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追撃の森 [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


追撃の森 (文春文庫)

追撃の森 (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/06/08
  • メディア: ペーパーバック

<カバー裏あらすじ>
通報で森の別荘を訪れた女性保安官補ブリンを殺し屋の銃撃が襲った。逃げ場なし――現場で出会った女を連れ、ブリンは深い森を走る。時は深夜。無線なし。援軍も望めない。二人の女vs二人の殺し屋。暁の死線に向け、知力を駆使した戦いが始まる。襲撃、反撃、逆転、再逆転。天才作家が腕によりをかけて描く超緊迫サスペンス。


2022年5月に読んだ10作目の本です。
ジェフリー・ディーヴァーのノン・シリーズもの。
2009年国際スリラー作家協会賞長編賞受賞作のようです。あまり知らない賞ですが。

女対殺し屋という構図で描かれる、追うもの、追われるもの、というストーリーで、緊迫感あふれるサスペンス。
とても面白いです。
定石通りの展開もあり、また、追うものと追われるものが通じ合うというシーンもあり。
「おれの仲間がこんな話をしてくれた。やつのおふくろさんだか、ばあさんだか忘れたが、トリックスターっていうのがいるって。神話っていうか、おとぎ話に出てくる。そいつがありとあらゆる厄介事を惹き起こすんだそうだ。おれは一晩、あんたのことをそう呼んできたよ、ブリン。」(314ページ)
このセリフ、結構いいですよね。

とても面白く読んだので、それでよし、なのですが、あえて言っておくと、いつものディーヴァーお得意のどんでん返し連鎖がこの作品の場合逆効果なように思えました。
こういう対決型の冒険ものタイプの作品の場合、どんでん返しは連鎖させるよりも、ここぞという時に一発大きく仕掛けるほうがよいのかもしれません。
せっかく骨太の対決に引き込まれていたのに、どんでん返しで構図がずれていくとちょっとすかされたというか、躱されたというか、そんな気分になってしまって少々興ざめ感が出てくるように思いました。



原題:The Bodies Left Behind
作者:Jeffery Deaver
刊行:2008年
翻訳:土屋晃



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ロードサイド・クロス [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


ロードサイド・クロス 上 (文春文庫)ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
路傍に立てられた死者を弔う十字架――刻まれた死の日付は明日。そして問題の日、十字架に名の刻まれた女子高生が命を狙われ、九死に一生を得た。事件は連続殺人未遂に発展。被害者はいずれもネットいじめに加担しており、いじめを受けた少年は失踪していた。尋問の天才キャサリン・ダンスは少年の行方を追うが……。大好評シリーズ第二作。 <上巻>
ネットいじめに端を発する事件は殺人にエスカレートした。犯人は失踪した少年なのか? ダンスは炎上の発端となったブログで報じられた交通事故の真相を追う。ネット上の悪意が織りなす迷宮。その奥底にひそむのは悪辣巧緻な完全犯罪計画。幾重にも張りめぐらされた欺瞞と嘘を見破った末、ダンスは意外きわまる真犯人にたどりつく! <下巻>


ここから10月に読んだ本の感想です。

「このミステリーがすごい! 2011年版」 第9位
「2011本格ミステリ・ベスト10」第9位
週刊文春ミステリーベスト10 第3位。

「スリーピング・ドール」 (上) (下) (文春文庫)(感想ページへのリンクはこちら)に続き、尋問とキネシクス(証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し分析する科学)のエキスパート、キャサリン・ダンスが主役をつとめるシリーズ第2作。
その前に、リンカーン・ライムシリーズである「ウォッチメイカー」 (上)(下) (文春文庫)(感想ページへのリンクはこちら)にも出てきましたので、登場作としては3作目です。

タイトルになっているロードサイド・クロスとは、あらすじにもある通り「路傍に立てられた死者を弔う十字架」です。これが一種の犯行予告になっている事件です。
「路肩の十字架」と40ページには書かれています。

あらすじには触れてありませんが、この事件と同時に、「スリーピング・ドール」 (上) (下) 事件の余波が描かれています。
それは、重度の火傷を負い死亡したファン・ミラー刑事の安楽死容疑で、キャサリンの母イーディが逮捕されてしまうというもの。ハーパー検事のスタンドプレーという趣があるものの、予断を許しません。
(伏せるべきかな、とも思いましたが、上巻の半分くらいからスタートするエピソードなのでここに書いておくことにします)
こちらは、どうしても母親のことを疑ってしまう、少なくともその可能性は否定できないと考えてしまうキャサリンの苦悩と、母親との確執が焦点になります。
母親との問題は下巻374ページになって一応の解決をみるのですが、なかなか難しい問題ですね。

ロードサイド・クロス事件の方は、あまりにあからさまなかたちで話が進んでいくので、「こんな平凡な話のわけがないよな」と読者が思ってしまいます。
それを承知の上で話を転がしていくのが、いつものジェフリー・ディーヴァーなのですが、ちょっと今回はディーヴァーにしてはひねりが足りないような気がしました。
とはいっても、それがこの作品の欠点というわけではありません。
そもそもディーヴァーにしてはひねりが足りない、というだけで、普通よりはそれでもひねってあります。
また、ひねりを抑えた分、話がわかりやすく、くっきりしてきました。
たとえば追われる高校生トラヴィスのエピソードは、シンプルになった分イメージがつかみやすくなりました。

キャサリンのプライベートもなにやらあわただしい感じになってきましたし、シリーズのこの後が楽しみです。



<蛇足1>
「リスかウッドチャックか、そのくらいの大きさでした」(266ページ)
ウッドチャックって、身近な動物なんですね。

<蛇足2>
「SF系のゲームだ」
ダンスにとっては説明になっていなかった。「え、何系?」
「ママ、サイエンス・フィクションだよ」
「ああ、空想科学(サイファイ)ってことね」
「違うってば。ママ、古すぎ。いまはSFって言うんだよ」(下巻34ページ)
勉強になります。

<蛇足3>
「『攻殻機動隊』? さあね、二十回か、三十回か……続編も同じくらい見た」(58ページ)
アニメーションの古典になっているということですね。

<蛇足4>
「完全にゲームの世界に浸れるこういった”ポッド”の故郷は、日本だ。子供たちは、外界と完全に遮断された暗いブースにこもって何時間でもコンピューターゲームをプレイし続ける。社会との接点はネットのみという”引きこもり”人口の多さで知られるっ国でこういったものが生まれたのは、必然と言えそうだ。」(126ページ)
なんだか書き方からして、ジェフリー・ディーヴァーは日本に良い印象を持っていないような気がしてなりませんね。







原題:Roadside Crosses
作者:Jeffery Deaver
刊行:2009年
翻訳:池田真紀子





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ソウル・コレクター [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]

ソウル・コレクター 上 (文春文庫)ソウル・コレクター 下 (文春文庫)ソウル・コレクター 下 (文春文庫)
  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人容疑で逮捕された。アーサーは一貫して無実を主張するも、犯行現場や自宅から多数の証拠がみつかり有罪は確定的にみえた。だがライムは不審に思う――証拠が揃い過ぎている。アーサーは濡れ衣を着せられたのでは?そう睨んだライムは、サックスらとともに独自の捜査を開始する! <上巻>
殺人容疑で逮捕されたいとこを無実とみたライムは、冤罪と思しき同様の事件の発生を突き止める。共通の手掛りが示したのは、膨大な情報を操る犯人像。真相を究明すべく、ライムのチームは世界最大のデータマイニング会社に乗り込むが――。データ社会がもたらす闇と戦慄を描く傑作! 巻末に著者と児玉清氏の対談を特別収録。<下巻>

リンカーン・ライムシリーズ第8作です。
「このミステリーがすごい! 2010年版」 第5位、かつ、週刊文春ミステリーベスト10 第3位。

今回の敵は、コンピューター社会、データ社会を突いた犯人です。
「千兆(ペタ)バイトの闇にひそむもっとも卑劣な殺人鬼」
「盗まれる個人情報 改竄されるデータ 知らぬ間に、罪を着せられる――恐怖」
と文庫本上下巻それぞれの帯に書かれています。
SSD(ストラテジック・システムズ・データコープ)社というニューヨーク市周辺に本社を置くデーターマイナーがキーとなって登場します。

本当にこのレベルまで個人情報が集められてしまっているでしょうか?
ちょっと非現実的な気もしますが、一方で、アップルやグーグルなどならやっていてもおかしくないかな、とも思ったりもするところがポイントなのかもしれませんね。
原題は「The Broken Window」で、いわゆる割れ窓理論に基づいたものですが、SSD社の(創業者の)理念と結びついているわけですね。
(タイトルといえば、訳者あとがきに、日本のタイトルも、ディーヴァーが候補をくれた、と書いてあったのですが、おもしろい、というか不思議でしたね。)

そしてそのデータを犯人に悪用されてしまう。
文字通り、人生を滅茶苦茶にされてしまう整形外科医とか出てきて、哀れでなりません。殺されはしないのですが。
おもしろいなと思ったのは、犯人の設定ですね。ちょっぴり無理筋な設定に思えるのですが。
とはいえ、犯人が繰り出してくる攻撃は迫力十分で、ハラハラ、ドキドキ。

気になったのは、ライムがイギリスの当局と協調して行っている殺し屋捕獲のエピソード。
これ、いらなくないですか??
シリーズとして追いかけていきたい、ということなのでしょうけれども、物語のモメンタムを削いでしまっているような気がしてなりません。

最後に、児玉清さんとディーヴァーの対談が収録されているのもポイント高いですね。
ミステリの目利きでもいらっしゃった児玉さんが、引き出し多くいろいろと聞き出されているのがおもしろい、というか、すごい、ですね。

<蛇足1>
「彼らはのんきなアンテロープみたいに」(上巻82ページ)
アンテロープ? 調べると、レイヨウ(羚羊)のことなんですね。今ではレイヨウと言わずに、アンテロープと言うのでしょうか?

<蛇足2>
「通りを歩きながら、周囲のシックスティーンたちを観察する」(上巻134ページ)
何の説明もなく、いきなりシックスティーンと出てきて戸惑いました。
シックスティーン? 16?
16歳の人たちを指しているのではなさそうだし、普通の一般の人たちを指しているようなのだけれど......と思っていたら、
「シックスティーン……人間を指してそう呼ぶのは、もちろん、私だけではない。ほかにも大勢いる。この業界では一般的な用語だ。」(上巻134ページ)
という説明が出て来ます。
「十六桁の番号は、名前よりもよほど明快で効率的だ。」(上巻135ページ)
なるほど。アメリカですから、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーのことでしょうね。

<蛇足3>
囚われたライムのいとこが、刑務所?の中で交わす会話で言われるセリフが光っていました。
「あんた、ものを買ったんだろ。万引きすりゃよかったんだよ。そしてら、何買ったか、ばれようがねえじゃん。」(上巻377ページ)
確かに。完璧な答えです......(監視カメラがとらえているかもしれませんが)

<蛇足4>
「アメリア・サックスはマンハッタンに戻っていた。やかましいわりにレスポンスの悪い日本製エンジンに、いらいらが募る。
 まるで製氷機みたい音だ。ついでに馬力も製氷機程度しかない。」(下巻246ページ)
ジェフリー・ディーヴァー、日本に何か恨みがあるのでしょうか?

<蛇足5>
犯人の視点のシーンで、
「私は縁起の悪いナンバー3だった」(下巻275ページ)
というのがあります。3って縁起が悪いのですか?
犯人特有のジンクスのようなものがあって、読んだのに忘れてしまっているのかな?



原題:The Broken Window
作者:Jeffery Deaver
刊行:2008年
翻訳:池田真紀子

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スリーピング・ドール [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


スリーピング・ドール〈上〉 (文春文庫)スリーピング・ドール〈下〉 (文春文庫)スリーピング・ドール〈下〉 (文春文庫)
  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/11/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
他人をコントロールする天才、ダニエル・ペル。カルト集団を率いて一家を惨殺、終身刑を宣告されたその男が、大胆かつ緻密な計画で脱獄に成功した。彼を追うのは、いかなる嘘も見抜く尋問の名手、キャサリン・ダンス。大好評〈リンカーン・ライム〉シリーズからスピンアウト、二人の天才が熱い火花を散らす頭脳戦の幕が開く。 <上巻>
抜群の知能で追っ手を翻弄しながらダニエル・ペルの逃走は続く。彼の行動の謎を解明するため、キャサリン・ダンスはカルト集団の元〈ファミリー〉、そしてクロイトン一家惨殺事件のただ一人の生存者、次女・テレサに接触を試みる――。サスペンスフルな展開の末に訪れる驚愕の終幕まで、ノンストップで駆け抜ける傑作。<下巻>


「このミステリーがすごい! 2009年版」第5位、週刊文春ミステリーベスト10 は第3位です。

リンカーン・ライムシリーズの「ウォッチメイカー」 〈上〉  〈下〉 (文春文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に登場した尋問とキネシクス(証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し分析する科学)のエキスパート、キャサリン・ダンスが主役をつとめます。
冒頭から、ダンスと敵役であるダニエル・ペルの対決です。
相手の振る舞いや言葉から読み取っていくのがスリリング。「ウォッチメイカー」 〈上〉  〈下〉 でも披露されていましたが、主人公になったことで一層フォーカスされて、くっきりしたみたい。
ずーっとこのまま取り調べだけで全編おしきったらすごいなぁ、とも思いましたが、あらすじで明らかになっているように、ダニエル・ペルは脱獄し、ストーリーが大きく展開していきます。
まさにジェット・コースターノベル。
タイトルにもなっている、一家惨殺事件のただひとりの生き残りの少女がいい感じです。うん、こういうのがいいなぁ。

読んでいる方が麻痺しそうなくらい、ツイストにつぐツイスト。
ダンスを主役に据えた作品として、このあと「ロードサイド・クロス」 〈上〉 〈下〉 (文春文庫)が出ていますが、もっともっとダンスの活躍を読みたいですね。なんなら、丸ごと尋問シーンというのにも挑んでもらいたいくらい。



原題:The Sleeping Doll
作者:Jeffery Deaver
刊行:2007年
翻訳:池田真紀子


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ウォッチメイカー [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)
  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/11/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
“ウォッチメイカー”と名乗る殺人者あらわる。手口は残忍で、いずれの現場にもアンティークの時計が残されていた。やがて犯人が同じ時計を10個買っていることが判明、被害者候補はあと8人いる――尋問の天才ダンスとともに、ライムはウォッチメイカー阻止に奔走する。2007年度のミステリ各賞を総なめにしたシリーズ第7弾。 <上巻>
サックスは別の事件を抱えていた。公認会計士が自殺に擬装して殺された事件には、NY市警の腐敗警官が関わっているらしい。捜査を続けるサックスの身に危険が迫る。二つの事件はどう交差しているのか!? どんでん返しに次ぐどんでん返し。あまりに緻密な犯罪計画で、読者を驚愕の淵に叩き込んだ傑作ミステリ。<下巻>

「このミステリーがすごい! 2008年版」第1位、かつ、週刊文春ミステリーベスト10 第1位。
これだけでは足りないかのように、日本冒険小説協会大賞〈海外部門〉も獲っています。
シリーズ第7作にして、引き続き、ずっとずっと絶好調です。
今回は、複数の事件が同時に展開します。
上に引用したあらすじでは、ストーリー展開がわかりにくいなぁ、と思っても、ツイストに次ぐツイストで、目まぐるしく展開するので、あらすじにまとめるのは至難の業です。
今回の敵も強敵です。
「十八世紀に時計をメタファーに使った哲学運動が起きた。神は宇宙のムーブメントを創り、ぜんまいを巻いて、時間が流れるようにしたというんだ。神は“偉大なる時計師(グレート・ウォッチメイカー)”と呼ばれた。信じられない話かもしれないが、この思想を信奉したものは大勢いた。おかげで時計師は聖職者に似た地位を得た」(P418)
というせりふがありますが、ウォッチメイカーという敵は、いってみれば「神」にもなぞらえられる存在なので、そりゃあ、強敵です。

勝手に考えたこの作品のポイントは2つ。
一つは、サックスの父親の事件とでも呼ぶべきエピソードが入っていること。これ、シリーズ読者には大変な事件です。だって、それをきっかけにサックスが警察を辞める、と言い出すのですから。
もう一つは、この作品から出てくる新キャラ、キャサリン・ダンス。彼女は、カリフォルニア州捜査局の尋問とキネシクスのエキスパート。キネシクスとは、証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し分析する科学、とのことです。これがおもしろい! なにしろ、ライムは鑑識の専門家、すなわち、物的証拠の権化ともいうべき存在で、いってみれば、ライムとダンスは相反する価値観(?) を象徴するもの、ともいえるからです。このふたりが協力関係を築きあげ、ともに闘う様子は、なかなかスリリングで(捜査内容もスリリングですが)、わくわくできます。

複数の事件が、どう収斂するのか、あるいは収斂しないのか。果たしてウォッチメイカーをどうやって追いつめるのか、ディーヴァーの力技を十分堪能しました。

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12番目のカード [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


12番目のカード〈上〉 (文春文庫)12番目のカード〈下〉 (文春文庫)12番目のカード〈下〉 (文春文庫)
  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/11/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ハーレムの高校に通う16歳のジェニーヴァが、博物館で何者かに襲われそうになるが、機転をきかせて難を逃れる。現場にはレイプのための道具に、1枚のタロットカードが残されていた……。単純な強姦未遂事件と思い捜査を始めたライムとサックスだったが、その後も執拗に少女を付け狙う犯人に、何か別の動機があることに気づく。 <上巻>
強姦未遂事件は、米国憲法成立の根底を揺るがす140年前の陰謀に結びついていた。そこにジェニーヴァの先祖である解放奴隷チャールズ・シングルトンが関与していたのだ……。“140年もの”の証拠物件を最先端の科学捜査技術を駆使して解明することができるのか? 新鮮かつ強烈な刺激満載の好評シリーズ第6弾! <下巻>

すっかり更新をさぼってしまいました。2月に読んだ分の感想もまだ終わらない...
さておき、
「このミステリーがすごい! 2007年版」第6位、2006年週刊文春ミステリーベスト10 第4位です。
強姦未遂事件を発端に、広がりを見せる事件を描いています。
動機をめぐる捜査、ということで、あまり科学捜査の醍醐味という感じではありません。このあたりは前作「魔術師 (イリュージョニスト)」 〈上〉 〈下〉 (文春文庫)から続いている傾向ですね。
どんでん返しに強いこだわりを持つディーヴァーだけあって、かなりツイストが効いているのですが、この作品にはちょっとあれれ?と感じる部分がありました。ミステリとしてのひねりを超えて、単に読者を驚かせるためだけの、ひっかけのためのひっかけ、のように思える部分があります。怪しげな人物やエピソードを、必要以上にまき散らして、真相をわかりにくくする、というのはミステリでは常套手段ではありますが、ディーヴァーらしいスマートさに欠ける仕上がりのように思いました。
とはいえ、ぼくが不必要だと感じたエピソードも含めて、動機に関しては巧妙に組み立てられていまして、ジェニーヴァの成長物語にもマッチして、さすが、です。
140年前と現在をどうつなぐのか、もミステリとしては注目点だと思いますが、こちらも(当然のことながら)動機に密接に関係して、緊密なプロットになっています。(もっとも、140年もの時間が実際にどのような作用を及ぼすのか、若干不安が残ります。作中ではきわめてあっさりと説明されていますが、本当かなぁ、とちょっと懸念します)
動機をキーポイントとして、ディーヴァーお得意のツイストで事件の様相が、くるくると変わっていくのは、まさにミステリを読む醍醐味で、たっぷり堪能できました。
どんどん続いているシリーズの今後が、とても楽しみです。

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獣たちの庭園 [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


獣たちの庭園 (文春文庫)

獣たちの庭園 (文春文庫)

  • 作者: ジェフリー・ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/09/02
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
1936年、オリンピック開催に沸くベルリン。アメリカ選手団に混じって、ナチス高官暗殺の使命を帯びた一人の殺し屋がニューヨークから潜入するが、現地工作員と落ち合う際に誤って人を殺し、警察に追われる身となる。暗殺を果たし、無事に国外逃亡できるか…。「どんでん返し職人」ディーヴァーが初めて挑んだ歴史サスペンス。

ジェフリー・ディーヴァーのノン・シリーズ作品です。
2005年の週刊文春ミステリーベスト10 と「このミステリーがすごい! (2006年版)」の第5位です。
舞台は、ナチスが勢力を拡大していたころのドイツ。
いくらなんでも暗殺の使命があってドイツに入国しておいて、つかまってしまっては何にもならないので、ドイツで人を殺したりしないだろう(一度ならずも...)、とは思うのですが、スピーディーな展開で、主人公ポールを追いこんでいくので、なんとなくポールと一緒に危機を乗り越えていく気になります。この作品では、殺し屋であるポールが「いいやつ」なのも、大きなポイントだと思います。
一方で視点を変えて、殺人事件を捜査するドイツ側の刑事のストーリーも展開されて、ポールを追いつめていく(?)過程がスリリングです。
もうひとつ、ナチス高官たちの、ヒトラーに気に入られるための、というか、ヒトラーに厭われないための駆け引きも描かれ、重層的に物語が進んでいきます。
ラストのほうで、畳み掛けるようにどんでん返しが用意されているのですが、ディーヴァーにしては控えめというか、おとなしめなので、予想の範囲と思われる人もいらっしゃるでしょう。でも、それが一層ポールを窮地に追いやる仕掛けとなっているので、ほんと、もう、ディーヴァーの術中にはまるというか、はらはら、どきどき。
苦難の道を歩むポールに会えてよかったな、とそう思った作品でした。

タイトルの「獣たちの庭園」(Garden of Beasts) ですが、これは舞台にもなっているベルリンの中央公園、ティーアガルテン(Tiergarten) を英語に直したものであると同時に、ナチスが席巻しているドイツをもあらわしているのだと思います。普通に訳すと、「動物園」になろうかと思うのですが、ひねってあって、ぴったりですね。

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青い虚空 [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


青い虚空 (文春文庫)

青い虚空 (文春文庫)

  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
護身術のHPを主宰するシリコン・ヴァレーの有名女性が惨殺死体で発見された。警察は周辺捜査からハッカーの犯行と断定。コンピュータ犯罪課のアンダーソン刑事は容疑者特定のため服役中の天才ハッカー、ジレットに協力を要請する――ゲーム感覚で難攻不落の対象のみを狙う連続殺人犯は何者か? 息詰まるハッカー同士の一騎打ち!

ジェフリー・ディーヴァーといえば、「ボーン・コレクター」〈上〉〈下〉 (文春文庫)ではじまるリンカーン・ライム・シリーズですが、この作品はノン・シリーズ。単発ものです。
題材は、サイバー・スペース。ネット、ですね。
ヴァーチャルな世界と現実の世界をつなぐ犯罪というのが面白かったです。
ソーシャル・エンジニアリング、というのも、ホントにあるのかどうか知りませんが、とっても興味深い。
ハッカー同士の対決(ハッカーとクラッカーの対決でしょうか??)で、はらはらできます。
ディーヴァーらしく、どんでん返しもふんだんに。
第一部である「Ⅰ 魔法使い」のラストでまずびっくり。あら、そう来ますか、ディーヴァーさん。
いや、この程度で驚いていてはいかんのですが、すっかり作者の術中に。
いかにもアメリカ的な (ハリウッド的な?) ストーリーで、ぐいぐいと吸引力抜群。
本当に、ディーヴァーは、サービス精神旺盛ですね。シリアル・キラーものとして、ちょっとした小ネタ程度ではあるものの、アイデアも盛り込まれています。
帯にも書いてありますが、まさにジェットコースター・サスペンス。
コンピュータの世界はまさに日進月歩ですし、専門の方から見たらおかしなところもありそうですが(正直、ぼくには、おかしなところがあるのかないのかさえわかりません)、本当か嘘かわからないほら話に圧倒されるのも読書の楽しみのひとつ。浸って楽しみました。
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魔術師 [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫) 魔術師(イリュージョニスト)〈下〉 (文春文庫) 魔術師(イリュージョニスト)〈下〉 (文春文庫)
  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/10/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ニューヨークの音楽学校で殺人事件が発生、犯人は人質を取ってホールに立てこもる。警官隊が出入り口を封鎖するなか、ホールから銃声が。しかし、ドアを破って踏み込むと、犯人も人質も消えていた……。ライムとサックスは、犯人にマジックの修業経験があることを察知して、イリュージョニスト見習いの女性に協力を要請する。 <上巻>
超一流イリュージョニストの“魔術師”は早変わり、脱出劇などの手法を駆使して、次々と恐ろしい殺人を重ねていく。ライムたちは、ついに犯人の本名を突き止めるが、ショーの新たな演目はすでに幕を開けていた――「これまでの作品のなかで最高の“どんでん返し度”を誇る」と著者が豪語する、傑作ミステリ!<下巻>


「ボーン・コレクター〈上〉」
「ボーン・コレクター〈下〉」 (文春文庫)
「コフィン・ダンサー〈上〉」
「コフィン・ダンサー〈下〉」 (文春文庫)
「エンプティー・チェア〈上〉」
「エンプティー・チェア〈下〉」 (文春文庫)
「石の猿〈上〉」
「石の猿〈下〉」 (文春文庫)
に続く、リンカーン・ライムシリーズの第6弾。
各種ベスト10の常連シリーズなので、ご存知の方も多いと思います。
この作品も、「このミステリーがすごい!2005年版」 第2位、2004年週刊文春ミステリーベスト10 第3位です。
このあともシリーズは快調に書きつがれています--積読ですが...
さすがディーヴァーという感じで、ぐいぐい読ませてくれます。おもしろい。ページターナー、ジェットコースター・ノベルという呼び方がぴったりです。
今度の敵は、タイトルにもなった魔術師。「マジシャン」ではなく「イリュージョニスト」とフリガナが振られています。原題は"The Vanished Man" ですから、日本でつけたタイトルですね。直訳よりずっといいと思います。
で、タイトルどおり、騙すのが本職の人が敵(犯人)として登場するわけで、激しい攻防が繰り広げられます。
どんでん返しに次ぐどんでん返しで、右と思えば左、上と思えば下。あまりに相次ぐので、最後のほうではどんでん返しがあっても、驚かなくなってしまうほど!?
シリーズの中では、鑑識が果たす役割の比重が軽くなっていますが、長く続くシリーズなのでバリエーションをつけてみたということかと思います。
犯人とリンカーン・チームの駆け引きぶりは、シリーズでも上位に来る迫力ですので、作者の腕の冴えにどっぷり浸って、楽しい時間をすごせました。

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