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連続自殺事件 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


連続自殺事件【新訳版】 (創元推理文庫 M カ 1-13 フェル博士シリーズ)

連続自殺事件【新訳版】 (創元推理文庫 M カ 1-13 フェル博士シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/02/19
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
空襲が迫る1940年の英国。若き歴史学者のキャンベルは、遠縁の老人が亡くなったスコットランドの古城ヘ旅立った。その老人は、塔の最上階の窓から転落死していた。部屋は内側から鍵とかんぬきで閉ざされ、窓から侵入することも不可能。だが老人には自殺しない理由もあった。それでは、彼になにが起きたのか? 名探偵フェル博士が、不気味な事件に挑む! 『連続殺人事件』改題・新訳版。


4月に読んだ7作目の本です。
ジョン・ディクスン・カーの「連続自殺事件」【新訳版】 (創元推理文庫)
旧訳で読んでいます。
薄めの長編で、トリックも正直たいしたことなく、カーにしては....という感想を抱いたことを記憶しています。
新訳で読んで、その印象は一掃されました。

旧訳時のタイトルは「連続殺人事件」。
原題は "The Case of the Constant Suicides” ですから、新訳の方が原題に忠実です。
連続殺人と連続自殺ではずいぶん違いますね(笑)。

実際に読んでみると、どちらも含蓄深いタイトルと思える事件が創出されていて、カーの物語作者としての腕前を堪能しました。
軽めの作品なのですが、ここまで凝っているとは。

塔の密室トリックには傷があることは以前より指摘されていますが、「犬を旅行に連れていくときに入れるためのケースのようなもの」(70ページ)をめぐるやりとりはおもしろいですし、「自殺」「他殺」で揺れ動くプロットにうまくはめ込まれているなという印象で、とりたてて傷と言い募ることもないかな、という感想です。

ばかばかしいような恋愛(失礼な言い回しですが、ここでは褒め言葉として使っています)、ドタバタ劇、密室と、薄い中にも存分にカーらしさが発揮されている佳品だと思いました。
きちんと読み直すことができて、新訳に感謝です。


<蛇足1>
「ジョンソン博士のこの国についての見解を再読し、道中の暇を紛らわした。あんたたちもおなじみだろうが、結局のところ神がスコットランドを作ったんだから、スコットランドにそれほど厳しくしちゃいかんと言われたとき、ジョンソン博士がきっぱりと返事をしたな。“失礼ですが、そのたとえは不愉快ですね。神は地獄も作ったのですから” と」(126ページ)
ボズウェルの「サミュエル・ジョンソン伝」を読んだフェル博士のセリフです。
笑い話ではありますが、イギリス内部の国同士のありように思いをはせるとかなり興味深いです。

<蛇足2>
「いいかね、何の因果か、わしはドアや窓の細工についていささか詳しいんだ。そうした事件に──コッホン──取り憑かれたように出くわしてきたからな」(204ページ)
こういう楽屋落ち、いいですね。カーを読むの楽しみの一つです。

<蛇足3>
「『おや、悪魔があたしの墓の上を歩いたかね』と、彼女はぶるりと震えた。」(246ページ)
Someone is walking over my grave (だれかが私の墓の上を歩いている=身震いしたときにいう慣用表現)という言い回しがありますが、悪魔を使う言い方もあるんですね。



原題:The Case of the Constant Suicides
著者:John Dickson Carr
刊行:1941年
訳者:三角和代






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死者はよみがえる [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


死者はよみがえる【新訳版】 (創元推理文庫)

死者はよみがえる【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/10/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
南アフリカからロンドンへ無銭旅行ができるか? 友人とそんな賭けをした作家のケントは、大冒険の末にロンドンへたどり着いた。空腹のあまり、ホテルで無銭飲食に及んだケントを、予想もしない展開が待っていて――。残酷にして不可解な殺人に関して、名探偵フェル博士が指摘した12の謎がすべて解かれるとき、途方もない真相が明らかに! 巨匠カーの独壇場たる本格長編ミステリ。


4月に読んだ8作目(冊数で言うと9冊目)の本です。
ジョン・ディクスン・カーの「死者はよみがえる」【新訳版】 (創元推理文庫)
旧訳で読んでいます。当時なかなか旧訳が手に入らなくて2002年になってようやく読んでいますね。
細部は覚えていなかったのですが、この作品は印象に残っていることがありまして、それはアンフェアであるということ。
新訳で今般再読し、改めてアンフェアであることを確認しました(笑)。


冒頭主役であるクリス・ケントがロンドンのホテルで無銭飲食に及ぶシーンからスタートで、軽快な物語を予感させてくれ、その後舞台を田舎の屋敷に移して事件が続いていきます。

アンフェアな部分は記憶に残っていたので、なにか手がかりでも伏線でもあったのかと注意して読んだのですが、なかったですね。
すっかりカー・ファンになってしまっているので個人的には笑って許せてしまうのですが、これはダメでしょうね。ずっこけてしまう感じですし、腹を立てて本をぶん投げる人がいてもおかしくないほどの、堂々としたアンフェアぶり。
ここがメインという作品ではなく、有名な絞殺トリックをはじめ種々取り混ぜて構築ぶりを楽しむ作品ではありますが、その重要なパーツがこれではねぇ......苦笑するしかありません。
ただこの思いつきは、おそらくミステリ作家として抗いがたい魅力的なもので、どうしても作中に盛り込みたかったのでしょうね。


<蛇足1>
「殺害されてから、彼の顔は十数回ほど激しく殴られていました――わたしたちにおなじみの鈍器でですよ、もちろん。ですが、その鈍器は発見されませんでした。」(46ページ)
おなじみの鈍器とは何のことでしょうね?

<蛇足2>
「ピカデリーを通る車の音が窓の下から沸き立つように聞こえてくる。この高さからだと、灰色の弊社のような屋根の斜面から、飾り気がなくどっしりしたセント・ジェームズ宮殿のむこう、裸の木の並ぶセント・ジェームズ公園まで見渡せた。」(113ページ)
舞台となるロイヤル・スカーレット・ホテルからの眺めです。架空のホテルでしょうし、現在とはあたりの建物の様子も違うのでしょうが、セント・ジェームズ公園まで見渡せたというのはすごいですね。どの辺という設定なのか気になります。

<蛇足3>
「フェル博士は葉巻の先を見つめた。『いやいや』彼はそっけなくも温かみのある声で答えた。」(121ページ)
そっけなくも温かみのある声??



原題:To Wake the Dead
著者:John Dickson Carr
刊行:1938年
訳者:三角和代




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緑のカプセルの謎 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


緑のカプセルの謎【新訳版】 (創元推理文庫)

緑のカプセルの謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/10/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
小さな町の菓子店の商品に、毒入りチョコレート・ボンボンがまぜられ、死者が出るという惨事が発生した。一方で村の実業家が、みずからが提案した心理学的なテストの寸劇の最中に殺害される。透明人間のような風体の人物に、青酸入りの緑のカプセルを飲ませられて――。食いちがう証言。事件を記録していた映画撮影機の謎。そしてフェル博士の毒殺講義。不朽の名作が新訳で登場。


7月に読んだ9冊目の本は、ジョン・ディクスン・カーの
「緑のカプセルの謎」 (創元推理文庫)
奥付を確認すると2016年に出た新訳です。
旧訳でも読んでいますが、例によってあまり覚えていない......

引用したあらすじにも書いてありますが、
この作品はフェル博士による毒殺講義が有名ですね。264ページからの第18章「毒殺者とは」が該当します。
ただ、毒殺講義といっても、「三つの棺」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(感想ページはこちら)の密室講義とは違って、毒殺のトリックというよりは、毒殺者のタイプ分け、ですね。
とはいえ、この分類が犯人あてに寄り添っているのが見事です。

オープニングはポンペイの遺跡ですが、すぐに舞台はイギリスの小村ソドベリー・クロスへ。
事件は二つ。です。
菓子店の商品に、毒入りチョコレート・ボンボンがまぜられた事件と、実業家マーカスがみずからが提案した心理学的なテストの寸劇の最中に殺害される事件。
菓子店のほうは、ちょっと待ってくれ、と言いたくなるようなトリックで笑ってしまうのですが、寸劇中の殺人は素晴らしいですね。
事件の模様がフィルムに収められている、というのもセンセーショナルでいい。
傑作だと思います。


<蛇足1>
「リコリス味のグミ、板チョコ、ブルズアイのキャラメルはよく売れたが、チョコレート・ボンボンはその日、ここで初めて売れたそうだ」(33ページ)
日本ではなじみがないですが、リコリス(licorice)って、ヨーロッパでは割と普通に売られているお菓子です。ここではグミとありますが、キャンディタイプも多いですね。
甘草の一種で作っているらしく、激マズです(笑)。
カラフルなものもあるようですが、黒いもののほうが一般的だった気がします。
怖いものみたさ、世界のまずいもの体験として、旅行に行かれたらお試しあれ。


<蛇足2>
「フェル博士は心のこもった地鳴りのような声で挨拶を返し」(177ページ)
いったいどんな声なんでしょうね(笑)。
心のこもった地鳴り!? (「心のこもった」というのは「地鳴り」ではなく「声」にかかるのだとは思いますが)

<蛇足3>
タイトルになっている「緑のカプセル」そのものには謎はなかったような......??
また帯に「名探偵フェル博士vs.“透明人間”の毒殺者」とあるのも、あんまり的を射た惹句ではないような気がします。




原題:The problem of the Green Capsule
著者:John Dickson Carr
刊行:1939年
訳者:三角和代






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絞首台の謎 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/10/29
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
怪しげな人々が集うロンドンの会員制クラブを訪れた、パリの予審判事アンリ・バンコラン。そこに届く不気味な絞首台の模型に端を発して。霧深い街で次々と怪事件が起こる。死者を運転席に乗せて疾駆するリムジン、実在した絞首刑吏を名乗る人物からの殺人予告、そして地図にない幻〈破滅(ルイネーション)街〉――横溢する怪奇趣味と鮮烈な幕切れが忘れがたい余韻を残す、カー初期の長編推理。


「四つの凶器」 (創元推理文庫)感想で、
「絞首台の謎」は新訳を日本に置いてきてしまったので読めていません。旧訳では読んでいるんですけどね」
と書きましたが、一時帰国時に発掘しました。

読んだ順が変わってしまいましたが、バンコラン登場の第2作。
「夜歩く」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続く作品で、「髑髏城」 (創元推理文庫)の前ということになりますね。
これでシリーズ制覇です。

創元推理文庫の旧訳版を読んでいるのですが(手元の記録によれば2004年に読んでいます)、まったく覚えていませんでした。
謎も、仕掛けも、犯人も......なにひとつ。
ここまですっかり忘れてしまっているとは。まあ、おかげで、初読のような楽しみ方をすることができたんですけどね(笑)。

死者が運転するリムジンとか、密室状況の部屋に忽然と現れる品々とか、不可能趣味、怪奇趣味溢れるかたちでカーは突っ走っています。
さらにバンコランの人と人とも思わないような態度が雰囲気を盛り上げていますよね。
正直、カーの作品の中では上出来とは言えませんが、バンコランの冷酷さが光っているので、そういう雰囲気に浸るにはうってつけの作品です。
最後に鼻歌なんて歌ってんじゃないよ、バンコラン。

伝説の絞首刑吏〈ジャック・ケッチ〉を名乗る脅迫者に付け狙われるエジプト人ニザーム・エル・ムルク。彼をとりまく秘書、従僕。知り合いのフランス女性コレット。
舞台となるプリムストーン・クラブに宿泊する元ロンドン警視庁副総監ジョンに、バンコランにジェフ。ジョンの友人ダリングズに医師のピルグリム。
非常に限定された登場人物で物語が展開し、10年前にフランスで起きた決闘騒ぎが由縁と推理をすすめていくのですが......

真相はそこそこ無理があるものになっていますが、それでも手がかりはあちらこちらに忍ばせてあり、デビューしてすぐの作品とはいえさすがカーというところ。最終章でバンコランが振り返って推理を開陳するところでは、なるほどー、と思うところ連発で、謎解きには満足できました。

最後に、巻頭にある登場人物一覧がおもしろかったですね。
リチャード・スマイル ニザームのお抱え運転手。運転席で首を切られ、ドライブを満喫
とか
シャロン・グレイ 妙齢の英国美人。災難やジェフと好相性
とか、ちょっとおふざけの利いた感じになっています。

万人向けの作品ではないとは思いましたが、カー好きなら、あるいは怪奇ミステリ好きなら、お手に取ってみてください。


<蛇足1>
「探偵は一度もしくじらない。それこそ、まさに私の求めるものだ。作家がなぜ探偵を凡人に仕立てたがるか理解に苦しむよ。こつこつと足で稼ぎ、しくじりかねないのに頑固一徹というーーばかばかしい! むろん、本物の頭脳明晰な人物造型の才に欠けるために代用品で押し切る魂胆なのだろうが……」(108~109ページ)
バンコランが読書中のミステリ小説に関連し、ジェフに語る内容です。
カーの本音?

<蛇足2>
「証拠だけをもとに話を進めますよ。まずは初心に戻って一から。」(116ページ)
タルボット警部の台詞です。
ここでいう初心は、一般的に誤用されている初心の意味合いですね。新人のころの(新鮮な)気持ち。
世阿弥の「初心」とは解釈が違いますが、広まっている使われ方なのでやむを得ないのでしょうね。

<蛇足3>
「おーーお廊下の奥です。ご案内をーー」(178ページ)
小間使いの台詞です。
お廊下!? 廊下につける接頭辞は「お」なのか......そもそも廊下に美化語をつけるのか、というのもありますが......




原題:The Lost Gallows
著者:John Dickson Carr
刊行:1931年
訳者:和爾桃子





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四つの凶器 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


四つの凶器 (創元推理文庫)

四つの凶器 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
依頼人であるラルフ・ダグラスと高級娼婦ローズの関係を清算するべく青年弁護士リチャードがパリ近郊の別宅に到着した時、娼婦はすでに寝室で事切れていた。死体発見現場からは、カミソリとピストルと睡眠薬、そして短剣が見つかる。過剰に配置された凶器は何を意味するのか。不可能犯罪の巨匠カーの最初期を彩った名探偵アンリ・バンコランの “最後の事件” を描いた力作長編。



「夜歩く」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「絞首台の謎」 (創元推理文庫)
「髑髏城」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「蝋人形館の殺人」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
と続いてきたバンコランものの最終作です。
「絞首台の謎」は新訳を日本に置いてきてしまったので読めていません。旧訳では読んでいるんですけどね)
引退しているという設定からか、バンコランのイメージ一新という感じの作品です。
「コーデュロイの上っ張りで、『かかしそっくりのやつ』だったらしいよ。」(31ページ)
「まずカーティスが気づいたのは、これまでかいだことがないほど強烈な最下等の煙草だった。お次に、戸口にたたずむ男が来ているコーデュロイの両肘とも、ずいふん擦り切れているのが目についた。五十代半ばのほっそりとした長身、その身なりに帽子は何の貢献もしていない。パイプをふかし、しわしわのまぶたの下から親切そうな目で三人を見ているが、無精ひげをあたらなくてはさまにならない。それでも、パイプを口から外してぼろ帽子を上げてみせた身のこなしの品格たるや、ちょっと無類だった。」(79ページ)
最後になんとかフォローが入っていますが、悪い方にイメージ一新です(笑)。

ちなみに、バンコランが謎解きのシーンで
「私とて誰でも疑うように生まれついているわけではありません。」(320ページ)
というのですが、いやいや、あなたは誰をも疑うように生まれついてはずです、と思っておかしくなりました。

本作品の目玉は、やはりタイトルにもなっているように凶器が過剰なところだと思うのですが、読後1か月も経っていないのに、感想を書こうとしたら、うろ覚え......慌ててざっと確認しました(苦笑)。
忘れておいていうのもなんですが、やはり、過剰な凶器という状況が真相と密接に絡んでいることはさすがカー、というところなんだと思います。
正直真相そのものはあまり好きなタイプの仕掛けではなかったのですが、過剰な凶器の解釈としてはもっとも自然な解決ともいえる気がします。
原題は The Four False Weapon で「四つの偽の凶器」。この False の部分の含蓄が素晴らしい。

そして好きなタイプではない、と書きましたが、その真相に至る過程はフェアだったと思いますし(なにより、真相の一部は割と早い段階でバンコランが指摘して読者に対してオープンにしています)、プロットも起伏に富んでいて楽しめました。
特に229ページでバンコランが一旦人物を特定してみせた後の展開は目まぐるしくて素敵です。

もう一つ、この作品で面白いのは、カーならでは、と言いましょうか、ロマンスですね。
ロマンスの当事者となりそうな女性は一人しかいないのですが、そういう展開になるとはね。
いや、まあ、冒頭のシーンから判断してもそうなるだろうことはわかっていたといえばわかっていたんですけれども。

カー、やはり面白いです。



<蛇足1>
「髑髏城」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)の蛇足でも書きましたが、この訳者の結構クラシックな日本語、今回も楽しめます。
一つだけ挙げておきます。
「生き馬の目を抜く握り屋の賭博嫌い」(158ページ)
「握り屋」って最近めったにみない表現ですね。

<蛇足2>
「予告殺人」 (クリスティー文庫)感想で、訳者の羽田詩津子さんが変わった(新しい?)表記、訳し方をされている、と書きましたが、この「四つの凶器」の和爾さんも同様の訳し方をされています。
「生き馬の目を抜く握り屋の賭博嫌い、(失礼ながら)あなたにさほど首ったけでもない女性が」(158ページ)
「相手にそれが通じるはずだと決めてかかったのはとんだ誤算でしたが(このことは決して彼女には知
らせないように。~~)。」(319ページ)
「脅迫して巻き上げたのだと。(そして、その部分はまったく読み通りでした。~~)最後には認めたものの、」(328ページ)
「賭け狂いの輩は(ここで勝負する人はみんあそうですが)勝負以外のことには我関せずです。」(332ページ)
いままで意識していなかっただけだったのかも。



原題:The Four False Weapon
著者:John Dickson Carr
刊行:1937年
訳者:和爾桃子









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盲目の理髪師 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]

盲目の理髪師【新訳版】 (創元推理文庫)

盲目の理髪師【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/05/31
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
大西洋上の豪華客船で重大な盗難事件と奇怪な殺人事件が発生する。なくなったはずのエメラルドがいつの間にか持ち主のもとにもどったり、被害者が消えたあとに“盲目の理髪師”が柄にあしらわれた、血まみれの剃刀が残っていたり。すれ違いと酔っ払いの大騒ぎに織り込まれる、不気味なサスペンスと度肝を抜くトリック。フェル博士が安楽椅子探偵を務める本格長編、新訳で登場。


カーの新訳です。
この作品とは相性が悪いのか、旧訳版で2度ほど読んでいるはずですが2度とも楽しめなかった記憶があります。
新訳で再TRYといったところです。
で、結果はどうだったかというと、やはり相性が合わないな、というところ。
帯に
「大西洋の豪華客船で起きる奇怪な事件と酩酊者たちの大騒動」
とあるのですが、この酩酊者たちの大騒動をまったく楽しめなかったのが敗因です。
解説で七河迦南も書いていますが、この「盲目の理髪師」は『乱歩が挙げる三大特徴の一つ「ユーモア」の部分が全面に押し出され、カー全作品の中でも最大の笑劇(ファルス)作品であることは衆目の一致するところかと思います。』ということなのですが、この「ユーモア」「ファルス」ぶりが、ちょっと合わなかったんですね。

ただし、いくら肌に合わないといっても、ミステリとしてはよく企まれた作品であることはきちんと認めておかねばと思います。
名探偵・フェル博士が、今回は安楽椅子探偵の役をつとめるのですが、フェル博士が語り手である探偵作家モーガンの話を聞いて、前半、後半にそれぞれ8つずつ合計16の手がかりがあると指摘するのもわくわくしますし、謎解きシーン(353ページ~)では根拠となるページを示しながら順に手がかりをたどって真相を指摘するシーンはとても素晴らしい。(このあたりになると、ファルスの要素がなくなっているので、素直に読めました)
この手がかりをめぐる点については、七河迦南の解説が素晴らしいですね。
『「なぜ現場に被害者の帽子がなかったのか」に始まり、厳密な論理のもとあらゆる可能性を消去していって「故に犯人は~である。QED」宣言に終わるクイーンのフェアプレイを直列的とすれば、カーのそれはいわば並列的なのです。何気ない描写に示された情報やちょっとした矛盾、それらは手がかりというより伏線という方が適当な場合が多く、一つ一つは必ずしも犯人に直結するとは限らない。しかしひとたび視点を切り換えてみると、至る所の描写が皆その意味を変え、作品の全体・各登場人物の人間像全てが有機的に結びついて初めから一つの方向を向いていたことがわかる。それこそがカーのフェアプレイなのです。』
なんかこの指摘を読んですっきりしました。

タイトルの「盲目の理髪師」は、現場で見つかった剃刀の柄のデザインとして描かれていた絵に基づきます。(138~139ページ)



原題:The Blind Barber
著者:John Dickson Carr
刊行:1934年
訳者:三角和代








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テニスコートの殺人 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/20
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
雨上がりのテニスコート、中央付近で仰向けに倒れた絞殺死体。足跡は被害者のものと、殺された男の婚約者ブレンダが死体まで往復したものだけ。だが彼女は断じて殺していないという。では殺人者は、走り幅跳びの世界記録並みに跳躍したのだろうか? “奇跡の”殺人に挑むのは、名探偵フェル博士。驚天動地のトリックが炸裂する巨匠の逸品! 『テニスコートの謎』改題・新訳版。


カーの<足跡のない殺人>を取り扱った作品の新訳です。
現場に残された足跡からしてブレンダが疑われる状況なので、ブレンダとブレンダに思いを寄せるヒューの二人が偽装工作をします。
解説で大矢博子が指摘しているように、「捜査する側にとってはごく普通の<足跡のある殺人>になってしまった。せっかくの不可能犯罪が表面的には不可能犯罪ではなくなっているわけだ。捜査する側が真犯人に辿り着くにはまずヒューとブレンダの偽装作戦を見抜けねばならず、見抜いた先にはさらに不可解な謎が待っているという次第」となっています。
凝っています。
もちろんフェル博士のこと、そんなことはお見通し、といった感じなのはいいのですが、注目すべきはハドリー主席警視!
いつもと違いますよ。何度も<足跡のない殺人>の解明をやってのけるのです。
しかもですねぇ、最終的にはフェル博士に一蹴されてしまうのですが、かなりいい線いったトリックを思いつくんです、ハドリー主席警視が! フェル博士が解明した真相よりむしろいいように思えるくらいのトリックを。
今回はハドリー主席警視をほめてあげたい。
一方、真相で明かされるトリックは、<足跡のない殺人>を成立させると同時に、もう一つの効果を狙った面白いアイデアではあるのですが、うーん、どうでしょうか。かなり無理があるんですよね。
ハドリー主席警視に軍配を挙げては...いかんのでしょうね、やはり。

あとこの作品で注目しておきたいのは、動機です。
意外な動機でもなんでもないし、カーは堂々とさらしているのですが(あまりにあからさまなので伏線なんてもんじゃありません)、いろいろと組み合わせて目がそらされるというか、読者にはピンとこないというか、不思議な境地の仕上がりになっています。

<足跡のない殺人>と言えばカーター・ディクスン名義の「白い僧院の殺人」 (創元推理文庫)ですが、こちらも新訳出してくれないかな?


<蛇足>
274ページから、引っ越し後の片づけが進まないフェル博士の様子が描かれます。
いやあ、親近感湧くなぁ...



原題:The Problem of the Wire Cage
著者:John Dickson Carr
刊行:1939年
訳者:三角和代






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髑髏城 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]

髑髏城【新訳版】 (創元推理文庫)

髑髏城【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
ドイツ・ライン河畔に聳える奇城“髑髏城”。城の持ち主であった稀代の魔術師が謎の死を遂げてから十七年が経った。そして今、城を継いだ男が火だるまになって胸壁から転落、凄絶な最期を迎える。予審判事アンリ・バンコランは事件の捜査に乗り出すが、そこで彼は、好敵手フォン・アルンハイム男爵と邂逅を果たす――。古城を舞台に火花を散らす仏独二大名探偵の推理、新訳決定版。


2018年になって、2017年を振り返ってみたら、なんと2017年は、カーもクロフツもクリスティも読んでいない! 黄金時代の巨匠ではクイーンの新訳だけ読んでいました。これはいかん。
ということで(どういうこと?)、2018年にカー、クロフツ、クリスティを読むことにして、その準備運動として(?) 2016年2月に読んでいた「髑髏城」【新訳版】 (創元推理文庫)を引っ張り出して感想を書くところからはじめようと思いました。

バンコランが探偵役となる長編第三作です。
まずは髑髏城というのがいいではありませんか! (ばかばかしくて)
「髑髏城の名はだてじゃない。気色悪い建築の粋を凝らした館の正面は、眼窩や鼻や乱杭歯の顎骨にいたるまで巨大な髑髏そのままなんだ。しかも塔を両脇にひとつずつあしらい、一対の大耳になかなかうまく似せてある。さしずめ聞き耳立てて笑う悪魔ってとこかな」(23ページ)
「なだらかな山腹にかぶさる狭間胸壁付きの城壁。高さ百フィートはありそうだ。」「城壁の中ほどでされこうべの歯をかたどる中央胸壁の奥に巨大な石造の頭骨が控えている。」「髑髏の眼窩ふたつ。両脇におぞましい双塔の耳。」(34ページ)
わかったような、わからないような描写ですが、悪趣味な建築物であることがわかります。
舞台は、この髑髏城とその対岸にある夏別荘。
そこで、バンコランと宿敵(?) フォン・アルンハイム男爵の推理合戦が繰り広げられる...
もう、この舞台装置と設定だけでおなか一杯になりそうな楽しさです。

17年前の事件と現在の事件。
17年前が、走行中の列車から忽然と消えた大魔術師。現在の事件が、全身を炎に包まれ城(髑髏城)から転落した名俳優。
すごく派手な事件です。
城と対岸の別荘をいったりきたりするのも堂に入っていますし(さすが、カー)、細かな手がかりもちりばめられていて、狐と狸の化かし合いみたいな推理合戦ともども、雰囲気いっぱいの中、物語が繰り広げられます。
推理合戦が、二重の解決=どんでん返し、という形になっていて楽しいです。
バンコランも悪魔(メフィストフェレス)みたいながら、ちゃんと人間なんだぁと思わせてくれるラストまで、カーのサービス精神が縦横に発揮されている作品だと思いました。

あと、本書にはどうしても付け加えておきたい点があり、それは青崎有吾による解説です。
これがすばらしい。バンコランとアルンハイム男爵の推理合戦に、カーがそんな意図を秘めていただなんて...


<蛇足1>
「太い鼻の両脇にかっきりと法令線を刻み」(14ページ)
よく聞くほうれい線って、法令線と書くのですね、知りませんでした。
上に引用した部分の「かっきり」もそうですが、この訳者結構クラシックな日本語を駆使してくれて(新訳とは思えない!?)、楽しいです。
「才槌頭」(14ページ)
「小手で目をかばう」(42ページ) 小手ってこういう使い方するんだ...
「胸突き八丁のしんどい坂」(43ページ)
かと思えばくるみではなく「ウォールナット材の鏡板」(120ページ)。
また、「申し訳ございません」(73ページ)と言わせちゃったりもしていますし、「ほんのさわりだけなら構わんよ」(163ページ)と「さわり」の意味を間違っていたり、「百歩譲って」(185ページ)とものすごい量の譲歩をさせていたりもします。
古いんだか、新しいんだか、わかりませんね(笑)。

<蛇足2>
「なぜだかこの男は竿の先の猿を思わせるところがある。」(73ページ)
竿の先の猿って、なにかの言い回しでしょうか? ちょっと調べてみてもわかりませんでした。


原題:Castle Skull
著者:John Dickson Carr
刊行:1931年
訳者:和爾桃子




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三つの棺 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


三つの棺〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

三つの棺〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/07/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ロンドンの町に静かに雪が降り積もる夜、グリモー教授のもとを、コートと帽子で身を包み、仮面をつけた長身の謎の男が訪れた。やがて二人が入った書斎から、銃声が響く。居合わせたフェル博士たちがドアを破ると、絨毯の上には胸を撃たれて瀕死の教授が倒れていた!  しかも密室状態の部屋から謎の男の姿は完全に消え失せていたのだ!  名高い〈密室講義〉を含み、数ある密室ミステリの中でも最高峰と評される不朽の名作


2014年に出た新訳です。
帯には訳者あとがきからの引用で、

1981年に17人のミステリ作家、評論家が選出したオールタイム不可能犯罪ミステリ・ランキングで、ヘイク・タルボット『魔の淵』、ガストン・ルルー『黄色い部屋の秘密』などをおさえて第1位に輝いたのが本書。なにしろ選出にあたったのが、フレデリック・ダネイ、ハワード・ヘイクラフト、エドワード・D・ホック、リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク、フランシス・M・ネヴィンズJr.、ビル・プロンジーニ、ジュリアン・シモンズ、オットー・ペンズラーといった錚々たるメンバーなので、その品質保証には全幅の信頼がおけると言えよう(本書「訳者あとがき」参照)。

と書かれています。
名作と誉れ高いこの作品、当然、旧訳でも読んでいます。が、例によってうろ覚え...
〈密室講義〉にのみ気をとられていたことがよくわかります。
--この種の講義の常として、いくつかの作品のネタバレがされているので要注意です。まあ、いずれも古典的名作ではありますが、未読の方には嫌な状況ですね。

ただ、忘れていた自分を弁護するわけではありませんが、この作品、すごく込み入っているんです。メインとなっているのはシンプルなアイデアなんですが、その周りに贅沢にちりばめられた小技の数々、数々、数々、こりゃ、また、忘れるわ、きっと。
それでも、今回読み返すこととなって、メインとなっているアイデアと、周りの小技の組み合わせの剛腕ぶりには、さすがカーと、ため息がでちゃうくらいの凄いレベル。
凄い状況、謎を作り上げるぞー、というカーの強い意気込みが感じられます。

吸血鬼伝説、というか、墓場からの甦りを成し遂げた人物グリモー教授が被害者となる、という結構強烈な話なんですが、もうバリバリ、カー全開です。
何とも言えない恐ろしげな雰囲気がカーの魅力の一つですし。
その分、小技には無理に次ぐ、無理が見られてしまいます。
「コートと帽子で身を包み、仮面をつけた長身の謎の男」にまつわるところなんか、出現する現象の凄さに、思わず叫びだしたくなるようなアイデアなんですけど、図入りで説明されても、うーん、これはないなー。
「二発目はお前にだ」というセリフとともに殺されるフレイ(グリモー教授と因縁のあった奇術師)も、わくわくする中身なんですが、こちらもなー。このトリックは成立しないだろう、きっと。

と建て付けはあんまりうまくないような気がするのですが、読んでいて、こりゃだめだ、という気にはなりません。
素敵な不可能状況のために、これでもか、これでもかと趣向を詰め込んでいくカーに圧倒されるからです。
数々の仕掛けの凄さは、 SAKATAM さんのHP「黄金の羊毛亭」をご覧になると、技巧に感心できます。

個人的には一番感心したのはタイトルですね。
新訳、復刊でカーの作品がどんどん読めるようになることを引き続き期待します。


<蛇足1>
「びっくり箱のなかにいた禿頭のように跳び上がった」(200ページ)って、どういう比喩なんでしょう?

<蛇足2>
ヒズ・マジェスティーズ劇場というのが201ページに出てきますが、これ、現在の Her Majesty's Theatre と同じでしょうか? オペラ座の怪人を上演している劇場です。

<蛇足3>
「足の指のつけ根ですばやくなめらかに歩くところを見ると、おそらく空中ブランコか綱渡りをする男だ」(221ページ)って、どういう歩き方なのかなぁ、気になる。



原題:The Three Coffins
著者:John Dickson Carr
刊行:1935年
訳者:加賀山卓朗




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曲がった蝶番 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/12/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
1年前、25年ぶりにアメリカから帰国し、爵位と地所を継いだジョン・ファーンリー卿は偽者であり、自分こそが正当な相続人であると主張する男が現れた。渡米の際にタイタニック号の船上で入れ替わったのだと言う。あの沈没の夜に――。やがて、決定的な証拠によって事が決しようとした矢先に、不可解極まりない事件が発生した! 巨匠カーによるフェル博士登場の逸品、新訳版。


このところ続いているカーの新訳。今回は「曲がった蝶番」
旧訳のタイトルは、「曲った蝶番」 でしたから、「が」が増えました。新訳のタイトルは「まががったちょうつがい」? (笑)。

新訳を読むたびに、以前旧訳を読んだ記憶がほとんどないことに我ながら感心するのですが、この作品もそうで、見事に忘れ去っていました。
タイタニック号での入れ替わり、というロマンチック(?) な設定、自動人形《金髪の魔女》、そして魔女崇拝・悪魔主義。
道具立ては完璧ですね。カーらしい。
そしてトリックがすごいです。なんと言ったらいいんでしょうね? 豪快というか、剛腕というか、反則ですね。正直、今風にいえば、バカミスの境地かと思います。
第四部で真相が明かされる前の第三部で、フェル博士が偽の解決を展開して見せるのですが、そこで披露されるトリックもバカミスの資格十分のトンデモ系で、これはこれで味わい深いトリックなのですが、真相の方はさらに上を行く馬鹿馬鹿しさ(一応、褒めています)。
よく、こんなの忘れていたな、と我ながら感心します。
不可能味を示すための証人が弱い点はちょっと残念ですが、いやぁ、楽しんじゃいました。
第四部の扉の所に、チェスタトンの引用があるのですが、カーはこれを読んで、なんとか解決策はないものかとあれこれ考えて、この「曲がった蝶番」のトリックを思いついたんでしょうか? 
なんか、してやったり、とニヤついているカーの顔を想像してしまいました。

あと印象深いのはタイトルですね。
タイタニック号での「曲がった蝶番」のエピソードはかなり鮮明です(どうして忘れてしまっていたのでしょうね?)

愉快な作品でしたが、これを傑作と呼ぶのはためらわれてしまいます。
そんなところも含めて、カーらしいかな、と思える作品です。


原題:The Crooked Hinge
著者:John Dickson Carr
刊行:1938年
訳者:三角和代




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