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たんぽぽ娘 [アンソロジー]




<カバー袖紹介文>
本書は「魔女も恋をする」に続く、海外ロマンチックなSF・ファンタジィを集めた傑作集の第二巻です。このアンソロジィは、これからSFを読もうという人、SFを読み始めたばかりの人を念頭において編まれています。ロマンチックSFというのは、恋愛を扱ったものです。本書では、愛するひととの別れを扱った作品やタイムマシンものもあしらってみました――“あとがき”より


2022年4月に読んだ2作目(3冊目)の本です。
どこからこんな古い本を引っ張り出してきたんだ、と言われそうですが、これ25年ほど前にSF好きの友人から、初心者向けの手ほどきとしてもらい受けたものです。
そうやって友人からもらっているくせに、なかなか触手が伸びす今に至る。ようやく読みました。
この本、とっくの昔に絶版になっていて、 amazon で見たらとんでもない価格がついているのですね......

ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」
マリオン・ジマー・ブラッドリー「風の人々」
イリヤ・ワルシャフスキー「ペンフィールドへの旅」
レイ・ブラッドベリ「詩」
ジュディス・メリル「われら誇り持て歌う」
ウィリアム・M・リー「チャリティからのメッセージ」
ゼナ・ヘンダースン「なんでも箱」
ケイト・ウィルヘルム「翼のジェニー」
の8編収録のアンソロジーです。

表題作である巻頭の「たんぽぽ娘」から最後の「翼のジェニー」まで読んで、自分がいかにSFに向いていないかをあらためて思い知らされた気がします。
どの作品も、今一つ勘所を掴めないうちに終わってしまった印象。

たとえば表題作である巻頭の「たんぽぽ娘」、名作と誉れ高い作品で、主人公の感情に深く共感もできたのですが、それでもなんだかあっけない印象を受けてしまいました。
どうも強く迫ってこないというのか......
おそらく、ですが、筋を追うことにばかり気を取られすぎていて、文章や描写の生み出す滋味とか、描かれている世界観に十分浸っていないのだと思います。
ゆっくり腰を落ち着けて、作品の世界のなかをたゆたう感じで読むべきなのでしょう。

ほかの作品もそっけなく感じてしまうのは、短編だからということではなく、こちらの読み方が悪いのだと思います。
「たんぽぽ娘」は、その後似たような作品が多く書かれてきたのでしょう。そのためどこかで見たストーリーとして受け止めてしまいました。
「風の人々」は、ロマンティックとはちっとも思えませんでした。
「ペンフィールドへの旅」もタイムマシンものの一典型ですよね。
「詩」は不思議な読後感に包まれました。いちばん素直に作品世界に入りこめた気がします。
「われら誇り持て歌う」は宇宙開拓を前に夫婦の交情と行き違いを描いた作品ですが、今一つピンと来なかったです。
「チャリティからのメッセージ」は魔女狩りを背景に超能力を扱った物語で、しゃれたエンディングだと思いました。
「なんでも箱」は、たぶん見方を変えれば気持ち悪いとなるかもしれない話を、まさにファンタジィと呼びたくなるような小品に転化しています。
「翼のジェニー」は、翼の映えている女性と診察する医師の話ですが、これはまさにロマンティックSFですね。


こういう作品世界にしっかり浸ることができない自分を残念にも思ったりしますが、さあ、ミステリの世界に戻ることにしましょう。



<蛇足>
「一七〇〇年の夏は、古くから住んでいる人々にとってさえ、記憶にないほど暑いものだった。その年はちょうど新しい世紀の到来を告げる年でもあり、なかには、暑さがその事実と関係していて~」(134ページ「チャリティからのメッセージ」中)
1700年は厳密には新しい世紀の到来を告げる年ではありませんね.....
しかし2000年のときにも思いましたが、欧米では(というか日本以外では)そのあたりは鷹揚な感じで、きりよく見える2000年を新しい世紀の始まりと捉えているようです。



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乱歩の選んだベスト・ホラー [アンソロジー]


乱歩の選んだベスト・ホラー (ちくま文庫)

乱歩の選んだベスト・ホラー (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
乱歩のエッセイ「怪談入門」は、幻想怪奇小説ファンには絶好のブックガイドである。その中から俊英ミステリ研究家が選び抜いた12篇。名作「猿の手」原典版新訳をはじめ、横溝正史のユーモラスな訳が冴える「専売特許大統領」、ホテルの同じ部屋で縊死者が続出するミステリ「蜘蛛」と、乱歩によるその変奏曲「目羅博士」他、ドイル「樽工場の怪」など個性的な作品がずらり。


冒頭に乱歩の「怪談入門」が収録されていて、そのあとにそこに挙げてあった作品の中から、編者である森英俊と野村宏平が選んだ作品が並んでいます。
W・W・ジェイコブズの「猿の手」が読みたくて買った本なのですが、この話を読むのは何度目でしょうか? 怪談をこう評するのは変な気もしますが、すっきりした怪談だといつも思います。
いろいろなタイプの作品が集められていますが、いずれも「ホラー」と呼ぶよりは、やはり「怪談」と呼んだほうがしっくり来る作品です。なかには「専売特許大統領」のように、「ホラー」でも「怪談」でもなさそうなのも交じっているのも、また楽し、というところでしょう。その点では、解説で野村宏平が述べている通り、「スーパーナチュラルで怪なる小説」というくくりが正解かも。
古めかしい、とも言えますが、クラシカルな味わいを楽しみました。


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