8月に読んだ2冊目の本です。
黒田研二の「家族パズル」(講談社)
2022年12月に文庫化されていますが、「神様の思惑」 (講談社文庫)へと改題されています。
5話収録の短編集で、帯に各話の紹介があるので、それを引用しておきます。
悲しみの裏側にそっと隠された深い「家族愛」5つの物語
「はだしの親父」父は亡くなる直前、雨降る病院の庭をなぜ靴を脱ぎ歩いたのか?
「神様の思惑」自殺志願の少年の命を救った優しいホームレスは殺人者だった
「タトウの伝言」大金が必要となった青年は母を騙して、父の形見である絵画を狙うが。
「我が家の序列」リストラ中年と迷い犬の新生活は、奇妙な出来事ばかりの日々で。
「言霊の亡霊」25年も男を苦しめた母の一言。しかし記憶を辿るとある違和感が。
読み終わった感想は、これ、黒田研二の作品? というものでした。
明らかに作風が違う......(笑)。
引用した帯のコメントにあるように「家族愛」の物語だったからです。
わりとトリッキーであることにいい意味でこだわっているのが黒田研二、という印象なのですが、この作品ではトリッキーであることよりも「家族愛」を描くことを重視しているようです。
もちろん、トリッキーな部分もちりばめてあるのですが、むしろ抑え気味な印象。
全体を貫くテーマとして「家族愛」があると知ってしまうと、せっかくのトリッキーな部分にも見当がついてしまう傾向があるのですが、あえてその道を選んでいると思われます。
「はだしの親父」は親父の死を扱ってはいるものの、テイストは日常の謎。ミステリとしてみた場合伏線不足かもしれませんが、「家族愛」であればこの流れが自然かと。
「神様の思惑」は文庫化の際に表題作に選ばれた作品で、ミステリ的にはいちばん意外な解決(動機?)を扱っています。不自然というか、理解を超えた感情を扱っているのですが、これはこれでよいのだ、という気がしました。
「タトウの伝言」は、いつもだと<蛇足>欄を作ってコメントする点があったのですが、それも作者の狙いの一部だったことがわかって少々びっくり。綱渡りのように技巧を駆使した作品ですが、個人的には綱から落ちてしまっている気がしてなりません。
「我が家の序列」が中では一番の好みです。ボンドという犬をめぐる真相には割と早い段階で見当がつくのですが、犬に主と認めさせる主人公の姿をしっかり楽しむことができました。
「言霊の亡霊」はこれまた綱渡りのような技巧の作品です。ただ、過去の回想というのは(作者に)都合よく忘れたり、思い出したりするので、個人的な感想は厳しくなってしまいます。
黒田研二の作品としては異色作である気がしますが、同時に一般の方には入りやすくなった気もします。
これをきっかけに、どんどん新作が出るとうれしいのですが。
タグ:黒田研二
シャーベット・ゲーム 四つの題名 [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
傷害事件に秘められた暗号の謎とは──?
朝霧学園高校に通う穂泉沙緒子(ほずみさおこ)と和藤園子(わとうそのこ)は、クラスメイトの塀内准奈から県内名門校の神原高校で殺人未遂事件があったことを聞く。被害者はミステリー文芸部の部員で、そのポケットには謎の暗号が書かれた紙が入っていた。そしてミステリー文芸部が出している作品集の目次にも違和感のある題名が書かれており──。事件に興味を持ったふたりは、神原高校に向かう。<四つの題名>
他、大学のテニスサークルで起きた不可解な服毒自殺事件<まだらの瓶>を収録。沙緒子と園子が再び事件に挑む!
読了本落穂ひろいです。
2018年2月に読んだ本で、階知彦の「シャーベット・ゲーム 四つの題名」 (SKYHIGH文庫)。
前作「シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究」 (SKYHIGH文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2作です。
堂々たるラノベですが、前作に続き、手掛かりをベースにして推論、推理を組み立てていく部分の比重が高いのがGOODです。
たとえば冒頭19ページあたりからに披露される、友人の読書の謎。
やや乱暴なところ、飛躍のある議論になってはいるのですが、導き出される結論が極めて現実的、かつ、ありそうなところに落ち着くので、読んでいて爽快です。
「四つの題名」と「まだらの瓶」の二話が収録されており、どちらも<問題編><解決編>に分かれています。
読者への挑戦は挿入されていないものの、読者に推理してみよ、と迫る構成で、ここもいいですね。
「四つの題名」は、部活動の文芸誌が手掛かりになる物語で、その作中作が手掛かり、というよくある構成ではないのがポイント。
ある登場人物の行動が、正直あまり共感できない、というか、そういう風には考えない、そういう風には行動しない、と個人的には思われるものになっているのですが、それをきちんと沙緒子の推理で浮かび上がるようにしている点がいいなと思えました。
「まだらの瓶」は、非常にあからさまな手がかりを冒頭に配したところが印象的。
いやいやタイトルからしてネタバレになっているという大胆な作品ですね。
でも、このトリック(?) 、うまくいかない気がするんですけれど、大丈夫でしょうか?
楽しいシリーズだったのですが、このあと続巻は出ていないようです。
続巻出してほしいですね。
<蛇足1>
「推理小説は警察関連、犯罪関連の専門用語も多い。辞書がなければすべての単語を理解しながら読み進めるのは至難の業。」(21ページ)
原書で読むことを想定したセリフです。
辞書があっても読み進めるのは至難の業なのですが......
<蛇足2>
「大棟くんは、この『こだわり』とも言えるほどの美学を知っている。」(114ページ)
というセリフが出てきて「こだわり」という語にひっかかったのですが、ひっかかることもなかったかな、と思いました。
「こだわり」は本来悪い意味に使う語ですから「美学」には似つかわしくないと思ったからひっかかったのです。でも、ここの「こだわり」は悪い意味だとしてもセリフの意味はしっかり通りますので。
<蛇足3>
「沙緒子が、紅茶を静かにすすりながら言った。」(166ページ)
「すする」という語は、音を立てながら、という含意を含む語だと理解していましたが、”静かに”すするとなると、音は立てずに吸い込むように飲んだ、ということでしょうか。
トリックスターズD [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
世界がひっくり返る驚きを味わう!
西洋文化史の異端の系譜「魔学」を説く、風変わりな青年教授。そして、不本意ながら先生の助手に収まったぼく。推理小説を象った魔術師の物語、待望の復刊第3弾。
学園祭という日常の非日常で起きる奇妙な監禁事件。それに二人が関わると展開はもう予測不可能!
ソリッドシチュエーションをあざ笑う奇抜な設定に幻惑され、めまいを起こすこと間違いなし。現実と虚構の境界が曖昧になり、読んでいる者も狐につままれる。衝撃のラストは必見!
2023年5月に読んだ10冊目の本です。
久住四季の「トリックスターズD」 (メディアワークス文庫)。
「トリックスターズ」 (メディアワークス文庫)(感想ページはこちら)
「トリックスターズL」 (メディアワークス文庫)(感想ページはこちら)
に続くシリーズ第3作。
今回の舞台は城翠学園の学園祭、城翠祭。
巻頭にまえがきがあり、
「本作には、『トリックスターズ』、『トリックスターズL』の二作を読了したあとにこそ真の面白みを味わえる、ある仕掛けが施されています。」
と書かれています。
続く目次は
「in the "D"aylight」 という章と、「in the "D"ark」という章に分かれています。
「in the "D"ark」が総合科学部A棟の闇に閉じ込められた周たちの物語で、「in the "D"aylight」はその前後の話となっています。
そして周と凛々子の友人で、推理小説研究会に所属する扇谷(おうぎがやつ)いみなが、「トリックスターズ」「トリックスターズL」と題するミステリをものにしていて、ミス研の批評会で取り上げられていた。その作品は、現実をモデルとした実名小説で、このシリーズの前作、前々作の内容のよう。
「in the "D"aylight」 「in the "D"ark」と章が分かれているのも、この「作中作」を反映したものなのだな、と推測できます。
シリーズ第3作で作中作を扱う、という建付けからして、すぐに綾辻行人の《館》シリーズを連想したのですが、《館》シリーズについてはあとがきでも触れられていました。
作中作って、難しいと思うんですよね、書くのも、読むのも。
実は読後すぐは「あまり感心できないな」という感想を抱いたのです。
というのも、作中作と分かった段階で、まえがきでいう「ある仕掛け」の凡その見当がついたと思ったからです。
そしてその部分はその通りだったからです。
非常に慎重に、そして細かいところまで作りこまれていますが、サプライズという点は甘いと考えたのです。
しかし、感想を書こうとして振り返ってみて、誤解していたことに気づきました。
話が進んでいくと、作中に展開する現実と、我々読者が認識している「トリックスターズ」の物語とに齟齬があることがわかってきます(いみなによる実名小説は、我々読者が認識している方のようです)。
とすると、「トリックスターズD」の構造は、「in the "D"aylight」 の世界と、魔術師によって封じ込められた「in the "D"ark」の世界と、既存の『トリックスターズ』、『トリックスターズL』を作中作として取り込んだ3層構造になっているのを、単純な「作中作」ものだと誤読していたと思えてきました。
この3層がどのように重なり、あるいはずれ、どのように互いに影響を与えているかを読み解くべき物語だったのですね。
少々ネタバレ気味ですが、現実と作中作の位置づけの位相をずらしてみせた作品として印象に残りました。
「作中作」は、たしかに仕掛けの重要な一部なのですが、読者をだますための仕掛けではなく、読者(とある登場人物)に真相を気づかせるための仕掛けになっていた点も興味深いです。
前作「トリックスターズL」の感想で、「前作をしっかりと踏襲しつつ、前作と対になるミステリ世界を構築している」と書きましたが、この「トリックスターズD」も同様で、「前作、前々作をしっかりと踏襲しつつ、前作、前々作と対になるミステリ世界を構築している」点が素晴らしいと思いました。
と褒めておいて、気になる点を。
真相が明かされてから読み返してみると、あれっと思うところがあります。たとえば233ページの、周と凛々子のシーンをどう解釈するか、というのは気になりますね。明かされた真相の通りだとするのなら、こういう展開になるかな?
とはいえ、とても楽しい作品でした! 続きが楽しみです。
最後に、
時無ゆたかの「明日の夜明け」 (角川スニーカー文庫)を久住四季は読んだことがあるのでしょうか?
「in the "D"ark」に似ているところが多々あり、気になりました。
<蛇足>
「店長な、見た目あんなで超ラテン系だけど、実は浅草出身で、すげー祭り好きなんだってさ。」(18ページ)
一瞬「ラテン系」はそもそも「祭り好き」なのに、なぜ「だけど」なのだろう? と思ったのですが、この「だけど」は「浅草出身」にかかるものだったのですね。