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堕落刑事 マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ [海外の作家 あ行]


堕落刑事 :マンチェスター市警 エイダン・ウエィツ (新潮文庫)

堕落刑事 :マンチェスター市警 エイダン・ウエィツ (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
俺は二度と日の当たる場所には出られない──押収品のドラッグをくすねて停職になった刑事エイダン・ウェイツ。提示された唯一の選択肢は街に跋扈する麻薬組織への潜入捜査、そしてそこに引きこまれた国会議員の娘の調査だった。危険極まる任務についたウェイツが目にする想像を超えたドラッグ世界の闇、そして警察の腐敗。本当の悪の正体は? 心の暗部を抉るように描く驚愕のデビュー作!


2024年8月に読んだ2冊目の本です。
ジョセフ・ノックスの「堕落刑事 :マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ」 (新潮文庫)

「堕落刑事」とは、なんとも味気ないタイトルをつけたものだな、と思いました。
日本で警察小説が流行している(ような)ので、つけたのでしょうね。副題的に「:マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ」とつけているのもその印象を強めます。

あらすじにある通り、麻薬ディーラーの組織への潜入捜査を余儀なくされるのですが、まあ、タイトル通り、主人公であるエイダン・ウェイツの堕落していること、堕落していること。
おやっと思うのは、「俺」視点で語られるその語り口や述懐のやり方が、思索的というか、ただただ堕落へまっしぐらというのではなく、考え、悩みながら、というところ。
堕落しているといいながら、割と真剣に捜査には当たっています。

事件の関係者と(女性です)さっさと仲良くなってしまうところは、いかにも海外のミステリ風。

物語の1/3ほどの出来事なので書いてしまっていいとは思いますが、国会議員の娘の救出には失敗してしまいますが、それと麻薬組織の捜査ならびに警察に忍びこんでいる麻薬組織のスパイ探索を結びつけたプロットは面白かったですね。
イケてないなと思った「堕落刑事」というタイトルも、ラストまで読んで納得しました。
エイダン(エイド)がどこまで堕ちるのか、とハラハラしながら迎えた、ある意味定石的な真相が、この作品にはふさわしいものと感じました。
同時に定石を逆手に取ったような箇所もあり、とても満足できました。

帯に
ノワール×ハードボイルド×警察小説の結晶体!
と書かれていて、言い得て妙だな、と感じました。

シリーズになっているようなので、続けて読んでみたいです。



<蛇足1>
「ロンドンまでは四時間の道のりだったが、最初の百キロほどは二人とも無言だった」(543ページ)
マンチェスターから車での行程なのですが、四時間ほどの距離だったかな? と思いました。
調べてみると、約200マイル=320キロ。
高速を使うことを考えると、まずまず妥当なのでしょうね。

<蛇足2>
「陰鬱な英国(グレイ・ブリテン)。」(543ページ)
言うまでもなく、グレイト・ブリテンをもじったものですが、民主党ブレア政権時代のキャッチ・フレーズである「クール・ブリタニカ」よりは実態を反映しているかもしれません。



原題:Sirens
著者:Joseph Knox
刊行:2017年
訳者:池田真紀子




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ニューヨーク・デッド [海外の作家 あ行]


ニューヨーク・デッド (文春文庫 ウ 8-2)

ニューヨーク・デッド (文春文庫 ウ 8-2)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/06/01
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
マンハッタン、深夜。酔いざましに歩いていた刑事の前に、高層マンションから女性が落ちてきた。テレビの人気キャスターだ。奇跡的に一命をとりとめたが、衝突事故を起こした救急車から彼女は消えてしまった。誰がつきおとしたのか。まだ生きているのか。では、どこに? 彼女の意外な素顔が明らかになるにつれ謎は深まる──。


2024年8月に読んだ最初の本です。
スチュアート・ウッズの「ニューヨーク・デッド」 (文春文庫)
積読本サルベージです。
ウッズの本の感想を書くのはこれが初めてですね。
ウッズは面白い作品を書いていますが、今入手可能なのは、「警察署長」(上) (下) (ハヤカワ文庫 NV 438)だけになっているようですね。

タイトルの「ニューヨーク・デッド」ですが、意味がピンと来ないですね。
作品中に出てきます。
「彼女はこの街に眠っている(ニューヨーク・デッド)」(52ページ)
こう書かれてもすっきりしない気がします。
主人公ストーンの相棒ディーノのセリフで、「わたしの友人の言い回しを使えば」(434ページ)とストーンが言及する場面があるところを見ると、ちょっと特殊な用法のように思えます。
New York Living と対比させるものかもしれません。

少々はみ出し気味の刑事ストーンが、たまたま事件の現場に居合せて捜査に関わるようになる。

マンションの十二階から落ちて生きている、というのが驚きですが(歩くところを目撃されています)、終端速度理論「地球上みたいな大気中では、空気抵抗と加速度が等しくなるポイントが出てくる。そこにくると、物体は同じ速さで落下するようになる」(51ページ)というのが紹介されています。
この終端速度をできるだけ小さいものにするように、空気抵抗をできるだけ大きくするようにすれば、助かる確率は上がる、ということですね。
で救急車の事故のあと、行方不明に。
果たして、生きているのか死んでいるのか。生きているとすればどこにいるのか。
ちょっとひねったかたちになっていますが、生死不明の行方を探す、(落下に)事件性があるかどうかを探る、というのは、ある意味典型的なプロットかと思います。

ストーンが捜査早々に事件の関係者(?) ケアリーと深い仲になっちゃうのに、あれあれ、と思いましたが、この二人のやりとりがなかなか楽しい。
ストーンのキャラクターがよく楽しく読めるところに、ケアリーもなかなかいい味を出しているので一層。

警察上層部が事件の幕引きを図るためスケープゴートを逮捕しようとしたところで、ストーンは対立。相棒もストーンとは別のスタンスをとる。ストーンは退職に追いやられる。
この後のストーンの身の振り方がなかなか驚きでしたが、そこは物語の本筋ではありませんね。
退職することによって、むしろ捜査が加速することになるのがポイントでしょうか。

少々プロットを複雑にし過ぎているような気がしますし、ある意味典型的な謎解きになっているところもマイナス点かもしれませんが、登場人物は楽しいし、スピーディに展開するし、物語の緩急が巧みなのは、さすがウッズという感じです。
いまさらウッズの作品を面白いといったところで、「当たり前だろ」と言われそうですが、面白いものは面白いんですよね。

この「ニューヨーク・デッド」は、
「サンタフェの裏切り」 (文春文庫)
「LAタイムズ」 (文春文庫)
とセットのような雰囲気を受けていましたが、実際はどうなんでしょうね?
出版時期が近かったから、タイトルに地名がついているから、といっただけの理由だったのかもしれません。
これらも積読になっているので、いずれ。



<蛇足1>
「彼女はメジャー・ネットワークで、ただひとりの女性ニュースキャスターになろうとしていたところっでした。」(38ページ)
なんとも時代を感じさせるセリフです。原書は1991年刊のようです。

<蛇足2>
「結婚してるの?」
「いや」
「したことがないの? どうして?」
「運がよかったのさ、きっと」(94ページ)
こういう返しは予想外でした(笑)

<蛇足3>
「値札は見ないの」彼女はいった。「そういう買物の仕方をしちゃだめ。自分にぴったりくる物を買うのよ、お金のことはあとから心配すればいいの。そのためにクレジット・カードがあるんでしょ」(154ページ)
「パパがいつもいってたわ。『自分の欲しいものを買うんだ、支払いの方法は買ってから考えればいい。借金はひとにやる気を起こさせる大きな原動力になる』って」(201ページ)
ああ、こういう考え方、できません......

<蛇足4>
「ビル、引き受けさせてもらう。喜んでやらさせてもらう。」(270ページ)
うーん「やらさせてもらう」......
わざと間違った文法を使うような人物設定にはなっていないのですが。

<蛇足5>
「ストーンは四時ちょうどにアルゴンキン・ホテルに着いた。日本人がこのホテルを買い取って──あの国の人間は、どんなものでも買い取ってしまうらしい──ロビーを改装した。」(356ページ)
これまた時代を感じさせるエピソードですね。
日本人が海外資産を買いあさっていたのは、今となっては遥か昔ですね。



原題:New York Dead
著者:Stuart Woods
刊行:1991年
訳者:棚橋志行






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死を呼ぶスカーフ [海外の作家 あ行]


死を呼ぶスカーフ (論創海外ミステリ 9)

死を呼ぶスカーフ (論創海外ミステリ 9)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2005/01/01
  • メディア: 単行本


<カバー袖あらすじ>
若く美しいファッション・モデル、イーデン・ショーは、幼なじみのエイヴェリル・ブレインの結婚式のために故郷セントルイスへ向かう。再び浮上する幼なじみとの確執、将来の夫となる男の存在……それぞれの思惑が交錯する、手に汗を握る極上のロマンティック・サスペンス。
殺人へといざなう恐怖の夜間飛行、そして悪夢の七日間がはじまる。


2024年5月に読んだ2冊目の本です。
単行本で、論創海外ミステリ9。
ミニオン・G・エバハートの「死を呼ぶスカーフ」 (論創海外ミステリ 9)

初期の論創海外ミステリには、巻頭に「読書の栞」という解説のような紹介文があります。
その筆者である横井司によると、著者ミニオン・G・エバハートは、ハワード・ヘイクラフトが名づけた<もし私が知ってさえいたら(HIBK = Had I But Known)>派に属する代表的な作家だそうです。
<もし私が知ってさえいたら>派といえば、メアリー・ロバーツ・ラインハートが有名で、「螺旋階段」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)は読んでいます。
<もし私が知ってさえいたら>派は、ミステリ的には凡庸と評価されることが多い(というか、そもそも取り上げられない?)ような気がしますが、一時期流行したようですし、謎解きものとしての興趣はさほどなくても、どこかおっとりしたサスペンスは読んでいて楽しいような気がしています。
「螺旋階段」も、まずまず面白かった記憶が。
ロマンチック・サスペンスといえば、印象は変わるのかもしれませんね。

で、この「死を呼ぶスカーフ」ですが、しっかり楽しみました。
そもそも作風から、古臭いのではと思いつつ手に取ったのですが、「読書の栞」にもあるように、産業スパイ的なエピソードが盛り込まれていたりと意外と現代的だし、時節柄か怪しい外国人が登場したり楽しみどころがしっかりあります。
また、第一の事件が起こった後、極端なプロットになっていてびっくりできますよ。この部分は石持浅海に読んでもらって、感想を聞きたいかも(笑)。
最後の最後に現れるあまりにも典型的な犯人像も、チャーミングだと感じました。

他愛もないと言ってしまえばそれまでなのですが、気に入ってしまいました。


<蛇足1>
「あなたとのささやかな情事を彼は後悔しているし、深入りせずにすんだことを喜んでもいるわ。」(193ページ)
書かれたのが古いのでそういうシーンがなかっただけかもしれませんが、”情事” というような内容はなかったように思いました。
まあ、婚約者を裏切るほどの勢いがついているとしたら、性的関係まで至らなくても ”情事” と呼んでよいのかもしれませんね。こちらの感覚がずれているのかもしれません(笑)。

<蛇足2>
「彼の言うことをそのまま信じたりしたら、返って驚かせてしまうかもしれない。」(305ページ)
こういう場合に「返って」という表記を使うのは珍しいですね。




原題:The Chiffon Scarf
作者:Mignon G. Eberhart
刊行:1939年
訳者:板垣節子








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黒衣の花嫁 [海外の作家 あ行]


黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)

黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2023/12/26
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ジュリーと呼ばれた女は、見送りの友人にシカゴへ行くといいながら、途中で列車をおりてニューヨークに舞い戻った。そして、ホテルに着くと自分の持物からイニシャルをすべて消していった。ジュリーはこの世から姿を消し、新しい女が生まれたのだ……やがて、彼女はつぎつぎと五人の男の花嫁になった──結婚式も挙げぬうちに喪服に身を包む冷酷な殺人鬼、黒衣の花嫁に。巨匠ウールリッチの黒のシリーズ劈頭を飾る名作。


2023年12月に読んだ6冊目の本です。
コーネル・ウールリッチの「黒衣の花嫁」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
丸善150周年記念で限定復刊されたもので、奥付は2019年2月の9刷。
(裏側の帯に、丸善、ジュンク堂のコメントがあるのですが、的外れも甚だしく笑ってしまいました。狙いすぎで、かえって大きく外してしまっていますよ)
初読です。

こちらの勘違いによる勝手な思い込みで、「喪服のランデヴー」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)とごっちゃにして読んでしまいました。

引用したあらすじにも出てくるジュリーと呼ばれる女が決意を示すシーンから物語は始まり、
第一部 ブリス
第二部 ミッチェル
第三部 モラン
第四部 ファーガスン
第五部 ホームズ
と、美しい女により男が次々と殺されていくという展開を見せる物語です。

そうとははっきり書いていないのですが、当然、ジュリーが犯人なのだなと読者にはわかる次第です。
このあたりの雰囲気作りは、やはりウールリッチ(アイリッシュ)はうまいですよね。

でも、この物語のストーリーラインで、このラストはないんじゃないかなぁ。
ジュリーサイドの事情がほとんど明かされないことが余計にそう感じさせた要因かもしれません。
かなりの幸運にも助けられ、次々と首尾よく殺しを重ねていくジュリー(と思われる女)に一種の爽快感を覚え(こらこら!)読んでいくと思われるのですが、なんとも言えないモヤモヤ感が残るんですよね。

ウールリッチ(アイリッシュ)はプロットが破綻していることが多く、むしろそれを逆手に取った作品なのかもしれません。

さて、「黒い天使」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想で書いたことを繰り返して感想を結びたいと思います。

まだまだウールリッチ(アイリッシュ)の作品は読みたいので、早川書房さん、東京創元社さん、ぜひぜひ復刊をお願いします。


<蛇足1>
「一つや二つぐらいなら、弱点のあるアリバイというのは聞いたことがありますが、この場合はまるで日向にさらした綿菓子ですからね。」(178ページ)
綿菓子を食べたのは遥か遥か昔で、記憶が定かではありません。綿菓子って、日に当たると溶けましたっけ?

<蛇足2>
「駅で忠実な下僕をこぼして、彼がひとりでのんびりと家に戻ったのは、かれこれ十一時近い時刻だった。」(278ページ)
「こぼす」というのが最初ピンと来なかったのですが、車で行って駅で従僕を降ろしたということですね。ちょっと面白い表現だと思いました。


原題:The Bride Wore Black
作者:Cornell Woolrich
刊行:1940年
訳者:稲葉明雄




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聖なる怪物 [海外の作家 あ行]


聖なる怪物 (文春文庫 ウ 11-3)

聖なる怪物 (文春文庫 ウ 11-3)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/01/07
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
狂瀾。錯乱。哄笑。老優ジャックが語り出す。退廃と乱行の成功物語を。薬物に溺れ、酒に乱れた半生を。大邸宅のプールサイドにジャックの爆笑が轟きわたる。だが油断は禁物。ジャックの笑いの下にはヤバいものがかくされているのだ……巨匠が《狂気の喜劇》と名づけ、上によりをかけて紡いだ戦慄の長篇。笑ってられるのは途中までだ。


2023年11月に読んだ9冊目の本です。
ドナルド・E・ウェストレイクの
「聖なる怪物」 (文春文庫)
またもや古い本を積読から引っ張り出してきました。
奥付を見ると2005年1月10日。20年近く前ですね。

このブログを始めてからウェストレイクの感想を書くのは初めてですね。
タッカー・コウ名義の悪党パーカーシリーズは1冊しか読んでいませんが、ウェストレイク名義の作品はドートマンダーシリーズはじめ文庫はかなり読んできていますし、木村仁良による解説で楽屋落ちと呼べる ”ウェストレイキズム” として紹介されているリチャード・ホルト名義の「殺人シーンをもう一度」 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)も読んでいます。
ちょっと意外でした。

タイトルの「聖なる怪物」というのは、主人公(で、ある意味語り手)である俳優ジャックのことを一人の妻が評するセリフ(198ページ)からです。
「いろいろな面であなたは怪物、飽くことのない乳児期の表れよ。それと同時に、神聖な愚者、聖なる怪物、現実のきびしさに影響されない純真な人なの。あなたは英雄になれる。信じられないほどの強いものの、あなたがどれほど脆弱なのかは、わたしでさえもわからない」

物語は、ジャックの視点から、インタビューされているシーンと、その回答と思われる回想シーンで主につづられます。
それとは別に幕間というインダビュアーの視点のようなシーンがたまに挿入されます(最初に出てくるのが104ページ)。

狂騒に満ちた映画界の様子を、一人の薬に溺れた映画スターの目を通して回顧する、という枠組みの物語のように見受けられます。
幕間に至るまでもなく、この枠組みにそこはかとなく違和感を感じるようになっています。

引用したあらすじでは「笑ってられるのは途中まで」と書かれ、解説では ”衝撃的かもしれない結末” と書かれているその結末に、今回なぜか見当が早々についてしまいました。
別段結末を予想させるような狙いの作品ではないと思われますが、きちんと手がかりとなるようなエピソードがちりばめられているのがポイントで、そのせいでわかりやすくなっていると思われます。
ラストで意外だ、あるいは衝撃的だ、と思われる方も、ああ、あのシーンはこれを匂わせていたのだな、と思い当たるところがあると思います。

面白かったです。
この物語、ジャックとは別の人物の視点から綴るとどうなるのだろう、という興味もわきました。


原題:Sacred Monster
著者:Donald E. Westlake
刊行:1989年
訳者:木村二郎




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野蛮なやつら [海外の作家 あ行]


野蛮なやつら (角川文庫)

野蛮なやつら (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
舞台はカリフォルニアのラグーナ・ビーチ。2人の若者ベンとチョンは、幼なじみのオフィーリアとの友好的な三角関係を愉しみつつ、極上のマリファナの栽培と売買で成功を収めていた。だがメキシコのバハ麻薬カルテルが彼らのビジネスに触手を伸ばす。傘下入りを断った2人に対し、組織はオフィーリアを拉致。彼女を取り戻すため、2人は危険な賭けに出るが──。鬼才ウィンズロウの超絶技巧が冴え渡る犯罪小説の最進化形。


2023年9月に読んだ9作目(11冊目)の本です。
ドン・ウィンズロウ「野蛮なやつら」 (角川文庫)

いきなりの1ページ目の第1章が

ざけんな。

そして第1章は、これで終わり。
独特の文体でつづられる、野蛮なやつらの物語。
最初のうちはこの文体に戸惑うのだけれど、次第に、個性あふれる登場人物たちが絡み合い、作用しあって紡がれる物語にしっかり引き込まれていきます。

ベン、チョンサイドは、麻薬ビジネスをやっているといっても、どこか牧歌的というか、ゆるゆる。
一方のメキシコのカルテルは、当然のことながらハード。
ゆる~いマンガ的世界(現代の発達したコミックというよりは、昔懐かしいマンガのイメージです)とハードな裏社会とをかけあわせるとどうなるか、というのを斬新な実験的文体でつづった作品、ということになります。

個人的にはゆるゆるの世界を強く支持したいのですが(あっ、でも麻薬はダメです)、この2つが混じった世界がどうなるか、多勢に無勢あるいは組織体個々の決着がどうなるかというのは、カルテルサイドの内紛がどの程度影響を及ぼすかにかかってくるとは言え、まあ容易に想像できてしまうわけで、ベン、チョンサイドに立って読み進める読者としては、悲劇的な結末を迎えてしまうのだろうな、とやや悲観的になってしまいます。

ゆるゆるだった世界が、途中からハードな世界に搦めとられ、どんどん色を変えていく様子。
想定される悲劇的な結末。

軽いウィンズロウが懐かしくもありますが、これはこれで充実した読書体験でした。


<蛇足1>
「何が災いしたと思う?」
「強欲だな」と、チョン。「強欲と不注意と頭の悪さ」
(ベンに言わせれば、それは、今は亡き ”連合” のみならず、人類全体にとっての滅亡の三要素だった)(56ページ)

<蛇足2>
「手荷物受取所にベンの姿があり、まるでコスタリカの研修旅行から帰った大学生のがきみたいに、緑色のダッフルバッグを待っている」(92ページ)
「ベルトコンベアでバッグが運ばれてくる。チョンがそれを取って、肩にかけ、三人で外へ向かうその途中に」(93ページ)
海外から帰ってきたベンをチョンたちがジョン・ウェイン空港へ迎えに行くシーンです。
ここを読むと、迎えに来た一般人が、手荷物受取所のベルトコンベアのあたりまで行けるようです。
国際線の出口あたりがこういう構造になっているとは思えないのですが......

<蛇足3>
「あお連中の下で働く気はないだろう?」ベンが確かめる。
「ああ」と、チョン。「まったくない。決まり金玉だ」(138ページ)
決まり金玉(笑)。
懐かしいですね。
ニール・ケアリー、帰ってきて!

<蛇足4>
「仏陀の怒りを買うよ」
「あの太っちょの日本人のか」
「太っちょインド人だ」
「日本人だと思ってた。でなきゃ、中国人だと。仏陀はアジア人じゃなかったのか」
「インドもアジアだよ」(138ページ)
英語のアジアというのは、日本人のイメージと違ってインドあたりを指す語だと理解していたのですが(でないと、東アジアや東南アジアという語の方角がおかしくなってしまう)、チョンは日本人と同じようなイメージを抱いているようですね。
もともとインドとの結びつきが強いイギリスと異なり、一般的なアメリカ人にしてみたら、インドよりも日本や中国が先に台頭していたからからもしれませんが。



原題:The Savages
著者:Don Winslow
刊行:2010年
訳者:東江一紀




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私立探偵 [海外の作家 あ行]


私立探偵 (講談社文庫)

私立探偵 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/09/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
娼婦ライラのベッドで、ブリーム神父が腹上死した!“やもめで片目でアル中気味”の私立探偵ラルフ・ポティートは、階上に住むライラの頼みを断れず、神父の死体を教会に運ぶのを手伝う。その直後、彼女の部屋が突然ガス爆発。本人は大火傷を負う。事件に巻きこまれたポティートは、教会と神父の謎を追う。


2023年9月に読んだ4作目の本です。
ローレン・D・エスルマン「私立探偵」 (講談社文庫)
どこから引っ張り出してきたんだ、と言われそうなほど長らく積読していた本です。
奥付を見ると1996年7月の第2刷。同年6月初刷ですからすぐに増刷がかかったのですね。

ローレン・D・エスルマンといえば、ローレンス・ブロックの「殺し屋 最後の仕事」 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)(感想ページはこちら)に名前が出てきておやっと思いましたね。

さておき、「私立探偵」とはなんともそっけないタイトル。
原題が "Peeper"
解説で木村仁良が書いているように、直訳するとのぞき屋で、私立探偵の卑称です。
なので、原題通りといえば原題通り。でも「私立探偵」というのと「のぞき屋」というのではまったく印象が違いますよね。なにか工夫がほしかったかな。

飲んだくれ、というのはハードボイルドに出てくる私立探偵にはよくある属性ですが、探偵役であるラルフ・ポティートは開巻早々二日酔いを電話で起こされ、階下の売春婦から腹上死した神父の死体隠ぺいを手伝ってほしいと頼まれるという、まあ、卑称にふさわしい登場ぶり。
彼の設定は、まさしく Peeper です。

その点で到底感情移入できませんので、読者はまさしくカメラアイのごとくにラルフの目を通して事件を見守ることになります。
これ、ひょっとして作者の技巧だったのでしょうか?

その後も狂騒が続いて、あまりハードボイルドらしくない展開。
被害者(殺人かどうかもわからないのですが)が神父なだけに教会が絡み、あやしげな教会の使者が出てきて(巻頭にある登場人物表は見ないほうがよいですね)、(だいぶ先まで話を明かしてしまいますが)政府機関とのつながりまで......

ハードボイルドらしくない展開ながら、ハードボイルド風のストーリーに収斂していくところがポイントなのだと思いました。
探偵が卑しき街を行くのではなく、卑しい探偵が街を行くのではありますが。
ミステリとしてみた場合には、ハードボイルド風のストーリーにしたことが長所でもあり、短所でもあり。

ハードボイルドをお好きな方の感想を聞いてみたいです。




<蛇足1>
「亡くなったご亭主のことやピクルズのすごい効能について熱弁をふるいながらな」(72ぺージ)
ピクルス、というほうが一般的ですね。英語の発音的にはピクルズの方が近いと思いますが。

<蛇足2>
「あんた、本当に私立探偵なの? あのスペンサーのような?」
「スペンサーは実在の人物じゃない」(164ページ)
「デイン家の連中には淫蕩な血が流れているんじゃなかろうか? そう、”デイン家の呪い”だ。」(194ページ)
「デイン家の呪い」(ハヤカワミステリ文庫)のタイトルを出すために、登場人物の名前をデインにしたのでしょうか?(笑)

<蛇足3>
「《キャリー》だ。そういえば、スティーブン・キングのホラー小説のタイトルはCで始まることが多いことにいまはじめて気づいた。」(336ページ)
あれ? そうかな、と思いましたが、本書が刊行された1989年当時では、
「キャリー」 (新潮文庫)
「クージョ」 (新潮文庫)
「クリスティーン」〈上巻〉〈下巻〉 (新潮文庫)
の3作でしょうか。
同時期だと、
「呪われた町」 上 下 (文春文庫)(Salem's Lot)
「シャイニング」 (上) (下) (文春文庫)
「ザ・スタンド」 1 2 3 4 5 (文春文庫)
と S も同じだけ出ていますが、”The” の捉え方が微妙ですね。


原題:Peeper
著者:Loren D. Estleman
刊行:1989年 
訳者:宇野輝雄



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怪盗紳士モンモランシー2 ロンドン連続爆破事件 [海外の作家 あ行]


怪盗紳士モンモランシー2 (ロンドン連続爆破事件) (創元推理文庫)

怪盗紳士モンモランシー2 (ロンドン連続爆破事件) (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/12/11
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
諜報員モンモランシーは崖っぷちにいた。仕事先のトルコで麻薬に溺れてしまったのだ。手を焼いたジョージ・フォックス・セルヴィン卿は友人の医師に治療を依頼しようとしたが、肝心の医師は自分のミスで患者を死なせてしまい、引退を決意する始末。ジョージは二人を立ち直らせようと、スコットランドに連れていく。一方ロンドンでは爆破事件が起こり、諜報員が必要とされていた。


2023年2月の感想が終わったので、読了本落穂ひろい。
エレナー・アップデールの「怪盗紳士モンモランシー2 ロンドン連続爆破事件 」(創元推理文庫)
2017年6月に読んでいます。
前作「怪盗紳士モンモランシー」(創元推理文庫)(感想ページはこちら)を読んだのが2017年1月だったので、割と間を開けずに読んだのですね。珍しい。

非常に広い意味でのミステリーではあるのでしょうが、ミステリ味は非常に薄味で、前作の感想にも書きましたが、古き良き時代の大衆小説、という趣きです。

副題に、ロンドン連続爆破事件とあるように、ウォータールー駅、キングスクロス駅の爆破事件を扱っています。
もう一つの主要な事件は、スコットランドの離島タリモンド島で赤ん坊が次々と死んだ事件。

いずれも、きちんと捜査する、というよりは、行き当たりばったり。出たとこ勝負で真相に辿り着くのですから、ミステリとして評価するのは難しいでしょう。
それよりは、その折々で登場人物たちの変貌ぶりとか、ドタバタぶりを楽しむのが吉なのでしょう。
古き良き時代の大衆小説という所以です。

大衆娯楽小説を目指していることは、たとえば「26 ウォータールー駅」という章で、モンモランシーはジョージ卿に過去を打ち明けるシーンでも明らかです。
このシーンの芝居がかっていることといったら。
おそらくはあえて古めかしい展開、描写にしているのでしょう。
邦訳はこの第2作で打ち切られてしまったようですが、本国では好評なのかシリーズがかなり続いているようです。

こういう作品が日本で受けるのは難しいのかもしれませんね。


<蛇足1>
「この時期は『焚き火の夜(ガイ・フォークス)(十一月五日の晩の祭)』の準備でフル稼働していますからね。」(41ページ)
ガイ・フォークス・デイ(あるいはガイ・フォークス・ナイト)。懐かしく感じますね。
日本語で「焚き火の夜」と訳すのですね。知りませんでした。
焚き火や花火をする日です。
ガイ・フォークスというのは国王ジェームズ1世を暗殺しようと国会議事堂に火薬を運び込んだ暗殺未遂犯で、それを記念するとは変なお祭り、と思っていましたが、ジェームズ1世の生存を祝ったのがいわれなのですね。そりゃ、そうですよね。暗殺犯を祝ったりはいないですね(笑)。

<蛇足2>
「30 キュー・ガーデンとコベント・ガーデン」において、キュー・ガーデンで人を探すというシーンがあります。作中では広くて見つからなかった、となっているのですが、当たり前です!
あんな広大な場所で人を探すのは無理でしょう( 132 haあるそうです)。


原題:Montmorency on the Rocks
著者:Eleanor Updale
刊行:2004年
訳者:杉田七重




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死体にもカバーを [海外の作家 あ行]


死体にもカバーを (創元推理文庫)

死体にもカバーを (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/12/11
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
心機一転、〈ページ・ターナーズ〉書店で働き始めたワケありのヘレン。困ったお客と、もっと困った最低オーナーにもめげず、日々奮闘する彼女に、またも災難が降りかかる。アパートでシロアリが大発生したかと思えば、お次はくだんの最低オーナーが殺される始末。おまけに容疑者として逮捕されたのは意外な人物で……!? 南フロリダで職を転々、必死に働くヒロインの活躍、第二弾。


2022年12月に読んだ3冊目の本です。
「死ぬまでお買物」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2弾。

主人公ヘレンの設定に特色のあるシリーズです。
自分の居所を見つけられないようにしないといけない状況なので、活動にいろいろ制約があり、就ける職業も限られる。
職業を転々とするという趣向になっていて、今回は本屋の店員。
支えてくれるのは住んでいる<ザ・コロナード・トロピック・アパートメント>の面々。

事件は、その書店のオーナーが殺される、というもので、こいつがなんとも嫌なやつというのがポイントですね。
殺される理由なんかいくらでもありそうな人物という設定なのですが、こういう場合は犯人になりそうな怪しげな容疑者がわんさかいて、捜査は右往左往というのが定番の展開かと思うところ、実際に検討される容疑者は絞られているのがポイントですね。
ミステリとしての精度はたいしたことないのですが、主人公たちの日常の(といってもわれわれの日常とは一味も二味も違いますが)てんやわんやのさなかにチョロチョロと謎解きに取り組むゆるさを楽しんでしまいました。
主人公たちのキャラクターがそうさせてくれるのでしょう。

シリーズはこのあと
「おかけになった犯行は」 (創元推理文庫)
「結婚は殺人の現場」 (創元推理文庫)
と第4作まで翻訳がされたのですが、いずれももう品切・絶版状態です。
復刊そして続刊を期待したいです。


<蛇足1>
「ヘレンがようやくレジを決算したのは二時だった。」(196ページ)
レジで、一日の売上と手元の現金が合うかどうかを突合する作業(いわゆる「締める」という作業ですね)のことをいうのだと思うのですが、レジを「決算する」というのでしょうか?

<蛇足2>
「昼間のきれいな蝶は消えてしまった。いまは皮の翼を持つ生き物が腹の中ではばたき、不安をかきたてている。」(206ページ)
皮の翼を持つ生き物って何でしょう? わかりません。
皮翼目という分類になる生き物がいるみたいなので、それでしょうか? こういう言い回しが英語にはあるのかな?



原題:Murder Between the Covers
作者:Elaine Viets
刊行:2004年
訳者:中村有希


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ソロモン王の絨毯 [海外の作家 あ行]


ソロモン王の絨毯 (角川文庫)

ソロモン王の絨毯 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2023/01/22
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ロンドンの混んだ地下鉄で、一人の娘が圧死した。手に、ペルーの花嫁衣裳を握ったまま……。地下鉄マニアのジャーヴィスは祖父が残してくれた学校をアパートにしている家主。そこに集まってきたのは、出戻りの親戚で自由奔放なティナとその子供たち、地下鉄構内でフルートを吹くトム、夫と娘を捨てヴァイオリニストを目指すアリス。そして、謎めいた男アクセル……。愛憎入り乱れ、人生も目的も違う人々を乗せた〈ソロモン王の絨毯〉が行き着く先にある、驚くべき運命とは!? あなたは果して巧みに仕掛けられた謎に気づくことが出来るか? ゴールド・ダガー賞受賞作。


2022年7月に読んだ最初の本です。
5月にルース・レンデルの作品として「眠れる森の惨劇」 (角川文庫)を12年ぶりに読み、今回はこのバーバラ・ヴェイン名義の「ソロモン王の絨毯」 (角川文庫)
1991年英国推理作家協会賞(CWA賞)のゴールド・ダガー受賞作。

タイトルのソロモン王の絨毯とは、地下鉄のことです。
「プラットホームで待っている間、ジャーヴィスはソロモン王の絨毯について話した。緑のシルクでできたこの魔法の絨毯は、すべての人間がその上に立てるぐらい大きい。用意ができると、ソロモンは行きたい場所を命令し、絨毯は空中に舞い上がり、望みの駅で一人一人を下ろした。地下鉄はこの絨毯のことを 連想させるとジャーヴィスはいい、彼のテーマについて詳しく語ったが、二人は聞いていなかった。」(175ページ)
そして巻頭の献辞は
「ロンドン地下鉄で働く男性と女性に、そして、その地下道で音楽を作り出している人々に。」

冒頭、ロンドン地下鉄で起きた女性の死が描かれます。
その後、地下鉄マニアのジャーヴィスとその周囲の人物たちへと物語の重心が移ります。
ルース・レンデルのノン・シリーズものや、バーバラ・ヴァイン名義の作品は、ねちねちしている印象があります。この作品もねちねちしているのですが、ねちねち度は低め。おそらく地下鉄という題材のおかげかと思います。
久しぶりだったからということもあるかもしれませんが、快調に読み進みました。

ミステリとしては、濃厚な人間関係のなかで徐々に明らかになっていく計画・狙いがラストへ向けて高まっていくところ、違った角度から光がさっとあたって見え方が変わるところがポイントかと思われます。
解説で新保博久がいうとおり「これまで著者の作品にあまり馴染んでこなかった読者にも新鮮な一冊として手に取ってもらえる」作品かと思います。


<蛇足1>
「死体がのせられたのはグルセスター・ロードか、その近辺で、このあたりは高い建物が線路のすぐ際まで迫っているとはいえ」(146ページ)
シャーロック・ホームズ「ブルース・パーティントン設計書」を引き合いに出して語られる部分で、駅名なのか地名なのか、Gloucester Road が出てきています。
グルセスターと訳されており、スペルを見るとそう書きたくなるのですが、発音はグロスターです。
ところが、150ページに来ると、今度はきちんと「グロスター・ロード」となっています。修正漏れだったのでしょうか?

<蛇足2>
「右回りの環状線に乗るためにホームを移動し」(150ページ)
確かに、Circle Line は訳すと環状線ですね。ほかの路線と合わせて、サークル線とでもしておけばよい気もしますが。Central Line は中央線とせずに、セントラル線(15ページ)となっているのですから。


<蛇足3>
「クレジットカード一枚、口座即時引き落としカード一枚、銀行のキャッシュ・カード一枚。彼女の小切手帳も抜き出した。」(365ページ)
口座即時引き落としカードというのは、訳者も苦労されたでしょうね。
デビット・カードとして日本でも1999年から始まった制度のようですが、それほど普及はしていないですね。
ただ、デビットカードは銀行のキャッシュカードと一体になっているのが普通でしたので、ここに書いてあるように別々になっているのは少し珍しいですね。



原題:King Solomon's Carpet
著者:Barbara Vine
刊行:1991年
訳者:羽田詩津子




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