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ループ・ループ・ループ [日本の作家 か行]


ループ・ループ・ループ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ループ・ループ・ループ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 桐山 徹也
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2020/04/07
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
昨日と同じ光景が繰り返される学校で、俺は時間がループしていることに気づく。しかし、俺にはループを引き起こすような出来事に心当たりがない。きっと俺は、この “物語" の主人公ではなく、“モブキャラ" として誰かのループに巻き込まれているのだ。そう考えた俺は、このループの原因となっている人物を探しはじめた。すると、他にもこのループに気づいた生徒たち俺の前に現れて──。


2024年2月に読んだ11冊目の本です。


2017「このミス大賞」隠し玉「愚者のスプーンは曲がる」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)でデビューした桐山徹也の第2作「ループ・ループ・ループ」 (宝島社文庫)

引用しておいていうのもなんですが、上のカバー裏のあらすじ、暮妙にネタを割ってしまっている気がしてしまいます。

主人公は俺:橋谷郁郎。高校二年生。
11月24日が繰り返されることに気づく。
大通りで事故に巻き込まれた隣のクラスの玉尾里佳を助けたところ、次の日(といっても改めて繰り返される11月24日ですが)、玉尾もループに気づく。
そして蔵原貴久が階段から転落するのを助けたところ、その次の日、蔵原も異変に気づく。
3人は原因を突き止めようとする。

ここまでで58ページ──日付はいずれも11月24日とはいえ、3日間が経過しています。とてもテンポよく、心地よいリズムで一気に語られます。
勘のいいひとなら、ここまででこの作品の仕掛け(狙い)に気づくと思いますが、あまりにスムーズに、楽しく読んでいたので、しっかりスルー。
作者が堂々と明かす171ページに来るまでまったく思い至らず、ストーリーに没頭していました。

この物語の底流に、1年前に学校の女生徒が二人死んだことが流れています。
一人は飛び降り、もう一人は連続殺人の被害者。町で若い女性が首を絞められて殺されるという事件が三年ほど前から続いているという。

体育館の横に現れる長い黒髪の女生徒、学校で噂される呪いの赤いくまのストラップ、いじめ、周りをうろつく不審者.......
ループに絡んでいろんな要素がちりばめられています。
繰り返されるループとどうつながるのか(つながらないのか)、どうしてループが起ったのか。

ずっと読者の目の前にほうり出してあったことから、鮮やかに紐解かれていく出来事。
そしてなるほどと思わせるエンディング(このクライマックスをなるほどと言ってはいけないのかもしれませんが)。

振り返って落ち着いて見直してみるとプロットもちりばめられた事件もツッコミどころはあるのですが、非常によくたくらまれた作品で、十二分に楽しめました。
「愚者のスプーンは曲がる」に続いて、個人的に大当たりです。

このあと作品は出ていないようですが、ぜひぜひ、新作をお願いします。



タグ:桐山徹也
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