科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア [日本の作家 喜多喜久]
科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 喜多 喜久
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2019/10/25
- メディア: 文庫
<カバー裏あらすじ>
科学警察研究所──通称「科警研」の本郷分室の三人の研修生たちは、研修期間が延びたことで、「解決が困難な、不可解で難解な案件」すなわち「面白そうな事件」を選定し、調査に取り組んでいた。鋭い洞察力と推理の切れ味で、かつて警察関係者から「科警研のホームズ」とまで称されていた室長の土屋は、相変わらず事件より大学の研究に夢中な様子であったが、あるときそんな土屋に異変が……。
2024年8月に読んだ4冊目の本です。
喜多喜久の「科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア」 (宝島社文庫)。
「科警研のホームズ」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2作。
「毒殺のシンフォニア」
「溶解したエビデンス」
「致死のマテリアル」
「輪廻のストラテジー」
の4話収録の連作短編集。
「毒殺のシンフォニア」はどうやって毒を飲ませたか、を科学的に迫る話ですが、容疑者が書いた科学論文から性格を判断する、というのは傾向としてはあり得ても、なかなか説得力は持ちにくいのではという気がしました。それとポリグラフを併用してはいますが......(ポリグラフのシーンが割愛されているのが残念でした。わりとスリリングな場面になることが多いですよね)
「溶解したエビデンス」は、ある国民的ミステリ作家の作品(相互のネタばらしになってしまうので明記しませんが、感想ページにリンクを貼っています)に出てきたものが使われていておやっと思いました。
冒頭のシーンが一種のミスディレクションのように働いたのですが、こういう読み方をする人は少ない気がします(冒頭シーンに誤誘導される人はぼくぐらいでは?と)。
「致死のマテリアル」は科学的な詳細はわからなくても、死因について読者の見当が早々についてしまうのですが、これは冒頭のシーンから判断して作者の狙いなのでしょう。
土屋室長の過去が顔を出し始めているのがポイントでしょうか。
「輪廻のストラテジー」は、新興宗教を舞台に、教祖の死の謎を解くので、衆人環視の中でどうやって、というのがとても面白い謎でした。これまた科学的な細部は分からなくても、素人にもイメージしやすい謎解きになっていてよかったです。
「致死のマテリアル」で出てきた室長の過去がいよいよ明らかに、と言う話で、科警研の今後が決せられます。
いずれの事件も、科学的なところに依拠しているので、読者が謎を解くという楽しみはほとんどないのですが、目新しく感じられて楽しかったです。
次作の「科警研のホームズ 絞殺のサイコロジー」 (宝島社文庫)で、科警研がどうなっているのか、楽しみです。
<蛇足>
「毒殺のシンフォニア」に北上が科警研に出勤するシーンがあります。
丸ノ内線の本郷三丁目駅を出て、「本郷通りに続く路地を抜け」、「本郷通りに直行する春日通りを横断し、そこで左に折れた」そして「歩道をまっすぐ進むこと数十秒。北上はカレーショップと牛丼チェーン店に挟まれた、七階建てのビルの前で足を止めた」(以上「毒殺のシンフォニア」14~15ページ)となっています。
先日本郷三丁目駅に行き、春日通りを歩いていて見つけました。
ひょっとしてこの真ん中のビルがモデルでしょうか?
プリンセス刑事 生前退位と姫の恋 [日本の作家 喜多喜久]
プリンセス刑事 生前退位と姫の恋 (文春文庫 き 46-2)
- 作者: 喜多 喜久
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2019/10/09
- メディア: 文庫
<カバー裏あらすじ>
女王統治下の日本で、王位継承権を持つプリンセス・白桜院日奈子は刑事になった。コンビを組む芦原と、テロ事件の解決を目指す日奈子に、時を同じくして王家の問題が降りかかる。健康問題を抱えた現女王が思案する生前退位を巡って王室内は侃々諤々。日奈子たちは事件と問題を解決できるのか。書き下ろしシリーズ第二弾。
2024年6月に読んだ最初の本です。
喜多喜久の「プリンセス刑事 生前退位と姫の恋」 (文春文庫)。
「プリンセス刑事」 (文春文庫)(感想ページはこちら)
に続くシリーズ第2弾。
第3弾である
「プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意」 (文春文庫)
まで今のところ出版されています。
タイトルで堂々と謳われていますが、女王の生前退位が扱われます。
ただ、これ作品中ではしばらく伏せられているので、タイトルで明かしてしまったのはどうなのかな、と思わないでもないのですが......一方で、ストーリー的には生前退位は重要な位置を占めますので、タイトルにするにふさわしいとは言えます。
今回取り扱うのは、テロ(と思われる事件)。
北海道と思われる地域が別の国として存在しており、その国の名前がエミシ王国。
日本で起きた王女襲撃事件をきっかけに80年ほど前に日本がそのエミシを攻め込んだことがある、という衝撃の設定になっています──当時日本は軍人主体の政権だった、ということになっていて、エミシとの戦争に勝利したあと、世界から反発を受けて孤立し、クーデターの結果女王による統治が復活した、と。
前作「プリンセス刑事」の感想で、
「王族という設定を導入したことで、無理筋な、あるいは斬新な捜査方法をとることができるようにも思えますので、そういう方向でシリーズが展開されるとおもしろいかもしれませんね。」
と書いたのですが、テロ事件とあって、そういう手法がとりやすいかなとも思ったものの、実際には白桜院日奈子の存在を安直に、便利に使っているだけのように感じてしまいました。
──「それならば、私を通してください。王族特権を発動することで、情報開示に掛かる手順を省略できます」(195ページ)などというセリフは象徴的かと。しかし、この日本の体制、どうなっているのでしょうね?
生前退位をめぐる議論についても、いわゆる有識者は出てこずに、もっぱら王族内の会話のみで決せられそうな気配も漂ってきますしね......
本来であれば組織的対応をすべきところをすっ飛ばして、自らに都合よくデータを集めることが多々あるかと思えば、爆発物の分析に当たっては、素人の分析に頼っていて、???となってしまいました。
「爆薬の出処は捜査本部でもまだ特定できていない。もしそれが本当だとすれば、警察にとっては非常に大きな情報になる。ただ、民間人に負けたという屈辱を背負うことにはなるが。」(206ページ)と、この素人が成し遂げる分析が捜査上とても重要な要素となることが書かれていますが、この程度の分析であれば、警察で十分対応できるように思いますし、警察が無理でも軍隊は可能だと思います(現実の日本ではないので、自衛隊のような組織ではなく、本物の(?) 軍隊があるようです)。
このあたり、架空の国の設定があまり生きていないのかな、という気がしました。
同時に、この素人の設定は、日奈子の従姉妹真奈子のクラスメイトの兄ということになっており、王室を巡るストーリーに、側面から彩りを添えるものであり、あながち無駄な設定というわけでもないのが、難しいところ。
王族という設定が、プラスでもあり、マイナスでもあり、というところでしょうか。
架空の日本という設定を掲げているとはいえ、隣国との関係が絡むテロ事件にせよ、タイトルにもなっている生前退位をめぐる問題にせよ、とても扱いづらそうなテーマを取り扱っていてすごいな、と思いました。
最後に持ってきている結末も、(実際のことであったとしたら)相当に激しい議論を呼びそうなもので、これを軽いタッチのエンターテイメントに仕立て上げた作者にびっくりさせられました。
<蛇足1>
「黒井と白河という二人の刑事コンビが事件を解決していく筋立てで、彼らは頻繁に犯人との銃撃戦を演じていた。」(62ページ)
このシリーズでちょくちょくでてくるテレビドラマ『二人は刑事(デカ)』についての下りですが、色のついた名前の刑事といったら、滝田務雄の田舎の刑事シリーズではないですか! って、誰も共感してくれないかも(笑)。
<蛇足2>
「直斗が生活しているリビングに入り、『ここがコクピットか』と光紀は言った。『いや、実に面白いね。なんというか、人間のたくましさや生命力を感じるよ』」(112ページ)
直斗が住んでいる十帖のワンルームを訪れた、白桜院日奈子のお兄さま、白桜院光紀のセリフです。
失礼なと思わないでもないですが、宮殿に住んでいるようなお方の感想としては妥当かもしれませんね。
宮殿の中でパーソナルスペースがどれほどあるのか、少々気になったりして。
<蛇足3>
「胡散臭いのは確かだが、こちらのデメリットは少ない。捜査情報の漏洩リスクを背負うくらいだ。」(158ページ)
捜査情報の漏洩のリスクは、デメリットとして少ないとは言えないのでは(笑)?
相手は、おそらく王族に繋がる血筋だろう、という備えはありますれけど......
ヴァンパイア探偵 禁断の運命の血 [日本の作家 喜多喜久]
ヴァンパイア探偵 --禁断の運命の血-- (小学館文庫 C き 1-1 キャラブン!)
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/08/06
- メディア: 文庫
<カバー裏あらすじ>
殺人事件が多いことで知られる紅森市。刑事の桃田遊馬が頼りにするのは、古い屋敷で血液の研究をする幼なじみの天羽静也だ。彼は、事件の血液分析を担当し、捜査に協力している。華奢な長身に実験用の黒衣をまとった静也を人は ”ヴァンパイア” と呼ぶが、本人はその渾名を嫌っている。
絞殺された大学教授と衣服ノ血痕の謎。逃亡中の殺人犯と巡査刺殺事件の謎。バラバラ殺人らしき事件と "運命の血" の謎。殺された女性の首の傷痕とヴァンパイアのような人物の謎。そして明かされる静也自身の秘密とは!?
刑事と血液研究者が ”血” を手がかりに難事件に挑む!
2024年3月に読んだ9冊目の本です。
喜多喜久「ヴァンパイア探偵 --禁断の運命の血--」 (小学館文庫キャラブン!)。
「ヴァンパイア探偵2 戦慄の血塗られし狩人」 (小学館文庫キャラブン!)が出ているので、新しいシリーズですね。
この ”キャラブン!” というの、何なんだろうと調べても、”キャラブン!” のHPを見ても、あまりよくわかりませんでした。
wikipedia では『2018年2月からキャラクター文芸を扱う派生レーベル「小学館文庫キャラブン!」を創刊』と書かれているので、文庫内レーベルでしょうか。本屋さんでは、小学館文庫とは別の棚=ラノベを並べている棚に置かれていることが多いようです。探すのに苦労しました(笑)。
ということでは、このシリーズでいうキャラクターとは、タイトルでもあるヴァンパイア探偵こと天羽静也のことでしょうね。
幼なじみで刑事の桃田遊馬が配されています。
この二人の関係、静也→遊馬はBLテイストかな、と読んでいて思うのですが、次第次第に、BLテイストはないとはいえないものの、ずらした設定であることがわかるようになっています。
ブラッド・メイカー ──DNAの罠
ブラッド・オブ・ラブ ──愛の果てに
デスティニー・ブラッド ──生命の源
ブラッド・アンド・ファング ──跋扈するヴァンパイア
以上四話収録の連作短編集です。
血液に関する新たな分析や知識が披露され、それを使って真相を突き止めるという話になっていて、それほそれでとても楽しいのですが、ミステリでいうところの謎解きの興趣というのはありませんね。
そこはちょっと残念な思いですが、静也による目新しい血液分析が決定打になるという話をこれだけ作り出すというのは大変なことだと思うので、贅沢を求めすぎということでしょう。
静也と遊馬の仲も、一歩違う次元へ踏み出したことですし、次巻の「ヴァンパイア探偵2 戦慄の血塗られし狩人」を楽しみに。
カバーイラストがTHORES柴本さんというのも、ポイント高いですしね。
リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 [日本の作家 喜多喜久]
リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 喜多 喜久
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2019/04/04
- メディア: 文庫
<カバー裏あらすじ>
研究第一のリケジョ探偵が帰ってきた! 留学帰りの研究者・友永久理子と同棲を始めた保険調査員の江崎は、結婚に向けて着々と準備を進めていくが、二人の生活には様々な問題があり……。一方、仕事においても、江崎に回ってくる案件は相変わらず厄介な不審死ばかり。頭を悩ませる江崎が、久理子にアドバイスを求めると、彼女は犯人の思考を ”トレース” し、科学の力で事件の謎に迫る!
2024年2月に読んだ5冊目の本です。
前回感想を書いたハリー・カーマイケル「アリバイ」 (論創海外ミステリ)と順番が逆になってしまいました。
喜多喜久「リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断」 (宝島社文庫)。
「リケジョ探偵の謎解きラボ」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)の続編にして完結編(多分)です。
あらすじに書いてあるように「二人の生活には様々な問題があ」るとは思いませんでしたが、連作短編を通して、江崎が受ける仕事の解明と、久理子と江崎の生活の両方が描かれていきます。
裏側の帯に、各話の1行紹介があるので、それとともに各話について。
「Research01・契約と選択」 なぜスズメバチは季節外れの時期に凶暴化したのか。
犯人側の視点から犯行前まで描いておいて、その後江崎視点に切り替わります。
蜂といえばフェロモンと結びつけやすい生き物なので、犯行手段は理系的には平凡というか容易に想像がついてしまうもので、むしろどうやってそれを突き止めるかという興味になるのでしょう。
久理子と江崎の生活の方にも絡んでくるので単純には言い切れないとは思いますが、この事件の決着のつけ方は印象に残りました。
「Research02・死の階段」 脳梗塞で夫を亡くした妻は、前夫も同様に失っており……。
健康に留意が必要な夫の生活を身体に悪い方向に導いて死に至らしめる──なかなか悠長な殺人計画の疑いをかけられています。
江崎との会話で涙を浮かべたその妻に
「ウソ泣きではないだろう、と僕は感じていた。彼女が心に傷を負っていることは間違いないように思えた。
問題は、涙の理由だ。二人の夫を失った悲しみなのか、それとも金のために二人を殺めたという良心の呵責なのか。今後の調査を通じて、それをじっくりと見極めていかねばならない。」(127ページ)
と述べるところ立ち止まりました。そうか、良心の呵責の涙か......そういう涙もあるのですね。
「Research03・失踪の果つる地」 七年間姿を見せず、死亡扱いとなりそうな男の失踪の謎。
ミステリとしての印象は弱いのですが(読んでいただくとわかりますが、事件らしい事件がないので)、決着というのか物語の行方が印象に残ります。
途中、DNAと遺伝子を「DNAが本で、遺伝子がそこに書かれた文章ってのはどうですか。意味のある文章が集まって物語になる。これってつまり、遺伝子からタンパク質ができて、最後には生物ができあがるのと同じでしょう。」(214ページ)と譬える箇所があります。
DNAは本ですか? どちらかというと文字のような気がしますが......そして生物が本なのでは?
さておき、その薬物退社に関わる酵素(CYP)、遺伝子の並びの傾向から出身地が判明するというのは本当でしょうか? すごいことですね。
「Research04・生命の未来予想図」 がん保険の生前給付金を受け取る患者が続出する病院の闇。
ここまで夫婦関係に起因する事件(?) を扱ってきたあとに、違う角度の事件。
このがんと保険をめぐる仕掛け(?) は素人にも簡単に予想がつく内容になっていまして、ちょっと食い足りなかったですね。
久理子と江崎の生活の方のエピソードが、意図的にだとは思うのですが、全体を通じて非常にあからさまにヒントがばらまいてあって、読者は江崎よりもかなり先回りできてしまうんですよね。
第1話から第3話まで夫婦にまつわる事件ばかりでそのたびに江崎がいろいろと考え、そして陰が差しこんで来ようとも、この二人にお似合いの、というか、江崎にお似合いのとでも言うべきベタで甘々なラストは、喜多喜久らしいといえば喜多喜久らしく、これでいいのかな、と思えました。
科警研のホームズ [日本の作家 喜多喜久]
<カバー裏あらすじ>
科学警察研究所・本郷分室にやってきた三人の研修生たちは、科警研の仕事に興味を示さない室長・土屋の態度に困惑する。かつての彼は科警研の研究室長を務め、鋭い洞察力と推理の切れ味で、警察関係者から「科警研のホームズ」と称されていたらしいが…。土屋にやる気を取り戻させるため、そして自分たちの成長のため、三人は科警研の所長・出雲から持ち込まれる事件の調査に邁進する。
2023年3月に読んだ2冊目の本です。
「残光のメッセージ」
「楽園へのナビゲーター」
「惜別のロマンチシズム」
「伝播するエクスタシー」
の4話収録の連作短編集。
喜多喜久による新シリーズ、科警研のホームズ。
帯に「『化学探偵Mr.キュリー』シリーズの著者、初の警察科学捜査ミステリー!」とあって、あれっ、そうだっけ? と思いましたが、確かに科学、化学を題材にした作品を数多く書かれているものの、警察捜査で扱ったものはなかったようです。
タイトルにもなっている科警研──科学警察研究所は警察庁の附属機関で、TVドラマでお馴染みになった各都道府県の警察本部に置かれている科学捜査研究所──科捜研とは違います。科警研、科捜研について「警察を食品会社に喩えるなら、科捜研は各地にある工場、科警研はその商品開発を行う研究所、という風になるだろう。」(17ページ)と説明されています。わかりやすい。
で、わけあって設立された<科学警察研究所・本郷分室>。
科警研のホームズこと土屋は、この分室の室長、兼、東啓大学の理学部の准教授という設定です。
この東啓大学、「国立大学の中でも屈指の名門」(33ページ)という説明ですが、こういった兼務可能なのでしょうか? また、本郷という所在地からしてもどう考えても東京大学なのですが、どうして東啓大学にしたのでしょうね?
喜多喜久さんご自身の出身大学ということもあって遠慮されたのか? それとも作中には実在のものは登場させないご方針なのか?
「残光のメッセージ」はタイトルが既にネタバレですが、走査型電子顕微鏡(SEM)で残留物質を分析して真相に迫ります。
「楽園へのナビゲーター」は死因の特定できない事件を遺留物質から解明していきます。
「惜別のロマンチシズム」は監視カメラに映った犯人が一卵性双生児のどちらだったのかを解き明かします。
「伝播するエクスタシー」は、これまたタイトルがネタバレ気味ですが、連続通り魔事件の犯人をつきとめます。
いずれも冒頭に半倒叙形式とでもいうようは犯行シーン(?)が描かれています。
これは捜査を研修生が進めていく中で、土屋がアドバイスする内容を読者に分かりやすくする効果があるようです。
いずれの事件も、目新しい捜査方法が出てきてとても楽しかったのですが、肝心かなめのホームズに喩えられる土屋の鋭さが、さほど伝わってこないのが残念。少なくとも、科警研の所長が「何としても科警研に復帰させたい」というほどのレベル感ではないように思えました。
とはいえ、北上純也、伊達洋平、安岡愛実の3人の研修生のキャラクターも深まってきましたし、続編も順調に出ているようなので、楽しみです。
<蛇足1>
「彼の顔を見た途端、伊達がはっと息を呑み、『ご苦労様です!』と背筋を伸ばした。」(36ページ)
「ご苦労様」というあいさつについては、目上の人に使ってはいけないとか、いや問題ないとか諸説あるようですが、使う場所(会社)のしきたりなのかもしれません。ぼくは個人的には目上の人には絶対使わない文化で育ちました。いずれにせよ「お疲れ様です」よりも目上の人には使いづらいあいさつではあると思います。
ここで出世意欲、上昇志向が強い伊達が使っているところからして、警察という組織は「ご苦労様」を目上の人にも気にせず使える文化だと考えてよいのでしょうか??
<蛇足2>
「いかんいかん、つい学生を相手に議論する時のようになってしまった。」(147ページ)
土屋が研修生と議論したあとで漏らすのですが、研修生という立場であれば学生とさほど変わりない気がします。
そもそも土屋は、科警研における議論はどのようなものを目指していたのでしょうね? ボールペンの扱いが気になったのでしょうか?
<蛇足3>
「研究の背景を導入部で語り、そこから自分の研究の意義へと繋げる。研究によって導き出したい主張をしっかりと打ち出し、そのための方法を提示する。無論、科学的に妥当と思われる手順でなされる字実験でなければならない。そのあとに、具体的な実験の手法の記述があり、実際に取得したデータが続く。分析機器から出力されたデータを加工する必要はあるが、結論を歪めるような補正は決して認められない。あらかじめ決めた処理を施し、相手が理解しやすいグラフや表を作成するだけだ。そして最初に立てた仮説と得られた結果が合致するか否かを、最後のパラグラフで論じる。強引な論理があってはならない。同じ分野の研究者が読めば、百人中百人が納得する考察がなされる必要がある。」(177ページ)
学生の書いた論文を添削する土屋が考えている論文の基本的な構成です。
さほど難しいことを言ってはいないようですが、論文執筆に限らず、伝える技術というのはスキルが必要ですね。
プリンセス刑事 [日本の作家 喜多喜久]
<カバー裏あらすじ>
女王統治下にある日本。現女王の姪で、王位継承権第五位の王女・白桜院日奈子が選んだ職業は、なんと刑事だった!? 「ヴァンパイア」と呼ばれる殺人鬼による連続殺人事件の捜査本部に配属された日奈子と、彼女のパートナーに選ばれた若手刑事の芦原直斗は、果たして凶悪な犯人を逮捕することができるのか──?
2022年11月に読んだ3冊目の本です。
カバー裏のあらすじを読んで感じていたことではあるのですが、読んでみるとこれは、似鳥鶏の戦力外捜査官 姫デカ(第1作の感想ページはこちら)と相似形です。
主要な視点人物である芦原直斗の扱いも、ほぼほぼ戦力外捜査官を踏襲した感じです。
あちらと比べると、こちらは王族(!)ということですから、守らなければならない度はアップしているものの(当然ながら専属のボディガードもいます)、無敵度も大幅アップ。
ミステリとしては安易な方向に進んでいるとも思えますが、同時に物語の駆動力はあがるのかもしれません(だって王族の権威とか特権を活用できるのですから)。
ただ、戦力外捜査官シリーズと比較して大きな違いは、ユーモアでしょうか。
戦力外捜査官シリーズはユーモアミステリとして優れていますが、この「プリンセス刑事」 (文春文庫)は、喜多喜久のこと軽妙には描かれていますが、ユーモアをほとんど感じさせず、極めて真面目に真面目につづられています。
この設定を真面目に扱うというのは、なかなかの冒険かもしれません。
事件は猟奇殺人のシリアルキラー。
この事件の構図が平凡なのが残念ですね。
読者は相当早い段階で真犯人の見当がついてしまうはずです。
容疑者の雑多な個人情報を入力し、電子空間上に再現構築した架空の人格を用いてシミュレーションして犯人を追い詰める、などという大仰なアイデアが盛り込まれていますが、これ現実に研究されているのでしょうか?
264ページあたりから描かれる推論には正直まったく感心しませんでした。
これなら昔ながらの刑事のカンの方が頼りになりそう......
シリーズ化されていまして、
「プリンセス刑事 生前退位と姫の恋」 (文春文庫)
「プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意」 (文春文庫)
と今のところ第3作まで出ています。
王族という設定を導入したことで、無理筋な、あるいは斬新な捜査方法をとることができるようにも思えますので、そういう方向でシリーズが展開されるとおもしろいかもしれませんね。
シリーズということで注目は、白桜院日奈子のお兄さま、白桜院光紀(みつき)でしょうか。
「王族の家に生まれた男子はね、誰からも歓迎されない存在なんだ。王位継承権はないのに、女王や姫の血を引いてるから無下にはできない。はっきり言えば、無駄飯食いの厄介者さ。式典の参列や来賓の出迎え、外遊なんかの国事行為は姫の役目だと決まっているしね。だから、ボクたちは『王子』や『プリンス』と呼んでもらえない。無価値であることがボクたちのアイデンティティーなんだよ」(291ページ)
とうそぶいたりもしますが、立場上? 立場を活かして、結構いいところをかっさらっていきます。
シリーズ次作でも活躍してほしいですね。
<蛇足>
「それは人生で初めて味わう、新鮮な気づきと感動だった。」(31ページ)
もはや「気づき」という語を気持ち悪いと言いたてたところでまったく無駄な抵抗といえるほど、この表現は蔓延ってしまっていますが、この無神経で醜悪な表現が出てくる前は、こういう時どう書いていたのでしょうね? おそらく ”発見” くらいを使っていたのでしょうね。
マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ [日本の作家 喜多喜久]
<カバー裏あらすじ>
三人の大学生が互いに殺し合う不可解な事件が発生した。被害者は「マダラ」という謎のアプリをスマートフォンにインストールしていた。警視庁捜査一課の刑事・安達はやがて、“そのアプリを開いた者は、人を殺さずにはいられなくなる”という仮説にたどりつく。警察が対策を講じようとしたその時、「マダラ」が目覚め、世界に大混乱をもたらす──。謎が謎を呼ぶ衝撃のノンストップサスペンス!
2022年7月に読んだ3冊目の本です。
喜多喜久らしいというのか、いつもの喜多喜久節というのか、軽やかに物語られます。
扱われている事件は、開いたら人を殺さずにはいられなくなるアプリ、という物騒なものにより引き起こされるもので、ものすごい大事件です。
特に世界規模に蔓延してしまったマダラ・アプリを想像してみるとわかると思いますが、全世界を揺るがすような大事件で、実際に作中でもかなり大規模な事件が発生するのですが、なんとも軽やかに、なんともあっさり描かれます。
第3章にあたる Phase 3 リリースは2018年という設定で、次の第4章にあたる Phase 4 クローズは2023年7月に設定されていて、その展開にあっけにとられるかもしれません。
「ちなみに、二〇二〇年に東京で開催予定だったオリンピックは中止となった。」(238ページ)
という箇所が目を引きますが、そのほかの大事件もあっさりこのようなかたちで紹介されるだけです。
この後半部分は、もっともっと書き込めば、ホラーあるいはパニックものとしての側面が強調できたことでしょう。
この「マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ」 (集英社文庫)の刊行は2018年9月。
執筆時期を考えると、コロナ禍より前ですね。実際には東京オリンピックは中止ではなく1年延期だったわけですが、こういう話題を予見して? 盛り込んだところにセンスを感じました。
世界的に広まってしまうという点では、マダラとCOVIDも同じなのかもしれません。
マダラという名前は、まあ、最初から明らかではあるのですが、
「『人を殺したくなる悪魔のアプリ』という説は信憑性がある。マダラという言葉もそれを示している。」
「え? どういう意味なんですか、『マダラ』って」
「おそらく英語だろう。murderer--マーダラー。人殺しという単語だ。」(115ページ)
と説明されています。
マダラを作った人物が遺す言葉もキーですね。
「お前たちはおとなしく『天に光が満ちる日』を待てばいい」
「人類に対する試練が始まる日だ。綾日は、我々がそれを乗り越えることを望んでいた。だから、俺はマダラを作ったんだ。」(155ページ)
このマダラの製作意図に関しては、登場人物たちがいろいろと推測します。
途中である人物が遺したメモがかなり的を射ているのですが、備忘のため色を変えて転記しておきます。
マダラの開発理由に関して荒唐無稽な説を思いついた。マダラは「予行練習」だという可能性だ。火山の噴火や隕石の衝突が起こり、世界規模で日常生活が破綻するーーそんなことになれば、殺人や強盗が横行するだろう。その時に対処する術を身につけさせるために、マダラを作って広めようとした……
この理由は、どこまでいっても狂人の論理ということだと固く信じるのですが、非常にミステリ的というか、ミステリに親和性が高い論理で、こういうのを持ち込んだところは好もしかったです。
喜多喜久にしては異色作になると思いますが、興味深かったですね。
後半をもっともっと書き込んでもらいたかった気がしています。
<蛇足1>
「眉唾物だと思ってたよ。」
「その唾は早急に拭った方がいいでしょう。」(131ページ)
おもしろいやり取りなのですが、眉唾の意味から考えて、拭った方がいいというツッコミ(?) は少々変ですね。
<蛇足2>
「東浜翔吾くんに現金書留が送られてきていただろう。西新井署の方で差出人を調べた結果、三鷹市内の郵便局から送られてきたものであることが判明した。ただ、残念ながら、監視カメラなどの映像は残っていないし、差出人に関して何も覚えていないと局員も言っている」(131ページ)
現金書留だと、発信局に伝票の控等が残っているのではないかと思うのですが......それは調べていないのでしょうか? まああえて言うほどのことはない、ということかもしれませんが。
<蛇足3>
「新暁大学に通う学生が、多磨霊園で滝部を見たらしいのだ。」(143ページ)
多摩霊園ではなく、多磨なのですね。
己の無知に恥ずかしくなりました。
<蛇足4>
「二十一世紀になり、『再生可能エネルギーを増やす』というコンセプトに基づき、日本各地に大規模な太陽光発電システムが設けられていた。フレア発生後の調査により、太陽光発電パネルの多くは被害を免れていたことが分かった。そこで、大規模に展開されていた設備を分解し、各家庭に届けるという動きが生まれた。」(322ページ)
<蛇足5>
茶木則雄による解説のところです。
「優れたアクティビティ(今日性)。」(334ページ)とあります。
アクティビティに今日性という意味を持たせるのですね。
マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ (集英社文庫)
タグ:喜多喜久
はじめましてを、もう一度。 [日本の作家 喜多喜久]
<カバー裏あらすじ>
「付き合ってください」。高校二年のリケイ男子・北原恭介は、クラスの人気者・佑那から突然、告白された。断ったら、夢のお告げで、俺は「ずばり、死んじゃう」らしい。思いがけず始まった、謎だらけの関係! しかし自然と想いは深まっていく。だが、夢の話には裏が――。彼女が言えずに抱えていた、重大な秘密とは? 泣けるラブ・ミステリー。
2022年2月に読んだ3作目(冊数でいうと5冊目)の本です。
本書は
『「くだん」という単語をご存じだろうか。漢字だと、「件」と書く。』
というフレーズで始まります。
妖怪の「くだん」
「そいつは、人の顔と牛の体を持つ。人間の言葉を話し、生まれてから死ぬまでの数日の間に、戦争や洪水、流行病などの重大事に関する予言を残すという。そして、それらの予言は見事にすべて的中するそうだ。」(7ページ)
この予言に従う牧野佑那(まきのゆうな)から付き合ってくれと言われた高校生・北原恭介の視点で物語がつづられます。
まあ「くだん」なんて信じられないわけで、半信半疑というかほぼ疑で付き合うことに同意した恭介ですが......
と、この出だしだけで、物語の行く末の想像がついてしまう話でして、それ以上でもそれ以下でもない。
”彼女が言えずに抱えていた、重大な秘密” というのが最後に明かされるわけですが、ちょっとひねりが足りないですね、と思うのはミステリファンだからでしょうか?
喜多喜久ファンとして楽しく読みはしましたが、大きな不満が残る作品でした。
第1章の最初の小見出しが
2838+1――【2017.3.28(火)】
そのあとが
2848――【2017.4.6(木)】
2887――【2017.5.15(月)】
となっていっているので、数字部分が日付をカウントしていっていることがわかります。
単行本時のタイトルは、『「はじめまして」を3000回』で、このカウントに注意を惹きやすいものでした。
それが文庫化に際して「はじめましてを、もう一度。」に変更されて、少々わかりにくくなりました。
数字をさかのぼって、1(あるいは0)はいつか確認していません。
この物語の構成で、きりのいい 3000 という数字になっていることには少々不満ですので、3000を表に出さない改題は正解だと思います。
そして、改題されたタイトルの由縁はラストシーンだと思われますが、うーん、どうなんでしょうか?
これをハッピーエンドと捉えてよいものかどうか。
最後に、この本には解説がついていますが、鑑賞の妨げになるので事前に読まない方がよいと思います。
タグ:喜多喜久
ビギナーズ・ラボ [日本の作家 喜多喜久]
<カバー裏あらすじ>
旭日製薬で働く恵輔は、祖父がいる老人ホームで千夏に出会い、恋に落ちる。しかし、彼女は治療薬が存在しない致死性の難病“ラルフ病”に冒されていた。恵輔は彼女を救いたい一心から、文系の創薬素人でありながら自ら治療薬を開発するという、あまりにも無謀な挑戦を始めるが――!(『ビギナーズ・ドラッグ』改題)
2021年10月に読んだ2冊目の本です。
ミステリーではありません。
製薬会社を舞台に創薬の現場を描くというもので、創薬のプロジェクトチームのリーダーに文系の素人を据えたのがミソです。
喜多作品としてはいつものことですが、非常に軽やかに書かれていまして、いろいろと困難はあるものの、創薬がリズミカルに行われる感じを受けます。
また今までの喜多作品と違い、ミステリという枠を外したことでストレートに創薬に焦点が当たっています。
実際にはこの作品のようにはいかず、無駄に終わるあるいは失敗に終わるプロジェクトが無数にあって創薬というのはできてるのだとは思いますが、エンターテイメントンのかたちで提示してもらえて、素人には親切です。
その意味では、創薬の素人が難題に挑む、そして成功してしまう、というのはファンタジーなのでしょうが、実際に製薬会社で研究員を務めていたという喜多喜久の祈りでもあるのだろうな、と感じました。
タグ:喜多喜久
リケジョ探偵の謎解きラボ [日本の作家 喜多喜久]
リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 喜多 喜久
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2017/05/09
- メディア: 文庫
<カバー裏あらすじ>
保険調査員の仕事は、保険会社から支払われる保険金に関して、被保険者側に問題がないか調査・報告すること。しかし、江崎に回ってくるのは、大学教授の密室での突然死をはじめとした不審死ばかり。その死は果たして自殺か事故か、殺人か――。そんなとき、江崎は意中の研究者・友永久理子に相談を持ちかける。恋人より研究優先の熱血“理系女子”探偵が、化学を駆使し不審死の謎に迫る!
2021年8月に読んだ15冊目の本です。
喜多喜久って多作家ですよね。
お気に入りの作家なので基本的には全部読みたいなと思っているのですが、この「リケジョ探偵の謎解きラボ」 (宝島社文庫)はタイトルを見てちょっと臆してしまいました。
「リケジョ探偵」
作者なのか出版社なのかわかりませんが、狙ったようなタイトルで、なんかいかにもな感じがして......
帯に上野樹里の推薦コメントがついていまして
「研究一番、彼氏は二番?
久理子のリケジョっぷりは潔くて素敵?
ドラマ以外の物語も読めて嬉しい!
難解な事件も、二人の恋の行方も、
最後まで誠彦と頭を抱えながら是非楽しんでほしい!(笑)」
非常に要領よくまとめられています。
連作短編集で4話収録で、それにつれて二人の仲が深まって?いきます。
「Research01・小さな殺し屋」
内側から鍵のかかった部屋で心臓麻痺で死んだ大学教授。
おもしろいのは、犯行の場面はないのですが、犯人と思しき妻が死体を”発見”するシーンから始まることです。
犯人もリケジョでして、リケジョ対決というところでしょうか。
「Research02・亡霊に殺された女」
飛び降り自殺をしたと思われる妻の死は自殺ではないと信じる夫の依頼を受けて死の原因を調べます。
怪しげな占い師を絡めるところがポイントなんですが、平凡な印象です。
「Research03・海に棲む孔雀」
和歌山で起きた溺死事件は保険金目当てだという密告電話があって、調査に出かける誠彦。
泊りがけの調査になるので、公私混同して久理子を誘おうとするのが笑えます(といっても、気の弱い?誠彦の独自案ではなく、所長にそそのかされて、なのですが)。
ある意味典型的な話の進み方をするのですが、警察官が介入しているのがポイントですね。
事件の方は、賛否両論というか、議論を呼びそうな決着をみますが、誠彦と久理子の仲の進展の方が重要なのかもしれません。
しかし、下僕(笑)。
「Research04・家族の形」
久理子に留学話が持ち上がって気が気じゃない誠彦が取り組むのが交通事故。
介護の必要な老人が出てきた段階である程度真相は透けて見えてしまうのですが(手がかりも露骨ですし)、誠彦はこれまた微妙な決着に持っていきます。
まあ、警察じゃないから、ということなのでしょうが、第3話、第4話とこういうのが続くと、ちょっと全体のテイストがちぐはぐな印象を受けてしまいます。
続編「リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断」 (宝島社文庫)が出ているので、二人の恋の行方?が気になります。
<蛇足>
「今日は、草刈り直後の地面にポン酢を振りかけたような臭いがしていた。」(187ページ)
実験室のある建物に入った時の描写なんですが、どんな匂いなんだろ?