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映画:Firebird ファイアバード [映画]

ファイアバード.jpg


映画「Firebird ファイアバード」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
俳優のセルゲイ・フェティソフの回想録をモチーフに描く人間ドラマ。ソ連の支配下にあった1970年代のエストニアを舞台に、当時はタブーだった男性同士の恋愛を描く。監督などを務めるのはペーテル・レバネ。トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニーのほか、『ミスティック・フェイス』などのディアーナ・ポジャールスカヤらが出演する。

---- あらすじ ----
1970年代後半、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る二等兵のセルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終えようとしていた。そんな折、彼と同じ基地に将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が配属され、写真という共通の趣味を通して親しくなった二人の友情は、やがて愛へと変わる。しかし当時のソ連では同性愛は固く禁じられており、関係が発覚すれば厳しい処罰が待っていた。


2011年ベルリン国際映画祭で、本作品の主人公であるセルゲイ自身から『ロマンについての物語』と題された本を渡された監督が、主演かつ脚本のトム・プライヤーとともに作り上げた、という本映画成立のエピソード自体が映画みたいです。

上のあらすじは少々短すぎるので、映画のHPからあらすじを引用します。

「ブロークバック・マウンテン」「アナザー・カントリー」に続く名作の誕生 ─
あなたの感情を知ってしまったから...
世界が感動したピュアな愛の物語。
​1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。しかし当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだった。


LGBTをテーマにした映画というと、周りに秘めた恋というのが定番で、さらに時代・場所のせいで違法だった、というのも多いですね。
この「Firebird ファイアバード」もそうで、舞台がソ連でKGBにも狙われている、というのがより大きな障壁として立ちふさがります。
(映画のHPのあらすじ中のクズネツォフ大佐というのは、二人の味方というのは言い過ぎとしても、中立的な立場だったかと思います。ここはKGBのズベレフ少佐ではなかろうかと。位が上の大佐が少佐を抑え込むシーンもありますし)

こういう、画面から伝わってくるわかりやすいストーリー展開を追うだけでも十分楽します。
セルゲイとロマンの二人が結ばれていく様子も、ロマンに導かれて演劇の世界へとセルゲイが身を投じていく流れも、二人きりで楽しむ時間も、複雑な関係となってしまうルイーザとのやりとりも、KGBに追いつめられそうになる緊迫感も。

なんですが、この映画の場合、こういう(明らかに)語られたこと以外の、語られなかった部分がとても気になりました。
たとえば、KGBのズベレフ少佐(上のあらすじではクズネツォフ大佐となっていますが、上述の通りズベレフ少佐かと思います)。ロマンをつけ狙い脅したりする人物なのですが、結婚式のシーンとかもっと複雑なスタンスを取っていたように思わせる一方、エンドロールで思わせぶりに登場して、ひょっとしてアフガンのエピソードはこいつの差し金か? やっぱりピュアな敵役だったのか、と惑わせてくれます。

ズベレフ少佐とは逆の立場で、クズネツォフ大佐の立ち位置もそうですね。
ズベレフ少佐の追及をいさめて見せる早い段階のシーンが特徴的。
結婚式のシーンで、セルゲイに対して、セルゲイ、ロマン、ルイーザの関係性をどう見ていたかを伝えてくるシーンはとても印象的でした。
ロマンをかばいだてしたのは戦績著しいロマンを確保しておきたいということはあったでしょう、でもそれだけではないのでは?と思わせてくれます。

あるいは二人の関係を匿名の手紙で告発した人物。
不安の種を残しつつ、ストーリーからはあっさり退場。
かえってその後が気になります。

また大きなポイントとなるルイーザとの関係性も、(こちらが鈍いだけかもしれませんが)語られていないというべきかもしれません。
象徴的なのはルイーザとセルゲイが話す最後のシーン。
クズネツォフ大佐の指摘ともあいまって、最後にルイーザが言わずに飲み込んだ台詞、とても気になります。

気になるといえば、タイトル「Firebird ファイアバード」も気になります。
映画中、ストラヴィンスキーのバレエ「火の鳥」を見るシーンがあり、これはセルゲイが演劇へ進むきっかけとなるとても重要なシーンです。観ているセルゲイの表情には引き込まれるようでした。
ここから取っていることは明らかなのですが、「火の鳥」の物語とこの「Firebird ファイアバード」の物語の重なり具合がわかりませんでした。
「火の鳥」って雑に言えば、西洋版「鶴の恩返し」ですよね......
火の鳥を救い、火の鳥に救われる。
セルゲイとロマンにとって、火の鳥は何だったのでしょう?
(それにしても、少し使われているだけですが、「火の鳥」っていい曲ですね)

あと個人的には、いわゆる肌色シーンが少なくてよかったです──いや、むしろもうちょっと多くてもよかったかな、と思いました。というのもお二人の体格がとてもいいように思われて、エッチなシーンというよりも、なんだか動く彫刻を見ているような気分になったので。画面が暗いシーンだったので余計そう思ったのかもしれませんが。
肌色シーン違いで、海で泳ぐシーンとかもっとあってもよかったかも、ですね。なにしろここは、二人の幸せを強く伝えてくるシーンですから。

いろいろと(いい意味で)気になる点の多く、見ごたえのある映画でした。


製作年:2021年
製作国:エストニア/イギリス
原 題:FIREBIRD
監 督:ペーテル・レバネ
時 間:107分

ファイアバード.jpg
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