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映画:破墓/パミョ [映画]

破墓/パミョ 1.jpg


映画「破墓/パミョ 」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
ある墓に隠された恐ろしい秘密を描くサスペンススリラー。代々不運に見舞われる家族からの依頼により、彼らの先祖の墓を掘り返した巫堂(ムーダン)と呼ばれるシャーマンと風水師、葬儀師たちが奇怪な出来事に巻き込まれる。『オールド・ボーイ』などのチェ・ミンシク、『コインロッカーの女』などのキム・ゴウン、『マルモイ ことばあつめ』などのユ・ヘジン、ドラマ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」などのイ・ドヒョンらが出演。『プリースト 悪魔を葬る者』などのチャン・ジェヒョンが監督・脚本を務めた。

---- あらすじ ----
巫堂(ムーダン)と呼ばれるシャーマンのファリム(キム・ゴウン)と弟子のボンギル(イ・ドヒョン)は、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという家族から先祖の墓の改葬を頼まれる。破格の報酬に釣られて風水師のサンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師のヨングン(ユ・ヘジン)も加わり、彼らはおはらいと改葬を同時に行なうことにするが、墓を掘り返して儀式を進めるうちに奇怪な出来事に遭遇する。


映画のHPから紹介文を。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『パラサイト 半地下の家族』を超えて韓国で約1,200万人を動員、『犯罪都市 PUNISHMENT』『インサイド・ヘッド2』を抑えて7週連続で第1位を記録し、2024年No.1大ヒット! 第74回ベルリン国際映画祭でワールドプレミアとして上映、世界133か国で公開が決定し、第60回百想芸術大賞で監督賞/主演女優賞/新人男優賞/芸術賞を受賞するなど、海外で熱狂と快挙が報じられた超話題作!
風水師サンドク役に、『オールド・ボーイ』で映画賞を総なめにした演技派俳優 チェ・ミンシク。巫堂ファリム役に、「トッケビ ~君がくれた愛しい日々~」で社会現象を巻き起こした人気女優 キム・ゴウン。葬儀師ヨングン役に、『コンフィデンシャル/共助』で存在感を見せつけた個性派俳優 ユ・ヘジン。巫堂ボンギル役に、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」で一躍注目を集めた若手俳優 イ・ドヒョン。監督・脚本は、『プリースト 悪魔を葬る者』『サバハ』で観客を魅了してきた鬼才 チャン・ジェヒョン。超豪華キャストとジャンル映画監督がタッグを組み、世界中を震撼させたサスペンス・スリラーが遂に日本上陸!


韓国の映画はあまり見ないのですが、ネットで、ホラー・ミステリという評を見かけたので、それなら、と。
結論から申し上げますと、ミステリとして評価することはできないと思いました。

以下、展開を割ってしまいますし、ネタばらしにもなってしまいますが、感じたことを書いておきます。

なにより困るのが作品世界の中の論理につじつまがあっていないこと。
ホラーという位置づけですし、ミステリではないのでしょうから、論理など不要といわれるかもしれませんが、いわばなんでもありの作品世界となっているならともかく、この作品の場合、現実世界ではありえないような異常なものごとを扱っていても、怪異には怪異なりのロジック、道理があるという設定になっているので、その枠内でつじつまが合っていないのはダメだと思います。

変なお墓を改葬して、異常事態を鎮めようとする。これはいいです。
不用意に棺を開けてしまって、魔物を開放してしまう。これもいいです。
鎮めようと巫堂(ムーダン)と呼ばれるシャーマンを中心に、(韓国式の)儀式をする(この儀式迫力あります!)。これもいい。むしろすごくいい。

このあと話が捩れていくのがポイントの映画なのですが、ここからが......

収まったはずの怪異が続くので、再び墓地へいくと、さらに下に縦に置かれた大きな棺を見つける(重葬というそうです)。
死に際取り憑かれたものが「キツネが虎の腰を切った」と言ったことから、日本が朝鮮半島の地脈や民族の精気を絶つために風水上の要所に打ち込んだと言われている鉄杭がその墓に埋まっているのだ、と推測する。
鉄杭を抜かねば!
おいおい、反日映画かよ、と一瞬思い、だから「7週連続で第1位を記録し、2024年No.1大ヒット」なのかと白けた気分にならないでもないですが、日本を悪者にするのは定番中の定番でしょうし、迫力あるから、これはこれで楽しむのが正解なのでしょう(それに、国外からそういう眼で見られている、あるいは、見られてもおかしくない、ということを日本人は認識しておかないといけないとは思いますしね)。

縦に置かれた棺の中には、武将(将軍?)がいて、大暴れ。手下(?) によると、将軍は、鉄杭を護ってくださっている、と。
また、日本の精霊は、韓国の除霊(?) では太刀打ちできない、と言われる。また、鉄杭は見つからない
最終的には、陰陽五行に基づき、鉄(将軍)に対抗するため、相克する水にぬれた木で仕留める。

さて、鉄杭とは何だったのでしょう?
おそらく、ですが、映画の中の正解は、(棺が鉄杭というのではなく)この武将そのものが鉄杭、という解釈になっています。
だとすると「護ってくださっている」って、どういうこと? 護るもなにも、自分でしょ?
また、将軍が鉄杭そのものというのであれば、そこから動いてはいけなくて、暴れている場合ではないでしょう。暴れたあと墓地に戻っては来ていますが。
また、日本の精霊は、韓国式では太刀打ちできないと言いながら、普通の陰陽五行で勝ちを収めるって、どう?──どうやら、日本の陰陽師が武将を封じ込めたみたいなので、風水対風水、という整理かもしれませんが。
くだくだと一々説明していれば興ざめ、というのもあるのでしょうが、それなりの説明をつけてくれないと、モヤモヤが残ってしまいます。

と難癖をあれこれつけましたが、面白かったかどうか、というと、面白くは観ました。
除霊の迫力とか、ストーリーのうねりとか、細部に疑問は数々あれど、大枠の流れはとてもよくできた映画だと思いました。
まあ、ごちゃごちゃ理屈っぽいことを言ったりせずに、素直に楽しめばよい映画だということかと。



製作年:2024年
製作国:韓国
英 題:EXHUMA
監 督:チャン・ジェヒョン
時 間:134分



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映画:ジョーカー フォリ・ア・ドゥ [映画]

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映画「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
孤独な大道芸人の男が、絶対的な悪へと変貌するさまを描いた『ジョーカー』の続編。前作から2年後を舞台に、悪のカリスマとして祭り上げられたジョーカーが謎めいた女性と出会う。トッド・フィリップス監督とホアキン・フェニックスが再び手を組む。『ハウス・オブ・グッチ』などのレディー・ガガのほか、ブレンダン・グリーソン、キャサリン・キーナーらがキャストに名を連ねる。

---- あらすじ ----
ピエロのメイクで大道芸を披露していたジョーカー(ホアキン・フェニックス)。彼の前に謎の女性リー(レディー・ガガ)が現れたことをきっかけに、彼は理不尽な世の中の代弁者となり、狂乱は世界中へ拡散する。孤独で心の優しかった男性は変貌し、次第に暴走を始める。


映画「ジョーカー」の続編です。
タイトルの「フォリ・ア・ドゥ」について、映画のHPから。
「フォリ・ア・ドゥ」とは、フランス語で「二人狂い」を意味する。
妄想を持った人物Aと、親密な結びつきのある人物Bが、あまり外界から影響を受けずに共に過ごすことで、AからBへ、もしくはそれ以上の複数の人々へと妄想が感染、その妄想が共有されること。

ホアキン・フェニックス演じるジョーカーと、レディ・ガガが演じるリーの二人です。
二人が共鳴しあって物語を牽引していきます。フォリ・ア・ドゥ、ですね。
この二人、突然歌を歌いだしたりしてびっくりするのですが、ミュージカルではないにせよ、あちらこちらで歌のシーンが出てきます。
もともとジョーカーが収容されている刑務所(刑務所内の病院?)のプログラムの一つとして行われている歌によるセラピー(?) が出会うきっかけなので、二人が歌うことは不自然ではないのかもしれませんね。もっとも周りに人がいてもお構いなしというのは周りにとっては困りものですが。

孤独な男アーサー・フレックが心中にジョーカーを宿し爆発させた前作「ジョーカー」のあと、収監されおとなしくしていたところに、フォリ・ア・ドゥ関係になるリーと出会い、ふたたびジョーカーを育てていく──と思いきや、なかなかジョーカーが出番を迎えないのがポイントなのでしょう。
前作でジョーカーが飛び出すきっかけとして暴力がキーとなっており、「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」でも同様だろう、と思って観るわけで、いざそれらしいシーンが来ると、思わずああと声が漏れそうになりました。

おもしろいなと思ったのは、アーサー・フレックの裁判を描いていること。
種々の事実を振り返るという点に加え、それによってアーサー=ジョーカーに影響を与えるので、有効な枠組みですね。
日本の裁判と違い(というほど日本の裁判を知らないですが)、アメリカの裁判はショー的要素もありますしね。

裁判の行方は、映画をご覧になってお確かめください、というところですが、アーサーの吐露シーンは観ていて複雑な気分。
そしてそれを受けての(途中いろいろあるのですが)、アーサーとリーの再会シーンもそうですね。

それにしても、もともと悪のヒーロー(アンチヒーローというのでしょうか?)であったジョーカーを、解体してしまった「ジョーカー」と「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」、大胆ですね。



<蛇足1>
本筋と関係のない疑問ですが、ストーリーを割ってしまうので、以下、色を変えておきます。
このアーサー・フレックの裁判、どういう扱いになるのでしょう? 陪審の評決が出て、それが発表されている途中で、あの騒ぎ。 発表されてはいないとはいえ、評決は終わっているので裁判は完結したという扱いになるのでしょうか?──ただ、評決を受けて裁判長が量刑を言い渡すのではと思うのですが、それはこの映画の場合無理ですよね......審理無効になるのでしょうか?

<蛇足2>
ラストシーンに出てくる青年は、アーサーと親しくしていた青年でしょうか?
あの青年は「死んだ」というようなシーンがあったはずですが......
この青年があの青年だ、というほうがタイトな物語になるように思う一方で、別の青年だとして、ジョーカーに感化される人は次から次へ出てくるのだ、という解釈も成り立つなぁ、と思ったりしています。




製作年:2024年
製作国:アメリカ
原 題:JOKER: FOLIE A DEUX
監 督:トッド・フィリップス
時 間:138分



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映画:トラップ [映画]

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映画「トラップ」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
『シックス・センス』『ヴィジット』などのM・ナイト・シャマランが監督などを務めたサスペンス。有名なアーティストのライブ会場を舞台に、指名手配中の切り裂き魔を巡るストーリーが展開する。『デンジャラス・ガイズ』などのジョシュ・ハートネット、ドラマシリーズ「ウルフ・ライク・ミー」などのアリエル・ドノヒューのほか、サレカ・ナイト・シャマラン、ヘイリー・ミルズ、アリソン・ピルらがキャストに名を連ねる。

---- あらすじ ----
クーパー(ジョシュ・ハートネット)は娘のライリーのために、アーティストのレディ・レイヴンが出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れる。ライブ当日、3万人の観客を収容する会場には無数の監視カメラが設置され、300人の警察官たちが動員される。それは切り裂き魔というもう一つの別の顔を持つクーパーを捕まえるために仕掛けられたわなだった。


M・ナイト・シャマランの作品にしては、きわめて普通のサスペンス・スリラー。

子煩悩なよきパパっぽい、ジョシュ・ハートネットが演じるクーパーが、実は連続猟奇殺人犯。
警察(FBI)は、クーパーが犯人であることは突き止めてはいないものの、犯人がレディ・レイヴンのコンサートにやってくる(かも)という情報をつかんで、会場に厳重な包囲網を敷く。
クーパーは、無事(?)脱出できるか......

視点人物がクーパーというのが面白かったですね。
どうやって警察の目をかいくぐるのか。
犯人サイドの視点なので、FBIなど正義の味方サイドが邪魔に見えてしまう。
FBIのプロファイラーであるおばさんが、逆にとても不気味に見えました。

会場で、ちょっとクーパーに都合よく物語が進んでいく感はあるのですが、それでも多勢に無勢の状況下、これくらいはハンデがあっていいな、という感じもしました。
(大々的な配備をするほどには、犯人がコンサートにやってくるという情報の確度は高くないように思われたのは気になりました。まあ、藁をもつかむということでしょうか。また、プロファイリングはたしかに有効なのかもしれませんが、会場での探索でターゲットを絞り込みすぎているようにも感じました)

視点が犯人サイドながら、小説ではないので内面には踏み込めないため、犯人ならば当然考えるであろう疑問点がずっと置き去りのまま進んでいく点は、どうやってFBI包囲網を脱出するか、というサスペンスでうまくごまかされています。
置き去りにしていた点をしっかり終盤で回収してくれるところはポイントが高いですね。

若干ネタ晴らし気味になってしまいますが、コンサートも終盤を迎え、いよいよ、となってからの展開が要注目です。
殺人犯対FBI、として進んできた物語の様相が変わってくる、ここからのストーリーのうねりが、実は見どころのように思いました。
──なので、コンサートのシーンはもうちょっと刈り込んでもよかったのに、とすら思います。娘のいじめ問題?なのでしょうか、いじめっ子サイドの母親とのエピソードとか、いりませんよね? ついでに言えば、コンサートでスターが歌っているというのに、売店などに人だかり、というのはないんじゃないかな、と思いました。

M・ナイト・シャマランらしい、こけおどしやあざといアイデアがない分、ストレートなスリラーとして楽しめました。まさか、そういう意外性を狙ったもの?(笑)

ところで1点、後半の展開を明かしてしまうので、字の色を変えておきますが、不思議に思っている点を。
群衆に囲まれた車の中からクーパーが消えるシーンがあるのですが、謎です。 どうやって消えたのでしょう? レディ・レイヴン目当ての群衆なので、車から堂々と出て行っても、レディ・レイヴンではないから興味の対象ではないとしてスルーされちゃったのでしょうか?




製作年:2024年
製作国:アメリカ
原 題:TRAP
監 督:M・ナイト・シャマラン
時 間:105分



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映画:シビル・ウォー アメリカ最後の日 [映画]

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映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日 」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
近未来のアメリカを舞台に、分断された国内で内戦が勃発するさまを描くスリラー。多くの州が連邦政府から離脱し、内戦状態に陥る中、ある戦場カメラマンたちがワシントンD.C.を目指す。監督などを手掛けるのは『MEN 同じ顔の男たち』などのアレックス・ガーランド。『アップサイドダウン 重力の恋人』などのキルステン・ダンスト、『セルジオ:世界を救うために戦った男』などのワグネル・モウラのほか、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニーらがキャストに名を連ねる。

---- あらすじ ----
近未来のアメリカ。19の州が連邦政府から離脱する中、国内では大規模な分断が進み、カリフォルニア州とテキサス州が同盟を結んだ「西部勢力」と「政府軍」による内戦へと突入する。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストチームは、戦場と化した道をニューヨークから1,000キロメートル以上も走り続け、大統領が立てこもるホワイトハウスがある首都・ワシントンD.C.へと向かう。


引用した映画のポスターに「もし今、アメリカが2つに分断され、内戦が起きたら──」と書かれており、タイトルも "シビル・ウォー"。
どうやって分断がおき、どうやって政府軍対反政府軍が形成され、どう戦い、どうなっていくのか。
予告編やポスターといった宣伝材料からすると、当然、こういうことが描かれている映画だと思います。

ところが、映画の冒頭は大統領の演説のシーンなのですが、もう内戦状態になっていて政府軍は追いつめられています。
どうやって分断がおき、どうやって政府軍対反政府軍が形成されたかなど、まったくわかりません。
アメリカで the Civil War といえば、日本で「南北戦争」と呼ばれる内乱を指しますが、この映画の Civil War は東西戦争になっているようですが、そのこともよくわかりません。
そして、戦場カメラマンへと焦点が移っていきます。

そう、これは戦場カメラマンを描いた映画であり、"シビル・ウォー" に焦点が当たっているわけではありません。なんならベトナム戦争でも、第二次世界大戦でもよさそう(まあ、アメリカを舞台にした内戦としたかったのでしょうけれど)。"シビル・ウォー" はあくまで背景なんですね。
わりと早い段階で、予想していた物語と違ってがっかり。

予想と違ってがっかりしたのですが、映画そのものは面白かったです。
なんといっても、キルステン・ダンスト。
ぼくが最後に観たのは、「マリー・アントワネット」でしたでしょうか。「マリー・アントワネット」で酷評され(映画そのものはともかく、キルステン・ダンストは酷評されるような内容ではなかったと思うのですが......)、引退も考えたらしいキルステン・ダンストですが、しっかり女優として活躍されていたのですね。
ぱっと見、歳をとったな、とは思いましたが、いい歳の取り方をされてこられたように思いました。
凄腕のベテラン戦場カメラマンを、さらっと演じていて、すごいな、と思えました。

ホワイトハウス近辺の市街戦は迫力があり、ホワイトハウスに入ってからも激しい戦闘シーンが続きます。
あそこまで戦場カメラマンが最前線にいるとは思えなかったし、主人公たちがあまりにも調子よく劇的な場にいるのもやや興ざめ感ありましたが、それでも、キルステン・ダンストをはじめとする俳優さんたちは見ごたえありました。
よかったです。


製作年:2024年
製作国:アメリカ
原 題:CIVIL WAR
監 督:アレックス・ガーランド
時 間:109分



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映画:フォールガイ [映画]

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映画「フォールガイ 」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』などのデヴィッド・リーチ監督によるアクション。ある映画スターの失踪を機に、その行方を追うスタントマンが思いがけない事態に巻き込まれる。スタントマンを『ブレードランナー 2049』などのライアン・ゴズリング、彼の元恋人である映画監督を『クワイエット・プレイス』シリーズなどのエミリー・ブラントが演じ、リーチ監督作『ブレット・トレイン』などのアーロン・テイラー=ジョンソン、『アス』などのウィンストン・デュークらが共演する。

---- あらすじ ----
大けがで一線を退いていたスタントマンのコルト・シーバース(ライアン・ゴズリング)。思いがけずハリウッドの撮影現場に舞い戻ることになった彼は、そこで監督を務める元恋人ジョディ・モレノ(エミリー・ブラント)と再会し、彼女の気を引こうと命懸けのスタントを披露する。そんなとき、主役俳優トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)が突如姿を消す。ジョディとの復縁とともに自らの銀幕復帰も期待し、コルトはトムを捜し始めるが、次第に危険な状況に追い込まれていく。


観終わった瞬間に、あー、おもしろかった、と言える、痛快アクション・ムービー!です。
楽しい、楽しい。
主人公と一緒に、ハラハラドキドキ連続しているうちに、スカッとするラストへ!
王道の娯楽映画だと思います。いい!

タイトルのフォールガイとは、スタントマンのこと。

映画のHPのあらすじに

大ケガを負い、一線を退いていたスタントマン=コルト。
愛する元カノの初監督作で久々に現場復帰するが、
主演が突如失踪してしまう!
行方不明のスターの謎を追ううちに、
コルトは危険な陰謀に巻き込まれることに…
彼は己のスタントスキルで、この危機を突破できるのか!?

とありまして、ライアン・ゴズリング演じるコルト・シーバースが活躍するのは、スタントマンならではのスキルを活かしてというよりは、単にスタントマンをやれるほど身体能力が優れているから、のように感じられたのですが(その点で、一般的なアクション映画の主人公の身体能力が優れているのと同じ。特にスタントマンであることの意義というのは薄かったように思えました)、むしろ身体能力は当然ながら、危険なことをやってのける度胸こそがスタントマンとしての本領というか特質で、明らかに一般人だとひるんでしまうような状況でも挑んでいける点でスタントスキルが発揮されている、と考えるべきなのかも、と考えました。

登場人物は映画関係者がほとんどになっていて、いろんな映画のセリフやしぐさの引用がちりばめられていて、とても楽しい。

アクションシーン満載で、まさにスタントシーンの連続のような感じになっていまして、1編の映画の中に、いろんな種類のスタントシーンが(格闘、アクションシーン)ふんだんに盛り込まれています。
活劇シーンが登場するたびに、数多の映画の中の似たような活劇シーンを連想してしまいましたが、これ、製作サイドが狙っていると思います。

「見事に落ちた、ヤバい罠に」というポスターの惹句は少々勇み足な気がしますが、主演映画スターの失踪(?) から物語がひろがっていく(ねじれていく?)プロットも好み。
わかりやすい悪役の設定もいいですね。だからこそ、ラストシーンですかっとします。
ラストでライアン・ゴズリングたちが犯人(?) たちを罠にかけようとするのはあまり良い段取りとは思えませんでしたが、映画の撮影を利用したアイデア自体は面白いですし、撮影と現実が交錯していくアクションシーンはワクワクしました。

あと、印象的なのが犬!
途中から出てくるのですが、格闘シーン含め、あちらこちらでいい味。

とても楽しい映画でした!


製作年:2024年
製作国:アメリカ
原 題:THE FALL GUY
監 督:デヴィッド・リーチ
時 間:127分



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映画:ボレロ 永遠の旋律 [映画]

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映画「ボレロ 永遠の旋律 」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
フランスの作曲家モーリス・ラヴェルによって生み出され、時代を超えて愛され続ける名曲「ボレロ」誕生の裏側を描くドラマ。自身の全てを注ぎ込んだ曲によって人生を翻弄(ほんろう)されるラヴェルの苦悩を映し出す。監督は『夜明けの祈り』などのアンヌ・フォンテーヌ。ラヴェルを『黒いスーツを着た男』などのラファエル・ペルソナが演じ、『ベル・エポックでもう一度』などのドリヤ・ティリエ、『バルバラ ~セーヌの黒いバラ~』などのジャンヌ・バリバールのほか、ヴァンサン・ペレーズ、エマニュエル・ドゥヴォスらが共演する。

---- あらすじ ----
1928年フランス・パリ。スランプに陥っていた作曲家モーリス・ラヴェル(ラファエル・ペルソナ)は、ダンサーのイダ・ルビンシュタイン(ジャンヌ・バリバール)からバレエのための音楽を依頼される。ところが作業は全くはかどらず、ひらめきを追い求めるかのように、彼はかなわなかった恋愛や母との別れ、戦争の痛みなど、過去に思いを巡らす。試行錯誤の日々を経てついに新曲「ボレロ」を完成させ、パリ・オペラ座での初演は大成功を収めるが、自身の全てを注ぎ込んだこの曲によって彼の人生は激変する。

「ボレロ」といえば、サラエボ・オリンピック(1984年なのですね。もう40年も前!)のときの、アイスダンス、イギリス代表のジェーン・トービルとクリストファー・ディーンがこの曲で踊ったのが強く強く印象に残っています。審査員全員が芸術点10点満点をつけたとんでもない名演技(当時は採点方法が今と違いますね)。
また、これまたずいぶん前、イギリス滞在中にBBC主催の The Proms というコンサート・シリーズ中、ロイヤル・アルバート・ホールで「ボレロ」の演奏を観ました/聞きました。ドラム(小太鼓?)の小さな、小さな音の独奏から始まって、どんどん楽器が加わっていき、次第次第に大きな曲に育っていくのに感激した記憶が。
あの曲が、この曲が、と言えるほどクラシック曲には親しんでいないので、言ったところでだからどうした、という話なのですが、これらのおかげもあってか、クラシックの中でも「ボレロ」は1,2を争うくらいに好きな曲です。

ということで、その「ボレロ」がタイトルで、その作曲家モーリス・ラヴェルを描いた映画は観に行きたいなと思って観ました。
思い入れのある曲ということで、期待しすぎてしまったようです。

この映画、ボレロの誕生秘話を描くのか、それとも作曲家ラヴェルの人生を描きたかったのか、ちょっと中途半端になってしまったように思います。どちらにしても突っ込み不足というか。

とても苦労して産み出した曲、ということは分かりましたが、バレエ曲として公開された際のバレエがラヴェルとしてはまったく気に入らず、曲想を台無しにされたと思っていたのに、大絶賛され、ラヴェルといえばボレロ一色となっていく。
葛藤が数々生まれているのに、なんだかさらっと流されてしまっています。
キーとなるミシア(友人の姉)との関係性もすっきりしませんでした(ひょっとして、ラヴェルは童貞のまま生涯を終えたのでしょうか?)。
人の人生なんて、そんな簡単に割り切れるものではないでしょうから、こういうのが真の実像に近いのかもしれませんね......

オープニングは、さまざまにアレンジされたボレロが繋げられているのですが(歌もあるのですね!)、やはり、クラシックなアレンジがいちばんしっくりくるな、と思いながら観ていました。
ラストは、正統派の(?) ボレロ + バレエで締めくくられます。





製作年:2023年
製作国:フランス
原 題:BOLERO
監 督:アンヌ・フォンテーヌ
時 間:121分



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映画:エア・ロック 海底緊急避難所 [映画]

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映画「エア・ロック 海底緊急避難所」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
海に墜落した旅客機で、生存者たちが減り続ける酸素やサメの恐怖におびえながらサバイバルを繰り広げるスリラー。メキシコのリゾートへ向かう旅客機が海に墜落し、州知事の娘や少女、キャビンアテンダントなど生き残った7人が、恐怖の中で生き残ろうと奮闘する。出演はソフィ・マッキントッシュ、ウィル・アッテンボロー、ジェレミアス・アムーアなど。監督を『インビジブル2』などのクラウディオ・ファエが務める。

---- あらすじ ----
メキシコのリゾート地サボへ向かっていた旅客機が海に墜落する。恋人や友人と卒業旅行に向かっていた州知事の娘エヴァと、陸軍出身の祖父母との休暇を過ごそうとしていた10歳のローザ、恋人との同性婚を夢見るキャビンアテンダントのダニーロら生き残った7人は、酸素のある場所に避難する。しかし、高い水圧や減少する酸素、機内に忍び込んだサメが彼らを絶望へと陥れる。


9月1日は映画を安く観ることができるので観ました。
「エア・ロック 海底緊急避難所」
海中に墜落した飛行機の中に閉じ込められて......という話で、こういうストーリーは好きでそれなりに楽しんで観ましたが、残念ながら全体的にパッとしない映画でしたね。

基本的に、非常に狭い空間(飛行機の最後部座席のあたりと、その後ろについているギャレー(?)部分)のみを舞台にして、緊迫感を出しています。
墜落した時点で生存者は7名。
主人公で、(カナダの)州知事の娘エヴァとその恋人ジェドと友人カイル。
エヴァのボディ・ガード、ブランドン。
元陸軍のマーディとその孫娘ローザ。(マーディの夫でローザの祖父ハンクは墜落時に死亡)。
そしてキャビン・アテンダントのダニーロ。

彼らの人生(?) 的なことも出てはくるのですが、ほんのちょっとだけで深堀りされることはありません。
彼らの過去の体験が引き金となって、あるいはトラウマとなっていて、行動に大きな影響を与える、というのも、それほど感じられませんでした。
それなら緊迫した状況に集中してもらったほうがありがたかったかな、と。いわゆる人間模様は中途半端でした。

限られた酸素、迫りくるサメ、一層深くへずり落ちようとする機体。
これだけでも十分サスペンスありますから。
こういうの、”詰み系” スリラーと言うのですね。

乗客に知事の娘がいるということで、気合を入れて捜索する状況というのがプラスですが、機体をようやく見つけ、中に人がいることを確認した潜水夫がサメに襲われるシーンの絶望感もすごかったです。
(もっともそのおかげでそのあたりに何かある、と上空のヘリの乗員にもわかるでしょうし、そこに人員が集中投入されるはずなので、救出には長い目で見ればプラスではあるものの、酸素が限られる状況なので油断できません)

いわゆる緊張と緩和で、緊迫した状況にユーモアが持ち込まれることもこの種の映画ではあり、この映画にもそれを狙ったような場面もあるのですが、いま一つ不発だったように思います。
ポスターに「いま、底にある危機」とウケ狙いのフレーズが書かれていますが、かくのごとく不発(苦笑)。

ところで、サメって本当に泡で撃退できるのでしょうか?




製作年:2024年
製作国:イギリス
原 題:NO WAY UP
監 督:クラウディオ・ファエ
時 間:91分



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映画:ウォッチャーズ [映画]

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映画「ウォッチャーズ」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
『シックス・センス』などのM・ナイト・シャマランが製作、彼の娘であるイシャナ・ナイト・シャマランが監督・脚本を務めたホラー。地図にない森に迷い込んだアーティストが、奇妙なルールが存在するガラス張りの部屋の中で正体不明の存在に監視される。『17歳のエンディングノート』などのダコタ・ファニングが主人公を演じ、『バーバリアン』などのジョージナ・キャンベル、『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』などのオルウェン・フエレのほか、アリスター・ブラマー、オリヴァー・フィネガンらが出演する。

---- あらすじ ----
28歳の孤独なアーティスト、ミナ(ダコタ・ファニング)は贈り物を届けるために指定の場所へ向かう途中、地図にない森に迷い込んでしまう。そこで見つけたガラス張りの部屋には3人の男女がおり、彼らによると、その部屋は謎の存在によって毎晩監視されているという。そしてその部屋には、日が暮れたら部屋を出てはいけない、監視者に背を向けてはいけない、決してドアを開けてはいけないという三つのルールがあった。


M・ナイト・シャマランが製作で、監督・脚本は彼の娘であるイシャナ・ナイト・シャマランというので、だいたいの映画の雰囲気はつかめると思います。
謎めいて不穏な感じのストーリーが魅力ですね。

ミナが迷い込んだ森で、前面がガラス張りの要塞のような建物のなかで暮らす3人の男女。
夜になると彼らを ”見に” 、ウォッチャーズがやってくる。うかつに外にでれば襲われてしまう。
ウォッチャーズは昼間は活動せず、森のあちこちにある穴の中に潜んでいるよう。なので昼間は活動可能だが、一定の範囲内に限られそれを越えると襲われるらしい。
ウォッチャーズとは、なにもので、何を目的としているのか?
劇中で流れるサン・サーンス 「白鳥」が不気味な曲に思えてきてしまいます。

なんですが、ウォッチャーズの正体がわかり、彼らの狙いが明かされると、一気に冷めてしまいました。
ウォッチャーズの正体まではいいんです。
ちょっとありきたりな感じはあるけれど、こういう設定は楽しい。

だけど、このウォッチャーズの正体を前提としたとき、森の中で人間を閉じ込めて観察するという行為と、襲って殺してしまうという行為に整合性が取れていない。殺してしまわずに、なんどでも建物に連れ戻して観察を続けたほうがよいのでは? あるいは、ただただ殺すだけ。

ネタばらしにならないよう、ぼかした書き方をしますが、そもそもの観察の目的も、ウォッチャーズ自体が森の外に出られないということになっていたことと照らし合わせて考えると、目的自体が成立していないように思えてきます。ほぼほぼ人間のやってこない森に生息しているわけなので、観察の結果を使えないから。

森から逃げ出す方法をミナが見出すきっかけとなるエピソードもおかしくて(変という意味です)、ミナたちが見つけるまで隠されている理由は語られず──非常に閉ざされた環境の建物なので、もっと早い段階で(それこそミナが来るよりも前に)見つけられていてしかるべきだと思えます──、考えてもすっきりしない。

物語の根本が成立しない残念なつくりになっている、と言わざるを得ないと思いました。


主役のミナを演じるダコタ・ファニング、彼女、映画『アイ・アム・サム』でショーン・ペンの娘役だった女優さんなのですね。大きくなりましたね(笑)。


製作年:2024年
製作国:アメリカ
原 題:THE WATCHERS
監 督:イシャナ・ナイト・シャマラン
時 間:102分


<2024.6.29追記>
ポスターの画像を追加しました。




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映画:関心領域 [映画]

関心領域1.jpg

映画「関心領域」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
第2次世界大戦下のアウシュビッツ強制収容所所長とその家族を描いたマーティン・エイミスの小説を原案にした歴史ドラマ。収容所の隣で穏やかに暮らすルドルフ・ヘス所長一家の姿を通して、それとは正反対の収容所の残酷な一面を浮かび上がらせる。監督は『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』などのジョナサン・グレイザー。出演は『ヒトラー暗殺、13分の誤算』などのクリスティアン・フリーデルや『落下の解剖学』などのザンドラ・ヒュラーなど。

---- あらすじ ----
ナチスドイツ占領下にあった1945年のポーランド。アウシュビッツ強制収容所で所長を務めるルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)と妻のヘドウィグ(ザンドラ・ヒュラー)は、収容所と壁を隔てたすぐ隣の家で暮らしていた。収容所からの音や立ち上る煙などが間近にありながら、一家は満ち足りた日常を送っていた。


映画のHPから紹介文も引用しておきたいと思います。

空は青く、誰もが笑顔で、子どもたちの楽しげな声が聞こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から煙があがっている。時は1945年、アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。第76回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝き、英国アカデミー賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、トロント映画批評家協会賞など世界の映画祭を席巻。そして第96回アカデミー賞で国際長編映画賞・音響賞の2部門を受賞した衝撃作がついに日本で解禁。

マーティン・エイミスの同名小説を、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』で映画ファンを唸らせた英国の鬼才ジョナサン・グレイザー監督が映画化。スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わすなにげない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。その時に観客が感じるのは恐怖か、不安か、それとも無関心か? 壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか?平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのか?そして、あなたと彼らの違いは?



数々の賞を受賞し、米アカデミー賞では国際長編映画賞・音響賞を獲得した作品です。
非常に恐ろしい映画で、観ていてとても怖くなりました。

上で引用したあらすじや、映画の予告編などで明らかですが、第二次世界大戦当時アウシュビッツ収容所の隣で生活していたルドルフ・ヘス所長一家の穏やかな生活を描いています。

塀を隔てた向こうの収容所で何が行われているのかは直接的には描かれていませんが、声、音(特に銃声)や煙突から立ち上る煙から、(すでに歴史的事実を知っている我々からすると)容易に想像がつくようになっています──映画に匂いがなくて本当に良かった。
そして、おそらくこの平和な家族も知っている。なにしろ、収容所長一家なのですから。
冒頭、ユダヤ人から奪い取った衣服が家に届き、家人(召使含め)で分け、嬉々として毛皮のコートを試着するシーンがあり、そのうえ口紅(! 誰が使ったものかもわからないのに、直接口にする感覚がおそろしい) まで試してみるシーンは、とてもおぞましく感じましたが、そういうことが日常に普通に取り入れられていることが分かってしまいます。

「落下の解剖学」(感想ページはこちら)主演のザンドラ・ヒュラー演じる、収容所長ヘスの妻が丹精込めて作った(というか作らせた)庭や家庭菜園、温室やプールが美しければ美しいほど(そしてポーランド内陸部にあるアウシュビッツは冬は極寒の地となることを考えると──作中にも「赴任してきてすぐにセントラルヒーティングを入れさせた、冬はとても寒くなるから」と言うシーンがあります──一層そこに注ぎ込まれた労力までもが恐ろしくなります。

なによりも、この普通の幸せそうな一家(実態はそうでもないことがわかりますが)の平穏な暮らしぶりを見ていると、ひょっとして自分も同じような境遇に置かれたら、同じように美しく暮らしてしまうのでは? と考えてしまうのが一番怖い。

その意味では、製作者の狙い通りで、いろいろと考えさせられたのですが、果たしてこの映画はいい映画か、と言われると、素直にはそうだと言えない気がしています。

まず、ドラマチックな出来事は起こりません。
淡々と、あくまで淡々と、ぱっと見は一般的な家族の一般的な生活のみ、です。
ユダヤ人を効率的に虐殺する方法を考えるシーンも、ユダヤ人のためにりんごを隠す少女(?) のシーンも、そのりんごをめぐって収容所内のユダヤ人間で争いが起き銃殺され(たと思われ)るシーンも、ユダヤ人を忌み嫌うことを象徴するようなシーンの数々も、直接的でなく描かれているように受け取りました。
物々しい重低音の音楽──というよりも効果音というべきでしょうか?──もそうです。
アウシュビッツ収容所を知っている観客が考えること、想像することに委ねられている、というよりも、完全に依存しているように思えます。
はっきり言ってしまえば、この舞台がアウシュビッツ収容所の隣でなければ、退屈至極な物語です。それが製作者の狙いだとしても。

ここで、製作者の狙いというのは、ただアウシュビッツを描くことではなく、そこがアウシュビッツでなくとも、隣にいる人間の ”関心領域” のありようによっては、あたかもそれが存在しないかのようにふるまってしまう人間を描くことを目指していると思われるからで、本来世の中にある問題の数々をこの映画のアウシュビッツに置き換えて考えるべし、ということかと思います。問題は確かにあるのに、知らないふりをして、気づかないふりをして、あるいは本当に無関心で何も気づかずやり過ごし、自分だけ平穏な暮らしをしていないか?

そういう狙いの映画だとしても、コンセプト一発勝負の映画のような気がして、言い換えると、いわゆるお笑いの世界でいうと、出オチに近いのではとも思えて、映画作品とした場合に、これでいいのかな、と思えてしまいました。

ラストシーンも座りが悪いように思いました。
<ある意味ネタばらしになっていますので、気になる方は次の行空きまで飛ばしてください>
突然現代に画面が切り替わります。
主要人物であるヘス所長が幻視したかのような流れになっていて、現代のアウシュビッツ収容所で清掃が行われているシーンとなります。
実はアウシュビッツ収容所は訪れたことがあり、その際、この映画のラストシーンに出てくるガス室[だと思いました]やガラス張りの展示室なども見ました。実際見に行った際は、この展示室で気分が悪くなり、この映画のラストシーンではそのことを思い出し、恐ろしさ、気持ち悪さがぶり返しました。
このシーン、とても解釈が難しいシーンで、ここでも様々な捉え方が可能なシーンではあるのですが、それまでのトーンと一転していますし、ヘスが幻視する理由? 動機づけ? もわかりません......

坐りが悪いと言えば、ヘスの妻の母の扱いもそうです。
ヘスの家に一緒に住むようになるこの母親。最初は自分の娘が作り上げた家、環境の(一見したところの)素晴らしさに感嘆していたのですが、当然、隣の収容所を意識するようになり、逃げ出してしまいます。
この母親は、耐え難いと思って逃げ出すのですから、今の私たちからみて、理解しやすい。
ヘスという実在だった人物の家族を描いているので、事実こうだったのかもしれませんが、劇中にこの母親が登場することで、ヘス一家の”普通の人”感が減じてしまっています。
観客は、気持ち悪くなり逃げ出した母親のような人物こそ、当時だって ”普通” なのだ、と安心できてしまいます。ヘス一家は異常だったのだ、と。収容所の横で、普通の人なら、あんな平穏な生活を送れたりしない。あれはヘス一家が異常だったからだ。私(たち)は違う.....そう考えることができてしまう。これは、おそらく映画の狙いと相反する要素のように思えます。

最後に、冒頭に掲げたポスター、いいですね。
真っ暗で、その下はヘスの家の庭。プールも人々がガーデンパーティをやっているよう。
劇中にはこんなシーンはありません。
ガーデンパーティが開かれるのは、爽やかな青空の下です。そこをあえて闇にしてるわけですね。
黒いので街中で展示するにはどうかな、と思ったりもしますが、映画にふさわしいかも。

うだうだ書き連ねましたが、いろいろと考えるところの多い映画で、衝撃作、問題作、であることは間違いなく、広く話題を呼べばいいとは思いました。


製作年:2023年
製作国:アメリカ/イギリス/ポーランド
原 題:THE ZONE OF INTEREST
監 督:ジョナサン・グレイザー
時 間:105分

<2024.6.17>
画面が変になっていたのを修正しました。
失礼しました。





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映画:タイガー 裏切りのスパイ [映画]

タイガー 裏切りのスパイ 1.jpg


映画「タイガー 裏切りのスパイ」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
『PATHAAN/パターン』などのサルマーン・カーンが主演を務めるアクション。インドの国家諜報(ちょうほう)機関RAWのスパイが、現首相を暗殺して軍の指導者と共にパキスタンを手中に収めようとする敵と戦う。監督を手掛けるのはマニーシュ・シャルマー。『タイガー~伝説のスパイ~』などのカトリーナ・カイフのほか、『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』などのイムラン・ハシュミ、レーヴァティらがキャストに名を連ねる。

---- あらすじ ----
アフガニスタンに潜入中のゴーピー(ランヴィール・ショーリー)は、インドの国家諜報(ちょうほう)機関RAWの女性局長メナン(レーヴァティ)の指揮のもとで危機に陥る。救出を依頼されたタイガー(サルマーン・カーン)が、瀕死のゴーピーをヘリに乗せるが、彼はゾヤという名前の女性が二重スパイだと言い残して死亡。妻であるゾヤ(カトリーナ・カイフ)への疑念を抱きつつ帰宅したタイガーは普段通りの暮らしに戻るが、次の任務でロシアへと赴いた彼を襲ったのは、妻のゾヤだった。


映画のオープニングのところで、タイトルが「TIGER 3」となっていて、まずびっくり。
この作品、シリーズの途中だったのですね。
そんなことも知らずに観にいったのか、と言われそうですが(笑)。
経緯的なもの含め映画のHPから引用しておきたいと思います。
── Introduction ──
サルマーン・カーンが インド全土を沸騰させる!!
2023年に公開された『PATHAAN/パターン』は、約183億円というインド映画で世界興収歴代第6位のヒットを記録したが、そのヒットの原動力となったのは、主役のRAW(インドの国家諜報機関)エージェント「パターン」を演じたシャー・ルク・カーンと、RAWの同僚「タイガー」をカメオ出演で演じたサルマーン・カーンの魅力だった。インドの映画館では、「タイガー」サルマーン・カーンの登場シーンになると、毎回場内が歓声と指笛で沸きたった。そして本作『タイガー 裏切りのスパイ』はいよいよタイガーが主人公!ド派手なアクションだけでなく、本作ではインドとパキスタンが敵対する状況下で、RAWとパキスタン国家諜報機関ISIが協力し、パキスタン首相を窮地から救おうとするエージェントたちの姿は観る者の心を熱くする。

物語が交差する『WAR! ウォー!!』 『PATHAAN/パターン』そして『タイガー』シリーズは、「YRF(ヤシュ・ラージ・フィルムズ)スパイ・ユニバース」としてインドでは熱狂的な人気を誇っている。そのユニバース最新作『タイガー 裏切りのスパイ』がついに日本上陸!

超絶アクションの連続! 世界を股に掛けた大規模ロケーション!!

本作は「YRFスパイ・ユニバース」特有の超絶アクションシーンがてんこ盛り。サルマーン・カーンのバトルシーンはもちろん、タイガーの妻ゾヤに扮するカトリーナ・カイフの本気のアクションが見られるのも『タイガー』シリーズの人気の秘密だが、今回は同性の強敵が登場しトルコのハマーム(浴場)で死闘が繰り広げられる。更には、ユニバースだからこそ描けるお楽しみシーンも満載!ロケはインドのほか、トルコ、ロシア、オーストリアで行われ、オートバイ、車、ヘリ、市電、地下鉄、さらには馬まで登場してのアクションシーンは、観客を一瞬も飽きさせない!!


── STORY ──
インドの国家諜報機関RAWでは、亡くなった最高責任者シェノイに代わり、女性局長のメナン(レーヴァティ)が指揮を執っていた。メナンはアフガニスタン潜入中のエージェント、ゴーピー(ランヴィール・ショーリー)が危機に陥ったため、タイガー(サルマーン・カーン)に救出を依頼する。タイガーは瀕死のゴーピーを助けヘリに乗せたが、ゴーピーは「二重スパイ」がいる。女性―ゾヤだ」という言葉を残し亡くなる。タイガーは妻ゾヤ(カトリーナ・カイフ)への疑念を胸に帰宅し、少年に成長したジュニアとの3人暮らしの日常に戻るが、次の任務でロシアに赴いた時、タイガーを襲ってきたのはゾヤだった! ゾヤは1999年にISIのエージェントだった父をテロで亡くした後、ISIのアーティシュ・ラフマーン(イムラーン・ハーシュミー)をメンターとして組織に加わったのだが、その彼に従わざるを得ない事態が起きたのだった。12年前にある事件でISIを追放されたアーティシュの目的は、現首相イラニ(シムラン)を暗殺し、軍の指導者と共にパキスタンの全権を掌握することで、そのためにゾヤとタイガーが利用されようとしていた…。

シリーズの 3 とはいっても、これだけでも十分楽しめました。
(途中、パターンという名の人物が登場しまして、「友情出演」的な(という割には、見せ処の多い、激しい戦闘シーンでしたが)扱いのようで、「PATHAAN/パターン」という映画を事前に観ておくと、もっと楽しめたにかもしれませんね。)

次から次へとストーリーがうねっていくのが魅力ですね。
スパイという非情な仕事に従事しながらも、幸せな家庭を気づいているように見えたタイガーが、妻ゾヤを疑わねばならない状況に陥るあたりから、物語は加速。
以降、立ち止まることはありません。

インド映画といえば、途中、急に始まる歌とダンスなのですが、この「タイガー 裏切りのスパイ」では控え目。
タイガーがゾヤを疑う部分を歌で消化してしまう演出は、とても気が利いているなと感じました。この部分をお芝居で見せようとすると、長々しくなってダレてしまうかも。歌で処理したのはうまい。
あと歌とダンスは、エンディングのあと、やってきます。

長い対立の歴史のあるインドとパキスタン。
融和の話がパキスタンから持ち掛けられているという状況がうまく物語に使われています。
それにしても、映画とはいえ、パキスタンの独立記念日に、パキスタンの首相官邸でドンパチ繰り広げる、というのはどうなんでしょうね?(笑)。
この映画がパキスタンで上映されたら、どう受け止められるのかな、なんて考えました。

イタリア、ロシア、トルコといった海外ロケのシーンも多く、とても楽しめました。
そんなうまくいかないだろうな、というアクションシーンも含めて、肩の凝らない映画のよさが存分に発揮されていました。




製作年:2023年
製作国:インド
原 題:TIGER 3
監 督:マニーシュ・シャルマー
時 間:156分



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