Q.E.D. iff -証明終了-(21) [コミック 加藤元浩]
Q.E.D.iff -証明終了-(21) (月刊マガジンコミックス)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2022/02/17
- メディア: コミック
<カバー裏あらすじ>
「ディオファントスの方程式」
数学オリンピックを目指す高校生たちが集まった合宿。そこで参加者に配られたのはRPGゲームのキャラクター人形だった。難問と格闘する中で起きる不可解な事件。場をかき乱すモンスターの人形を持つ天才少女・穂積。彼女の目的は一体‥‥。
「死後の手紙」
ヤクザの舎弟の笹目は死んだ。鉄砲玉として送り込まれた先で返り討ちにあった、と思われたが不可解な点が多すぎた。捜査が進む中で内縁の妻に送られてきた笹目からの手紙。だが中身は空だった。彼が最期に伝えたかった真実とは‥‥。
しばらく更新をさぼってしまいました。
Q.E.D. iff のシリーズ第21巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(21)」 (月刊マガジンコミックス)。
奥付は2022年2月。
現時点では amazon などのネット書店で新品購入可ですね。
「ディオファントスの方程式」
燈馬に感化され数学を目指す高校生和泉というのがおもしろいですね。そして彼が目指すのは数学オリンピック。
舞台は、数学オリンピックへ向けた強化合宿。
交差式の非常階段を使った人間消失は少々凡ですし、数学の問題にはさほど興味を惹かれなかったのですが、最後に和泉がふたたび燈馬の手によって数学の奥深さに気づくという構図が美しいですね。
「死後の手紙」は、ヤクザ者が殺された事件の裏側(?) をさぐるという物語。
愚か者が迎えた哀れな結末というにも厳しすぎる物語になっています。恐ろしい。
この被害者が得意だった(得意とまでは書いていなかったかも?)手品、万華鏡を使ったものが印象的でした。
タグ:加藤元浩 Q.E.D. iff
Q.E.D. iff -証明終了-(20) [コミック 加藤元浩]
Q.E.D.iff -証明終了-(20) (月刊マガジンコミックス)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2021/10/15
- メディア: コミック
<カバー裏あらすじ>
「ファクト」
アメリカ留学中の可奈はインターンの仕事で、新進気鋭のヴァイオリニストにインタビューをする。その時の何気ない一言が過去の事件を蘇らせる。全員が嘘つき、嘘を信じ込もうとしていた一族に、「真実」を明かす楔が打たれる。哀しき音色を伴って・・・・
「贋作画家」
伊豆で海釣りをしていた燈馬達に銃声が響く。そして崖から落ちていく人影。それは贋作画家が、衆人の前で起こした殺人事件。だが、死体が消えてしまっていた。そして再び起こる殺人事件。不可解な連続殺人事件の真相は・・・・
Q.E.D. iff のシリーズ第20巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(20)」 (月刊マガジンコミックス)。
奥付は2021年10月。
もう amazon などのネット書店では新品を扱っていないのですね......。
「ファクト」
女性ヴァイオリニストの父である高名な投資家を襲ったナトリウム電池の開発を行っていた研究所での爆発事故。その日研究所では伯父のニノの姿があって....
冒頭に出てくる「真実ってのはそんなに価値がない」というニノのセリフを底流に、思いやる家族の話としてまとめっているのは長所だと思うのですが、いかんせん、事件の構図やトリックに無理がありすぎるようです。
「贋作画家」は、燈馬と可奈の眼前で起こった殺人事件という派手な出だしです。
犯行シーンも描かれるというのに、死体が見つからない(海に臨む崖なので波にさらわれたということはありうるのですが)。
レンタル倉庫を利用したトリックはうまくいかないように思いますが(あと足が簡単につくと思います)、非常によく仕組まれた事件で、読んでいてうれしくなりました。
タグ:Q.E.D. iff 加藤元浩
Q.E.D. iff -証明終了-(19) [コミック 加藤元浩]
Q.E.D.iff -証明終了-(19) (月刊マガジンコミックス)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2021/06/17
- メディア: コミック
<カバー裏あらすじ>
「ドッペルゲンガー」
メキシコのマフィアに殺害された麻薬取締局の捜査官・アーチャー。彼を殺した組織のナンバー2“魔術師(ブルホ)”は、謎の魔術「ドッペルゲンガー」を使い、ターゲットを黒焦げの焼死体にしている。姿形すべてが正体不明の敵に燈馬は──!?
「春の風」
相模湾の沖合で、木曽桜という女性の水死体が見つかった。彼女は政財界の要人お抱えの占い師で、18歳年下の夫・成司が犯人として疑われている。週刊誌「ウェンズデー」でバイトをしていた可奈は、この事件を調べることになり!?
Q.E.D. iff のシリーズ第19巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(19) 」(月刊マガジンコミックス)。
奥付をみると2021年6月です。
3年前なんですね。
「ドッペルゲンガー」は、麻薬で伸長するメキシコマフィアの話。
「奴は部下を使わず魔術で人を殺す
そいつにかかるとすさまじい恐怖の中で死ぬんだ……
噂ではその術にかかると死の間際に自分の姿を見るらしい……
みんなはその術を『ドッペルゲンガー』と呼んでいる」
といわれる謎の魔術師(ブルホ)の不気味さ、不可思議性を表すのに、「6次の隔たり」が出されていますが、そこまでのことではないのでは?と思えました。それをぶち破るのに無限連分数が持ち出されているのにはニヤリ。
実際にどういう魔術なのかははっきりと明かされないのですが、ラストのページから匂わされているのがあまりにも恐ろしくて......
登場人物たちが想像する魔術師(ブルホ)のイメージが、マスクをかぶった筋肉質の男というのがなぜか笑えました。
「春の風」は、ヨット上の事件です。
こういう周りに誰もいないという設定ですと、ヨット上で何が起こっていたのかなんて決め手がなく、どうとでも言えてしまうように思えるので、あまり好みに合いません。
この作品もその難を逃れていないと思いました。
またホストクラブに勤めていた20歳近く年下の男と結婚し溺愛していたという被害者の行動も、あまり納得感はありませんでした。
七夕刑事がゲスト出演しています。
「ねぇ 燈馬君 占い師の人が亡くなった事件ってどう思う?」
「興味ありません」
「うん! 予想通りの答え!」
「期待に応えられて嬉しいです」
という、可奈と燈馬のやりとりがとてもよかった(笑)。
タグ:加藤元浩 Q.E.D. iff
Q.E.D. iff -証明終了-(18) [コミック 加藤元浩]
Q.E.D.iff -証明終了-(18) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2021/02/17
- メディア: コミック
<カバー裏あらすじ>
「精霊の家」
200年の歴史を持つ商家・宋一族に招かれ、同家の代替わりに立ち会うことになった燈馬と可奈。宋家の屋敷には精霊がいて、家に災いをなす者を殺す伝説がある。そして、先代当主の遺言状が開封された、その時……。
「学園祭組曲」
文化祭に向けて準備を進める咲坂高校の生徒たち。当日はイギリス大使が見学に訪れ、TV局も取材に来る予定となっている。しかし、可奈が部長を務める剣道部の喫茶店が荒らされるなど、開催を揺るがす事件が相次ぎ──
Q.E.D. iff のシリーズ第18巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(18)」 (講談社コミックス月刊マガジン)。
奥付をみると2021年2月です。
「精霊の家」は、密室状況の殺人。
人の出入りはしっかり押さえられているのですが、そのせいで現場の状況を説明されたらすぐに犯人の見当が読者にはついてしまいます(定番中の定番トリックですし)。
ところが、この作品は、謎解きを終えたあとの燈馬のセリフがとても、とても秀逸で、深く感じ入ってしまいました。
素晴らしい。
「学園祭組曲」は、学園祭の準備中のドタバタを描いています。
森羅にこういう感じの作品あったよなぁ、というのは置いておいて(笑)。
「理科準備室の窓が割られ 標本が消えて
不審者の出入りが相次ぎ 剣道部の展示が荒らされ ボヤ騒ぎが起きた。
さらに正体不明の立て札が立てられたり 面談室の展示が勝手に消えたり 美術部に怪しげなモノが持ち込まれている」
燈馬が "Q.E.D." と書かれる前にいったん整理したこのような状況・事件を次々と謎を解き明かしていくのはいつものことなので、それでどうということはないのですが(いや、鮮やかに解決しているに感心しろよ、自分)、それよりもなによりも、やはりここは、「この人頭はいいけど気難しいって聞いてる」と言われる燈馬が謎を解く気になったところにこそシリーズとしての真骨頂がある、と思いました。
”思い出の箱” というキーワードがとても素敵です。
そしてその ”思い出の箱” を手放すことにまったく躊躇しない可奈がとてもカッコいい。
いい作品を読みました。
ところで、燈馬が作るお好み焼き、おいしいのかなぁ?
最後に、このコミック本、カバー袖に作者のことばが毎回ついています。
今回
「15年間繰り返してきた『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』との同時発売が、今回はありません。」
と書かれていて、おお、と思いました。
15年ですか......長かったですね。
コミックで45巻のシリーズ、とても面白かったですね。
タグ:加藤元浩 Q.E.D. iff
C.M.B.森羅博物館の事件目録(45) [コミック 加藤元浩]
C.M.B.森羅博物館の事件目録(44) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/06/17
- メディア: コミック
<裏側帯あらすじ>
知の象徴である“C” “M” “B” 3つの指輪を巡る殺人事件を解決し、指輪の主としての役目を果たした榊森羅。
その後、森羅とその相棒・立樹は別々の道を歩み出していた──。
数多の事件を解決してきた2人の物語、遂に完結!! 《「大団円」他1編を収録!》
シリーズ第45巻にして最終巻です。「C.M.B.森羅博物館の事件目録(45)」 (講談社コミックス月刊マガジン)。
帯に
堂々完結!!
と大きく書かれています。
この第45巻には、
「大団円」
「ロマノフ王朝の秘宝」
の2つのエピソードが収録されています。
「大団円」は前巻「C.M.B.森羅博物館の事件目録(44)」 (講談社コミックス月刊マガジン)で描かれた「C.M.B.殺人事件」の後始末。
前巻で暗躍した、あの憎たらしい大英博物館の女性理事がまだ森羅に戦いを仕掛けてきます。
「ロマノフ王朝の秘宝」では、七瀬立樹は23歳になっていて、イギリスでアンティーク修復士となっています。
100年前に書かれた日記の記述をもとにロマノフ家の秘宝をさがす、という物語で、殺人事件も起こります。シベリア鉄道内の殺人とかそそるのですが、ちょっと無理がありそう。
七瀬に協力するハークスキーアジア研究所のサラン・カーキス研究員という青年が怪しそうに見えるのですが、そうなるとかえって読者には怪しくなくなってしまいますね。
でも事件の真相よりも気になるのは......
当然森羅が出てこないといけないのですが、さていつ出てくるか、いつ出てくるか。そしてどういう形で出てくるか。
ちょっと予想通りの展開になりましたが、なかなかいい感じでした──七瀬、気づけよ、もっと早く。
それにしても、これまで森羅の設定はみなさんご承知のとおり、とても幼くしてあったのですが、このラストを展望していたのでしょうか? すごい構想ですよね。
なんにせよ、ラストにヒヒ丸が出てきて本当によかった(笑)。
シリーズを締めくくるのにふさわしい人物(人ではないけど)ですよね!
Q.E.D. iff -証明終了-(17) [コミック 加藤元浩]
Q.E.D.iff -証明終了-(17) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/10/16
- メディア: コミック
<カバー裏あらすじ>
「ポプラ荘の殺人ゲーム」
お金には換えられないほどの価値があるという「青い蝶のブローチ」。この秘宝を懸けたゲームに招かれ、燈馬と可奈は洋館「ポプラ荘」を訪れた。だがゲーム開始後、敷地内で立て続けに密室殺人事件が発生!! しかも犯行時、参加者全員にアリバイがあって──。
「トロッコ問題」
医学部への進学を目指す少女・石狩アユ。養育費を払っていた彼女の父・久慈睦五郎が1年前に失踪して消息不明となったため、母を支えるべく海の家で働いている。そんな中、義理の兄弟たちとの相続争いが勃発し──!!
Q.E.D. iff のシリーズ第17巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(17)」 (講談社コミックス月刊マガジン)。
奥付をみると2020年10月です。
「ポプラ荘の殺人ゲーム」は、なにか感想を書こうとするとネタバレになってしまいそうな作品なので困ってしまいますが、作者ご自身が大胆なネタバレを実行されていますので、気にすることはないのか?(笑)
全員にアリバイがある中で起きた密室殺人という魅力的な状況を、既存のトリックの組み合わせで実現している作者の手腕にご注目。
それにしても最後に燈馬が差し出すある ”モノ” 、こういうの本当にあるのでしょうか?──準備できる人はいるのでしょうね。
「トロッコ問題」は、冒頭有名なトロッコ問題が紹介され、これが謎解きに活きてくるという楽しい仕掛けとなっています。
事件(?) の内容も遺産争いという嫌な感じの話題なのですが、きちんと着地を見せます。
なのでめでたし、めでたし、という感じなのですが、どうも話に穴がある気が拭えません。うまくいかない気がします。
犯人の計画を成就させるためには、まだまだ一ひねりも二ひねりも必要な内容の話だと思うのです。
また事件そのものとは関係ないのですが、読者に真相を伝える手段にも疑問が残ります。
燈馬が可奈に最後に隠された真相を明かす、という段取りになっているのですが、「やっぱり水原さんには真相を話した方がいいですね」の前提となる可奈の発言は燈馬が招いたもので、ここがうまくない。燈馬は最初から可奈には言うつもりだったという解釈は成り立ちますがすっきりしませんね。
<蛇足>
「てことはオレ達と同じ高3か!」
「医学部を目指してるんだ」
「カニとカニカマだ」
という会話に吹き出しそうになりました。
カニとカニカマか......
タグ:加藤元浩 Q.E.D. iff
C.M.B.森羅博物館の事件目録(44) [コミック 加藤元浩]
C.M.B.森羅博物館の事件目録(44) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/06/17
- メディア: コミック
<裏側帯あらすじ>
大英博物館の発議によって「榊森羅から3つの指輪を剥奪する」という話が浮上!
森羅と共に集められたのは、新たな指輪の継承候補者となる5人の研究者たちだった。
はたして「知の守護者」と指輪の運命は──!?《「C.M.B.殺人事件」を完全収録!》
シリーズ第44巻です。「C.M.B.森羅博物館の事件目録(44)」 (講談社コミックス月刊マガジン)
前巻「C.M.B.森羅博物館の事件目録(43)」 (講談社コミックス月刊マガジン)(感想ページはこちら)でマオから教えられた「森羅から"C""M""B"の指輪を取り上げよう」という話が本格化します。
この第44巻はその
「C.M.B.殺人事件」
のみを収録しています。
"C""M""B"の指輪をめぐって起こる殺人事件で、とても興味深い。
指輪の力はすごく、「研究に必要な経費が無制限に与えられる」とのことながら、(今さらですが)そのお金がどこからくるのか不思議です。
今回大英博物館の理事が登場し、理事会が森羅が指輪を独占して持っていることについて勧告をしたという流れになっていますが、大英博物館のものというわけではなさそうですし......
指輪の継承候補者となる5人の研究者の中で連続殺人が起き、当然森羅は犯人でないことは(読者には)明らかですから、この5人の中に犯人がいる、という展開は、知の象徴である指輪をめぐる話としては凡庸ですが、ミステリー的には手堅いですよね。
殺人犯は、「榊森羅」
という帯の煽り文句も楽しいです。
まあ、こんな疑惑はさっさと晴らされてしまうと予想できますし、実際作中でもそうなります。
凡庸といってしまいましたが、不可能興味の部分含めミステリー的な部分はそれほど感心しなかったものの、事件の周りにちりばめられた意匠は十分楽しめました。
若干のネタバレですが、「没薬」「黄金」「乳香」のあたりはとてもおもしろい──欲をいえばそれが単なる事件の装飾にとどまっている印象なのが惜しいですね。
最後に森羅がする選択は本当にこれでよかったのか......
久しぶりにヒヒ丸が登場したような。もっと活躍してほしかったなぁ。
次巻で完結らしいのが寂しいですね。
Q.E.D. iff -証明終了-(16) [コミック 加藤元浩]
Q.E.D.iff -証明終了-(16) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/06/17
- メディア: コミック
<カバー裏あらすじ>
「時計塔」
テナントが不自然なほど頻繁に変わる時計塔。独自に調査に乗り出した燈馬と可奈だったが、なんとそこでは幾度も殺人や失踪事件が起きていたことが判明!! 呪われた時計塔と事件の裏に隠された“真実”とは!?
「マドモアゼル・クルーゾー」
芸術の都・パリの小さな美術館で白昼堂々起きた盗難事件。捜査するのは、おっちょこちょいな女性警部マリアンヌ・クルーゾー。燈馬や可奈も巻き込んで、彼女は絵画を犯人から取り戻すことができるのか
Q.E.D. iff のシリーズ第16巻。Q.E.D.iff -証明終了-(16) (講談社コミックス月刊マガジン)。
奥付をみると2020年6月です。
「時計塔」は、ポイントが複数盛り込まれた作品です。
死体はどこに行ったか、という部分はちょっと残念な仕上がり。盲点を突く、という狙いなのでしょうが、いろいろと難点が多く成立しないように思います。
一方で、時計塔のテナントが不自然なほど頻繁に変わる謎(?) の方は、類例がありそうなアイデアなのですが、ぱっと思い当たりません。説得力がまったくないのが難点ですが一種の奇想と呼んでもよいような内容でして、チェスタートンや泡坂妻夫あたりが書けば説得力が増したかも。
ラストのある登場人物のセリフがとてもとても印象的でした。
あと、七夕菊乃がゲスト出演しています。
「マドモアゼル・クルーゾー」のタイトルは、パリ警視庁の女性警部マリアンヌ・クルーゾーのことを指しています。
どうみてもボンクラなのですが、「私は有能ですよ。有能じゃなきゃ警部にはなれません!」というのが口癖。
クルーゾーという名前自体、映画「ピンク・パンサー」に出てくる警部を連想させて、ボンクラのイメージを強めていますね。
こういう場合、たいていラストでは有能であることがわかる、という展開になるものですから、事件を解決するのが彼女でもちっとも驚きませんが、このキャラクターがあまり好きにはなれませんでした。
まあこれは個人的な好き嫌いですから置いておくとして、事件の方は名画(?) 盗難事件で、定番のアイデアとはいうものの、種々細かなパーツが組み込まれて楽しい仕上がりになっていると思いました。
これでクルーゾー警部が好きになれたらなぁ。
個人的に興味深かったのは...…
実際に1911年に発生した「モナ・リザ」盗難事件が紹介されています。
「イタリアのどこかの美術館でクリムトの……」と同じアイデアの盗難事件が先日感想を書いた別のマンガで紹介されていたこと。
あちらの奥付は2021年3月初刷ですから、こちらのほうが少し早いですね。
タグ:Q.E.D. iff 加藤元浩
C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) [コミック 加藤元浩]
C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/02/17
- メディア: コミック
シリーズ第43巻です。
「C.M.B.森羅博物館の事件目録(43)」 (講談社コミックス月刊マガジン)。
この第43巻は、
「気の合わないヤツ」
「透明魚」
「歯医者」
「カメオグラス」
の4話収録。
「気の合わないヤツ」は、イラクのクルド人自治区が舞台。
家族や一族の名誉を守るために行われる殺人=「名誉殺人」というのが衝撃的ですが、異教徒の蛮習と言い切ることはできませんね。日本だって、家のため、名誉のため、といった動機のミステリ、名作・傑作にもありますよね。
なんとか脱出したいという少女の希望をどうやって叶えるか、という話になっており、定番中の定番のトリック(?) が使われます。
作中では描かれないのですが、少女の伯父の心情を知りたくなりました。伯父も同じサイドに立っているのでは、と思えましたので。
「透明魚」は、監視状況下の美術館へどうやって侵入したか、という謎を扱っています。
扱っているテーマは、表現の自由。
「そんなに大事な権利なの?」
「もちろん なぜなら…… 独裁者が必ず真っ先に潰しに来るのが『表現の自由』だから」
というのが象徴的です。
続けて森羅がいうセリフがすべてかもしれません。
「自分の考えを誰もいない砂漠で叫んでもなんの問題もないし わざわざ法律で守る必要もない
……ってことは『表現の自由』とは他者に自分の考えを広める権利ということになる
つまりコミュニケーションをとる権利だ
だから表現するには他者に受け入れてもらうための『手続き』がいる
これを『プロトコル』と言う
マナーを守り丁寧な言葉でわかりやすく説明することを心がけて相手と情報をやり取りする場を作る」
そして博物館や美術館は「表現の場というプロトコルを守っている」と。
まだ高校生というのに森羅しっかりしていますね(笑)。さすがC.M.B.の指環の持ち主。
ただ、この作品のトリックは無理だと思います......
「歯医者」は歯医者でタイムリープに陥ってしまった青年の話。その歯医者の待合に森羅がいる(笑)。
予定調和といえば予定調和の物語ですが、すっきりまとまっていてよかったです。
ラストの少女をめぐるエピソードを見ると、青年のお相手が ”Gifted” だという設定だともっとよかったかも、と思いましたが......
「カメオグラス」はマオが登場し、「ピラネージの花瓶」ばりのカメオグラスをめぐる駆け引きがなされます。
カメオグラスに関わる仕掛けは大したことないのですが、転んでもただでは起きないマオがあっぱれ。
それよりなにより、すごく久しぶりにヒヒ丸が出てきたのが嬉しい。
いや、それよりも、ラストでマオが漏らす情報がすごい。
森羅から"C""M""B"の指輪を取り上げようという話が出てるというのですから(一応色を変えて伏せ字にします)。
いよいよシリーズも終盤ということですね......
Q.E.D. iff -証明終了-(15) [コミック 加藤元浩]
Q.E.D.iff -証明終了-(15) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤 元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/02/17
- メディア: コミック
<カバー裏あらすじ>
「その世界」
当主が亡くなった名家・雷明家の遺産相続に巻き込まれてしまった燈馬と可奈。兄弟会議が行われた夜、長男・万作が不可解な死を遂げる! 彼の遺体の懐には奇妙な記号が書かれたメモが入れられていて──
「人がまだ見ることができない」
204X年、AIが日常生活に浸透した日本。ある日、AIが搭載されたロボットが暴走! 新人弁護士・水原可奈の事務所にもAI関係の依頼が殺到する結果に‥‥。証拠を集めるべく、彼女が向かった先には天才SE・燈馬想がいて──!?
Q.E.D. iff のシリーズ第15巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(15)」 (講談社コミックス月刊マガジン)。
奥付をみると2020年2月です。
「その世界」は、ミステリ好きとしてはちょっと懐かしい感じがするテイスト。
謎めいた記号が書かれたメモ、そしてそれが数学と関係がある、というのがQ.E.D.シリーズらしいところ。
ただ、池の中心にある祠の近くの小舟の上で殺すトリックは、図解がされていてもよくわからず
困惑してしまいました。
「人がまだ見ることができない」は、「Q.E.D.iff -証明終了-(11)」 (講談社コミックス月刊マガジン)に収録されている「溺れる鳥」(感想ページはこちら)と同じ204X年の世界の話です。
フェロー社が製造したAIロボットが暴走し人間に危害を加えた。行方不明となっている技術者アールシュ博士が関与しているらしい。
このあとの展開はエチケットとして伏せる必要があると思いますが、AIをめぐるあるテーマがすっと立ち上がってくるのが見事ですし、それが人間をめぐる別のテーマ ── 人がまだ見ることができない ── と結びつくのも素晴らしい。
作者の視点に賛同するかしないかは別にして、非常によく巧まれた作品世界にしっかり浸れると思います。
ラストにつながるヒントをちりばめる作者の手法もじゅうぶん堪能できます。
作者の腕が冴えた作品です。
タグ:加藤元浩 Q.E.D. iff