憂国のモリアーティ 14 [コミック 三好輝]
<カバー裏あらすじ>
生きろ──魂の叫びが運命をも凌駕する──
女王陛下からシャーロックに、犯罪卿逮捕の勅命が下る。無二の友としてウィリアムを救おうとするシャーロックだが、自らの死で大英帝国の浄化の完成を望むウィリアムにより、“モリアーティの物語”は着実にその結末へと近づいていく…。犯罪卿と名探偵、それぞれの胸に秘した想いが交わる時、炎上するロンドンで“最後の事件”は最終局面を迎える!!
シリーズ第14巻。「憂国のモリアーティ 14」 (ジャンプコミックス)。
表紙は......これ、誰でしょう?
フレッド・ポーロックじゃないかと思うんですが(この第14巻では割と大きめの役をもらっている印象ですし)、自信が持てない。
この方の絵、見やすくて好きなんですが、登場人物の描き分けが、個人的に今一つなんですよね。
#52~56 最後の事件 第五幕~第九幕(The Final Problem Act 5 ~ 9)
の5話を収録。
袖で構成の竹内良輔が、いつもは四話ずつだけれど、切りがいいので五話収録にした、と書いていますね。
第13巻に続いて、「最後の事件」ということで、ホームズ対モリアーティの対決を描いています。
原典のモリアーティの設定と大きく変えているので、当然のことながら、モリアーティとホームズの関係性も大きく異なっています。
ここがポイントですね。
「お前が犯罪卿を逮捕したらとことん悪く書いてやるさ! 容姿も含めてな! それが盛―ティsンの‥‥ひいてはこの国の為にもなるなら!」(28ページ)
とワトソンもホームズに言っていますね。
ホームズとモリアーティの221Bでの会談が、ある意味クライマックスで、ここは力が入っているな、という箇所なのですが、個人的にはあまりこういうむき出しのウェットな部分は好きではありません。
こういうあからさまな心情吐露は、ホームズに(それにモリアーティにも)ふさわしくないとも思います。今の読者に受ける要素ではあるとは思いますが。
ライヘンバッハの滝の代わりに作者たちが用意した舞台が素敵ですね。
1886年に着工、1894年に完成したある建造物(ネタ晴らしとは言えないと思いますが、念のため伏せておきます)を選んだのはお見事かと思いました。すばらしい!
とても、とても美しい対決シーンだと思います。
ちょっと気になるのは、ここまで派手な対決になっているので、ワトソンがライヘンバッハの滝を舞台にした「最後の事件」を The Strand Magazine に発表しても、それが事実ではないと一般大衆もわかっているということ。
まあ、一般大衆も、現実に題材をとったフィクションとして楽しんだのだ、と解釈すればいいんですけれどね。
ことが収まって(?) からの、残されたアルバートやルイスたちの身の処し方もよく考えられているな、と感じました。
いいですね。
ラストでは(原典どおり?)、ホームズ(とモリアーティ)の復活を予感させるシーンが挿入されています。
ひとまず区切りとなっているので、今後の展開が楽しみです。
憂国のモリアーティ 13 [コミック 三好輝]
<カバー裏あらすじ>
緋色に染まった両手の血を拭い去ることは出来ない──
「犯罪卿の正体はウィリアム・ジェームズ・モリアーティ」
──シャーロック・ホームズによるミルヴァートン殺害を引き金に、大英帝国中を揺るがす衝撃の報道が駆け巡る。市民と貴族、その両者から忌み嫌われながらも、ウィリアムは自らの ”計画” に基づき、特権階級の人間を粛正し始める。全ての罪を一人背負うウィリアムに対し、ルイスたちは…
シリーズ第13巻。憂国のモリアーティ 13 (ジャンプコミックス)。
表紙は......ジェームズ・ボンドですね。
愛嬌たっぷりにウィンクなんかしてますけど、しっかり右手には銃があるのでご用心(笑)。
#48、49、50、51 最後の事件 第一幕、第二幕、第三幕、第四幕(The Final Problem Act 1, Act 2, Act 3, Act 4)
を収録。
第12巻の終わりのモリアーティのセリフを再編集して、この第13巻はスタートします。
いわく
「彼(シャーロック・ホームズのことです)はミルヴァートンを殺した…
一人殺せば二人殺すのも同じ事…
つまり…これで間違いなく彼は僕の事も殺してくれるはずさ…
……早速取り掛かろう…
リストアップしていた全ての悪魔に裁きを下す──」
(ちなみに第12巻の感想に書いた邪推は邪推にすぎなかったようですね笑)
自らの名を出して犯行声明を出し、犯行を繰り返して世間を騒がせる。
最後にはウィリアムは自らの命を捨てる。
こういう筋書きに沿って、粛々と計画を進め事件を起こすモリアーティたち。
しかし、仲間たちの中にも動揺が広がり......
このあとの展開は秘すのがエチケットかとは思いますが、国を挙げての大騒ぎに、ホームズが担ぎ出されるということは言っておいてもよいでしょう──逮捕されている身ですけどね。
最後に第12巻に続き、この第13巻にも苦言を。
それは、巻末ちかくのホームズとワトソンのやりとり。
こういうの、似合わないですよ、ホームズにもワトソンにも。
いや、ヴィクトリア朝のロンドンにはまったくそぐわないと思います。
──まあ、これが人気の秘密でもあるとは重々察しておりますが。
どんどん盛り上がってきましたね。
次巻が楽しみです。
<蛇足>
「明時(あかとき)、ハーシェル男爵を殺害したのはこの私、犯罪卿こと ウィリアム・ジェームズ・モリアーティである。」
ウィリアムによる犯行声明です。
明時を知りませんでした。暁の古語なんですね(古文を学んだのは遥か昔なので忘れてしまっているだけという可能性もありますが)。
趣があっていい語だと思いました。
憂国のモリアーティ 12 [コミック 三好輝]
<カバー裏あらすじ>
残酷なる脅迫王は人々の破滅を嘲笑う──
脅迫王・ミルヴァートンこそが、メアリーの ”秘密” を握りジョンとの結婚を破談させようと目論む張本人だった。自らの愉悦のためだけに、罪なき人々を破滅させるその卑劣な手口からジョンたちを救うべく、シャーロックはミルヴァートンとの直接対決を決意する!!
ロンドンを掌握する強大な悪意に、裁きは下るのか…
シリーズ第12巻。憂国のモリアーティ 12 (ジャンプコミックス)。
表紙は......これまた誰だ レストレード警部でしょうか?
#44、45、46、47 犯人は二人 第一幕、第二幕、第三幕、第四幕(Two Criminals Act 1, Act 2, Act 3, Act 4)
を収録。
第11巻の終わりで、メアリーを脅迫しているのはミルヴァートンだとホームズが言い切って、その後の展開です。
想定通り、この第12巻はミルヴァートンとの対決です。
メアリを救うためミルヴァートンの屋敷に侵入しようとするホームズとワトソン、というのも面白いですし、同時にミルヴァートンのことを邪魔だと思っているモリアーティたちも動き出す気配を見せていてワクワク。
ホームズの潜入の手段は、ホームズともあろうものが、と言いたくなるほど凡庸ですが、ワトソンが男としての魅力?を発揮せざるを得なくなるという状況が楽しいので、よしとしましょう。ワトソンって、肉体派だったのですね笑
いよいよ本書のクライマックスは、ミルヴァートンの屋敷での対決シーンなのですが、ここがとても面白い。
こういう展開に持ち込むとはまったく予想していませんでした。
急展開といえば急展開ですが、物語の加速を予感させて楽しいです。
ところで、気になった点をいくつか。
ぼかして書きますが、ネタバレ気味かもしれませんので、気になる方は以下を飛ばしてください。
まずミルヴァートンに引導を渡したのは誰か?
作中ではセリフと硝煙でホームズとしていますが、そうとは限らないのでは?と思っています。
ドンデン返しに使えそう笑
それとホームズがどういう探偵かということはこのシリーズでは詳らかになっていませんが、ここまでのコミックを見る限りにおいては、モリアーティと相通じるところがある、とホームズ自身が感じているように見受けられます。
犯罪(そして犯罪者)を憎むというのは間違いないとしても、この第12巻で示されるように例外もあるわけですし(家宅侵入は置いておくとしても、みずから殺人に手を染めています)、これまでモリアーティのやってきたこととホームズは必ずしも対立するものではない。
優れたもの同士の対抗心というのも、ホームズの性格からしたら似合わない感情のような気がします。
このあたりの整理はしてほしい気がします。
ところで、ここが人気のある由縁なのかもしれませんが、中盤、屋根の上でホームズとワトソンがサンドイッチを食べるシーンは個人的には好きではありません。
ホームズがワトソンに対して「俺はずっとお前の事認めてるつもりだぜ」と口にするとか、友情がどうこうと述べてみるとか、ここまであからさまにいうのはある意味下品だと思うのですが。まあ、賛同者は少ないでしょうね。
物語では、こういうことはセリフとして述べるのではなく、各人の行動をもって示すべきだという古い人間なので。
さておき、とても面白くなってきました。
憂国のモリアーティ 11 [コミック 三好輝]
<カバー裏あらすじ>
婚約者に漂うは奇妙な“事件”の香り──
ジョンの婚約者・メアリーは、不可解な“謎”を抱えていた。幼き日の父の失踪、毎年1粒ずつ届く真珠の贈り物、そして新たに、会談を求める差出人不明の手紙が──。
メアリーに対する違和感を拭い切れぬまま、彼女の“謎”に足を踏み入れるシャーロックだが…!?
血塗られた“四人の署名”が、欲深き人間の業を暴き出す!!
シリーズ第11巻。「憂国のモリアーティ 11」 (ジャンプコミックス)
表紙は......誰(笑)?
巻頭のイラストからすると、ウィリアムでしょうか?
このシリーズも「憂国のモリアーティ 10」 (ジャンプコミックス)の感想からずいぶん間が空いてしまいましたが、続けて読んでいきたいと思っています。
#40、41、42、43 四つの署名 第一幕、第二幕、第三幕、第四幕(The Sign of Mary Act 1, Act 2, Act 3, Act 4)
を収録。
第10巻の終わりで、ワトソンがメアリーと結婚することをハドソン夫人とホームズに告げて、その後の展開です。
正典を、遅々として読み返しているところで、まだ「四つの署名」 (光文社文庫)には到達していないので、このコミックの忠実さ度合がわかりませんが、正典のあらすじを見る限り、メアリの事件として描かれているようですので、ワトソンの恋と事件の順序は、コミックでは意図的に逆にされているようですね。
<2023.10.03追記>
我ながらボケ具合にびっくりですが、「四つの署名」 (光文社文庫)、到達しています。読んでます。感想も書いてます→こちら。
この四つの署名事件そのものはミステリの王道的展開を見せますので、安心して(というのも変ですが)読んでいけます。とても読みやすかったですね。
ポイントは、その事件に一応の決着を見せた後、メアリーが更なる秘密を抱えていて、それがシリーズの敵と位置付けられるであろうミルヴァートンにつながっていく、ということでしょう。
ワトソン君の勘の悪さが際立ってしまった回になったような気もしています。
フィアンセ・メアリの事件なのだから、しっかりしろ(笑)。
続く12巻はミルヴァートンとの対決になりそうで、楽しみです。
憂国のモリアーティ 10 [コミック 三好輝]
<カバー裏あらすじ>
白馬の騎士を待つ残酷な“選択”とは──
命の危険を顧みず、人々の平等のために戦うホワイトリー議員。
ウィリアムは同じ志を持つ者として、その覚悟を確かめるべく、貴族院を窮地に追い込む“証拠”をホワイトリーに託す。
爆破殺人未遂事件以降、その身辺に危機が迫る中、“証拠”という力を得たホワイトリーが選ぶ行動とは…!?
清廉なる志の先に待つのは、天使か悪魔か──
シリーズ第10巻。
表紙は、ハドソン夫人。
巻末のおまけまんがで、コミックの表紙を誰がつとめるかが扱われていて笑ってしまいました。
#36、37、38 ロンドンの騎士 第二幕、第三幕、第四幕(The White Knight of London Act 2, Act 3, Act 4)
#39 闇に閉ざされた街(The Dark Night of London)
を収録。
「ロンドンの騎士」は、「憂国のモリアーティ 9」 (ジャンプコミックス)に続いて、白馬の騎士たる、平等実現を目指すホワイトリー議員をめぐる物語です。
ホワイトリー議員、かなり現代的な人物に描かれていまして、この「憂国のモリアーティ」時代背景であるヴィクトリア時代というよりもむしろ、今現在生きている人物のような考え方をしています。
その意味で、モリアーティたちと同類なわけですね。
そのホワイトリー議員に、ミルヴァートンの魔の手が迫る。
ミルヴァートン、かなり象徴的な人物で、今後も大きくモリアーティの前に立ちはだかることでしょう。
「悪魔は何故人を誘惑し悪に手を染めさせようとするのか
答えは簡単だ
彼らにとっては善き行いをする者に悪事を働かせることこそが最高の娯楽だからだ」
「私は悪そのもの…
人を堕落させ悪事に手を染めさせることが何よりの愉悦…!」
なんという嫌な奴。
追い詰められてしまったホワイトリー議員のとる行動(ネタバレになるので書かずにおきます)は理解できるのですが、ホワイトリー議員なら別の行動をしたんじゃないかな、と思えてなりません。
さておき、それで窮地に陥ったホワイトリー議員に対して、モリアーティたちがとる対策が、これまた苛烈ですけれども、こちらはモリアーティたちがやりそうなことです。
そして「闇に閉ざされた街」に続きます。
モリアーティたちのとった対策に対して、ミルヴァートンの反応、そして、シャーロック・ホームズの反応となります。
ホームズが構図を正確に見抜いていることが判明しますね。
作中で、ホームズの兄マイクロフトが指摘しているように、今後のモリアーティの活動にはかなりの難路が想定されますし、物語の着地をどこに持っていくのか、とても興味深くなってきました。
そして最後に爆弾投下。
ワトソンがメアリーと結婚することが、ハドソン夫人とホームズに告げられます。
こっちの展開も興味深そうですよね。
憂国のモリアーティ 9 [コミック 三好輝]
<カバー裏あらすじ>
犯罪卿の過去それは禁断の果実──
“ジャック・ザ・リッパー事件”を仕組んだ張本人、大英帝国一のメディア王・ミルヴァートン。
事件以来、ウィリアムを警戒しその周辺を探っていた彼は、貧民街の“とある少年”が貴族相手に起こした、“裁判”へとたどり着く…。
ウィリアムとルイスの過去の記録が今、解き明かされる──。
シリーズ第9巻。
表紙は、フレッドですね。このキャラクター好きなので、今回の表紙はうれしいですね。
#32 モリアーティ家の休日 (The Tea Party)
#33、34 ロンドンの証人 第一幕、第二幕(The Merchant of London Act1, Act2)
#35 ロンドンの騎士 第一幕(The White Knight of London Act 1)
を収録。
「モリアーティ家の休日」は、週末屋敷でティーパーティを開かないといけなくなってしまったモリアーティ家を描きます。
見目麗しい男性の揃うモリアーティ家を訪れ、口説く(?)チャンスと張り切るご令嬢たちをどう捌くか、というのがテーマです。
モリアーティ家の打ち合わせで「皆一丸となり力を合わせ…この難局を必ず乗り越えなければならない……」って、そんな大層な話ですか!? まあ、社交界のための会など、大層には違いないけど。
「ロンドンの証人」は、英文タイトルが「The Merchant of London」であることからわかりますとおり、「ヴェニスの商人」の本歌取りですね。
英文タイトルと違って、日本語タイトルが「証人」になっているのもおもしろい。
「肉を1ポンド切り取る際には一滴の血を流す事も認められない」という、あの「ヴェニスの商人」に出てくる、世界で一番有名な裁判をひっくり返そうというのですから、気宇壮大です。おもしろい。
ちゃんとひっくり返しています。
この作品のポイントとなる点については、いままで読んだこと、観たことないのですが、おもしろい着眼点で、立派ですね。
ただ、あえて難点を挙げておくと(ネタバレですので、伏字にします)、舞台はイギリスですから、人体の肉は "flesh" で、たしかに動物の肉も "flesh" と言いますが、レストランで肉を注文する際に "flesh" という単語は使わないと思いますので、英語で論証がきちんと成立するかどうか微妙かもしれません。日本語ならではの論証ということになるでしょうか。
この裁判は、若き頃、というか幼い頃のウィリアムとルイスの起こした裁判で、モリアーティたちに疑いを抱いたメディア王・ミルヴァートンが、その記録に探りを入れます。
切り裂きジャック事件で図らずも対決したミルヴァートンとモリアーティたちですが、いよいよ本格的な対決の幕開きとなるようです。
「ロンドンの騎士」は「憂国のモリアーティ 10」 (ジャンプコミックス)に続きますので、感想はまとめてそちらで、と考えていますが、平等実現を目指す下院議員ホワイトリーが登場します。
手段は違えど、モリアーティたちと志が同じ、というわけで、お手並み拝見。
もちろん、ミルヴァートンも逆の立場で絡んできそうです。
楽しみです。
憂国のモリアーティ 8 [コミック 三好輝]
<カバー裏あらすじ>
腐敗した市警の闇を暴く大胆不敵の美しき刺客──
偽ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)達と対峙したウィリアム。
ついにその裁きの時が──。
一方、シャーロックはこの事件を契機に、犯罪卿に対してとある推理に至る。
その矢先、市警(ヤード)が存在しないはずの“ジャック・ザ・リッパー”の逮捕を発表。
この冤罪を暴くためボンドは市警への潜入工作を開始するが…!?
そして、犯罪相談役と諮問探偵は再び相見える!!
シリーズ第8巻。
表紙は、これ、ホームズ?
#28 ホワイトチャペルの亡霊 第四幕(The phantom of Whitechapel Act 4)
#29、30 スコットランドヤード狂騒曲 第一幕、第二幕(The Riot in New Scotland Yard Act 1, 2)
#31 一人の学生(The adventure of the One Student)
を収録。
「ホワイトチャペルの亡霊」は、敵のアジトに着いたモリアーティたちがいよいよ決着をつける、という段取りですね。
派手にやってくれて満足、なのですが、同時にシャーロック・ホームズも投入して今後のストーリーの大きな転換点になっているように思いました。
「スコットランドヤード狂騒曲」は、解決した切り裂きジャック事件の余波ですね。スコットランドヤード主導の冤罪事件をどうやって防ぐか、というお話になっていきます。
同時に、スコットランドヤードにモリアーティが忍ばせているスパイ(? 作中では"内通者"と呼ばれています) の存在も明らかになりましたので、物語の幅が拡がりますね。
同時にホームズが、モリアーティたちを”義賊”と判定するのが注目ですね。
「一人の学生」は、数学に素晴らしい才能を見せる若者ビルを見出すという話ですが、同時に、ウィリアムとホームズのエピソードでもあります。
「スコットランドヤード狂騒曲」で、”義賊”認定することもあり、今後の展開が注目ですね。原作では、徹底的に対決するのがホームズとモリアーティの関係性ですから......
憂国のモリアーティ 7 [コミック 三好輝]
<裏表紙あらすじ>
闇夜を切り裂く凶刃と、止むことなき女たちの悲鳴──
ロンドン東部貧民街(ホワイトチャペル)に突如現れた猟奇殺人鬼──その名は“ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)”。“古き師”からの依頼を受け、ウィリアムは新たな仲間と共に捜査を開始する。だが、ジャックの恐怖は次第に人々を支配し、いつしか市警(ヤード)とその街の自警団との対立へと発展してゆく。混迷を極める事件の陰で蠢く、真の脅威とは!?
シリーズ第7巻。
表紙は、モラン大佐です。
なかなかカッコいいではありませんか。
#24 モリアーティ家の使用人たち(The Adventure of Four Servants)
#25、26、27 ホワイトチャペルの亡霊 第一幕、第二幕、第三幕(The phantom of Whitechapel Act 1、2、3)
を収録。
「モリアーティ家の使用人たち」は、モリアーティたちに新たに加わったボンドのお披露目も兼ねたプロローグのような位置づけだと思いますので、この第7巻は、切り裂きジャックテーマの幕開け的位置づけですね。(この第7巻では完結していません)
今回新登場するのは、“ボンド”だけではありません。
ウィリアムたちが、モリアーティ邸の火事の後お世話になったロックウェル伯爵家の執事で、第一次アフガン戦争時の白兵戦の達人、ジャック・レンフィールド。当時の通り名が、“ジャック・ザ・リッパー”
ホワイトチャペルで暗躍し、ロンドンを恐怖の底に突き落とし、“ジャック・ザ・リッパー”を騙る殺人鬼を、本物の“ジャック・ザ・リッパー”が始末したい。
うん、わくわくしますねー。この展開。
“ジャック・ザ・リッパー”の正体は未だ不明で、推理作家もちょくちょくこの謎に挑んでいますが、新説を披露していますね。
この新説、憂国のモリアーティの世界にピッタリで素晴らしい。
説得力もそれなりにあるように思います!
“ジャック・ザ・リッパー”対元祖“ジャック・ザ・リッパー”+モリアーティたち、という構図で展開し、
とてもわくわくします。
最後にウィリアムが敵のアジトに到着するところで、第7巻は終わり。
第8巻が楽しみです!
憂国のモリアーティ 6 [コミック 三好輝]
<裏表紙あらすじ>
密会は、絢爛たる仮面舞踏会の陰で──
アルバートがアイリーンとの交渉の舞台として用意したのは、バッキンガム宮殿での仮面舞踏会。そこで明かされる“禁秘”の文書の内容と、アイリーンの真の“望み”とは…!? 犯罪卿と名探偵、美貌の悪女。奇妙な三角関係が、大英帝国の醜聞を終わりへと導く──!!
シリーズ第6巻。
表紙は、アイリーン・アドラーです。
#20、21、22、23 大英帝国の醜聞 第四幕、第五幕、第六幕、第七幕(A Scandal in British Empire Act 4, Act5, Act6, Act7)
を収録。「大英帝国の醜聞」完結です。
第5巻(ブログの感想ページへのリンクはこちら)もほとんどがこの「大英帝国の醜聞」でしたから、ほぼ2巻使っての物語です。
このエピソード、雑なところがありますが、結構いいです。お気に入り。
やはり、アイリーン・アドラーはいいですよねぇ。物語の核として圧倒的な存在感を示したように思います。
大英帝国を揺るがすようなスキャンダルを知ってしまったアイリーン・アドラーの行く末というものがとても気になるわけですが、作者は用意周到ですね。
こういう風に処理しますか。なるほどねー。
政府(ホームズの兄が長官、ですね。陸軍省レベルだと大臣でしょうから、陸軍省情報部の長官でしょうか?)、モリアーティ(モリアーティたちが設立したMI6は政府機関であってもこちらですね)、ホームズたちと、思惑が入り乱れての着地がうまく決まっているように思ったのですが。
またアルバートたちモリアーティ兄弟のミドルネームであるジェームズがこういう形で活用されるとは思っていませんでした。
モリアーティ兄弟の野望も他者に(誰に明かしたかはコミックを読んでお確かめください)明らかにされていますし、こうなると、ますます今後の展開が楽しみになってきますね。
憂国のモリアーティ 5 [コミック 三好輝]
<裏表紙あらすじ>
美貌の“あの女”は国家と探偵とを弄ぶ──
大英帝国王室で極秘裏に受け継がれて来た、重大な“禁秘”が盗み出され、行方不明となる。帝国の未来を左右するその文書の奪還へ向け、MI6が動き出す一方、シャーロックの下にはボヘミア国を巡る醜聞解決の依頼が舞い込む。2つの醜聞の裏で暗躍するのは、一人の美女──。
シリーズ第5巻。
表紙は、アルバート・モリアーティですね。モリアーティ教授の兄、です。
#16 二人の探偵 第二幕 (The Two Detectives Act 2)
#17、18、19 大英帝国の醜聞 第一幕、第二幕、第三幕(A Scandal in British Empire Act 1, Act 2, Act3)
を収録しています。
「二人の探偵」は前巻からの続きで、ホームズとモリアーティ二人が列車内での殺人事件の捜査に乗り出します。
豪華キャストですよね!
推理合戦というよりは、助け合い?
「大英帝国の醜聞」は、いよいよ(?)、アイリーン・アドラー登場となります。
アイリーンにシャーロックが手玉に取られていく様が楽しいですが、この巻の終わりではモリアーティも登場しまして、続きがとても気になります。
ちなみに、細かいですが、英語タイトル、A Scandal in British Empire は気になりますね。
冒頭にヴィクトリア女王が「あの文書は我が英国にとって重大な禁秘」とまで言っている醜聞ですから、The Scandal がふさわしいように思います。また、in British Empire でなく、of British Empire かなぁ、と。
<2019.7.28追記>
感想の最後で英語タイトルについて触れていますが、
the British Empire の方がふさわしいですね。
もっとも、この英語タイトルは正典の「ボヘミアの醜聞」(A SCANDAL IN BOHEMIA)を意識してつけられているので、いずれの指摘も的外れ! と言われそうですが。