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リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 [日本の作家 喜多喜久]


リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/04/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
研究第一のリケジョ探偵が帰ってきた! 留学帰りの研究者・友永久理子と同棲を始めた保険調査員の江崎は、結婚に向けて着々と準備を進めていくが、二人の生活には様々な問題があり……。一方、仕事においても、江崎に回ってくる案件は相変わらず厄介な不審死ばかり。頭を悩ませる江崎が、久理子にアドバイスを求めると、彼女は犯人の思考を ”トレース” し、科学の力で事件の謎に迫る!


2024年2月に読んだ5冊目の本です。
前回感想を書いたハリー・カーマイケル「アリバイ」 (論創海外ミステリ)と順番が逆になってしまいました。
喜多喜久「リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断」 (宝島社文庫)
「リケジョ探偵の謎解きラボ」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)の続編にして完結編(多分)です。

あらすじに書いてあるように「二人の生活には様々な問題があ」るとは思いませんでしたが、連作短編を通して、江崎が受ける仕事の解明と、久理子と江崎の生活の両方が描かれていきます。
裏側の帯に、各話の1行紹介があるので、それとともに各話について。

「Research01・契約と選択」 なぜスズメバチは季節外れの時期に凶暴化したのか。
犯人側の視点から犯行前まで描いておいて、その後江崎視点に切り替わります。
蜂といえばフェロモンと結びつけやすい生き物なので、犯行手段は理系的には平凡というか容易に想像がついてしまうもので、むしろどうやってそれを突き止めるかという興味になるのでしょう。
久理子と江崎の生活の方にも絡んでくるので単純には言い切れないとは思いますが、この事件の決着のつけ方は印象に残りました。

「Research02・死の階段」 脳梗塞で夫を亡くした妻は、前夫も同様に失っており……。
健康に留意が必要な夫の生活を身体に悪い方向に導いて死に至らしめる──なかなか悠長な殺人計画の疑いをかけられています。
江崎との会話で涙を浮かべたその妻に
「ウソ泣きではないだろう、と僕は感じていた。彼女が心に傷を負っていることは間違いないように思えた。
 問題は、涙の理由だ。二人の夫を失った悲しみなのか、それとも金のために二人を殺めたという良心の呵責なのか。今後の調査を通じて、それをじっくりと見極めていかねばならない。」(127ページ)
と述べるところ立ち止まりました。そうか、良心の呵責の涙か......そういう涙もあるのですね。

「Research03・失踪の果つる地」 七年間姿を見せず、死亡扱いとなりそうな男の失踪の謎。
ミステリとしての印象は弱いのですが(読んでいただくとわかりますが、事件らしい事件がないので)、決着というのか物語の行方が印象に残ります。
途中、DNAと遺伝子を「DNAが本で、遺伝子がそこに書かれた文章ってのはどうですか。意味のある文章が集まって物語になる。これってつまり、遺伝子からタンパク質ができて、最後には生物ができあがるのと同じでしょう。」(214ページ)と譬える箇所があります。
DNAは本ですか? どちらかというと文字のような気がしますが......そして生物が本なのでは?
さておき、その薬物退社に関わる酵素(CYP)、遺伝子の並びの傾向から出身地が判明するというのは本当でしょうか? すごいことですね。

「Research04・生命の未来予想図」 がん保険の生前給付金を受け取る患者が続出する病院の闇。
ここまで夫婦関係に起因する事件(?) を扱ってきたあとに、違う角度の事件。
このがんと保険をめぐる仕掛け(?) は素人にも簡単に予想がつく内容になっていまして、ちょっと食い足りなかったですね。

久理子と江崎の生活の方のエピソードが、意図的にだとは思うのですが、全体を通じて非常にあからさまにヒントがばらまいてあって、読者は江崎よりもかなり先回りできてしまうんですよね。
第1話から第3話まで夫婦にまつわる事件ばかりでそのたびに江崎がいろいろと考え、そして陰が差しこんで来ようとも、この二人にお似合いの、というか、江崎にお似合いのとでも言うべきベタで甘々なラストは、喜多喜久らしいといえば喜多喜久らしく、これでいいのかな、と思えました。


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科警研のホームズ [日本の作家 喜多喜久]


科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2018/11/06
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
科学警察研究所・本郷分室にやってきた三人の研修生たちは、科警研の仕事に興味を示さない室長・土屋の態度に困惑する。かつての彼は科警研の研究室長を務め、鋭い洞察力と推理の切れ味で、警察関係者から「科警研のホームズ」と称されていたらしいが…。土屋にやる気を取り戻させるため、そして自分たちの成長のため、三人は科警研の所長・出雲から持ち込まれる事件の調査に邁進する。


2023年3月に読んだ2冊目の本です。
「残光のメッセージ」
「楽園へのナビゲーター」
「惜別のロマンチシズム」
「伝播するエクスタシー」
の4話収録の連作短編集。

喜多喜久による新シリーズ、科警研のホームズ。
帯に「『化学探偵Mr.キュリー』シリーズの著者、初の警察科学捜査ミステリー!」とあって、あれっ、そうだっけ? と思いましたが、確かに科学、化学を題材にした作品を数多く書かれているものの、警察捜査で扱ったものはなかったようです。

タイトルにもなっている科警研──科学警察研究所は警察庁の附属機関で、TVドラマでお馴染みになった各都道府県の警察本部に置かれている科学捜査研究所──科捜研とは違います。科警研、科捜研について「警察を食品会社に喩えるなら、科捜研は各地にある工場、科警研はその商品開発を行う研究所、という風になるだろう。」(17ページ)と説明されています。わかりやすい。
で、わけあって設立された<科学警察研究所・本郷分室>。
科警研のホームズこと土屋は、この分室の室長、兼、東啓大学の理学部の准教授という設定です。
この東啓大学、「国立大学の中でも屈指の名門」(33ページ)という説明ですが、こういった兼務可能なのでしょうか? また、本郷という所在地からしてもどう考えても東京大学なのですが、どうして東啓大学にしたのでしょうね?
喜多喜久さんご自身の出身大学ということもあって遠慮されたのか? それとも作中には実在のものは登場させないご方針なのか?

「残光のメッセージ」はタイトルが既にネタバレですが、走査型電子顕微鏡(SEM)で残留物質を分析して真相に迫ります。
「楽園へのナビゲーター」は死因の特定できない事件を遺留物質から解明していきます。
「惜別のロマンチシズム」は監視カメラに映った犯人が一卵性双生児のどちらだったのかを解き明かします。
「伝播するエクスタシー」は、これまたタイトルがネタバレ気味ですが、連続通り魔事件の犯人をつきとめます。
いずれも冒頭に半倒叙形式とでもいうようは犯行シーン(?)が描かれています。
これは捜査を研修生が進めていく中で、土屋がアドバイスする内容を読者に分かりやすくする効果があるようです。

いずれの事件も、目新しい捜査方法が出てきてとても楽しかったのですが、肝心かなめのホームズに喩えられる土屋の鋭さが、さほど伝わってこないのが残念。少なくとも、科警研の所長が「何としても科警研に復帰させたい」というほどのレベル感ではないように思えました。
とはいえ、北上純也、伊達洋平、安岡愛実の3人の研修生のキャラクターも深まってきましたし、続編も順調に出ているようなので、楽しみです。


<蛇足1>
「彼の顔を見た途端、伊達がはっと息を呑み、『ご苦労様です!』と背筋を伸ばした。」(36ページ)
「ご苦労様」というあいさつについては、目上の人に使ってはいけないとか、いや問題ないとか諸説あるようですが、使う場所(会社)のしきたりなのかもしれません。ぼくは個人的には目上の人には絶対使わない文化で育ちました。いずれにせよ「お疲れ様です」よりも目上の人には使いづらいあいさつではあると思います。
ここで出世意欲、上昇志向が強い伊達が使っているところからして、警察という組織は「ご苦労様」を目上の人にも気にせず使える文化だと考えてよいのでしょうか??

<蛇足2>
「いかんいかん、つい学生を相手に議論する時のようになってしまった。」(147ページ)
土屋が研修生と議論したあとで漏らすのですが、研修生という立場であれば学生とさほど変わりない気がします。
そもそも土屋は、科警研における議論はどのようなものを目指していたのでしょうね? ボールペンの扱いが気になったのでしょうか?

<蛇足3>
「研究の背景を導入部で語り、そこから自分の研究の意義へと繋げる。研究によって導き出したい主張をしっかりと打ち出し、そのための方法を提示する。無論、科学的に妥当と思われる手順でなされる字実験でなければならない。そのあとに、具体的な実験の手法の記述があり、実際に取得したデータが続く。分析機器から出力されたデータを加工する必要はあるが、結論を歪めるような補正は決して認められない。あらかじめ決めた処理を施し、相手が理解しやすいグラフや表を作成するだけだ。そして最初に立てた仮説と得られた結果が合致するか否かを、最後のパラグラフで論じる。強引な論理があってはならない。同じ分野の研究者が読めば、百人中百人が納得する考察がなされる必要がある。」(177ページ)
学生の書いた論文を添削する土屋が考えている論文の基本的な構成です。
さほど難しいことを言ってはいないようですが、論文執筆に限らず、伝える技術というのはスキルが必要ですね。








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プリンセス刑事 [日本の作家 喜多喜久]


プリンセス刑事 (文春文庫)

プリンセス刑事 (文春文庫)

  • 作者: 喜久, 喜多
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/10/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
女王統治下にある日本。現女王の姪で、王位継承権第五位の王女・白桜院日奈子が選んだ職業は、なんと刑事だった!? 「ヴァンパイア」と呼ばれる殺人鬼による連続殺人事件の捜査本部に配属された日奈子と、彼女のパートナーに選ばれた若手刑事の芦原直斗は、果たして凶悪な犯人を逮捕することができるのか――?


2022年11月に読んだ3冊目の本です。

カバー裏のあらすじを読んで感じていたことではあるのですが、読んでみるとこれは、似鳥鶏の戦力外捜査官 姫デカ(第1作の感想ページはこちら)と相似形です。
主要な視点人物である芦原直斗の扱いも、ほぼほぼ戦力外捜査官を踏襲した感じです。

あちらと比べると、こちらは王族(!)ということですから、守らなければならない度はアップしているものの(当然ながら専属のボディガードもいます)、無敵度も大幅アップ。
ミステリとしては安易な方向に進んでいるとも思えますが、同時に物語の駆動力はあがるのかもしれません(だって王族の権威とか特権を活用できるのですから)。
ただ、戦力外捜査官シリーズと比較して大きな違いは、ユーモアでしょうか。
戦力外捜査官シリーズはユーモアミステリとして優れていますが、この「プリンセス刑事」 (文春文庫)は、喜多喜久のこと軽妙には描かれていますが、ユーモアをほとんど感じさせず、極めて真面目に真面目につづられています。
この設定を真面目に扱うというのは、なかなかの冒険かもしれません。

事件は猟奇殺人のシリアルキラー。
この事件の構図が平凡なのが残念ですね。
読者は相当早い段階で真犯人の見当がついてしまうはずです。

容疑者の雑多な個人情報を入力し、電子空間上に再現構築した架空の人格を用いてシミュレーションして犯人を追い詰める、などという大仰なアイデアが盛り込まれていますが、これ現実に研究されているのでしょうか?
264ページあたりから描かれる推論には正直まったく感心しませんでした。
これなら昔ながらの刑事のカンの方が頼りになりそう......

シリーズ化されていまして、
「プリンセス刑事 生前退位と姫の恋」 (文春文庫)
プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意 (文春文庫)
と今のところ第3作まで出ています。
王族という設定を導入したことで、無理筋な、あるいは斬新な捜査方法をとることができるようにも思えますので、そういう方向でシリーズが展開されるとおもしろいかもしれませんね。

シリーズということで注目は、白桜院日奈子のお兄さま、白桜院光紀(みつき)でしょうか。
「王族の家に生まれた男子はね、誰からも歓迎されない存在なんだ。王位継承権はないのに、女王や姫の血を引いてるから無下にはできない。はっきり言えば、無駄飯食いの厄介者さ。式典の参列や来賓の出迎え、外遊なんかの国事行為は姫の役目だと決まっているしね。だから、ボクたちは『王子』や『プリンス』と呼んでもらえない。無価値であることがボクたちのアイデンティティーなんだよ」(291ページ)
とうそぶいたりもしますが、立場上? 立場を活かして、結構いいところをかっさらっていきます。
シリーズ次作でも活躍してほしいですね。


<蛇足>
「それは人生で初めて味わう、新鮮な気づきと感動だった。」(31ページ)
もはや「気づき」という語を気持ち悪いと言いたてたところでまったく無駄な抵抗といえるほど、この表現は蔓延ってしまっていますが、この無神経で醜悪な表現が出てくる前は、こういう時どう書いていたのでしょうね? おそらく ”発見” くらいを使っていたのでしょうね。






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マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ [日本の作家 喜多喜久]


マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ (集英社文庫)

マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ (集英社文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
三人の大学生が互いに殺し合う不可解な事件が発生した。被害者は「マダラ」という謎のアプリをスマートフォンにインストールしていた。警視庁捜査一課の刑事・安達はやがて、“そのアプリを開いた者は、人を殺さずにはいられなくなる”という仮説にたどりつく。警察が対策を講じようとしたその時、「マダラ」が目覚め、世界に大混乱をもたらす──。謎が謎を呼ぶ衝撃のノンストップサスペンス!


2022年7月に読んだ3冊目の本です。

喜多喜久らしいというのか、いつもの喜多喜久節というのか、軽やかに物語られます。
扱われている事件は、開いたら人を殺さずにはいられなくなるアプリ、という物騒なものにより引き起こされるもので、ものすごい大事件です。
特に世界規模に蔓延してしまったマダラ・アプリを想像してみるとわかると思いますが、全世界を揺るがすような大事件で、実際に作中でもかなり大規模な事件が発生するのですが、なんとも軽やかに、なんともあっさり描かれます。
第3章にあたる Phase 3 リリースは2018年という設定で、次の第4章にあたる Phase 4 クローズは2023年7月に設定されていて、その展開にあっけにとられるかもしれません。

「ちなみに、二〇二〇年に東京で開催予定だったオリンピックは中止となった。」(238ページ)
という箇所が目を引きますが、そのほかの大事件もあっさりこのようなかたちで紹介されるだけです。
この後半部分は、もっともっと書き込めば、ホラーあるいはパニックものとしての側面が強調できたことでしょう。
この「マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ」 (集英社文庫)の刊行は2018年9月。
執筆時期を考えると、コロナ禍より前ですね。実際には東京オリンピックは中止ではなく1年延期だったわけですが、こういう話題を予見して? 盛り込んだところにセンスを感じました。
世界的に広まってしまうという点では、マダラとCOVIDも同じなのかもしれません。

マダラという名前は、まあ、最初から明らかではあるのですが、
「『人を殺したくなる悪魔のアプリ』という説は信憑性がある。マダラという言葉もそれを示している。」
「え? どういう意味なんですか、『マダラ』って」
「おそらく英語だろう。murderer--マーダラー。人殺しという単語だ。」(115ページ)
と説明されています。

マダラを作った人物が遺す言葉もキーですね。
「お前たちはおとなしく『天に光が満ちる日』を待てばいい」
「人類に対する試練が始まる日だ。綾日は、我々がそれを乗り越えることを望んでいた。だから、俺はマダラを作ったんだ。」(155ページ)
このマダラの製作意図に関しては、登場人物たちがいろいろと推測します。
途中である人物が遺したメモがかなり的を射ているのですが、備忘のため色を変えて転記しておきます。

マダラの開発理由に関して荒唐無稽な説を思いついた。マダラは「予行練習」だという可能性だ。火山の噴火や隕石の衝突が起こり、世界規模で日常生活が破綻するーーそんなことになれば、殺人や強盗が横行するだろう。その時に対処する術を身につけさせるために、マダラを作って広めようとした……

この理由は、どこまでいっても狂人の論理ということだと固く信じるのですが、非常にミステリ的というか、ミステリに親和性が高い論理で、こういうのを持ち込んだところは好もしかったです。

喜多喜久にしては異色作になると思いますが、興味深かったですね。
後半をもっともっと書き込んでもらいたかった気がしています。

<蛇足1>
「眉唾物だと思ってたよ。」
「その唾は早急に拭った方がいいでしょう。」(131ページ)
おもしろいやり取りなのですが、眉唾の意味から考えて、拭った方がいいというツッコミ(?) は少々変ですね。

<蛇足2>
「東浜翔吾くんに現金書留が送られてきていただろう。西新井署の方で差出人を調べた結果、三鷹市内の郵便局から送られてきたものであることが判明した。ただ、残念ながら、監視カメラなどの映像は残っていないし、差出人に関して何も覚えていないと局員も言っている」(131ページ)
現金書留だと、発信局に伝票の控等が残っているのではないかと思うのですが......それは調べていないのでしょうか? まああえて言うほどのことはない、ということかもしれませんが。

<蛇足3>
「新暁大学に通う学生が、多磨霊園で滝部を見たらしいのだ。」(143ページ)
多摩霊園ではなく、多磨なのですね。
己の無知に恥ずかしくなりました。

<蛇足4>
「二十一世紀になり、『再生可能エネルギーを増やす』というコンセプトに基づき、日本各地に大規模な太陽光発電システムが設けられていた。フレア発生後の調査により、太陽光発電パネルの多くは被害を免れていたことが分かった。そこで、大規模に展開されていた設備を分解し、各家庭に届けるという動きが生まれた。」(322ページ)

<蛇足5>
茶木則雄による解説のところです。
「優れたアクティビティ(今日性)。」(334ページ)とあります。
アクティビティに今日性という意味を持たせるのですね。





マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ (集英社文庫)


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はじめましてを、もう一度。 [日本の作家 喜多喜久]


はじめましてを、もう一度。 (幻冬舎文庫)

はじめましてを、もう一度。 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2021/04/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
「付き合ってください」。高校二年のリケイ男子・北原恭介は、クラスの人気者・佑那から突然、告白された。断ったら、夢のお告げで、俺は「ずばり、死んじゃう」らしい。思いがけず始まった、謎だらけの関係! しかし自然と想いは深まっていく。だが、夢の話には裏が――。彼女が言えずに抱えていた、重大な秘密とは? 泣けるラブ・ミステリー。


2022年2月に読んだ3作目(冊数でいうと5冊目)の本です。

本書
『「くだん」という単語をご存じだろうか。漢字だと、「件」と書く。』
というフレーズで始まります。
妖怪の「くだん」
「そいつは、人の顔と牛の体を持つ。人間の言葉を話し、生まれてから死ぬまでの数日の間に、戦争や洪水、流行病などの重大事に関する予言を残すという。そして、それらの予言は見事にすべて的中するそうだ。」(7ページ)

この予言に従う牧野佑那(まきのゆうな)から付き合ってくれと言われた高校生・北原恭介の視点で物語がつづられます。
まあ「くだん」なんて信じられないわけで、半信半疑というかほぼ疑で付き合うことに同意した恭介ですが......
と、この出だしだけで、物語の行く末の想像がついてしまう話でして、それ以上でもそれ以下でもない。
”彼女が言えずに抱えていた、重大な秘密” というのが最後に明かされるわけですが、ちょっとひねりが足りないですね、と思うのはミステリファンだからでしょうか?
喜多喜久ファンとして楽しく読みはしましたが、大きな不満が残る作品でした。

第1章の最初の小見出しが
2838+1――【2017.3.28(火)】
そのあとが
2848――【2017.4.6(木)】
2887――【2017.5.15(月)】
となっていっているので、数字部分が日付をカウントしていっていることがわかります。
単行本時のタイトルは、『「はじめまして」を3000回』で、このカウントに注意を惹きやすいものでした。
それが文庫化に際して「はじめましてを、もう一度。」に変更されて、少々わかりにくくなりました。
数字をさかのぼって、1(あるいは0)はいつか確認していません。
この物語の構成で、きりのいい 3000 という数字になっていることには少々不満ですので、3000を表に出さない改題は正解だと思います。

そして、改題されたタイトルの由縁はラストシーンだと思われますが、うーん、どうなんでしょうか?
これをハッピーエンドと捉えてよいものかどうか。

最後に、この本には解説がついていますが、鑑賞の妨げになるので事前に読まない方がよいと思います。




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ビギナーズ・ラボ [日本の作家 喜多喜久]


ビギナーズ・ラボ (講談社文庫)

ビギナーズ・ラボ (講談社文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
旭日製薬で働く恵輔は、祖父がいる老人ホームで千夏に出会い、恋に落ちる。しかし、彼女は治療薬が存在しない致死性の難病“ラルフ病”に冒されていた。恵輔は彼女を救いたい一心から、文系の創薬素人でありながら自ら治療薬を開発するという、あまりにも無謀な挑戦を始めるが――!(『ビギナーズ・ドラッグ』改題)


2021年10月に読んだ2冊目の本です。
ミステリーではありません。

製薬会社を舞台に創薬の現場を描くというもので、創薬のプロジェクトチームのリーダーに文系の素人を据えたのがミソです。
喜多作品としてはいつものことですが、非常に軽やかに書かれていまして、いろいろと困難はあるものの、創薬がリズミカルに行われる感じを受けます。
また今までの喜多作品と違い、ミステリという枠を外したことでストレートに創薬に焦点が当たっています。
実際にはこの作品のようにはいかず、無駄に終わるあるいは失敗に終わるプロジェクトが無数にあって創薬というのはできてるのだとは思いますが、エンターテイメントンのかたちで提示してもらえて、素人には親切です。
その意味では、創薬の素人が難題に挑む、そして成功してしまう、というのはファンタジーなのでしょうが、実際に製薬会社で研究員を務めていたという喜多喜久の祈りでもあるのだろうな、と感じました。



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リケジョ探偵の謎解きラボ [日本の作家 喜多喜久]


リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/05/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
保険調査員の仕事は、保険会社から支払われる保険金に関して、被保険者側に問題がないか調査・報告すること。しかし、江崎に回ってくるのは、大学教授の密室での突然死をはじめとした不審死ばかり。その死は果たして自殺か事故か、殺人か――。そんなとき、江崎は意中の研究者・友永久理子に相談を持ちかける。恋人より研究優先の熱血“理系女子”探偵が、化学を駆使し不審死の謎に迫る!


2021年8月に読んだ15冊目の本です。
喜多喜久って多作家ですよね。
お気に入りの作家なので基本的には全部読みたいなと思っているのですが、この「リケジョ探偵の謎解きラボ」 (宝島社文庫)はタイトルを見てちょっと臆してしまいました。
「リケジョ探偵」
作者なのか出版社なのかわかりませんが、狙ったようなタイトルで、なんかいかにもな感じがして......

帯に上野樹里の推薦コメントがついていまして
「研究一番、彼氏は二番?
 久理子のリケジョっぷりは潔くて素敵?
 ドラマ以外の物語も読めて嬉しい!
 難解な事件も、二人の恋の行方も、
 最後まで誠彦と頭を抱えながら是非楽しんでほしい!(笑)」
非常に要領よくまとめられています。

連作短編集で4話収録で、それにつれて二人の仲が深まって?いきます。
「Research01・小さな殺し屋」
内側から鍵のかかった部屋で心臓麻痺で死んだ大学教授。
おもしろいのは、犯行の場面はないのですが、犯人と思しき妻が死体を”発見”するシーンから始まることです。
犯人もリケジョでして、リケジョ対決というところでしょうか。
「Research02・亡霊に殺された女」
飛び降り自殺をしたと思われる妻の死は自殺ではないと信じる夫の依頼を受けて死の原因を調べます。
怪しげな占い師を絡めるところがポイントなんですが、平凡な印象です。
「Research03・海に棲む孔雀」
和歌山で起きた溺死事件は保険金目当てだという密告電話があって、調査に出かける誠彦。
泊りがけの調査になるので、公私混同して久理子を誘おうとするのが笑えます(といっても、気の弱い?誠彦の独自案ではなく、所長にそそのかされて、なのですが)。
ある意味典型的な話の進み方をするのですが、警察官が介入しているのがポイントですね。
事件の方は、賛否両論というか、議論を呼びそうな決着をみますが、誠彦と久理子の仲の進展の方が重要なのかもしれません。
しかし、下僕(笑)。
「Research04・家族の形」
久理子に留学話が持ち上がって気が気じゃない誠彦が取り組むのが交通事故。
介護の必要な老人が出てきた段階である程度真相は透けて見えてしまうのですが(手がかりも露骨ですし)、誠彦はこれまた微妙な決着に持っていきます。
まあ、警察じゃないから、ということなのでしょうが、第3話、第4話とこういうのが続くと、ちょっと全体のテイストがちぐはぐな印象を受けてしまいます。

続編「リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断」 (宝島社文庫)が出ているので、二人の恋の行方?が気になります。


<蛇足>
「今日は、草刈り直後の地面にポン酢を振りかけたような臭いがしていた。」(187ページ)
実験室のある建物に入った時の描写なんですが、どんな匂いなんだろ?


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化学探偵Mr.キュリー5 [日本の作家 喜多喜久]


化学探偵Mr.キュリー5 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー5 (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/12/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
化学サークルによる「甘い物質」合成対決。サ行の発音がおかしくなった同級生の秘密。四宮大生を狙う奇妙な仮面の男の正体。協力して事件の解決に当たる沖野と舞衣は、ひょんなことから理学部の冷蔵室に閉じ込められてしまった。暗闇&低温の極限状態から脱出する術はあるのか!?


読了本落穂ひろいです。
シリーズ第5弾ですが、先に第6弾第7弾の感想を書いてしまっています(第6弾の感想はこちら第7弾の感想はこちら。)。

で、この「化学探偵Mr.キュリー5」 (中公文庫)には
第一話 化学探偵と無上の甘味
第二話 化学探偵と痩躯の代償
第三話 化学探偵と襲い来る者
第四話 化学探偵と未来への対話
第五話 化学探偵と冷暗の密室
の五話が収録されています。


第一話の「化学探偵と無上の甘味」はサークル同士の甘味対決。古典的な展開の物語です。
ここに出てくる「ミラクルフルーツ」(ネタバレなので色を変えておきます)、知りませんでした。

第二話の「化学探偵と痩躯の代償」はタイトルにもある通り、ダイエットによる体調不良を扱っていますが、サ行が言いにくくなるって怖いですね。

第三話「化学探偵と襲い来る者」は、付き合いだしたばかりの梨奈と、二人の大学生に求愛されている千里、二人の女性の恋模様(?)を背景に、四宮大生を狙う通り魔(?)事件が解決されます。
しかし、ラストで七瀬がしようとするアドバイスにはちょっとびっくり。すごいな。

第四話の「化学探偵と未来への対話」は登校拒否、ひきこもりになった優秀な高校生の話ですが、ちょっと安直に物語が進みすぎるのが難かと。
まあ、七瀬の強引なまでの先方と沖野の話が功を奏した、ということですか......
ひきこもりや登校拒否に至る理由は人それぞれかと思いますが、こんな簡単に解消するとは限らない(簡単に解消するケースもあるとは思いますが)のでは、このやり方ではかえってこじれてしまうのでは、と不思議に思ってしまいます。

第五話「化学探偵と冷暗の密室」は冷蔵室に閉じ込められてしまった七瀬と沖野、なわけですが、うーん、この二人の仲はどうやったら進むのでしょうね?
この閉じ込められた状況って、いわゆる「吊り橋効果」抜群ではないですか。しかも、けしかけてくれる周りもいるというのに......
少しずつ、本当に少しずつ進展はしているのですが、あまりにも遅くて。うさぎとかめのかめどころか、カタツムリよりよほど遅いぞ。


<蛇足>
「七瀬はきっと、生まれつきのおせっかいなんだよ」(132ページ)
いや、まったくその通りなのですが、これ誉め言葉ではないですよね(苦笑)。





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研究公正局・二神冴希の査問 幻の論文と消えた研究者 [日本の作家 喜多喜久]


研究公正局・二神冴希の査問 幻の論文と消えた研究者 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

研究公正局・二神冴希の査問 幻の論文と消えた研究者 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/03/04
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
文部科学省・研究公正局の調査員・二神冴希。サイエンスを愛するが故に、彼女の追及は苛烈にして過たず真実を穿つ――。クビ寸前の研究員・円城寺は、研究所の内部調査を依頼される。二年前、捏造の疑惑で日本中を騒がせた万能細胞に関する論文。関係者の死と失踪で闇に消えたはずの論文を、何者かが再び投稿したという。円城寺の調査は難航するが、二神冴希の登場で、調査は大きく異なる展開を見せ始める……。


読了本落穂拾いです。
多作家である喜多喜久の本は、感想を書けていない本がかなり残っています。

単行本時のタイトルは、「捏造のロジック 文部科学省研究公正局・二神冴希」
あらすじを見ていただくと一目瞭然、STAP細胞騒動を題材にしています。

いま調べたら2014年だったんですね、STAP細胞騒動。もう7年も前ですか。
本書の単行本は2014年12月に刊行されていますから、かなり素早いですね。

もちろん、こちらは小説ですから、現実とは違う設定だし、現実とは違う展開を見せるわけですが、それでも垣間見える喜多喜久の見方がポイントですね。
あれは、素人目から見てとても不思議な騒動でしたが、ご自身も科学者、研究者である喜多喜久の見方は興味深いです。

探偵役を務める二神冴希が問いかける
「あなたはサイエンスを愛していますか?」
というセリフに凝縮されていると思われます。
研究者としての矜持を感じます。

だから逆に、それを踏みにじる行為や人物に対する見方は厳しい(と思われます)。
事件や人物の設定・配置もミステリとしての布陣という性格よりも、むしろそのことを浮き立たせるためのもの、という理解です。

戯画化されたような性格設定(特に二神冴希)でいつものように読みやすくなっていますが、喜多喜久の見方が色濃く打ち出されていることがこの作品を特徴づけていますね。




タグ:喜多喜久
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死香探偵 連なる死たちは狂おしく香る [日本の作家 喜多喜久]

死香探偵-連なる死たちは狂おしく香る (中公文庫)

死香探偵-連なる死たちは狂おしく香る (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
人気作家のサイン本に一冊だけ付いた甘いチョコレートの死香。慰安旅行先の旅館で遭遇したセロリの香りと消えた死体。死香を「食べ物」の匂いに変換する潤平と、分析学のエキスパート・風間は不審な事件を次々と〈嗅ぎ解く〉が、バナナの甘い香り漂う殺人現場で風間に異変が。容疑者の謎の美女に過剰反応し、初めて潤平を現場から遠ざけて?


「死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る」 (中公文庫)(感想ページはこちら)につづくシリーズ第2弾。
5月に読んだ最初の本であり、本帰国後日本で最初に買った本でもあります(どうでもいいことですが)。

シリーズは
「死香探偵-哀しき死たちは儚く香る」 (中公文庫)
「死香探偵-生死の狭間で愛は香る」 (中公文庫)
と順調に巻を重ねているようです。
しかし、喜多喜久、すごいですね。シリーズ作品をいくつも抱えていて。

このシリーズの主人公は特異体質の持ち主、桜庭潤平。
死臭を別の匂い、しかも食べ物の匂いとして感じてしまう。そしてその食べ物が(匂いが気になって)食べられなくなってしまう、という難儀な体質の持ち主です。

「歪んだ愛が招く死は、ほろ苦い香り」
「湯煙に霞む死は、青葉の香り」
「艶やかな香り、自由の彼方の死より来たる」
「安らかな死は、蠱惑的な香り」
の4話収録です。 

今回の『死香』は、オレンジ、チョコレート、セロリ、バナナ、パン。
もう、このあたりで潤平が食べられるもの、なくなってきちゃっているのでは?
前作「死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る」で、ごはんを食べられなくなってるし、今度はパン! 主食級の食べ物が次々アウトになってますよ。
風間准教授、急いで研究してあげてくださいよ。

死香の性質もかなり?明らかにはなってきてますね。ただ、こちらは研究の成果というよりは、潤平も体験の積み重ね。
・亡くなってからの時間が短ければ短いほど鮮烈になる
・犯人の肌や髪に染み付いた死香は、着替えたりシャワーを浴びたりしたくらいでは消えない
「部屋付近の地面に残されたオレンジの死香はさほど強くはない。そのことから、今回の死は自殺ではないかと僕は推察した。殺人者がここを通っていれば、もっと鮮烈に香るはずだからだ。」(28ページ)
なんて分析を潤平がしていますが、こういうことだと捜査にしっかり役立ちますね。

「歪んだ愛が招く死は、ほろ苦い香り」は死香の移り香が小道具として活躍します。
しかしなぁ。チョコレートが食べられなくなった潤平に、死香ではなく、ちゃんとチョコレートの香りがするチョコレートを作って渡すっていうのはなぁ、しかも、バレンタインデーに。風間准教授、変ですよ、あなた。
しかも、そのチョコレート、潤平にとってチョコレートの香りがするってことは、死香の成分を加えているわけで、そんなの食べていいのかな?

「湯煙に霞む死は、青葉の香り」は、死香を頼りに死体を探すという、死香の使い方としてはまずおもいつきそうなことをします。今までこのシリーズで出てこなかったのが不思議なくらい。
風間の研究室のメンバーに、二人の仲を疑われる始末ですが、そりゃあ、傍から見たら、十分怪しいよ、潤平と風間は。

「艶やかな香り、自由の彼方の死より来たる」は、ミステリとしては由緒正しい、ただ、今時これやるかね?と言いたくなるようなトリックが使われているのですが、死香と組み合わせるとなかなか趣があるかも、です。
まあ、それよりもなによりも、潤平が、風間との仲を疑ってしまう、座馬倫花という女性ですよね。
正体、事前に見当ついたんですけど、潤平が座馬の存在を意識してもやもやするところがポイントなんでしょうね。

「安らかな死は、蠱惑的な香り」は連続自殺事件を扱っていますが、潤平以外に、死香を感じとれる人物がいる、というのが衝撃的でした。
死香をもって追い詰めるという王道的展開です。

「死香」をめぐっていろいろとバリエーションを作り出している点がおもしろいな、と思う一方で、風間と潤平の仲にBL的要素はあまり入れてほしくないなー、と思ったり。
さておき、シリーズの今後、どういう手を見せてくれるのか、期待します!


<蛇足1>
「その気づきに、心の中がほっこりと温かくなる。」(148ページ)
心が温かくなった潤平とは逆に、「気づき」という単語に接してげんなりしてしまいました。
178ページにも出てくるんですよね。
狭量なのでしょうが、いやな表現だな、と思わずにはいられません。

<蛇足2>
「主人公の男は、本当に無罪なのか。それを見極めたいと思っているのだが、見るたびに印象が変わる」(148ページ)
映画「ショーシャンクの空に」についての、風間のセリフです。
そうか、そういう観方もありますね。
今度観る機会があったら、気をつけるようにしよう。








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