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向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏 [日本の作家 赤川次郎]


向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏 (光文社文庫 あ 1-192)

向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏 (光文社文庫 あ 1-192)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/09/13
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
杉原爽香は、恩師の河村布子から、布子の古い知人・小川久子の娘が起こした殺人事件について相談を受ける。どうも冤罪らしいのだ。しかもすでに娘は服役中という。真犯人を見つけ出すため調査に乗り出す爽香たち。たが、真実を隠蔽しようとする勢力が、さまざまな手段で爽香たちの行く手を阻む。冤罪事件の真相解明という、かつてない難題に50歳の爽香が挑む。人気シリーズ第36弾!


2023年12月に読んだ8冊目の本で、2023年12月最後の本です。
シリーズも第36弾で、爽香はついに50歳!。
前作「セピア色の回想録」 (光文社文庫)(感想ページはこちら)では、五十歳マイナス一歳のお祝いの会、というインチキ臭い(笑)設定のパーティが使われていましたが、今回はそういうのはありません──そういえば、栗原英子が今回出てこなかったですね、残念。

今回は正面きっての殺人事件の(再)捜査。
通常だと手に負えないのでしょうが、そこは裏社会にも通じる爽香のこと──実際には、シリーズに時折登場する松下が手助けします。
この冤罪事件のほうは、赤川次郎作品の定番中の定番の設定と展開を見せますので、特段取り立てていうことはないのですが、その他今回爽香ファミリーが巻き込まれる雑多な出来事が、すっと円満に解決していく様子はとても安心できます。これを偉大なるマンネリというのでしょう(悪い意味で言っているのではありません)。

気になったのは、こちら。
「どうしてだか、人に頼られることに慣れてしまっているんです。もちろん、本業もありますし、夫も娘もいますから、できることは限られていますけど、それでも、たいていは何とかご期待に添えることが多いので」(117ページ)
ご期待に添えるは「沿える」の間違いでは? と思いましたが、添えるとする例もあるんですね。
それよりも、こういう発言を爽香がしていること自体が気になりました。
実績を見れば自信過剰とは言えないことは重々承知していますが、本人がそれを口に出すのはまた別問題のように思うので。
頼られているとはいえ、ただでさえ強烈なおせっかいなのに......

さて、来年はなにに巻き込まれてくれるでしょう??

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死者の試写会へようこそ 怪異名所巡り 12 [日本の作家 赤川次郎]


死者の試写会へようこそ 怪異名所巡り 12

死者の試写会へようこそ 怪異名所巡り 12

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2023/08/04
  • メディア: 新書

<帯紹介文>
何が上映されるか分からない試写会〈スニークプレビュー〉に誘われた藍。
そこで流れた映画は、実際に過去に起きた殺人事件をモデルにしていて……
表題作「死者の試写会へようこそ」ほか、全6話。
人気シリーズ第12巻!


2023年11月に読んだ最後の本です。

シリーズ第12巻「死者の試写会へようこそ 怪異名所巡り 12」

「正義果つるところ」
「雪の中のツアーガイド」
「ジャンヌ・ダルクの白馬」
「KO牧場の決斗」
「死者の試写会へようこそ」
「月のウサギはお留守番」
の6編を収録。

快調に続いているシリーズで、赤川次郎お得意の怪異現象も好調です。
主人公である藍も
「変わった人には慣れてます」「幽霊に比べれば、どうということも……」(237ページ)
というくらいで、とても頼りがいあり。
レギュラーであるツアー客で高校生(で金持ちというのが赤川次郎らしい)の遠藤真由美もいい感じです。
「どうしたの、そのブレザー? よその学校の制服じゃない?」
「万一、何かまずいことになっても、他の高校の生徒だと思われたら大丈夫でしょ」(238ページ)
なんて、この物語に飛び込んでいくのにぴったりな性格をしていますね。

本のタイトルが「死者の試写会へようこそ」ということで、堂々のおやじギャグ。
脱力感満載なのですが、その表題作が個人的には注目作。
長い人類の歴史の中では、ないとは言い切れないような事態なのかもしれませんが、かなり荒唐無稽な事件の背景を採用しています。その荒唐無稽なプロットを、力技というのではなく、単にサラッと書いてまとめ上げているのがすごい。
赤川次郎の力はこういうところに(も)あるんだな、と感じ入りました。


<蛇足1>
「君原の言うことが間違っているとは言えない。しかし、あそこに建っていたマンションは幽霊ではなかった」(9ページ)
「君のいる所、必ず何かまともじゃないことが起るね」
という君原のセリフを受けての文章です。
一瞬「しかし」のつながりがわかりませんでした。

<蛇足2>
「少し早いですが、ここでお弁当を食べましょう」
と、藍は言った。
「この先、落ちついて食べられる場所はありませんから」(75ページ)
「雪の中のツアーガイド」の1シーンで、山登りをしています。
藍はこの山に行ったことはなかったように思ったのですが、手慣れた案内振りですね。
お客様を連れていく手前、事前に登っておいたのでしょうか?──ただ、霊感ガイドで藍が行くと何かが起こるという設定なので、事前に行く、というのはあまりこのシリーズにはふさわしくない気がしますが......

<蛇足3>
「社長令嬢の遠藤真由美は、〈すずめバス〉にとっては大切な『お得意様』だ。しかし、本来は幽霊や心霊現象が大好きという、ちょっと変わった女子高校生。」(228ページ)
ここは「本来は」という語を使うのにあまりふさわしくない箇所のように思えます。

<蛇足4>
「ジャンヌ・ダルクの声や画像を作るのは、もともとCGアニメの会社でアルバイトしてたので、得意でしたから」(136ページ)
画像はともかく、ジャンヌ・ダルクの声って......??

<蛇足5>
ネタバレ気味なので、気になる方はとばしてください
「〇〇はSNSに出た写真が多いに話題になったのと、今田を危うく殺しかけたことで、大学側から処分を受け、結局他の私立大学に移って行った。」(257ページ)
いやいや、この〇〇がやったことは、殺人未遂ですよ。内容的に殺人未遂とまではしなくても傷害罪とかには問えそうです。そういう教員が処分で済まされて、他の大学に移れるなんて、あるのでしょうか?






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白鳥城の吸血鬼 [日本の作家 赤川次郎]


白鳥城の吸血鬼 (集英社オレンジ文庫)

白鳥城の吸血鬼 (集英社オレンジ文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2023/07/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ドイツでの仕事ついでに、ロマンチック街道を観光中のクロロック一行。〈白鳥の城〉として名高いノイシュバンシュタイン城を訪れた際、日本からの修学旅行生に出会い同行するが、彼女らは忽然と姿を消し……? ただならぬ空気を感じたクロロックとエリカは、絢爛豪華な城内の調査に乗り出す! 表題作ほか2編を収録。吸血鬼はお年ごろシリーズ、待望の最新作!


2023年10月に読んだ10冊目の本です。
「吸血鬼はお年ごろ」シリーズの「白鳥城の吸血鬼」 (集英社オレンジ文庫)

「吸血鬼と家出娘のランチタイム」
「吸血鬼と仇討志願」
「白鳥城の吸血鬼」
の3編収録です。

「吸血鬼と家で娘のランチタイム」は、ダムに沈む村、というわりと赤川次郎お得意の設定を背景にしています。
かなり無茶苦茶なストーリーになっているのが残念。
このダムのある村、どこなのか書かれていないので、かえって気になりました。
令和の時代とは到底思えないような田舎で、携帯もまったく普及しておらず、東京も含め日本の他の地域の情報からまったく隔絶されているところ、という感じ。こんなところ、ありますか?
むしろタイムスリップしてきた、という方がありそうです。

「吸血鬼と仇討志願」は、赤川次郎お得意の芸能界もの。
それぞれ膨らませることができそうなエピソードを短い中に要領よく詰め込んだ作品。
犯人の狙いと手段のアンバランスさが気になりますし、そもそもの発端となる十三歳の役者小田信之の父が役者人生を失う契機となった覚醒剤がどこから来たのか等肝心のところが詰められていない印象です。

「白鳥城の吸血鬼」は、赤川次郎お得意のドイツもの。舞台はノイシュバンシュタイン城。
ノイシュバンシュタイン城に存在する怪異が中途半端なことに加え、修学旅行生をめぐるエピソードが無理すぎる(容姿の描写がありませんので不確かではありますが、日本人をドイツ人と誤認させるのはかなり無理があるのでは?)ので残念。

3話まとめて、赤川次郎お得意の題材を扱っていますが、どうも書きとばしてしまった印象ですね。
一旦シリーズを休んで充電したほうがよいかもしれません。
(そんなことを言い出したら、はるか以前に充電しておけ、ということかもしれませんが)


<蛇足1>
「咲さんと二人で、きっと信ちゃんを助けて下さるわ。ね、社長」(109ページ)
クロロックの秘書金原ルリが咲というタレント(女優?)に言うセリフですが、ここは、「エリカさんと二人で」に間違いではないかと思うのですが。

<蛇足2>
「信ちゃんのメイクがあんな──」
「一時的に肌がやられる成分を混ぜておいたのだな。─略─」
「ごめんなさいね。でも、すぐに顔は元に戻るわよ」(157ページ)
こんな都合の良い薬剤ありますか?




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盗みは忘却の彼方に [日本の作家 赤川次郎]


盗みは忘却の彼方に (トクマノベルズ)

盗みは忘却の彼方に (トクマノベルズ)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/03/20
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
旅番組の撮影で見知らぬ町に取り残されてしまった、崖っぷちタレントの久保田杏。追い打ちをかけるように雨が降り始め、森の中の小屋へと駆けこんだ。「このままじゃ、風邪ひいちゃう」と呟いた瞬間、ドアを開けて入ってきたのは三人の強盗犯! 杏はとっさに隠れるも、クシャミをして密談中の男たちに見つかってしまう。「二つに一つだ。ここで死ぬか仲間になるか」──。彼女は必死の演技で強盗犯の手助けをすることに!? 大人気シリーズ「夫は泥棒、妻は刑事」第二十四弾は、淳一と真弓が一億円強奪事件に立ち向かう!


2023年9月に読んだ12作目(14冊目)で、最後の本です。
「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ最新刊で、第24弾。「盗みは忘却の彼方に」 (トクマノベルズ)

このところ「三毛猫ホームズと炎の天使」 (KAPPA NOVELS)(感想ページはこちら)、「花嫁純愛録」 (ジョイ・ノベルス)(感想ページはこちら)と立て続けにあまりにも現実的とは思えない内容にケチをつけてきましたが、この「盗みは忘却の彼方に」 に関しては、どれだけ現実離れしても同様のケチはつけません。なんといっても、夫は泥棒、妻は刑事、というのですから。
このシリーズはこれでいい、現実ではありえない話と割り切って楽しむシリーズだと理解しています。
(その意味では、カバー裏に「現実にもこんな夫婦がいたら面白いのに、と誰もが思う」と書いてあるのは少々言い過ぎかと思いますが、エンターテイメントとしてはいいのでしょうね)

冒頭強盗事件に巻き込まれるタレント杏というところから非現実的なのですが、その後の展開はそれ以上。
そんなことあるかよ! と突っ込みながらも勢いのある展開を楽しみます。
そんな杏があれよあれよという間にTVスターになっていくという赤川次郎好みの展開。
強盗仲間の一人もひょんなことからスターへの道を歩み始める......

杏たちがとてもいい人間のように描かれているので、読者としては幸せになればいいな、と願いながら読むことになるわけですが、それでも罪を犯したことは事実。
話の途中を楽しみながらも、どういうエンディングになるのだろうと大きな気がかり。
いつもの赤川次郎パターンだと、しっかり償うべき罪は償って、となりそうですが......
実際にどう落ち着いたか(あるいは落ち着かなかったか)は読んでいただくべきかと思いますが、結構思い切ったラストになっているように思いました。
タイトルもなかなか含蓄深いです。

ひょっとしたら少しずつではありますが、5月に感想を書いた「たそがれの侵入者」 (フタバノベルズ)(感想ページはこちら)といい、赤川次郎の作風が変わりつつあるのかもしれません。



<蛇足1>
「しかし、照美の身を守るのは、淳一の泥棒としてのプライドだったのだ……」(67ページ)
人の身を犯罪組織の手から守るのが泥棒のプライドというのはわかりにくいですが(泥棒は別にボディガードというわけではないし、照美は淳一の仲間というわけでもないので)、「お互い、闇の世界で仕事をしている身だぞ。明るい昼の世界で働いている人を脅したり傷つけたりするな」(66ページ)というセリフがその前にあるのでこの文脈で理解するのでしょうね。

<蛇足2>
「コーヒーカップを手で弾き飛ばすと、カップの受け皿をつかんで、散弾銃の男へと投げつけたのだ。更は男の首を横から直撃した。
 男は痛みに呻き声を上げてよろけると、引金を引いていた。正面のガラス窓にボカッと三十センチほどの直径の穴があいた。」(99ページ)
散弾銃なのに穴が一つ? と思いましたが、一発弾を発射する散弾銃もあるのですね。





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花嫁純愛録 [日本の作家 赤川次郎]


花嫁純愛録 (ジョイ・ノベルス)

花嫁純愛録 (ジョイ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2023/03/24
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
刑事と容疑者が、同じ日、場所で挙式。
二人の花嫁の運命は?
刑事の小堀有里は結婚式当日を迎えていた。そこに部下から女子大生殺人事件の容疑者が見つかったと報告。驚くことに容疑者も結婚式当日、式場も同じだと言うのだ。有里は、式直前だというのに捕まえようと控室を飛び出す。容疑者の新婦・みちると友人の塚川亜由美はいたが、肝心の容疑者は逃してしまう。後日、みちるに「夫を助けたければ、小堀有里を殺せ」と謎の人物から脅迫電話があり——。
表題作のほか「花嫁の夏が終る」を収録。シリーズ第36弾。


2023年7月に読んだ最初の本です。
花嫁シリーズ36作目。赤川次郎「花嫁純愛録」 (ジョイ・ノベルス)
表題作と「花嫁の夏が終る」の2話収録。

表題作「花嫁純愛録」は、物語の筋書きも登場人物の設定も、無茶苦茶です。
戯画化というにしてもちょっと度が過ぎているかな、と感じてしまいました。
自分の結婚式を投げ出し、逮捕状もないのに(大学教授を大学で見かけた、という目撃証人がいるだけという状態)相手の結婚式に乗り込んでぶち壊して拘束しようとする女性刑事の存在がまず理解できませんし、その後の女性刑事とその結婚相手の母親の言動も理解を超えています。
犯人サイドの意図や行動も到底納得できるものではありませんし、さらに驚くことに、肝心かなめのある登場人物の行動も謎です。
「浮世離れ」(116ページ)という語で片付けられるようなレベルではないと感じてしまいます。
赤川次郎には、人間ではないもの、人知を超えた存在が登場する作品も数多くあり、そういう作品であれば現実的な物語ではないのですから、変わった人物や設定があってもこの世界ではこういうこともあり得るのかな、とまだしも受け入れられるのですが、この花嫁シリーズはそういう位置づけではないので、もう少し現実に寄り添った形にしてもらえるとありがたいです。
花嫁シリーズらしく、ちゃんとした花嫁が登場したのはよかったのですが。

「──こんなお金持の助手を持った名探偵っていないわよね、と亜由美は思った。」(122ページ)
というセリフが最後に亜由美の口から飛び出して笑ってしまいました。
探偵自身が金持ちというのは、筒井康隆「富豪刑事」 (新潮文庫)がすぐに思い浮かびますね。
助手が金持ちというのはなかったでしょうか?
赤川次郎自身の悪魔シリーズはどうかな? 香子は助手ではなく探偵でしょうか?


「花嫁の夏が終る」は「花嫁純愛録」に比べると幾分現実的ですが、こちらの登場人物たちも強烈です。
ただこちらの場合は「組織」が出てきます。赤川次郎の作品にはよく出てきますね。
実際には暴力団やマフィア等実在しますので現実にもあり得るものではあるのですが、こういう「組織」は、日常の存在とは認識しづらく、「組織」が出てくると現実離れした内容も受け入れられやすくなる気がします。

もっとも赤川次郎の作品では、こういったことは気にせず、ただただ作品世界の中で楽しむべきなのかもしれませんね。



<蛇足1>
「とても気性の激しい人で。イギリス人には珍しいタイプです。」(61ページ)
まあ登場人物の考えに過ぎないのですが、イギリス人は気性が激しくないとは限らないでしょうに......

<蛇足2>
「難民の支援のような活動に、日本の企業は消極的だ。景気のいいときには、
『文化芸術活動を支援する』
 などと言うのだが、一旦会社の経営が傾くと、
『うちは慈善事業をやっているんじゃない』
 などと言い出して、真先にその手の支援を打ち切ってしまう。
 支援は『続けること』にこそ意味があるのに。」(85ページ)
言いたいことはわからないでもないですが、「難民の支援」と「文化芸術活動の支援」は同列に論じられないと思いますし、経営が傾いた時にまで支援の継続を求めるのは無理があるでしょう。
流行に乗っかるだけの意識で支援をすることには疑問を持ちはしますが。

<蛇足3>
「殿永さんは、三崎を追っていたんですか?」
「三崎は詐欺師でしたが、その被害にあって、自ら命を絶った人も何人かいたんですよ。これはもうお間接的な殺人としか言えませんからね」(159ページ)
詐欺の被害を考えると、間接的な殺人というのは一般論としてはその通りだと思いますが、これは刑事による発言となると問題だな、と思います。
そういえば、殿永刑事は何課に所属しているのでしょう??




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三毛猫ホームズと炎の天使 [日本の作家 赤川次郎]


三毛猫ホームズと炎の天使 (KAPPA NOVELS)

三毛猫ホームズと炎の天使 (KAPPA NOVELS)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/02/22
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
命拾いした「洞窟仲間」七人を相次いで襲う危機──。
闇の中でよみがえった「過去」が新たな事件を生む!
崩落事故で洞窟に閉じ込められてしまった男女七人。全くの闇に包まれ薄まっていく酸素に全員が朦朧とするなか、何者かが過去に犯した殺人の告白を始めた……。間一髪、ある娘の機転により奇跡的に全員が無事救助されたが、あの告白が誰のものなのかは謎のままだった。やがて、命拾いした七人のうち、若くにぎやかだった仲間千枝が刺し殺される事件が発生。その直後、やはり洞窟から生還した会社員・小泉昭夫がひき逃げに遭い命を落とす。二つの “事件” の繋りに気付いた片山刑事と妹の晴美は、ホームズと共に事件の真相に迫っていく! 大人気シリーズ第55弾!


2022年5月に読んだ9作目(冊数でいうと11冊目)の本です。5月はここまで。
赤川次郎の「三毛猫ホームズと炎の天使」 (KAPPA NOVELS)
三毛猫ホームズシリーズ55冊目!

このところの、赤川次郎の力の衰えを見せつけられているファンとしては、こうやってシリーズが続いていることをまずは寿がなければいけませんね。

帯に
「闇に閉ざされた洞窟の中で殺人の『告白』を聞いた者たちが次々と命を狙われる──。」
とあり、こういう筋書きはミステリとしてとても興味深いですね。
それぞれのエピソードを紡いでいくのは赤川次郎お得意の手法で、すくなからぬ登場人物を上手にクロスさせていくのですが、ミステリとして期待すると肩すかし。アンフェアと呼んでしまってもよいかもしれません。

タイトルの「炎の天使」というのは登場人物である若手指揮者西田が主宰する〈MKオーケストラ〉が演奏することになるプロコフィエフのオペラのタイトルです。
この西田という男、とても身勝手で読んでいて腹が立ちます。安直と言えば安直な人物設定ですが、読者にそのことが伝わります。
こういう人物は赤川次郎作品によく登場するのですが、この西田の扱いは少々意外でした。

早くも第56作目を期待して待ちます。


<蛇足1>
「何で俺がこんな目にあわなきゃいけないんだよ」
 と、口には出さねど思っていることはひと目でわかった。(25ページ)
「出さねど」とは、えらく古めかしい言い回しをつかったものですね。

<蛇足2>
「これは警察猫です」
と、片山は言った。(168ページ)
警察犬がいるなら、警察猫だって、ということでしょうか?(笑)
記憶力がないのにこんなことをいうのはあれですが、ホームズが「警察猫」として紹介されたこと今までありましたでしょうか?
このフレーズ、定着させてほしいです。

<蛇足3>
「警察の取り調べは、ともすれば乱暴になりがちだ。片山の先輩刑事には、
『傷つけないように痛い目にあわせる手があるんだ』
 などと自慢げに言う人もある。
 しかし、片山は警官が暴力を振ったら、人を傷つけ、乱暴した犯人と同列の人間になってしまう、と思っている。自白は、動かぬ証拠を目の前に突きつけてやれば引き出せるのだ。 
 そのために、刑事は懸命に捜査活動をするのである。」(227ページ)
片山の性格を反映した意見なのですが、シリーズもこれだけ巻数を重ねているのですから、読者には不要な部分です。作者自身がどうしても述べておきたかったのでしょうね。



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三世代探偵団 春風にめざめて [日本の作家 赤川次郎]


三世代探偵団 春風にめざめて

三世代探偵団 春風にめざめて

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/08/30
  • メディア: 単行本

<帯あらすじ>
天才画家の祖母・幸代、おっとりした母・文乃と暮らす女子高生・天本有里。
三人は突然の火事で両親を亡くし上京してきた少女・香を保護することになる。
しかし、香の信頼する高校時代の恩師の隠していた秘密が見つかり、天本家は事件に巻き込まれていく。指を切断された遺体が発見され、有里たちにも危険がせまる──!
「うちは、殺人事件に慣れてるの」


2023年4月に読んだ10冊目、最後の本です。
単行本。
赤川次郎「三世代探偵団 春風にめざめて」。

「三世代探偵団 次の扉に棲む死神」(感想ページはこちら
「三世代探偵団 枯れた花のワルツ」(感想ページはこちら
「三世代探偵団 生命の旗がはためくとき」(感想ページはこちら
に続く、女三世代が大活躍の最新ユーモアミステリ、第4弾!
このシリーズ、刊行ペースが落ちてきている赤川次郎の中ではペースが本当に早いですね。
きっと作者が楽しんで書いているのでしょう。
主人公有里のキャラクターは、他のシリーズの主人公たちとそう変わりませんから、何が赤川次郎を駆り立てているのかというと、意外と祖母・幸代なのかもしれません。
作者も高齢になってこられているはずですから、こういう年配のキャラクターを書くのが楽しいのでしょうか?

巻き込まれるというよりは、有里が自ら積極的に事件の渦中に飛び込んでいくのは、赤川次郎作品のヒロインとしてはいつものこと、なのですが、この作品のような事件で、この作品のようなやり方では、高校生としていかにも無理。
いくら言っても聞かないとはいえ、周りの大人の対応ぶりも到底あり得ないレベル。有里のことを信頼している、というのが通用しない内容だと思います。
事件とシリーズの設定のミスマッチですね。
ファンとしては残念ですが、失敗作です。

「ところで、「三世代探偵団 枯れた花のワルツ」に出てきた加賀和人はどうしたんだ!?
有里の恋人役じゃなかったのですか? 彼の活躍に期待していたのですが。」
と、前作「三世代探偵団 生命の旗がはためくとき」感想に書いたのですが、今回登場するものの、有里の恋人役には力不足のような気が。もっとも有里の恋人役には相当の力が必要とされそうですが(笑)




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セピア色の回想録:杉原爽香<49歳の春> [日本の作家 赤川次郎]


セピア色の回想録 (光文社文庫)

セピア色の回想録 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/09/13
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
大富豪・三田村朋哉は、孫娘の奈美に、遺産を渡したい人物として杉原爽香の名前を挙げる。以前、爽香によって助けられたことがあるらしいが、当の爽香にはさっぱり覚えがない。一方、娘の珠実は中学一年に。放課後に担任・里谷美穂の手伝いをしたおり、コピー機に置き忘れられた書類に気付き、里谷に預ける。だがその夜、里谷から不可解な内容のメールが届き、彼女は襲われてしまう。


2023年4月に読んだ2冊目の本です。
シリーズも第35弾で、爽香はもうすぐ50歳!。

冒頭、いきなり爽香が息を引き取るシーンでスタートするので何ごとかと思いますが、これは中学生の珠実が書いた作文。
「当たり前のお母さんを書いても面白くないと思った」(13ページ)という明男の解釈もありますが、これは無理ですね。

無理と言えば、今回の五十歳マイナス一歳のお祝いの会、というのは無理があります。いくら大女優・栗原英子のご発案とはいえ。
五十歳を避ける、あるいは四十九歳とは呼ばない、大義名分があればよいのですが、それも設定されていません。手抜き?(これ、次作のネタにすればよくて、何も今回使う必要はなかったのでは? とも思ってしまうんですよね)

事件は、珠実の学校の先生が主体のもので、特に爽香の誕生パーティとリンクするものではありません。
もう一つのエピソードとして、爽香に遺産を残そうとする富豪というのがありますが、こちらは一応絡んできます。
いずれも、爽香にまとわりつくように展開してくところはさすが赤川次郎、というところなのですが、いかんせん現実離れした感じが拭えないのが残念です。

また、これもいつものことで、爽香が他人のことにどんどん介入していき、一応の決着を見せるのですが、
「いずれ立ち直りますよ、どちらも」(292ページ)
という爽香のセリフをどう受け止めるかで読後感が変わってくるような気がしました。


<蛇足>
「爽香がレポート用紙を手にして怖い声を出した。」(12ページ)
冒頭、珠実の作文を見つけた爽香というシーンですが、珠実の中学校の課題の作文はレポート用紙に書くのですね。
昔は作文は縦書きで提出すべしという感じでしたが、時代が変わったのでしょうね。




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吸血鬼と猛獣使い [日本の作家 赤川次郎]


吸血鬼と猛獣使い (集英社オレンジ文庫)

吸血鬼と猛獣使い (集英社オレンジ文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/07/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
町を渡り歩くサーカス団から、ライオンが脱走した!? ひとたび騒ぎになれば、大事なライオンが射殺されてしまう。団員たちは秘密裏に捜索を始めるが……。一方、ぐっすり眠っていたエリカを一本の電話が叩き起こした。相手は「あんたのせいで娘が家出したから捜せ」と怒鳴りつけ!? 表題作ほか2編を収録。吸血鬼はお年ごろシリーズ、待望の最新作!


2023年2月に読んだ最後の本です。
「吸血鬼はお年ごろ」シリーズ 第40弾(と書いてないですが、手元で数えたところ、そのはずです)。

「吸血鬼に雨が降る」
「不屈の吸血鬼」
「吸血鬼と猛獣使い」
の3編収録です。

「吸血鬼に雨が降る」は当事者にとって大変ことではありますが、ミステリらしい事件は起こりません。
災害が迫りくるという緊迫感と登場人物たちの繰り広げる出来事が絡み合って盛り上がっていくところはさすがです。

「不屈の吸血鬼」はマラソン選手とコーチの話題ですが、赤川次郎の別の作品でみたような話です。
最後に、
「お父さんが『力』を送ったのね!」(168ページ)
とエリカが考えるシーンがあり、クロロックも認めているようなのですが、吸血鬼のクロロックにこういう「力」まであったかな、と不思議な気分。
こういう「力」が使えるなら、解決の仕方が変わった話がいっぱいありそうです。

「吸血鬼と猛獣使い」は、「吸血鬼猛獣使い」とするのがふさわしい気がします。
ライオンが逃げ出すという以外に大したことは起きないのですが(いや、それだけで十分大事件ですが)、クロロックたちがさほど活躍しなくても収まるところに収まるのが見事──で、それを読んでいる間は受け入れさせてしまう。
とはいえ、ライオンって、こんなにいいやつなんでしょうか?

3話まとめて、あまりミステリ、ミステリしていない話、かつ吸血鬼ならではという感じの薄い作品が揃っていました。
シリーズとしては異色作かもしれません。


<蛇足1>
「すでに日本に長く、若い妻涼子との間には一子虎ノ介もいる、良きパパである。」(88ページ)
地の文にあるクロロックの説明なのですが、あれ、エリカは?と思いました。
そのあとに登場し
「クロロックの亡き日本人の先妻との間の娘である。今、大学生。」
と説明が付されるのですが、間違いではないものの、前段の紹介文には違和感。
この作品では違いますが、叙述トリックのような使い方ができるのでしょうか? なんとなく、アンフェアと言われそうな。

<蛇足2>
「見えなかったが……。野生の動物のような匂いだった。」(204ページ)
サーカスからライオンが逃げ出すという大事件でクロロックがいうセリフです。
サーカスで飼われているライオンは「野生の動物のような匂い」なのでしょうか? 獣の匂いには違いないですが、野生、ではないですよね。

<蛇足3>
「理屈はよくわからなかったが、隊長は『死んでも日本人でないのなら、責任問題になるまい』と思ったのである。」(224ページ)
ライオン捕獲のため出動した警察の隊長の判断なのですが、こういう思考をすることがあるでしょうか?
まあ、ここでいう「日本人でない」人というのはクロロックなので、なんの問題もないのですが。



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幽霊認証局 [日本の作家 赤川次郎]


幽霊認証局

幽霊認証局

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/06/06
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
宇野と女子大生・夕子が訪れた温泉街では、いたるところに、監視カメラが設置されていた。かつて娘を誘拐された町長が、家族と町民たちの安全を守るために、独断で実施している施策だった。どこにいてもカメラに見られてしまうため、町全体が不穏な空気に覆われる中、夕子は「ある秘密」に気がつく。すると今度は、殺人事件が発生して……。
大好評<幽霊>シリーズ第29弾


2023年1月に読んだ9作目(10冊目)の本で、1月に読んだ最後の本です。
赤川次郎の「幽霊認証局」(文藝春秋)
以前は月間に読んだ冊数を稼ごうと、月末近くには赤川次郎を読んでいたものですが、赤川次郎の新作作品数も減ってきていますし、そういうことはぐっと減りましたね。
珍しくこのときはなんとか10冊にしようと手に取りました。

この「幽霊認証局」には
「隣の芝生が枯れたとき」
「失われたハネムーン」
「死を運ぶサンタクロース」
「他人の空似の顔と顔」
「女ともだち」
「幽霊認証局」
「タダより怖いものはない」
の7話が収録されています。

赤川次郎の最近の作品にミステリとしての結構を求めるのは間違っているというのは重々理解していますが、それでもさすがに幽霊シリーズはもうすこし配慮してくれてもいいんじゃないか、と思ってしまいますね。

と前作「幽霊終着駅」感想で書いたことを繰り返さざるを得ないことは残念です。

物語のための誇張だということはわかっていても、たとえば表題作である「幽霊認証局」で若い巡査たちが「現場をちゃんとしておけ」と言われたからといって掃除してしまうシーンとか、少々うんざり。笑えません。

「失われたハネムーン」など、ミステリらしい事件は起こらないのに、男女関係をめぐって終始不穏な気配が漂い、宇野警部と永井夕子の関係を逆手にとったようなプロットで綴られているのに、なんだかもったいない感じです。

次が出れば記念すべきシリーズ30冊目になります。
最初の頃のようなきらめきを期待します。


<蛇足1>
被害者の持っていたケータイから宇野警部が電話をかけるシーンがあるのですが(16ページ)、証拠品でしょうに、こういう使い方をしてよいものなのでしょうか?

<蛇足2>
「涼子さんが、この部屋、もう一泊、自分持ちで取ってくれたわ。のんびりできるわよ」(86ページ)
「失われたハネムーン」のラストで、夕子と宇部警部の会話なのですが、警視庁捜査一課、簡単に休みがとれるのでしょうか?

<蛇足3>
「二年生の体育祭のときさ、クラスにお菓子屋の息子がいて、その子のお母さんが、昼食をとってるところへ、何十個もお饅頭を差し入れしてくれたんだ。」(138ページ)
赤川次郎は会話がとても上手な作家ですが、ここは珍しいミスだと思います。
これは宇野警部のセリフで、高校時代の同級生との会話なのです。
宇野警部と会話の相手との間柄、関係で、「クラスにお菓子屋の息子がいて」という説明をするとは思えません。お菓子屋の息子がいたことは相手も知っている事実なのですから。





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