鬼畜の家 [日本の作家 ま行]
<カバー裏あらすじ>
我が家の鬼畜は、母でした──保険金目当てで次々と家族に手をかけた母親。巧妙な殺人計画、殺人教唆、資産収奪……唯一生き残った末娘の口から、信じがたい「鬼畜の家」の実態が明らかにされる。人間の恐るべき欲望、驚愕の真相! 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞、衝撃のデビュー作。
読了本落穂ひろい。
深木章子の「鬼畜の家」 (講談社文庫)
第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作です。
この文学賞、島田荘司が選考委員をつとめ、受賞作もかなりおもしろそうなものがあるのですが、あまり文庫化されていないのでほとんど読めていません。
さておき、深木章子の作品では、「衣更月家の一族」 (講談社文庫)(感想ページはこちら)の感想を先に書いていますが、読んだのはこちらの「鬼畜の家」が先です。
「衣更月家の一族」もそうでしたが、非常に精緻に作りこまれており、選考委員を務めた島田荘司の言葉を解説から借りると「稀な完成度を誇る精密機械」「ここまで極限的に先鋭化、巧妙化、人工化したものはなかった」ということになります。
イヤミスというのとは少々味付けが異なるように思いましたが、読みながらイヤになることは間違いないような「鬼畜」である母・郁江の悪業が、私立探偵榊原による関係者宛のインタビューにより読者に明らかになっていきます。
この郁江が車の事故で同乗していた息子と一緒に死んでしまっている、というのがミソですね。
非常に精緻に組み立てられた物語を一転させるための手がかりが、あまりにも古典的なもので却っておもしろく感じましたが、マイナスに感じる人もいるのでは、と少々心配になりました。
この精緻さは珍重すべき特質だと思われ、作品を続けて読んでいきたいと強く感じました。
貴志祐介の『黒い家』に相通じるものがありますね。
by U3 (2023-09-08 10:43)
U3さん、コメントありがとうございます。
確かに! 『黒い家』と通じるものがありますね!
とても素晴らしいご指摘ありがとうございます。
by 31 (2023-09-09 21:55)