新聞王がボストンにやってきた [海外の作家 レスリー・メイヤー]
<裏表紙あらすじ>
『ペニーセイヴァー』が〈今年の最優秀コミュニティ新聞〉に選ばれ、ボスとともにボストンで開かれる新聞協会の年次総会に出席することになったルーシー。久々の都会と同業者との交流を満喫していたが、新聞業界の大立て者ルーサー・リードが晩餐会中に急死。警察が関係者を調べ始めた。すかさず新聞記者ルーシーの好奇心&探偵根性がうずきだすが……。主婦探偵ボストン出張編。
ルーシー・ストーンを探偵役とするコージー・ミステリシリーズの第10弾です。
前作「九十歳の誕生パーティ」 (創元推理文庫)(ブログへのリンクはこちら)を読んでから2年以上の日があいてしまいましたが、快調に読み進むことができました。
すっと世界に入り込むことができましたし、なによりルーシーたちおなじみの登場人物たちにまた会えて、まさにコージー、くつろいだ気分になれました。
しかし、普通の主婦探偵のような形で「メールオーダーはできません」 (創元推理文庫)に登場したルーシー、今やすっかり新聞記者になっていますね。
でも、同時に主婦でもある。二足のわらじですね。
この「新聞王がボストンにやってきた」 (創元推理文庫)では新聞協会の年次総会ということで、いつものティンカーズコーヴから離れ、大都会ボストンへ!
家を離れるので、留守宅と家族のことが気になってしかたがない、
ミステリ的には意味がありませんが、このルーシーの家族の物語が挟まれるところがシリーズ読者にはうれしい枠組みですね。(事件とは関係のない家族のエピソードの中から、ルーシーが謎解きのヒントを掴む、なんていう仕掛けがあればいいのですが...これは、ないものねだりです)
新聞協会の年次総会ということで、ルーシーが出席するパネルディスカッションも楽しいですし、新聞業界の舞台裏(?) が少し覗けるうえ、新聞記者の動きも興味深く読むことができます。
事件は、この総会が開かれているホテルで起こります。
ルーシーが、するすると物語の主要人物と知り合いになるところはご愛敬ですが、おかげで読者にも身近に感じさせることができていると思います。
新聞界の大立て者が殺される、経営はそんなにうまくいっているはずはないのに(新聞はどこも大変だそうです)羽振りがよさそうとか、常套的でも手堅い設定でミステリの世界を展開していきます。
ミステリ的には取り立てて尖ったところはありませんが、素人探偵であるルーシーが真相に気づいてもおかしくないように仕上がっていて自然です。
シリーズの今後にも期待、と言いたいところなのですが、
「このシリーズの日本での出版は、十作を迎えた今回で一区切りということになりました。」
と訳者あとがきで衝撃の発表がなされています。
本国では順調に年1冊程度出版されて続けていて、24冊を数えているようです。
おそらく、日本での売れ行きが良くなかったのでしょうねぇ。逆に10冊目まで訳してくれてありがとう、というべきなのかもしれません。
短い中にバランスの取れたシリーズだったので、残念ですね。
2014年8月出版のこの「新聞王がボストンにやってきた」 (創元推理文庫)が邦訳の最後だったので、そうですね、来年9月5年ぶりにシリーズの翻訳再開ってどうでしょうか、東京創元社さん? 絶対買いますよ!
<蛇足1>
「イヴァナ・トランプみたいな女性よ」(76ページ)
イヴァナ・トランプといえば、トランプ大統領の前々妻ですが、本書の原書が出た2003年にはすでに離婚していていましたね。
でも、レスリー・メイヤーも、トランプ氏が後に大統領になるとは予想していなかったでしょうねぇ。
<蛇足2>
「中国風の角ばった大きなスプーンとはしはあまり使ったことがなく」(111ページ)
という記載があります。
中華風というので、レンゲのことかな? と思ったのですが、レンゲだと「角ばった」にはなりませんね... 中華で角ばったスプーンって使いましたっけ? なんだろな?
<蛇足3>
「オールドミス二人の懸垂分詞だかなんだかのごたくを聞くのはごめんだ」(194ページ)
懸垂分詞?
ネットで調べてしまいました。学校の英文法の授業では教えてもらわなかったはず...
なるほど。文法的には基本的に間違いなんですね。
原題:Farther's Day Murder
作者:Leslie Meier
刊行:2003年
訳者:髙田恵子
九十歳の誕生パーティ [海外の作家 レスリー・メイヤー]
<裏表紙あらすじ>
弁護士ボブが事務所でパートナーの死体を発見した。警察は自殺と判断したが、ボブはどうしても納得できず、ルーシーに調査を依頼。一方、元司書のミス・ティリーの九十歳の誕生日に町を挙げてのパーティを開くことが決まり、当然ルーシーもこき使われることに。思春期の娘や大けがをした夫の世話に、新聞記者の仕事、殺人事件の調査にパーティの準備、主婦探偵は今日も大忙し!
今回は、ミス・ティリーの九十歳の誕生パーティの準備をする、というのがテーマ(?) です。
これでもうてんやわんや(古い表現ですね(笑))なんですが、実は、引用したあらすじには書いていないんですが、弁護士の死のほかに、ミス・ティリーをめぐる騒動が、パーティー以外に本書にはあります。
訳者あとがきに書いてあります。
「九十歳の誕生日が近づいたある日、天涯孤独と思われていたミス・ティリーの前に突然、はるか昔父親に勘当された姉の娘だという女性が現れ、ミス・ティリーはもう大喜びです。その女性はまもなく叔母の家に住み込んで世話を始めます。ところが、それまでヘルパーとして世話をしていたレイチェルはもちろん、友達のルーシーが訪ねてもミス・ティリーに会わせてもらえず、二人は心配をつのらせます」
そうです、ミステリでは定番のテーマですが、ミス・ティリーに危機が忍び寄るのです。
このパターンの物語って、分かりきっていても、どきどきするんですよね。ミス・ティリー、大丈夫かなぁって、どきどきして読めました。
ルーシーが無茶をするのはいつものことですが、ミス・ティリーもがんばりますよ(?)、この作品では。
あと、弁護士の死のエピソードと、ミス・ティリーのエピソードが遊離してしまわないで、きちっと絡み合って展開していくところは、このシリーズには珍しく(失礼!)、いいなぁと感じました。
それにしても、被害者である弁護士の趣味として描かれる、南北戦争再現グループって、楽しいんですかねぇ?
原題:Birthday Party Murder
作者:Leslie Meier
刊行:2002年
訳者:髙田恵子
はた迷惑なウェディング [海外の作家 レスリー・メイヤー]
<裏表紙あらすじ>
親友スーの娘が大富豪と結婚することになった。頼みこまれて自宅のあずまやを結婚式に提供することにしたのはいいが、ただでさえ新聞記者の仕事で多忙なところへ結婚式の手伝いまで加わり、ルーシーは気も狂わんばかりに。ところがそこに、結婚相手の母親がしゃしゃり出てきた。どうやら大富豪の息子にふさわしい大がかりな式を目論んでいるらしい。好評主婦探偵シリーズ第八弾。
引用したあらすじには結婚式をめぐる騒動だけが書かれていて、ミステリーらしい事件がちっとも触れられていませんが、このシリーズの場合はこれでいいのかも。
書いてある通り、今回ルーシーは親友スーの娘シドラの結婚式を手伝います。というか、会場を貸し出します(?)。シリーズをずっと読んでいるのですが、シドラの印象がなく...ま、いいや。今回は割と重要な役どころです。田舎である地元ティンカーズコーヴをバカにする、結構嫌な奴になってニューヨークから凱旋します。
結婚パーティー(披露宴?)の計画を花嫁の母親がする、というのが日本人的にはぴんと来ないですが、ホテルや結婚式場ではなく、ホームパーティみたいなものを想像すればよいのかもしれませんね。手作り感あるパーティはそれはそれで趣あっていいかも。
ティンカーコーヴらしい素朴な(?) 結婚式を、新郎の母テルマが金に飽かせてぶち壊そうとする、という構図。新郎ロンは、インターネット大富豪で、「次のビル・ゲイツ」と言われている、という設定。ロンもテルマも実にいやな奴に描かれています。典型的な俗物。
もうひとつ、“ウェディングシャワー” という催し(?) が登場します。初耳。どうやらこれは、花嫁の友人たちが新生活で役立ちそうなプレゼントを花嫁に贈る行事のようで、「プレゼントがシャワーのようにどっさりもらえるはずよ」(71ページ)というセリフもあり、シャワーと呼ばれているみたい。こんなの知らなかったなぁ。こういうことを知るのも海外の小説を読む楽しみのひとつですね。
事件はこのシャワーで起こります。誰が死ぬかもお楽しみだと思うので明かしませんが、ちゃんと嫌な奴が死んじゃうところがコージーの王道ですよね。王道通りかどうか、お確かめください。
細部が書かれていないのでなんとも言えないのかもしれませんが、インターネット大富豪をめぐるエピソードは、ちょっとうまくいきすぎというか、ありえないんじゃないかなぁ、と思いましたが、ルーシーは推理するのではなく、どたばたしているうちに勝手に解決するという趣向も含め、わーっと盛り上げて、ストンと落としたような着地点はなかなかおもしろかったです。
<蛇足>
この「はた迷惑なウェディング」、原題は Wedding Day Murder。前作「感謝祭の勇敢な七面鳥」 の原題が Turkey Day Murder だったので、ひょっとしてシリーズは “XX Day Murder” というかたちで統一されているのかな、と思ったので、さかのぼって調べてみました。
「メールオーダーはできません」 | Mistletoe Murder |
「トウシューズはピンクだけ」 | Tippy Toe Murder |
「ハロウィーンに完璧なカボチャ」 | Trick or Treat Murder |
「授業の開始に爆弾予告」 | Back to School Murder |
「バレンタインは雪あそび」 | Valentine Murder |
「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」 | Christmas Cookie Murder |
「感謝祭の勇敢な七面鳥」 | Turkey Day Murder |
たまたまだったみたいですね(笑)。
原題:Wedding Day Murder
作者:Leslie Meier
刊行:2001年
感謝祭の勇敢な七面鳥 [海外の作家 レスリー・メイヤー]
<裏表紙あらすじ>
記者として(ニワトリの)大量殺戮犬の聴聞会の取材をしていたルーシーだったが、そこで知った町の行政委員会の実態に怒り爆発。さらに先住民部族の一部がティンカーズコーヴにカジノ建設を計画していることが判明。そして殺人が! 大学に行っている長男の帰宅と感謝祭ディナーの準備で大忙しのルーシーが、空の巣症候群に悩まされつつ事件に立ち向かう。好評シリーズ第七弾。
主婦探偵ルーシーのシリーズ第7弾。
前作「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」 (創元推理文庫)の感想(ブログページへのリンクはこちら)で、
「あぁ、(ルーシーの息子で高校生の)トビーが心配だぁ。ルーシーじゃなくてもやきもきして、しっかりしてくれよ、と声をかけたくなっちゃいます。」
「この後翻訳されている『感謝祭の勇敢な七面鳥』 (創元推理文庫)と『はた迷惑なウェディング』 (創元推理文庫)を読んで、トビーの行く末(?)を確かめなきゃ。」
と書きましたが、無事大学生になって家を出て行ったトビー、この「感謝祭の勇敢な七面鳥」 で帰省してやらかしてくれます(笑)。
こういうあたり、シリーズ読者の楽しみ(?)ですね。
事件の方は、少数民族に絡むカジノ建設計画が、ティンカーズコーヴに持ち上がることで巻き起こる構図です。
コージー・ミステリの先輩格ジル・チャーチルの主婦探偵ジェーン・シリーズでも「地上(ここ)より賭場に」 (創元推理文庫)で同じ主題を扱っていましたから、アメリカでは結構普遍的なテーマなのかもしれませんね。
前作「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」 (創元推理文庫)から、社会的な問題・テーマを絡めるようになってきた印象です。そういう方向性で、数あるコージー・ミステリに中で特色を出そうとしているのかもしれません。それがファンの嗜好に合うかどうかは、ちょっと不明ですけどね。
さておき、シリーズは順調にこのあとも続いていますので、もう少し追いかけてみたいと思います。
原題:Turkey Day Murder
作者:Leslie Meier
刊行:2000年
史上最悪のクリスマスクッキー交換会 [海外の作家 レスリー・メイヤー]
<裏表紙あらすじ>
毎年楽しみにしているクリスマスクッキー交換会。今年はルーシーが自宅を会場提供したのはいいが、苦労は並大抵ではなかった。飲酒運転撲滅のビラを持ちこむ者あり、離婚のことばかり話題にする者あり、さらに息子の大学進学問題で参加者同士が一触即発の状況に。ぼろぼろのルーシーに追い打ちをかけるように、参加していた若い女性が翌日死体で発見される。好評主婦探偵第六弾。
主婦探偵ルーシーのシリーズも、この「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」で第6弾です。
巻末にレシピが載っていて、レスリー・メイヤーお前もか!?、という感じもありますが、作者としては一度やってみたかったんでしょうか? ミステリの本筋とは関係ないので、あってもなくてもどちらでもよいのですが。
タイトルにもなっているクリスマスクッキー交換会って、普通にあちこちでやってる行事なんでしょうか? なにより、クリスマスってクッキーを食べる日なんでしょうか? 楽しそうなような、そうでないような、複雑な印象を受けましたが、クリスマスはクリスマス。うきうきするホリデーシーズンですよね。ミステリなんで、死体が転がっちゃって、それどころではなくなっちゃうのですが...
舞台はメイン州の田舎のティンカーズコーヴなんですが、すさんだ世情と無関係とはいかなくて、ドラッグ汚染が取り上げられています。あぁ、(ルーシーの息子で高校生の)トビーが心配だぁ。ルーシーじゃなくてもやきもきして、しっかりしてくれよ、と声をかけたくなっちゃいます。
コージーの枠組みで、こういう問題を取り扱うと、幕切れが難しくなると思うのですが、この作品、うまく処理しているなぁ、と思いました。
さぁ、この後翻訳されている「感謝祭の勇敢な七面鳥」 (創元推理文庫)と「はた迷惑なウェディング」 (創元推理文庫)を読んで、トビーの行く末(?)を確かめなきゃ。
バレンタインは雪あそび [海外の作家 レスリー・メイヤー]
<裏表紙あらすじ>
母親業に週刊新聞の臨時記者、加えて図書館の理事まで引き受けてしまったルーシー。初の理事会に張り切って図書館にいったはいいが、発見したのは司書の射殺死体。馴染みの警部補に容疑者扱いされたうえ、事件に関わらないよう釘を刺される。悔しさと記者根性があいまって、慌ただしいバレンタインを目前に、ルーシーは真犯人をさぐろうとするが…。好調、主婦探偵シリーズ第五弾。
「授業の開始に爆弾予告」 (創元推理文庫)に続くシリーズ物です。
ティンカーズコーヴというメイン州の田舎を舞台にしているシリーズですが、記者もやっているとはいえ主婦業が生活の中心の普通の母親が、図書館の理事をつとめるあたり、アメリカの田舎のコミュニティのありようがうかがえますね。バレンタインデーも日本とは趣が違います。
コージー・ミステリでは、事件と同時に主人公の生活ぶりも読書の楽しみのひとつだと思いますが、この作品ではいつもよりルーシーの家での生活の比重が高くなっているような印象を受けました。
もっともタイトルはのどかな感じですが、事件はのどか、とはいかず、雪あそびする子どもが狙われたりもして、家族を守ろうとルーシーの捜査にも熱が入ります。
ミステリとしての出来は取り立てていうほどのこともありませんが、雰囲気を楽しむ、肩の凝らない読み物として--まさにコージー・ミステリの本道として--仕上がっていると思いました。
授業の開始に爆弾予告 [海外の作家 レスリー・メイヤー]
授業の開始に爆弾予告
レスリー・メイヤー
創元推理文庫
<裏表紙あらすじ>
新学期が始まり時間のできたルーシーは、新聞社で働くことに。そこへ入ったのが娘がかよう小学校に爆弾がしかけられたとの通信。幸い爆発は小規模で、新任の副校長キャロルの活躍により、取り残された子供も救出された。町中が彼女を英雄あつかいしていた折も折、当の本人が殺害された。子供たちに関わる問題とあれば放っておけず、ルーシーは調査を始める。
これぞコージー、というか、まさに典型的なコージー・ミステリであるこのシリーズ、このあとにも
「バレンタインは雪あそび」 (創元推理文庫)
「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」 (創元推理文庫)
が翻訳されていて積読状態です。シリーズ第7作の「感謝祭の勇敢な七面鳥」 (創元推理文庫) もついこの前出版されました。ここまでのシリーズ
「メールオーダーはできません」 (創元推理文庫)
「トウシューズはピンクだけ」 (創元推理文庫)
「ハロウィーンに完璧なカボチャ」 (創元推理文庫)
は読んでいます。
帯に「ルーシーに第二の思春期?」とあって、シリーズ的にはこれがポイントになる作品でしょうか?
子供たちを愛してはいるけれど、なにせ4人もいると新学期がはじまり学校に行ってくるとほっとする、とか、母親として主婦として幸せだけどそれだけでは物足りなくて新聞社で働きはじめる(臨時職員ですが)、とか、平均的で共感できそうな主人公のルーシーが、教員になる資格を取ろうかと始めた大学の夜間講座の講師との浮気の誘惑に見舞われる(ちょっと大げさに紹介を書いちゃってますが...)ことを帯は指しているのかと思いますが、うわっ、どうすんだろ? コージーっぽくなくなっちゃうなー、と心配に(?)なるところ。コージーの主人公が、離婚騒動でてんやわんや、ってことになったら、ちょっとイメージが狂いますよね、やっぱり。
事件の方は、小学校での爆弾騒ぎというのは穏やかではありませんが、読者は相当早い段階で真相に見当がついてしまうのではないかと思います。殺人の方は、それなりに入り組んだ構造が作られています。ミステリ的には平凡でも、手堅くプロットは作られていますし、人物配置もプロットに従ってではありますが、効果的です。
このシリーズの弱点は、真相解明の手順なのではないかと思います。どたばたしている解決シーンのうちに、勝手に犯人が自ら正体を明らかにする、というのでは、ちょっと工夫が足りないかなぁ、と。ここが改善されると、一層楽しいシリーズになると思われます。
レスリー・メイヤー
創元推理文庫
<裏表紙あらすじ>
新学期が始まり時間のできたルーシーは、新聞社で働くことに。そこへ入ったのが娘がかよう小学校に爆弾がしかけられたとの通信。幸い爆発は小規模で、新任の副校長キャロルの活躍により、取り残された子供も救出された。町中が彼女を英雄あつかいしていた折も折、当の本人が殺害された。子供たちに関わる問題とあれば放っておけず、ルーシーは調査を始める。
これぞコージー、というか、まさに典型的なコージー・ミステリであるこのシリーズ、このあとにも
「バレンタインは雪あそび」 (創元推理文庫)
「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」 (創元推理文庫)
が翻訳されていて積読状態です。シリーズ第7作の「感謝祭の勇敢な七面鳥」 (創元推理文庫) もついこの前出版されました。ここまでのシリーズ
「メールオーダーはできません」 (創元推理文庫)
「トウシューズはピンクだけ」 (創元推理文庫)
「ハロウィーンに完璧なカボチャ」 (創元推理文庫)
は読んでいます。
帯に「ルーシーに第二の思春期?」とあって、シリーズ的にはこれがポイントになる作品でしょうか?
子供たちを愛してはいるけれど、なにせ4人もいると新学期がはじまり学校に行ってくるとほっとする、とか、母親として主婦として幸せだけどそれだけでは物足りなくて新聞社で働きはじめる(臨時職員ですが)、とか、平均的で共感できそうな主人公のルーシーが、教員になる資格を取ろうかと始めた大学の夜間講座の講師との浮気の誘惑に見舞われる(ちょっと大げさに紹介を書いちゃってますが...)ことを帯は指しているのかと思いますが、うわっ、どうすんだろ? コージーっぽくなくなっちゃうなー、と心配に(?)なるところ。コージーの主人公が、離婚騒動でてんやわんや、ってことになったら、ちょっとイメージが狂いますよね、やっぱり。
事件の方は、小学校での爆弾騒ぎというのは穏やかではありませんが、読者は相当早い段階で真相に見当がついてしまうのではないかと思います。殺人の方は、それなりに入り組んだ構造が作られています。ミステリ的には平凡でも、手堅くプロットは作られていますし、人物配置もプロットに従ってではありますが、効果的です。
このシリーズの弱点は、真相解明の手順なのではないかと思います。どたばたしている解決シーンのうちに、勝手に犯人が自ら正体を明らかにする、というのでは、ちょっと工夫が足りないかなぁ、と。ここが改善されると、一層楽しいシリーズになると思われます。