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靴に棲む老婆 [海外の作家 エラリー・クイーン]


靴に棲む老婆〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

靴に棲む老婆〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2022/12/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
製靴業で成功したポッツ家の女主人コーネリアには子供が6人いる。先夫の子3人は変人ぞろい、現夫の子3人はまともだがコーネリアによって虐げられていた。ある日、名誉毀損されたと長男が異父弟に決闘を申し込んだ。介添人を頼まれたエラリイは悲劇を回避するため一計を案じる。だがそれは、狂気と正気が交錯する恐るべき連続童謡殺人の端緒に過ぎなかった。本格ミステリの巨匠、中期の代表作が新訳で登場。


2022年12月に読んだ7冊目の本です。
ハヤカワ文庫のエラリー・クイーンの新訳はライツヴィルものが先行していましたが、災厄の町(ハヤカワ・ミステリ文庫)(感想ページはこちら)の後、「フォックス家の殺人」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の前に書かれた本書「靴に棲む老婆」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)が出ました。
記憶力が悪い癖に、できれば刊行順に読みたいと思ってしまうのでとてもありがたいです。

この「靴に棲む老婆」、最初の出会いは児童向けの本でして、どういうタイトルだったかは忘れてしまいましたが、図書館で借りて読みました。
大人向けとしては、タイトルが異なりますが「生者と死者と」 (創元推理文庫)で読んだことがあります。

まあ、例によってほとんど何も覚えておらず、覚えていたことといえば、舞台が靴の形の家(!)だったことと、童謡殺人であったことくらいでしたが、なぜか子供のころからこの作品は好きだった記憶。
今回の新訳で読み返してみて、何が驚いたと言ってエンディングです。
えっ? こういう話だったの?
エラリー・クイーン、色男の本領発揮、ですね。
エラリー・クイーンの登場する作品についてとても重要なエンディングなのに、覚えていなかった(笑)。これを忘れてしまっていたなんて、われながら、いったいどうしちゃったのでしょうか?

さておき事件の方は、富豪一家のなかの連続殺人というかたちで、手堅いです。
拳銃のすり替えのせいで起こる、決闘中の死亡。誰が拳銃をすり替えたのか、という謎の設定が魅力的です。

それほど多くない登場人物の中で連続殺人が起こりますので、犯人の意外性には乏しくなりがちかと思いますが、この作品は流れがよいと思いました。
マザーグースを彷彿とさせる場面が多々ある点も、一種のミスディレクションとして機能しているように思えました。

残りの作品も、ジャンジャン新訳で出してもらいたいですね。

<蛇足1>
「ベッドにもぐりこむ前に、プロクルステスのものじゃないかどうか、細かく調べますから...」
「だれだ、それは」
「ギリシャ神話の強盗で、よくベッドの大きさに合わせて被害者の体のはみ出した部分を切り落としたんですよ」(124ページ)
恐ろしい強盗ですね。しかし、わざわざ殺してから切る理由がわかりませんね。

<蛇足2>
「エラリイは猫のように眠りに落ち、人間のように目を覚ました。」(125ページ)
「猫のように眠りに落ちる」おもしろい言い回しですが、猫が寝入るときってどんな感じなんでしょう?

<蛇足3>
「ヴェリー部長刑事の妻は、夫の大きな足のためにマスタード入りの湯を用意し、アスピリンと愛情をたっぷり与えてベッドに送り込んだ。」(287ページ)
マスタード入りの足湯ですか......足の疲れに効くのでしょうか? いわゆる民間療法なのかな?


原題:There was an old woman
作者:Ellery Queen
刊行:1943年
訳者:越前敏弥




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