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ハイエナの微睡 刑事部特別捜査係 [日本の作家 椙本孝思]


ハイエナの微睡 刑事部特別捜査係 (角川文庫)

ハイエナの微睡 刑事部特別捜査係 (角川文庫)

  • 作者: 椙本 孝思
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/07/24
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
宗教都市・深石市で、奇妙なバラバラ死体と、冷蔵庫に圧し潰された変死体が発見された。被害者はともに警官。捜査一課の佐築勝道は、両現場で見つかった不気味な意匠の社章から、ある地元企業の関与を疑う。しかし理不尽な組織の力学と謎の圧力が捜査を阻み、無邪気な女が勝道を悩ませる――サバンナを彷徨うような果てなき猟奇殺人捜査。刑事がたどり着く驚愕の真相とは? ラスト40ページで世界が一変する衝撃の警察小説。


1月4日から休みをとってブラジル旅行に行っておりましたので、更新、間が空いてしまいました(5日7日9日分の更新は、事前に書いておいたものを自動投稿したものです...)。

「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 (角川文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖」 (角川文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜」 (角川文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「幻双城事件 仮面の王子と移動密室」 (角川文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
と読んできた椙山孝思ですが、今回の作品は趣向を変えて警察小説。
正直、警察小説というのを見て、読む気をなくしていたんですよね。巷に溢れかえっていますから。
でも、ugnolさんのHP「Grand U-gnol」で、2018年国内ミステリBEST10 第10位とされていたので、これは読まなければ、と思い手にしました。(いつもながら勝手リンクです。すみません。ついでに「ハイエナの微睡」の感想ページへのリンクはこちら

しばらく読んでみたところは、普通の警察小説だよなぁ、という感じ。
ちょっとした過去があり(ちょっとした、と言ってしまっては本人に申し訳ないですが)、組織で浮いてしまっている主人公。組織内の勢力争い。ちょっと特徴のある現場鑑識係、警察の観点からは到底お勧めできないながら親しくなっていってしまう女......
どれもこれも、どこかで見たような感じ。
事件の方も、あらすじに書いてあるように、地方都市・深石を支配している企業グループの企業が関与していることを示すような社章を中心に、こちらも既視感あり......

ところが、ところが、です。
198ページに
「積み上げてきた常識という名の塔が、音を立てて崩れてゆく。そして墜落した自分は一人、瓦礫の山に取り残されるだろう。もう取り返しようもなかった。」
と主人公佐築勝道が思うシーンがあるのですが、中身は明かされず、この段階でもまだ読者の「常識」は崩れていません。

崩されるのは、残りわずかとなった241ページです。
ここまでくるとかなりびっくりしますよ~。
34章で、“仕掛け”が説明されるのですが、いやぁ、すごいなぁ。なんてことを考えて実際に小説にするんだろう、と感嘆。
続く247ページにもサプライズが仕掛けてあるのですが、241ページのサプライズのお蔭で破壊力が少し弱められているようです。
247ページのサプライズも相当の威力をもつものなんですが、241ページのサプライズの破壊力がそれほどすごいということですね......

個人的には、この“設定”がきちんとワークするのか気になりますね。この設定で、連作をつくって、ワークすることを実証してほしい気がします。
といいながら、いくつかの軋轢はあるだろうけれど、これはこれでうまくワークするのかも、と思ったりもしています。というのも、現在の日本にはありませんが、この“設定”に類似した仕組み=複数のある種の警察機構が存在する(←ネタバレにつき伏字)は、実在するからです。
それでも現実の仕組みとの違いはあるでしょうから、連作には期待します!

なかなかの癖玉ですが、稚気が感じられていいですね。
読む気にさせてくれた、ugnolさんに感謝!です。




タグ:椙本孝思
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幻双城事件 仮面の王子と移動密室 [日本の作家 椙本孝思]


幻双城事件 仮面の王子と移動密室 (角川文庫)

幻双城事件 仮面の王子と移動密室 (角川文庫)

  • 作者: 椙本 孝思
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/10/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
太平洋に浮かぶ離島で催されるあるパーティに招待された高校生・白鷹黒彦。なんでも招待客はみな、島に佇む城に収蔵された美術品の制作者の子息息女だという……。いるはずのない誰か、刻々と変化する城、「幻双城」という“芸術”に埋め尽くされた奇妙な空間で始まる連続殺人の宴。果たしてその目的と意外に犯人とは?――迷える探偵・黒彦と、自称ロボットの美少女果菜、そして世界最高の知性・犬神清秀が遭遇する新たな事件。


「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 (角川文庫)
「天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖」 (角川文庫)
「露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜」 (角川文庫)
に続くシリーズ第4弾です。今のところ、シリーズはここまで。

今回も、奇天烈な本格ミステリが楽しめます。
楽しめますが、さすがこのトリックはなぁ...
タイトルは孤島ミステリっぽいけど、実態は館ものでして、要するにそういう系統の作品です。
こういうトリックの作品、正直飽きちゃいましたね。このトリックを成立させるために、孤島を舞台にしたんでしょうけれど(島じゃないと、こんな建物建てられない)...
あと、とっても大事なことを登場人物が最後で「錯覚していました」というのはねぇ、あきれるというか...

黒彦と果菜の仲が進展(?) したみたいだから、それでよしとしましょう。







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露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜 [日本の作家 椙本孝思]


露壜村事件    生き神少女とザンサツの夜 (角川文庫)

露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜 (角川文庫)

  • 作者: 椙本 孝思
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
「この地で面白いものを発見した。黒彦君と一緒にすぐ来なさい」――犬神果菜のもとに、兄・清秀から謎の一文が添えられた年賀状が届いた。“高校生探偵”白鷹黒彦は、果菜を連れ、文面に書かれていた奇妙な名前の村に向かうことに。露壜村。現世から隔絶された山村で、ふたりが最初に目にしたのは、異常に長い不気味な葬列と、まとわりつくような老婆の視線。それは、怨念に満ちた惨劇の幕開けだった!? シリーズ最大の事件簿!


「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 (角川文庫)
「天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖」 (角川文庫)
に続くシリーズ第3弾で、この
「露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜」
でシリーズ制覇だ! と意気込んでいたら、昨年10月に
「幻双城事件 仮面の王子と移動密室」 (角川文庫)が出ちゃってますね。あらら。

第1作「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 の感想で、
「よくこんなの作品にしたなぁ。 読後怒り出す人がいてもおかしくないと思いますが、個人的には許せてしまう。」と書きましたが(リンクはこちら)、この「露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜」 もそういう路線です。
いやあ、実に、実に、馬鹿馬鹿しい(半分褒め言葉、半分馬鹿にしている言葉です...)。

因習の山村で繰り広げられる惨劇(連続殺人)といえば、言わずと知れた横溝正史の世界なわけですが、帯に、「“村ミステリ”への挑戦」とあって、ちょっと笑ってしまいました。
そういうジャンル名、あったんだ...初耳かも。

ともあれ、露壜村(ろびんそん)なんていう名前からして、おいおい、と思わせてくれるわけですが、繰り広げられる事件と真相は、とびぬけて間抜けです。
もともと、椙本孝思というのは、ミステリを小馬鹿にしている作家だと理解しているので、まともなミステリを期待することが間違いと読者はわきまえておく必要があるのでしょう。
こんなふざけた仕掛けを、真面目なふりして堂々と書ききっているのは、ある意味立派でして、感心しました。
この仕掛け、書きようによっては名作・傑作にもなり得るかもしれないような気もしないではないですが(たとえば、連城三紀彦とか、あるいは京極夏彦とか、はてまた島田荘司とかが書くとどうなるでしょうね?)、見事なまでに工夫なくストレートに押し出してきているのが惜しい。潔いといえば潔いんですが。
また、横溝正史の世界を意識していると思うのですが、そのことがミスディレクション的な役割をはたしている部分もある(ちょっと褒めすぎ!?)かと思うと、横溝正史そのまんまで投げ出されている部分もあったりして、なんだか楽しく、憎めませんでした。

それにしても注目はやはり果菜の正体がなかなかばれないことでしょうか。絶対に気づかれますよねぇ。
そして、物語のラストで、意外な(?)役割を担う登場人物もあらわれてびっくり。
「幻双城事件 仮面の王子と移動密室」で、黒彦たちのこの先を確かめないといけないかもしれません。



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天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖 [日本の作家 椙本孝思]


天空高事件    放課後探偵とサツジン連鎖 (角川文庫)

天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖 (角川文庫)

  • 作者: 椙本 孝思
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
私立天空高校の校舎屋上から女生徒が飛び降り自殺をした。所持品は数千円と奇妙な鏡。騒然となる中、平凡な生徒・白鷹黒彦は、なぜか探偵部部長・夢野姫子に目を付けられ、事件を調査するはめに。風変わりな少女たちが集う探偵部、執拗に指導を繰り返す生徒会、裏サイトを管理する電子工作部…三つどもえの思惑が交錯する中、黒彦たちは恐ろしい殺人の連鎖にまきこまれてゆく――!? 黒彦と美少女・果菜の推理劇、再び。


「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2作です。
「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 はいかにもな館ものの意匠の中で、無茶苦茶な謎解きを盛り込んで、結構楽しめたのですが、この第2作「天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖」 は、ちょっと空回りした印象。

前作に登場した魔神館は、香具土深良(かぐつちふから)なんていかにも怪しげな建築家が建てたもの、で、今回の舞台、天空高もそうだ、という設定。うーん、そういうシリーズなのかぁ...
なにより、この"館"としての仕掛けがつまらないのが致命的。学校には「七不思議」とかつきものなんで、いろんな秘密が潜んでいてもよいけれど、これはちょっとないなぁ。前作の、あの潔いまでの強引さが懐かしい。
で、香具土深良の建てた(怪しげな)建物、という色をつけてしまったせいで、事件の展開が散漫になった印象。
ミステリとしての出来栄えも、なんだか、凡。わくわくするところ、ありません。
ちょっと、建て付けが悪かったなぁ。

主人公たちの人間関係も進展なく、シリーズとしては中だるみ!?
「非科学的なんて言葉は、科学を知ってから使うべきだ。そして科学を知っている人は、非科学的なんて言葉は決して使わない」
「励ますのは同性、慰めるのは異性がいいんだよ」
とか、ちょっと気を引くフレーズはあったんですが。
次の「露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜」 (角川文庫)に期待することにしましょう。










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魔神館事件 夏と少女とサツリク風景 [日本の作家 椙本孝思]


魔神館事件  夏と少女とサツリク風景 (角川文庫)

魔神館事件 夏と少女とサツリク風景 (角川文庫)

  • 作者: 椙本 孝思
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
覚えのない女性からの電話により、「魔神館」と呼ばれる洋館の落成パーティに参加することになった高校生・白鷹黒彦。果たしてそこは、12星座に見立てた石像と、妙な配置の部屋がひしめく妖しげな洋館だった。そんな館での夜、不可解な殺人事件が発生。嵐で孤立する中、その後もありえない状況で次々と人が殺されていく……犯人は参加者か、それとも館に佇む魔神像の仕業か!? 黒彦と世界最高の知性・犬神清秀の推理が始まる!

椙本孝思を読むのは初めてですが、本屋さんで、
「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 (角川文庫)
「天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖」 (角川文庫)
「露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜」 (角川文庫)
の3冊が、ドーンと平積みになっているので、気になっていたのです。
お屋敷物っぽいし、本格ミステリっぽいし、手に取ってみました。
12星座に見立てた石像があって、連続殺人なので、クリスティの「そして誰もいなくなった」 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)も意識した作品です。
いかにもな道具立てで、いかにもなストーリー展開です。
となると、着地はどうなのか、ということが興味の焦点となるわけですが...

途中、156ページあたりに、ミステリに対して刺激的な内容のせりふがあります。
「著者が頭の良さをひけらかそうとするのが気に入らないんだ。理論だとかメタファーだとかよく分からない言葉を並べて、さも複雑な思考をもって書きました。凄いでしょって言っているみたいで、気持ち悪いんだよ」
「……実際、書いている人は頭良いんじゃないですか?」
「まさかまさか。世間知らずのお坊ちゃんだよ。賢い人はまずあんなものは書かない」
続けて
「特に近年の、トリックや謎解きを、見せているのには、そういう傾向が強いね。お陰でそれを読む人にまで、自分は頭が良くて高尚な趣味を持っているんだと勘違いさせてしまう。そういう閉鎖的な世界観が嫌いなんだよ」
とか
「所詮娯楽なんだから、娯楽らしくするべきなんじゃないかな? 威張れるものじゃないし、威張る必要もない。」
とか。
でも、かくいうこういうせりふを含んだ本書こそが、典型的な(あるいは類型的な)ミステリですし、トリックや謎解きを見せる作品なのだから、なかなか曲者です。

で、着地はどうかというと、いやあ、実にばかばかしくて、良い。
アイデアとしては、前例のあるものなのです。
すぐに思いついたのは、日本推理作家協会賞も受賞している、あれ、です(ネタばれを防ぐため、伏せておきます。確認したい方は、←のあれのリンクをたどってください)。あれ、よりもずっとぎこちなく、あれ、よりもずっと稚拙ですが(なんといっても、あちらは名作ですから)、そこがなんともおかしくて、良い、です。よくこんなの作品にしたなぁ。
読後怒り出す人がいてもおかしくないと思いますが、個人的には許せてしまう。

そして本書は、ラノベっぽいキャラクター設定ですが、世界最高の知性・犬神清秀はともかく(この造型はあまり感心しません)、その妹果菜(はてな)と主人公黒彦をめぐるやりとりが印象的でよかったです。
このやりとりと、上述のアイデアがリンクしてくるあたり、なかなか楽しく読み終わりました。

この後の2作で、主人公たちの関係に進展があるのでしょうか?
ミステリとしての期待値は高くないですが(失礼)、なんとなく楽しみです。

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