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C.M.B.森羅博物館の事件目録(44) [コミック 加藤元浩]


C.M.B.森羅博物館の事件目録(44) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(44) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: コミック

<裏側帯あらすじ>
大英博物館の発議によって「榊森羅から3つの指輪を剥奪する」という話が浮上!
森羅と共に集められたのは、新たな指輪の継承候補者となる5人の研究者たちだった。
はたして「知の守護者」と指輪の運命は──!?《「C.M.B.殺人事件」を完全収録!》


シリーズ第44巻です。「C.M.B.森羅博物館の事件目録(44)」 (講談社コミックス月刊マガジン)

前巻「C.M.B.森羅博物館の事件目録(43)」 (講談社コミックス月刊マガジン)(感想ページはこちら)でマオから教えられた「森羅から"C""M""B"の指輪を取り上げよう」という話が本格化します。
この第44巻はその
「C.M.B.殺人事件」
のみを収録しています。

"C""M""B"の指輪をめぐって起こる殺人事件で、とても興味深い。

指輪の力はすごく、「研究に必要な経費が無制限に与えられる」とのことながら、(今さらですが)そのお金がどこからくるのか不思議です。
今回大英博物館の理事が登場し、理事会が森羅が指輪を独占して持っていることについて勧告をしたという流れになっていますが、大英博物館のものというわけではなさそうですし......

指輪の継承候補者となる5人の研究者の中で連続殺人が起き、当然森羅は犯人でないことは(読者には)明らかですから、この5人の中に犯人がいる、という展開は、知の象徴である指輪をめぐる話としては凡庸ですが、ミステリー的には手堅いですよね。

殺人犯は、「榊森羅」
という帯の煽り文句も楽しいです。
まあ、こんな疑惑はさっさと晴らされてしまうと予想できますし、実際作中でもそうなります。

凡庸といってしまいましたが、不可能興味の部分含めミステリー的な部分はそれほど感心しなかったものの、事件の周りにちりばめられた意匠は十分楽しめました。
若干のネタバレですが、「没薬」「黄金」「乳香」のあたりはとてもおもしろい──欲をいえばそれが単なる事件の装飾にとどまっている印象なのが惜しいですね。

最後に森羅がする選択は本当にこれでよかったのか......

久しぶりにヒヒ丸が登場したような。もっと活躍してほしかったなぁ。
次巻で完結らしいのが寂しいですね。


タグ:CMB 加藤元浩
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Q.E.D. iff -証明終了-(16) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(16) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(16) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
「時計塔」
テナントが不自然なほど頻繁に変わる時計塔。独自に調査に乗り出した燈馬と可奈だったが、なんとそこでは幾度も殺人や失踪事件が起きていたことが判明!! 呪われた時計塔と事件の裏に隠された“真実”とは!?
「マドモアゼル・クルーゾー」
芸術の都・パリの小さな美術館で白昼堂々起きた盗難事件。捜査するのは、おっちょこちょいな女性警部マリアンヌ・クルーゾー。燈馬や可奈も巻き込んで、彼女は絵画を犯人から取り戻すことができるのか


Q.E.D. iff のシリーズ第16巻。Q.E.D.iff -証明終了-(16) (講談社コミックス月刊マガジン)
奥付をみると2020年6月です。

「時計塔」は、ポイントが複数盛り込まれた作品です。
死体はどこに行ったか、という部分はちょっと残念な仕上がり。盲点を突く、という狙いなのでしょうが、いろいろと難点が多く成立しないように思います。
一方で、時計塔のテナントが不自然なほど頻繁に変わる謎(?) の方は、類例がありそうなアイデアなのですが、ぱっと思い当たりません。説得力がまったくないのが難点ですが一種の奇想と呼んでもよいような内容でして、チェスタートンや泡坂妻夫あたりが書けば説得力が増したかも。
ラストのある登場人物のセリフがとてもとても印象的でした。
あと、七夕菊乃がゲスト出演しています。


「マドモアゼル・クルーゾー」のタイトルは、パリ警視庁の女性警部マリアンヌ・クルーゾーのことを指しています。
どうみてもボンクラなのですが、「私は有能ですよ。有能じゃなきゃ警部にはなれません!」というのが口癖。
クルーゾーという名前自体、映画「ピンク・パンサー」に出てくる警部を連想させて、ボンクラのイメージを強めていますね。
こういう場合、たいていラストでは有能であることがわかる、という展開になるものですから、事件を解決するのが彼女でもちっとも驚きませんが、このキャラクターがあまり好きにはなれませんでした。
まあこれは個人的な好き嫌いですから置いておくとして、事件の方は名画(?) 盗難事件で、定番のアイデアとはいうものの、種々細かなパーツが組み込まれて楽しい仕上がりになっていると思いました。
これでクルーゾー警部が好きになれたらなぁ。

個人的に興味深かったのは...…
実際に1911年に発生した「モナ・リザ」盗難事件が紹介されています。
「イタリアのどこかの美術館でクリムトの……」と同じアイデアの盗難事件が先日感想を書いた別のマンガで紹介されていたこと。
あちらの奥付は2021年3月初刷ですから、こちらのほうが少し早いですね。



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C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) [コミック 加藤元浩]


C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/17
  • メディア: コミック



シリーズ第43巻です。
「C.M.B.森羅博物館の事件目録(43)」 (講談社コミックス月刊マガジン)

この第43巻は、
「気の合わないヤツ」
「透明魚」
「歯医者」
「カメオグラス」
の4話収録。

「気の合わないヤツ」は、イラクのクルド人自治区が舞台。
家族や一族の名誉を守るために行われる殺人=「名誉殺人」というのが衝撃的ですが、異教徒の蛮習と言い切ることはできませんね。日本だって、家のため、名誉のため、といった動機のミステリ、名作・傑作にもありますよね。
なんとか脱出したいという少女の希望をどうやって叶えるか、という話になっており、定番中の定番のトリック(?) が使われます。
作中では描かれないのですが、少女の伯父の心情を知りたくなりました。伯父も同じサイドに立っているのでは、と思えましたので。

「透明魚」は、監視状況下の美術館へどうやって侵入したか、という謎を扱っています。
扱っているテーマは、表現の自由。
「そんなに大事な権利なの?」
「もちろん なぜなら…… 独裁者が必ず真っ先に潰しに来るのが『表現の自由』だから」
というのが象徴的です。
続けて森羅がいうセリフがすべてかもしれません。
「自分の考えを誰もいない砂漠で叫んでもなんの問題もないし わざわざ法律で守る必要もない
……ってことは『表現の自由』とは他者に自分の考えを広める権利ということになる
 つまりコミュニケーションをとる権利だ
 だから表現するには他者に受け入れてもらうための『手続き』がいる
 これを『プロトコル』と言う
 マナーを守り丁寧な言葉でわかりやすく説明することを心がけて相手と情報をやり取りする場を作る」
そして博物館や美術館は「表現の場というプロトコルを守っている」と。
まだ高校生というのに森羅しっかりしていますね(笑)。さすがC.M.B.の指環の持ち主。
ただ、この作品のトリックは無理だと思います......

「歯医者」は歯医者でタイムリープに陥ってしまった青年の話。その歯医者の待合に森羅がいる(笑)。
予定調和といえば予定調和の物語ですが、すっきりまとまっていてよかったです。
ラストの少女をめぐるエピソードを見ると、青年のお相手が ”Gifted” だという設定だともっとよかったかも、と思いましたが......

「カメオグラス」はマオが登場し、「ピラネージの花瓶」ばりのカメオグラスをめぐる駆け引きがなされます。
カメオグラスに関わる仕掛けは大したことないのですが、転んでもただでは起きないマオがあっぱれ。
それよりなにより、すごく久しぶりにヒヒ丸が出てきたのが嬉しい。
いや、それよりも、ラストでマオが漏らす情報がすごい。
森羅から"C""M""B"の指輪を取り上げようという話が出てるというのですから(一応色を変えて伏せ字にします)。
いよいよシリーズも終盤ということですね......


タグ:加藤元浩 CMB
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Q.E.D. iff -証明終了-(15) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(15) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(15) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/17
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
「その世界」
当主が亡くなった名家・雷明家の遺産相続に巻き込まれてしまった燈馬と可奈。兄弟会議が行われた夜、長男・万作が不可解な死を遂げる! 彼の遺体の懐には奇妙な記号が書かれたメモが入れられていて──
「人がまだ見ることができない」
204X年、AIが日常生活に浸透した日本。ある日、AIが搭載されたロボットが暴走! 新人弁護士・水原可奈の事務所にもAI関係の依頼が殺到する結果に‥‥。証拠を集めるべく、彼女が向かった先には天才SE・燈馬想がいて──!?


Q.E.D. iff のシリーズ第15巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(15)」 (講談社コミックス月刊マガジン)
奥付をみると2020年2月です。

「その世界」は、ミステリ好きとしてはちょっと懐かしい感じがするテイスト。
謎めいた記号が書かれたメモ、そしてそれが数学と関係がある、というのがQ.E.D.シリーズらしいところ。
ただ、池の中心にある祠の近くの小舟の上で殺すトリックは、図解がされていてもよくわからず
困惑してしまいました。


「人がまだ見ることができない」は、「Q.E.D.iff -証明終了-(11)」 (講談社コミックス月刊マガジン)に収録されている「溺れる鳥」(感想ページはこちら)と同じ204X年の世界の話です。
フェロー社が製造したAIロボットが暴走し人間に危害を加えた。行方不明となっている技術者アールシュ博士が関与しているらしい。
このあとの展開はエチケットとして伏せる必要があると思いますが、AIをめぐるあるテーマがすっと立ち上がってくるのが見事ですし、それが人間をめぐる別のテーマ ── 人がまだ見ることができない ── と結びつくのも素晴らしい。
作者の視点に賛同するかしないかは別にして、非常によく巧まれた作品世界にしっかり浸れると思います。
ラストにつながるヒントをちりばめる作者の手法もじゅうぶん堪能できます。
作者の腕が冴えた作品です。




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Q.E.D. iff -証明終了-(14) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(14) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(14) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/17
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
「1億円と旅する男」
徘徊しているところを保護された謎の老人。彼は1億円を所持していた! 記憶喪失の男が唯一覚えているのは、病床で聞いたオルゴールの音と、妻の遺した「ある言葉」だけ……。はたして彼の正体は!? 「メモリ」
事故で無くなった、燈馬の研究仲間・黄成(ファンソン)。彼が遺した研究成果はサーバーセキュリティを揺るがすものだった! それを知った各国はデータを奪取すべく暗躍。燈馬はデータを守り抜くことができるのか


Q.E.D. iff のシリーズ第14巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(14)」 (講談社コミックス月刊マガジン)
奥付をみると2019年10月です。

「1億円と旅する男」は、非常によく企まれた作品で、記憶喪失の男の正体の着眼点はおもしろく、1億円のエピソードにも感心しました。犯人の狙いには驚愕しますし(帯にも「ラスト15P(ページ) 貴方は震撼する!!」とあるのは看板に偽りなしです)、底流となっている燈馬の思いは、なかなかシリーズでは出してこなかった部分でとてもいい感じです。
途中、可奈がこれまで見せてこなかったような表情を見せるのもとても印象的です。
なので、傑作! と言い切りたいところなのですが、アイデアが壮観で壮絶な分無理があり、さすがにこの記憶喪失の状況は起こらないのではないかと思えてならないのが惜しい。
ちなみに、七夕菊乃がちらっと出てきます。

「メモリ」は、量子暗号に資する研究データの入った USBメモリの争奪戦で、米ソ中が狙うというのだから大事です。久しぶりに、内閣情報調査室の梨田俊二も登場します。
にしては、遊園地を舞台にした幼稚でレベルが低く、マンガみたい(って、これマンガなんですが)。
蛇足ですが USBメモリに関するトリック(?) はうまくいかない気がします。少なくとも相手が不注意でないと思ったような効果は得られないように思います。
とはいえ、狙いは面白いですし、ここでも燈馬の思いが垣間見れてよかったです。
余談ですが、三角関数の加法定理の証明が懐かしかったですね。


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C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) [コミック 加藤元浩]



C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/17
  • メディア: コミック

<帯あらすじ>
ジャガーの棲む南米の大湿地帯・パンタナールを訪れていた森羅と立樹。そんな矢先、友人の夫が営む大農場の西にある森で、2つの殺人事件が‥!
だが、それらは全てシャーマンの老婆によって予言されており──!?
《「ジャガーの森(前・後編)」他2編を収録》


シリーズ第42巻です。「C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) 」(講談社コミックス月刊マガジン)

この第42巻は、
「月下美人」
「ジャガーの森」
「死体がない!」
の3話収録。

「月下美人」は、売れない、役者志望の青年が主人公。
不幸のポイントが貯まるといずれ還元されて幸福が訪れるという考え方が面白いですね。
小さなトンネルで消えた恋人(候補)の謎解き自体は噴飯ものですが(さすがにこの解決はないでしょう)、主人公の性格とは調和していると思いました。
蛇足ですが、作中バイトで配達中の主人公に、「そうやって空気が読めないからネクタイ締められないんだよ」というサラリーマン風の男が出てくるのですが、なんか典型的すぎて笑ってしまいました。

「ジャガーの森」はパンタナールが舞台。
パンタナール、いいですよ。でも行った際にはジャガーには会えませんでしたが。
さておき、そんな素敵な舞台で起こるのは、広大な農園の廻りで暗躍する麻薬組織や密猟者の影、相次ぐ殺人と物騒な物語です。
真相は納得感のあるもの──というか、わりと見え見えで──ですが、周囲の人は気づかないものか疑問です。少なくともシャーマンは気づいていたわけですから。
ジャガーのエピソードは超自然ですが、パンタナールやアマゾンといった地域ではあってもおかしくないような、あってほしいような思いがします。

「死体がない!」は経済学者&人材派遣会社社長の邸宅から凶器を持った血塗れの男が出てくるという派手な出だし。
邸宅には血だまりはあるものの事件らしきものの形跡はそれだけで死体などはなく、捕まった男も森羅を呼べというだけ。
非常によく企まれた事件になっていて面白かったのですが(目と口が線で描かれた森羅の顔がいいですね)、地下室の部分は森羅の説明通りとはならないように思います──とても楽しいアイデアなのですが。
ところで、経済学者&人材派遣会社社長の梅中大蔵って、竹中平蔵をどうしても連想させますね。わざとそうしているのだとは思いますが......


タグ:加藤元浩 CMB
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Q.E.D. iff -証明終了-(13) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(13) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(13) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/17
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
「殺人風景」
自然に囲まれた別荘で巻き起こる不可解な殺人事件! だが、現場に居合わせたと語る3人の目撃者は、それぞれ異なる証言をしていて── 奇妙な事件に潜む真実の景色とは‥‥?
「特異点の女」
ドイツとフランスの国境近くで燈馬と可奈は強盗事件に遭遇。盗まれたのはなんと25億円相当の薬だった! そんな時、自首してきた1人の男‥‥。彼の証言で浮かび上がってきたのは “謎の女” の存在で──!?


Q.E.D. iff のシリーズ第13巻。「Q.E.D.iff -証明終了-」(13) (講談社コミックス月刊マガジン)
奥付をみると2019年6月です。

「殺人風景」は、3人の目撃者が3人3様の目撃証言をし、その証言を信じると被害者は3通りの違った方法で3回殺されたことになるのだが......という極めて魅力的な謎が登場します。
素晴らしい。
ただ、素晴らしいのはここまで。
この場合、犯人役(?) と被害者はグルでないと成立しませんから、犯人(たち)は明らかなんですよね。なので興味はその狙いになるわけですが、この犯人の狙いはあり得ない、というか、成立しないですね。
燈馬の謎解きを聞いても納得感ゼロでした。残念。
物語のオチのつけ方はよかったのですが……。


「特異点の女」
冒頭に燈馬と可奈が巻き込まれる強盗事件。
まず狙いがいいですね。
お金や宝物などではなく、薬。
そのあとの仲間割れ?と、盗んだはずの薬の入ったカバンの中には薬ではなく雑誌が入っていたという謎。いつすり替えたのか?
このすり替えも、ちょっとよくある手法を使っているのですが、手品で言うところの改めをキチンとやっているように見えるところがポイントで、よくできているなぁ、と。
そしてタイトルのいわれである、強盗の一人である女をめぐる話となるのですが、ここもうまい。
途中で出てくるライオンのエピソードがラストに生きてくるのですが、このライオンの部分を読み返すと、ライオンの話をした登場人物は(意外と)このラストを見通していたのでは? と思えて興味深かったですね。
よくできたお話で、「広中平祐先生に捧ぐ」とかなんとか献辞があるとよかったかも。なんといっても広中先生のフィールズ賞受賞対象の研究は「標数0の体上の代数多様体の特異点の解消および解析多様体の特異点の解消」ですから(これ、ネタバレにはなっていませんよね?)

この話では森羅がゲスト出演し、ユーロポールの刑事ビア・ブルストにアドバイスをします。
「水原って女の子をきっちり接待すると事件が早く解説するよ」
うん、的確な燈馬の操作方法ですね(笑)。
こういう楽屋落ち、もっともっとやってほしいな。


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C.M.B.森羅博物館の事件目録(41) [コミック 加藤元浩]


C.M.B.森羅博物館の事件目録(41) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(41) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/17
  • メディア: コミック

<帯あらすじ>
くじ引きの結果、生活委員を務めることになった森羅と立樹。そんな矢先、園芸部と業者との間に問題が勃発! 解決に向かった2人だったが、その最中もあれやこれやと巻き起こる問題‥‥。ついには学校全体を包みこむ事件へと発展し──!?
《「生活委員」他3編を収録》


シリーズ第41巻です。「C.M.B.森羅博物館の事件目録」(41) (講談社コミックス月刊マガジン)

この第41巻は、
「生活委員」
「封印荘奇譚」
「浜栗家の人々」
「石と写真」
の4話収録。

「生活委員」は、実態は単なる雑用係である生活委員に選ばれてしまった森羅が学校で巻き起こる騒動の対応に追われる、という話。百葉箱や花壇を守ろうとする園芸部と開発業者の対立、トイレの詰まり、逃げたトリの捕獲、トラックのタイヤパンクの修理、電灯の取り換え、オーストラリアから持ち込まれた種の種別判定、盗まれたパン......
いや、もう、雑用係の領域すら超えていますけど(笑)。
これらをスーッと繋げて見せる手腕が見どころ。
無理があるのは承知。こまごまとした事象を繋げて飛躍してみせるのを楽しむべき作品ですね。

「封印荘奇譚」
元華族の別荘封印荘。そこでは過去2人が死に、1人が失踪しているという。
そこで建設会社の調査にあたった職員が襲われ、測量機器が盗まれた。幽霊のしわざ
座敷牢の木組みの謎とかは他愛ないものではありますが、雰囲気の盛り上げに貢献していますね。
ただ、ミステリとしてみた場合アンフェアなのが問題ですが......

「浜栗家の人々」
資産家の父が若い女に騙されていると訴える家族の依頼で調べる森羅と七瀬。
その若い女は立川流のもので、父親はそれを信仰していたという......
全体の枠組みはそれほど感心しなかったのですが、携帯電話をめぐるあたりは、いい着眼点だと思いました。
ところで都内に8つもマンションを持っていて、家賃収入で月480万円って、安くないですか?
マンション一つあたり60万円ですよね。小さなマンションばかりなのでしょうか。

「石と写真」は、マチュピチュ遺跡が舞台。
実際にやろうとすると無理はありそうですが、絵的に面白いトリックが使われています。
しかし、遺跡でこういうことをするのは感心しませんね。犯人に文句を言ってやりたいです。





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C.M.B.森羅博物館の事件目録(40) [コミック 加藤元浩]


C.M.B.森羅博物館の事件目録(40) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(40) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: コミック


<帯あらすじ>
農務省高官に裏取引の書類を渡すためブラジルを訪れていた商社マン・菱沢琢実。彼は現地で出会った少女・ソフィアのことが忘れられないと語るのだが…
《「イパネバの娘」他3編を収録》


この第40巻は、
「奇跡の神殿」
「五月蠅い殺し屋」
「イパネバの娘」
「ボトルシップ」
の4話収録。

「奇跡の神殿」は、カンボジアで、でっかいダニに噛まれた少年がシヴァの神殿でなぜか治って帰って来た、という話。
冒頭の税関でコブラを密輸しようとした男の話が最後に効いてくるのがよかった。

「五月蠅い殺し屋」は、ドジな殺し屋の話ですが、これ小説に仕立てたら一風変わったユーモアミステリになるのではないでしょうか?
この殺し屋、小学校にあがるまえの幼い娘に職業を知られているというのが面白い。
「一流の殺し屋なら最初からスケジュール調べるよね」
「……父ちゃんは超一流だからこれでいいんだ」
なんてやりとり傑作です。

「イパネバの娘」は、鈍な若手商社員がブラジル、イパネバで大冒険。
イパネバの娘が救ってくれてなんとか難を逃れたけれど......
と飛行機で乗り合わせた森羅と七瀬に話をするんですけど、この設定はないですね。森羅に謎を解かせるにはこうするしかないんですけど、政府高官との裏取引うんぬんを、たまたま飛行機で乗りあわせた二人にするとは思えませんから。
この話を聞いただけで、裏のストーリーを見抜いてしまう森羅はさすがです。
また、その内容もとても面白い。

「ボトルシップ」のタイトルにもなっているボトルシップは、殺人現場で粉々に壊されていたことからとられています。
このボトルシップをめぐる部分はとても気が利いていると思いました。
しかし、この物語の設定で、順番を抜かしたくらいで商談がダメになるとは思えないのですが......

この第40巻は、お話の面白さが充実していました。



タグ:CMB 加藤元浩
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Q.E.D. iff -証明終了-(12) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(12) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(12) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: コミック


<カバー裏あらすじ>
「いい奴」
イギリスを訪れた燈馬と可奈は、燈馬のMIT時代の知り合い、シーナに出会う。誘拐の交渉人をする彼女が抱える案件は、元・恋人の誘拐事件で…!? 複雑な誘拐ビジネスの闇に、燈馬が頭脳で挑む!!
「再生の時」
とある川の中洲で、記者の男の遺体が発見された!  容疑者として可奈の友人の恋人が浮上し、解決すべく現地に向かう燈馬と可奈。事件に秘められた、過去と現在を繋ぐ驚きの真実とは…!?


Q.E.D. iff のシリーズ第12巻。
奥付をみると2019年2月。もう5年ほど前になりますか。amazonでは既に入手困難になっているようです。
第11巻と同じことを書いてみました。
出版業界が厳しい状況というのは本当なんですね。

「いい奴」は、主な舞台がシリアで誘拐保険担当の交渉人という設定が目をひきます。
燈馬のロジックに珍しく乱暴なところが散見されるのが気になりましたが、誘拐をめぐっての交渉ということであれば、緻密な論理よりもスピードが重視されるでしょうから、確率がある程度喬そうであれば細かいロジックのつじつまを合わせている場合ではないということなのでしょう。
脱出劇のところは、ここも雑な感じを受けましたが、映画的で面白いなと思いました。

「再生の時」は、さらっと扱われていますが、豪快なトリックにちょっと度肝を抜かれました。
こちらのトリックはいいのですが、謎解きのメインとなる骨子は少々いただけません。
無理をなくすために、設定に配慮が見られているのですが、その配慮をもってしても非現実感が漂ってきてしまいます。
いい話的な着地を目指してるのですが、「全部知っていたんだね」というのは無理がありすぎるセリフで残念です。



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