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到達不能極 [日本の作家 さ行]


到達不能極

到達不能極

  • 作者: 斉藤 詠一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: 単行本

<裏側帯あらすじ>
二〇一八年、遊覧飛行中のチャーター機が突如システムダウンを起こし、南極へ不時着してしまう。
ツアーコンダクターの望月拓海と乗客のランディ・ベイカーは物資を求め、今は使用されていない「到達不能極」基地を目指す。
一九四五年、ペナン島の日本海軍基地。訓練生の星野信之は、ドイツから来た博士とその娘・ロッテを、南極にあるナチス・ドイツの秘密基地へと送り届ける任務を言い渡される。
現在と過去、二つの物語が交錯するとき、極寒の地に隠された“災厄”と“秘密”が目を覚ます!


単行本です。
第64回江戸川乱歩賞受賞作。
乱歩賞は、第62回の「QJKJQ」 (講談社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)の次の第63回が受賞作なしでしたので、2年ぶりですね。
帯に「衝撃の“受賞作”なしから1年ーー。」
と書いてあって笑ってしまいました。別に衝撃ってことはないだろうと。
でも、巻末に江戸川乱歩賞の受賞リストがあるのですが、それを見ると、受賞作なしは過去3回あって、第63回が4度目なのですね。確かに、昭和46年の第17回以来、受賞作なしはなく、低調だろうとなんだろうと必ず受賞作は出ていたので、46年ぶりの受賞作なし、ですか......衝撃といってもいいのかもしれませんね。

この「到達不能極」、読むのがどんどん後回しになってしまっているうちに、もう次の第65回の受賞作「ノワールをまとう女」 (講談社)が出版されていますね......

さて、その“衝撃”の受賞作なしという事態を受けての待望の受賞作ですが、ミステリーという語をかなり広義に捉えた上でのミステリー、ですね。
SF風味の冒険小説風、といったところでしょうか。
ミステリーを推理小説だと考えると、謎らしい謎もなく(そう感じました)、伏線もなく(あったとしても、かなり見え見えであってミステリーとしての伏線とは到底いえない)、特段のサプライズもない。失格の烙印を押されても文句は言えないような感じです。
サスペンスも、それほどありませんねぇ。
また、SF風味、と書いたのは、作中に出てくる技術がどう考えても眉唾であるうえ、時代設定からしても無理があるから、SFと言い切るとSFに失礼な気がするからです。
と、こう書くと、SFとしてもミステリとしても不十分な作品でつまらないのかな、と思われるかもしれませんが、個人的にはとても楽しく読み終わりました。
過去と現在を交錯させるプロットも平凡ですが、ワクワクできました。

まず南極を舞台に物語が繰り広げられるのが楽しい。
一度行ってみたいですよね、南極。寒いのは嫌なんですが(笑)。
荒唐無稽な物語が、南極やペナンあたりだとなんとなくおさまりがいいように思えます。
ナチがやはり悪者、というのも抜群の安定感ですし。

荒唐無稽で行くなら、とことん荒唐無稽なほうがよいので、SFに失礼といった技術なんかも、いかにも二流(三流?)な安っぽさが、かえって心地よい。
むしろ、実際の科学的にはおかしなものであっても、そういうことが起こる世界というフィクションをしっかり構築したほうがよかったのかもしれませんね。現実に近いせいで、むしろ粗が目立ってしまっていますので。
(話はそれますが、ちょっと福井晴敏の「終戦のローレライ」を思い出してしまいました。福井晴敏ファンの方からは、一緒にするな、と叱られそうですけれど。)

ということで、楽しく読み終わりましたが、江戸川乱歩賞という観点で見ると、ちょっと感慨深いですね。
今までのところ全作読んでいますが、長い乱歩賞の歴史の中で、この「到達不能極」のように、ここまで意外性を狙っていない作品が受賞したのは初めてだと思うからです。
なので、この「到達不能極」の受賞が、江戸川乱歩賞の今後にどう影響するのかも気になるところですが、規定上の原稿の枚数が限られているので、意外性を放棄してしまうと、読者に印象付ける手段が、それこそプロットだったり、人物だったり、書き方だったり、と熟練の技的なものが中心になることに加え、ある程度の枚数(長さ)がないと実現しにくいものになってしまうので、新人賞という性格の乱歩賞のことですから、あまり影響ないのかもしれませんね。




<蛇足>
この作品に限らないのですが、戦争中を舞台にした小説や映画で、現代的な考え方を持った人物が登場すると違和感を覚えることが多いです。
たとえば、反戦思想を持った人。
確かに、強い反戦思想を持った人は当時にもいたでしょうし、一般的にも戦争反対と言う人が多かったのだろうと思いますが、こと日本が実際にかかわった戦争に関しては、情報操作というのかプロパガンダというのか、その結果支持している国民が圧倒的多数だったのではないかと思うのです。
現代的な視点のため、そういう人物を登場させるのは必須なのかもしれませんが、それを不自然に思われないように、そういう考えに至った経緯を丁寧に物語に組み込む必要があるのではないかと思います。
本書では戦時中の主人公である若い信之が、同盟国であるドイツの反ユダヤ政策(たとえばユダヤ人を劣等人種とすること)に怒りを覚えている設定になっています。
「信之は、基本的に押し付けることも押し付けられることも苦手ではあるのだが、本人にはどうしようもない生まれや人種に関して、偏った思想を押しつけられることに耐えられなかった。そうした考え方
を持ち合わせてはいないのだった。」(81ページ)
と説明されていますが、当時の教育環境でこのような考えを持つことが自然でしょうか? 日本自体が貴族制度のある差別・区別前提の社会だったというのに。
両親が進歩的な教師だったから、と簡単に説明されていますが、納得感は少ないですね。
むしろ思いを寄せている少女ロッテがユダヤ人であることをきっかけに、そういう思いを強めていく過程をしっかり書き込んでもらったほうが納得感もあり、自然なのではないかと思うのです。
(と言いながら、乱歩賞の規定の枚数では書ききれないのかも、とも思ったりしますが)
このような思想的な面だけではなく、戦況を見通しているという設定にも違和感を覚えます。
信之は二等飛行兵曹で、学生に毛の生えたようなものなのですが、それでも一九四五年一月の段階で
「最終的な勝者となるのが自らの祖国とは、信之にはどうしても思えなかった」(162ページ)というほどの戦況把握をしているのです。
軍上層部などはともかくとして、一般には、連戦連勝という嘘を徹底していたのでは? と。





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九つの解決 [海外の作家 か行]


九つの解決 (論創海外ミステリ)

九つの解決 (論創海外ミステリ)

  • 作者: J.J. コニントン
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2016/07
  • メディア: 単行本

単行本です。
論創海外ミステリ176。
「2017本格ミステリ・ベスト10」 第8位。

先日感想を書いた「オシリスの眼」 (ちくま文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)で、渕上痩平による訳者あとがきから、
「犯人が誰かという答えを単に当てることではなく、なぜその人物が犯人なのかをプロセスとしてきちんと論証してみせることを重視した作家だった。」
というくだりを引用しましたが、この「九つの解決」 (論創海外ミステリ)の作家J・J・コニントンも同様のようですね。

タイトルの「九つの解決」。
てっきり多重解決ものなのかな、ととても期待していたんですよね。
でも、違いました。
物語のキーとなる二つの死について、それぞれ自殺、事故、他殺の3通りが考えられるので、組み合わせとして3×3の 9通りが考えられる、ということで、探偵役であるクリントン卿とフランボロー警部がすべての可能性について検討し、一つずつ潰していくことから来ています。(94ページにリストが9通りを表にしたものが出て来ます。また、カバーにもこの9通りのリストが描かれています)
ここを読んだときには、正直、がっかりしましたし、馬鹿馬鹿しいな、と思いました。
いくらそのあとのフランボロー警部たちの検討が示唆に富むものであってもね...
土台、これでは、solution (解決) とは呼べないじゃん......

ということで、タイトルだけで変な期待をした分がっかりしたのですが、作品そのものはとてもしっかりした、おもしろいものでした。
(解説によると、ダシール・ハメットが「きわめて慣習的で、エキサイティングな要素は皆無だが、しかし、まことに面白く読める探偵小説」で、解決は「完全に満足のいくものである」と賞賛していたそうです。ハメットの作風からすると意外感があるので、この点もおもしろいですね)

本書の一番のポイントは、最終章である「第一九章 クリントン卿のノートからの抜粋」ですね。
ここでは、折々にクリントン卿が事件をどう考えていたのか、どのような証拠をどう解釈していたのか、がクリントン卿自身のメモという形で提示されます。
メモなので、そっけない感じになってしまっていますが、本格ミステリ好きにはたまらないプレゼントなのではないでしょうか。
一番おもろいな、と思った点は、折々の名探偵の推理過程が明らかになること、です。
詳細な解決編が用意されているミステリであっても、最後に一気呵成に推理が披露されることがほとんどで、本書のように節目節目の名探偵(クリントン卿)の考えがトレースできることは滅多にないですから。これはものすごく優れた点として注目だと思います。

ということでお分かりいただけるかと思うのですが、節目の名探偵の推理を披露できる、ということは、すなわちそれだけ複雑な分岐をもつプロットを事件に仕込んである、ということでもあります。
化学研究所の若い職員ハッセンディーンが自宅で殺されているのが発見される。
科学研究所の研究者シルヴァーデイルが住んでいる隣家では女中が殺されていた。
さらに、少し離れたバンガローでシルヴァーデイル夫人が殺されているのが発見される。シルヴァーデイル夫人はハッセンディーンと非常に懇意であった。バンガローは密会場所だったと思われる。
更には事件の鍵を握っていると思われるホエイリーという前科者も殺されてしまう。
と合計4つも殺人が起こるわけですが、非常によく練られていると思いました。


<蛇足1>
「だから、いくら君に土地勘があっても、さして役に立つとは思えない。」(9ページ)
昔、佐野洋の「推理日記」推理日記(巻数がわからないので、第1作目にリンクを貼っています)だったかと思うのですが、土地勘ではなく土地鑑と書くのが正しいと書いてあったのを思い出しました。

<蛇足2>
「クリントン卿は、再び四冊の浩瀚な冊子をあからさまに嫌そうな目で見つめた」(129ページ)
浩瀚、意味が分からず調べました。
「書物の分量が多いこと。書物が大部であること。」

<蛇足3>
「義弟は債権や株式で持っていた財産の一部を妹に名義替えしたんです。」(183ページ)
原文は確認しておりませんが、ここは債権ではなく、債券ではないでしょうか? よくある話ではありますが。

<蛇足4>
カバー裏にある作者紹介のところで、
「<読者への挑戦状>が作中に挿入される趣向を、エラリー・クイーンに先駆けて自作に取り入れた。」
と書かれているのですが、本書には読者への挑戦はありません......


原題:The Case with Nine Solutions
作者:J. J. Connington
刊行:1928年
訳者:渕上痩平




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新車のなかの女 [海外の作家 さ行]


新車のなかの女【新訳版】 (創元推理文庫)

新車のなかの女【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: セバスチアン・ジャプリゾ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
金髪のダニーは、社長の新車を空港から社長宅まで回送するよう頼まれた。しかし彼女は南仏への旅を思いつく。真新しいサンダーバードを走らせるダニーの姿は、束の間、女王のようだった。しかし思いも寄らぬ事件が彼女を待ち受けていた。なぜ彼女は襲われたのか? 初めての地で皆が彼女を知っているのはなぜか? 気まぐれの旅にしかけられた恐るべき罠。鬼才ジャプリゾの真骨頂。


「シンデレラの罠」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)のセバスチャン・ジャプリゾの作品です。
こちらも、平岡敦さんによる新訳です。
旧訳は「新車の中の女」 (創元推理文庫)、新訳は漢字を開いて「新車のなかの女」と表記が変わっています。
この作品「シンデレラの罠」 同様に再読になります。
きれいに忘れてしまっていて、初読のようにまっさらな気持ちで楽しめました(苦笑)。

「シンデレラの罠」 と趣は違うのですが、何か独特な手触りの作品ですね。セバスチャン・ジャプリゾの術中にしっかり嵌まっているいるということでしょう。

原題は「La Dame dans L'auto avec des Lunettes et un Fusil」
英語では、The Lady in the Car with Glasses and a Gun。
直訳すると「眼鏡と銃を持った、車の中の女」となりますね。
目次の章立てを見ると


眼鏡

となっています。ちょっと洒落ていますね。

冒頭、いきなりサービスステーションの洗面所で襲われているシーンからスタートします。
おお、怖い。
それからここにに至るまでの経緯を振り返るわけです。
社長の車を勝手に拝借して、海が見たいと小旅行としゃれこんだ女性が、行く先々で不思議な体験+怖い体験をする。
初めて行った場所ばかりなのに、出会う人々が、昨日会ったと言う。

これ、怖いですよねぇ。
洗面所で襲われるというのも怖いですが、知らないはずの場所で、みんなから知っている人だと言われる、というのは。
主人公がもともと自分に自信がなく、ひょっとして私...と惑い始めるところは、おいおい、と思いましたが、次第に精神状態がグラグラしていくのがサスペンスを高めていますね。

ときおり、主人公の視点ではなくて、主人公が出会う人たちの方に視点が移りますので、その人たちが偽証しているわけではないことがわかりますし、同時に、主人公が自分を見失っているだけなのかも、という不安も芽生えてきます。

ミステリとして、冷静に見てみると、ちょっとこれは無理だなぁ、と思えるのですが、登場人物の性格や小道具によって、(主人公にとって)悪夢のような状況が立ち上がってくるのが素敵ですね。

平岡敦による訳者あとがき、連城三紀彦による解説がどちらも素晴らしいので、ぜひ。


原題:La Dame dans L'auto avec des Lunettes et un Fusil
作者:Sebastien Japrisot
刊行:1966年
訳者:平岡敦

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パラダイス・ロスト [日本の作家 柳広司]


パラダイス・ロスト (角川文庫)

パラダイス・ロスト (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/06/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
大日本帝国陸軍内にスパイ養成組織“D機関”を作り上げ、異能の精鋭たちを統べる元締め(スパイ・マスター)、結城中佐。その正体を暴こうとする男が現れた。英国タイムズ紙極東特派員アーロン・プライス。結城の隠された生い立ちに迫るが……(「追跡」)。ハワイ沖の豪華客船を舞台にした初の中篇「暗号名ケルベロス」を含む全5篇。世界各国、シリーズ最大のスケールで展開する、究極の頭脳戦! 「ジョーカー・ゲーム」シリーズ、待望の第3弾。


「ジョーカー・ゲーム」 (角川文庫)(ブログの感想へのリンクはこちら
「ダブル・ジョーカー」 (角川文庫)(ブログの感想へのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾です。

このシリーズの大ファンなので、読めただけでも大満足なのですが、作品も快調なので言うことなし、です。
そういえば先日読んだ岡田秀文「海妖丸事件」 (光文社文庫)の解説で宇田川拓也が、この「パラダイス・ロスト」 (角川文庫)収録の「暗号名ケルベロス」を、船上の事件を扱ったミステリとして紹介していましたね(ブログの感想ページへのリンクはこちら)。

4話収録なのですが、いずれもスパイの騙し合いが知的ゲームとして展開されています。

「誤算」は、パリを舞台にレジスタンスを背景に(前面に?)した作品です。
最後のD機関員のセリフ
「但し、次はもう少し骨のある任務をお願いします。」
というところでニヤリとはしますが、「誤算」で描かれている今回の任務、想定に反して(D機関員としてはこれすら想定の範囲内と言わねばならないのでしょうが)難度が非常に高い物だったように思います。

「失楽園」はシンガポールのラッフルズ・ホテルが舞台ですね。
恋人が殺人容疑で逮捕されてしまった米海軍士官の視点で描かれますので、さて、誰がD機関員なのか、を探す楽しみがあるのかな、と思いつつ読んだのですが、そういう狙いの作品ではありませんでした。
殺人事件の真犯人を突き止める、というストーリーの裏に、D機関員の活躍が忍ばせてあるのが、最後に浮かび上がってくる、という流れを堪能しました。

「追跡」は、日本が舞台です。
英国タイムズ紙極東特派員プライスの視点で描かれます。
プライスが取材しようとしている対象がD機関、しかも結城大佐というのですから、豪儀ですね。
相手が結城大佐というだけあって、周到な仕掛けがあるのですが、しかしなぁ、結城大佐って、そんな前からこういう事態を想定していたのでしょうか? 驚くばかりです。

最後の「暗号名ケロべロス」は前篇、後篇に分かれていますが、分ける必要がよくわかりませんでした。
サンフランシスコから横浜へ向かう《朱鷺丸》という豪華客船が舞台です。
一九四〇年六月という時期で、ドイツがポーランドに侵攻し世界大戦がはじまったのが、前年九月で、日本が未だアメリカと開戦していないタイミングです。
“中立国”であるアメリカから、“中立国”である日本籍の船に、ドイツ人が乗っていて、危険な大西洋航路を避け、太平洋をぐるっとまわって母国に帰ろうとしている。
そこへイギリスの軍艦が近づいてきて威嚇。そのさなか、船上で殺人事件が発生。(この段階で被害者の正体は明かされているのですが、エチケットとして伏せておきます)
ここまでが前篇です。
後篇に入って、イギリスの士官が乗り込んでくると同時に、殺人事件の真相究明が行われます。
ここでもD機関員のすごさが発揮されます。
前篇のオープニングで描かれる船の襲撃シーンが、頭を離れないので、非常にスリリングな物語になっていました。

シリーズ第4作「ラスト・ワルツ」 (角川文庫)もすでに文庫化されています。
ラスト、とつくくらいなのでシリーズ最終作なのでしょう......そのあとは出ていませんので。


<蛇足>
「極めつけは二本の釣り竿だ。」(59ページ)
これ、正しくは「極め付き」で「極めつけ」は間違いだと聞いたことがあります。柳広司にしては手抜かりですね。
なお、この文章、作中ではおもしろい意味が込められていまして、ニヤリとしました。



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オシリスの眼 [海外の作家 は行]


オシリスの眼 (ちくま文庫)

オシリスの眼 (ちくま文庫)

  • 作者: R.オースティン フリーマン
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/11/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
エジプト学者ベリンガムが不可解な状況で忽然と姿を消してから二年が経った。生死不明の失踪者をめぐって相続問題が持ち上がった折も折、各地でバラバラになった人間の骨が発見される。はたして殺害されたベリンガムの死体なのか? 複雑怪奇なミステリに、法医学者探偵ジョン・ソーンダイク博士は証拠を集め、緻密な論証を積み重ねて事件の真相に迫っていく。英国探偵小説の古典名作、初の完訳。


このところクラシック・ミステリを続けて読み、そしてそれらをおもしろく感じたので、勢いに乗って、「オシリスの眼」 (ちくま文庫)を読みました。
「勢いに乗って」と言ったのは、フリーマンの作品といえば退屈という印象があり、勢いを借りなければ読めないだろうと勝手に思っていたからです。
ほとんど読んだことがないにもかかわらず(「赤い拇指紋」 (創元推理文庫)しか長編は読んでいません)、退屈というイメージは結構強烈で、恐れおののいていたのです。

勢いをかったおかげで、いやいや、作品の持つ本来の力のおかげで、しっかり退屈などせずに読めましたし、むしろ、おもしろいなと思いました。いいじゃん、ソーンダイク博士。

この作品ではソーンダイク博士は、安楽椅子探偵っぽいんですよ。
直接現場に行って調べまわったりしない。
冒頭から新聞記事を題材に話をするシーンですから。もっぱら新聞とか、あるいは視点人物であるバークリー医師からの情報に基づいて推理する。
きわめてフェアプレイ精神に富んだ作品になっています。
「この事件についての私の結論は、ほぼ状況証拠に基づいている。一つの解釈しかあり得ないと言えるような事実はないもない。だが、結論を得るには程遠い事実でも、十分積み重ねれば、決定的な総体になることも忘れてはいけないよ。」(288ページ)
とソーンダイク博士自ら言うように、証拠の積み上げが楽しいですね。

そもそも失踪なので、死んでいるのか(あるいは殺されているのか)どうか、そこから推理しないといけない。
「考えられる仮説は五つある」(195ページ)とソーンダイク博士がいうシーンではかなり首を傾げてしまいましたが(なにしろ、「一、彼はまだ生きている。二、すでに死んでいて、身元不明のまま埋葬されている。三、未知の人物に殺された。四、ハーストに殺され、死体は隠された。五、弟に殺された。」という五つで、なんかしっかり系統立てて整理された五つには到底思えないからです)、こつこつと証拠、というか手がかりを集めていって真相にたどり着くのは、論理的でミステリ本来のおもしろさ、と言えると思いました。

訳者あとがきで(この訳者あとがきが感動ものです!)、
「今日主流の謎解き推理小説は、与えられる手がかりに基づいて説得力のある解決を推理するよう読者に求めるタイプの作品ではなく、むしろ、狡猾なトリックや結末の意外性で読者を欺き、驚かせようとするタイプの作品なのだ。」
「ところが、フリーマンの作品は、クリスティのような結末の意外性、カーやクロフツのような不可能犯罪、アリバイ等のトリックの奇抜さを狙うようなことはしない。」
「フリーマンは、倒叙推理小説の生みの親であることからも分かるように、犯人が誰かという答えを単に当てることではなく、なぜその人物が犯人なのかをプロセスとしてきちんと論証してみせることを重視した作家だった。」
と指摘されていますが、「オシリスの眼」は、まさにそのことが実感できる作品です。

もう一つ、この「オシリスの眼」のポイントと思われる点は、プロットが複雑なことかと思います。
よくこんな複雑なプロットを、説得力ある形で証拠の積み上げていって構築したなぁ、とびっくりします。
それに「トリックの奇抜さを狙うようなことはしない。」といいながら、この作品には結構印象的なトリックが使われています。そこもポイントでしょう。

あとついでに、語り手であるバークリー医師の恋愛模様も、たどたどしくてクラシックな感じがして笑えます。

半ば食わず嫌いだったフリーマン、いけるな、と実感しました。

タイトルの「オシリスの眼」とは、被害者の指輪のデザインです。
「これは“ウジャト”--“ホルスの眼”だ--“オシリスの眼”ともいう。そう呼びたければね。」(359ページ)と作中で考古学者が解説(?) しています。
Wikipedia でみてみる以下の通りです。
「古代エジプトでは非常に古くから、太陽と月は、ハヤブサの姿あるいは頭部を持つ天空神ホルスの両目(「ホルスの目」)だと考えられてきた。
やがて二つの目は区別され、左目(「ウアジェト(ウジャト)の目」)は月の象徴、右目(「ラーの目」)は太陽の象徴とされた。」
こちらも訳者あとがきで懇切に説明されています。

<蛇足1>
「単純さは効率のよさの極意ですよ」ボルトンはお茶の用意に抜かりがないか確かめながらそう応じると、この見事な金言を残して静かに姿を消した。(41ページ)
ソーンダイク博士の使用人のセリフです。含蓄深い!

<蛇足2>
「さほど役に立たない真実ですけど」と私は笑いながら応じた。
「否定できない真実とは、だいたいそんなものさ」彼は言い返した。「真実とは、きわめて一般的なものになりがちだ。というか、ある命題がどこまで真実性があるかは、その一般性の程度にそのまま比例すると言っていい」(159ページ)
語り手であるバークリー医師と、失踪したベリンガム氏の顧問弁護士との会話です。これまた含蓄深いですね。

<蛇足3>
「骨はまっさら--つまり、軟部がすべて消失している状態です」(238ページ)
軟部がすべてなくなってしまっている状態の骨を「まっさら」と言うのでしょうか?
まっさらって、真新しいことを言うのだと思うのですが。
軟部がすべてなくなった状態の骨、白骨は、真新しいと表現するようなものとは思えないのですが。



原題:The Eye of Osiris
作者:R. Austin Freeman
刊行:1911年
訳者:渕上痩平





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追想五断章 [日本の作家 や行]

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/04/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生(すごう)芳光は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語」を探して欲しい、という依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり――。五つの物語に秘められた真実とは? 青春去りし後の人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ。


「このミステリーがすごい! 2010年版」 第4位
「本格ミステリ・ベスト10 2010」 第4位
2009年週刊文春ミステリーベスト10 第5位

上で引用したあらすじにも使われている表現ですが、本当に”精緻”に組み上げられた作品です。
読み終わったとき、ふーっ、とため息がでるほど。

父が書いた5つのリドルストーリーを探す。手元には結末となる最後の行だけがわかっている。
故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だった。
ミステリとしては
1) 5つのリドルストーリーに込められた仕掛け・想い
2) 「アントワープの銃声」の真相
という二つのポイントがあると思います。

実はこの2つとも、途中で見当がついてしまいました。
1) の方は細かなところまではさすがに突き詰めて考えてはいませんが、方向性は予想通り。
2) の方は、予想はついたものの、慧眼だろう、と自慢できるようなことではなくて、ある程度ミステリを読み慣れた方なら、ひょっとしたらあらすじを読んだだけでも予想がつくことかもしれません。

でも、真相が見抜けたからといってこの作品がつまらなくなるわけではありません。
非常に精密な絵が仕上がっていくのをリアルタイムに見ていっている感じとでも言いましょうか。また、
「追想五断章」 (集英社文庫)を通して描かれる絵の精巧さに、息をつめて見惚れてしまう、という感じです。
面白かったですね。

「儚い羊たちの祝宴」 (新潮文庫)感想に続いて、同じ言葉で締めたいと思います。
米澤穂信、やはりおもしろい。
買いだめ(?) してありますので、読み進めるのがとても楽しみです。


<蛇足>
「いかにも無教養なむさくるむさ苦しい男の口から李白や欧陽修の詩がすらすらと出てくるのに面食らった。なんでもこの街に所縁(ゆかり)があるというが、それにしても意外に思い憮然としていると」(115ページ)
ここに出てくる「憮然」に立ち止まりました。
「憮然」という語は、よく「腹を立てている様子」だと誤用されることで知られています。文化庁の調査でも裏付けられていますね。
本来の意味は、「失望してぼんやりするさま。失望や不満でむなしくやりきれない思いでいるさま。」と思っていましたが、そうすると引用した部分にそぐいません。
調べてみると、「意外なことにおどろくさま。」という意味もあるんですね!
勉強になりました。
ちなみに、欧陽修は欧陽脩とも書くようですね。

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泥棒たちの十番勝負 [日本の作家 赤川次郎]

泥棒たちの十番勝負 (トクマ・ノベルズ)

泥棒たちの十番勝負 (トクマ・ノベルズ)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/10/06
  • メディア: 新書

<表紙袖あらすじ>
不動産営業マンの太田は、念願の土地を売ってもらうために倉橋の家を訪れた。しかし倉橋が殺されているのを発見。そして思わず逃げ出してしまったために指名手配をされてしまう。殺人現場となった家へやって来た淳一と真弓は、地下にお宝が隠されているのを見つける。どうやら倉橋は淳一の同業者である泥棒のようだった。小心者の太田が犯人ではないと考えた淳一は、犯人をおびき出すためにある仕掛けをするが。「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ最新刊!

「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ最新刊で、第21弾。
このシリーズ、前回感想を書いたのは、第18弾の「泥棒たちの黙示録: 夫は泥棒、妻は刑事 18」 (徳間文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)で、6年も前になりますね。
間の「泥棒教室は今日も満員:夫は泥棒、妻は刑事19」 (徳間文庫)
「泥棒たちのレッドカーペット :夫は泥棒、妻は刑事20」(徳間文庫)の2冊は読んでいますが、感想を書けていません。

物語の冒頭に登場し、物語の駆動力となる太田のキャラクターがいかにも赤川次郎という設定になっています。
業績とかいう意味では冴えない(プラス、見た目もさほどだ)けれど、誠実で、苦境に陥っても(たいがい殺人の濡れ衣だったり......)、ひそかに思いを寄せていてくれて助けてくれる若い女性が身近にいる。
そんなに都合よく助けてくれる女性がいるものか、と、まあ、ある意味平凡な中年男性の夢のような物語となるわけですが(もちろん、苦境に陥るのは嫌ですけれどね)、ひょっとしたら赤川次郎の作品は、中年男性向けハーレクインといった性格も帯びているのかもしれませんね(笑)。ただし、赤川次郎の読者層は中年男性ではありませんが......

また田舎から出てくる被害者の妻と孫もいかにも、な感じですね。
孫がアイドルになっちゃったりしないのが不思議なくらい(笑)。

なかなか家を売ろうとしなかったのに急に気を変えた老人。その家には地下に隠し資産があったにもかかわらず。
これ、ミステリ的には魅力的な謎になり得ると思うのですが、さらっと扱われています。
ちょっともったいない気がします。

今回は、道田君が誘拐されたりと活躍’(?)するのが印象的でした。

ところで、タイトルの十番勝負の意味が今ひとつピンとこなかったのですが......




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消えたボランド氏 [海外の作家 は行]

消えたボランド氏 (論創海外ミステリ 180)

消えたボランド氏 (論創海外ミステリ 180)

  • 作者: ノーマン・ベロウ
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2016/10
  • メディア: 単行本


単行本です。
論創海外ミステリ180。
「魔王の足跡」(国書刊行会)「本格ミステリ・ベスト10〈2007〉」第1位を獲得したノーマン・ベロウの邦訳第2作です。
今年6月に3作目となる「十一番目の災い」 (論創海外ミステリ)が訳されていますね。

メインの謎は人間消失です。
訳者あとがきから引用します。
「高い断崖絶壁の上から目撃者の目の前で飛び降りたはずの人間が、忽然と姿を消すのだ。当時、崖の下にも釣り人がいたが、何ひとつ落ちてこなかったと言う。目の前は一面の海、崖の下には大きな一枚岩、崖の途中には引っかかるような穴や裂け目などは一切ない。はてさて、どんな奇術あるいは魔術を使えば、人間をすっかり消失できるものなのか?」
すごく魅力的な謎ですね。
このあとがきには書かれていませんが、現場の状況で特筆すべきことがあります。
「それ以外は、何もかもが濃い霧にかすんでいたのだ。
 そう、濃い霧に……。
 正確に言えば、それは本物の霧ではなかった。強烈に圧縮された濃密な大気、巨大な煙霧だ。
 この季節になるとシドニーを含めた東海岸沿いに見られる現象で、この巨大な煙霧は夜明け前頃に現れ、正午には晴れる。だが、ときには一日じゅう居座ることもあり、刻一刻と濃さを増したかと思うと夜になってから、急に現れたのと同じく忽然と消え去る。それでもまた夜明けになると、新たに生まれた煙霧が取って代わることもある」(27ページ)
という状況です。
実はここを読んでちょっとびっくりしました。そんなに塵の多そうでない海沿いが舞台ですから。
普通の霧ではなく、煙霧ですか......
「シドニーを含めた東海岸沿い」ということですから、シドニーあたりでは今でもみられる光景なのでしょうか?
2013年に東京で煙霧が発生したときはとてもびっくりしたのを覚えています。
さて、その煙霧からノーマン・ベロウはトリックを考えたのかもしれませんね。

状況的に、どうやって人間消失を実現するか、と考えるとミステリを読み慣れた読者ならすぐに一つの方法が浮かぶかと思います。
とするとすぐに犯人まで特定されてしまうんですよね。
さてさて、真相はどうなのか? と予想を抱えつつ読み進むわけですが、ノーマン・ベロウ、飽きさせません。
探偵役が老俳優ベルモアで、名探偵を演じることを意識しつつ推理を進めていく、というのがおもしろいですし、場面展開も素早く、小刻みにいろいろと事件や動きが盛り込まれているので、読みやすかったですね。
また、それほど登場人物が多いわけではないのに(少なくもありませんが)、かなりプロットが錯綜しているので充実感もあります。

「魔王の足跡」の記憶がないので(読んだのは確かです!)、比べることはできないのですが、「消えたボランド氏」はすごくすっきりした作品で、読めてよかったな、と思いました。
「十一番目の災い」 が楽しみですし、ほかの作品もどんどん訳してもらえればと思います。


<蛇足1>
『「彼が、何をする前ですって?」ミス・バッグは険しい声で訊き返し、モンティには彼女がデルの発言の内容を尋ねているのか、“うっちゃる”という表現を非難しているのかがわからなかった。』(80ページ)
個人的には「うっちゃる」という表現を日常的には使わないので(また、周りの人も使いませんね。相撲で「うっちゃり」という語を耳にするくらいでしょうか)、ミス・バッグならずとも、読む際につまづいて、見返してしまいました。
「うっちゃる」かぁ、おもしろい表現を使うなぁ、と思ったのですが、原語はどうなっているのでしょうね? ふと気になりました。

<蛇足2>
「四十歳に近く、炊き付け用の薪をその上で割りたくなるような顔の“お嬢さん”は、いったん退がり」(215ページ)
な、なんという表現! 炊き付け用の薪をその上で割りたくなるような顔って、どんな顔でしょうか? 平べったい? それこそ日本人みたいに??



原題:Don't Jump, Mr. Boland!
作者:Norman Berrow
刊行:1954年
訳者:福森典子





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ドラマ:時は待たない [ドラマ ジョナサン・クリーク]

Jonathan Creek: The Complete Colletion [Region 2]

Jonathan Creek: The Complete Colletion [Region 2]

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「奇術探偵ジョナサン・クリーク」の、シーズン2 第2作目「時は待たない」 (Time Waits For Norman)です。

日本語タイトルは「時は待たない」で、原題は Time Waits For Norman。
日本語と英語で「待つ」「待たない」と逆の言葉の選び方になっているのがおもしろいですね。

このシリーズ密室状況を扱うことが多いのですが、今回はアリバイ?
そのときにニューヨークにいたはずの人物が、ロンドンのハンバーガー屋で目撃される、という謎です。

このハンバーガー屋さん、WIMPYという実際にあるチェーン店を舞台にしていますね。
劇中、マデリンが店員の証言を得るために、男子トイレにまでついていくシーンに笑ってしまいました。
トイレで手を洗っていた男性がびっくりするシーンもあるのですが(かつマデリンが捨て台詞みたいなものまで言うのですが)、そりゃびっくりしただろうなぁ、と思います(笑)。
男子トイレに女性がいるケースというのは掃除くらいに限られると思うのですが、日本と違い、男子トイレの掃除を女性がすることはありませんので、男子トイレで女性を見かけることはほぼ100%ありません。

謎解きは常識的なもので、納得できるものでしたが、謎はすっきり解けても、人間関係はすっきりといかないのが印象的でした。
まあこのストーリーだとこの後の人間関係が心配......心配も何も、すっかり壊れてしまっているような気もしますけどね。

トリックは割とよくあるものを使っています。
このトリック、小説で読むとこんなにうまく行くのかな、と思うところはあるのですが、このドラマを見ていると、これならうまくいくかも、と思えました。かなり限定的な状況かもしれませんが。

シリーズ的には、ジョナサンがついに(?) 本格的に浮気します。浮気、というか、ことに及んでしまいます、というべきですかね?
しかもそれを、ぺらぺらとマデリンに話してしまうんですよね......かなり詳細に。キッチンのテーブルでって、そんなことまで言わなくても......(根掘り葉掘り聞きだされたのかもしれませんが)
当然、定番のマデリンがやきもちを焼くシーンもしっかり出て来ますが、今回は、まあそりゃぁね、SEXまでしちゃってるんだから、やきもちも焼くよな、というところ。
でも一方でジョナサンもマデリンもお互い好きだと確かめあったわけではないので、ジョナサンを一方的に責めるのはかわいそうかもしれませんが。
そうそう第1話「闇からの銃弾」の感想で「この第1作を見る限り、童貞という設定なんじゃないかとも思えました。」と書きましたが、これが童貞卒業だったのかな(笑)? 映像的には(!) 違う気がしましたが。



いつも通り「The Jonathan Creek homepage」という英語のHPにリンクを貼っておきます。
「時は待たない」 (Time Waits For Norman)のページへのリンクはこちらです。
ただし、こちらのHP、犯人、トリックも含めてストーリーが書いてあるのでご注意を。写真でネタばらしをしていることもあるので、お気をつけください。


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届け物はまだ手の中に [日本の作家 石持浅海]


届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/10/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
楡井和樹は恩師の仇である江藤を殺した。しかし裏切り者であるかつての親友・設楽宏一にこの事実を突きつけなければ、復讐は完結しない。設楽邸を訪れた楡井は、設楽の妻、妹、秘書から歓待を受ける。だが息子の誕生パーティーだというのに設楽は書斎に篭もり、姿を見せない。書斎で何が起きているのか……。三人の美女との探り合いの果て明らかになる、驚愕の事実とは!?


いいです! この本。面白かったです。お気に入り。
ただし、石持浅海のことですから、相当変ですので、そこはお気をつけて。

主人公で視点人物である楡井が、殺人犯、です。
まあ、そこはいいとして(普通はこれだけでも相当変なのですが)、恩師益子の仇を討ったあと、裏切った友人設楽に復讐を遂げたことを告げに行く、というのが、まず、おかしい。
設楽宅に着いたものの、息子大樹の誕生パーティーといいながら、設楽は書斎にこもって出てこない......
設楽の妻さち子、設楽の妹真澄、そして設楽の秘書遠野の三人と会話を進めながら、設楽に会うチャンスを待つ楡井。
さまざまな違和感を受けて、あれこれ考えをめぐらせる楡井が描かれるのですが、これがとても面白い。石持浅海らしさ全開!

帯に「殺人者と三人の美女の駆け引きと探り合い。」と書いてあるのですが、まさにそんな感じで話が進みます。
この過程だけでも十分おもしろいです。

帯には続けて「この結末は石持浅海にしか書けない!」と書いてあるんですが、真相の予想ついちゃいました......
この真相の予想がついたということは、自分も相当変だということですよねぇ......ちょっと落ち込むことにしますか......(笑)。

この作品、エンディングがまたいいんですよね。
ネタバレなので色を変えて伏字にしておきますが
いい? 一人だけ逮捕されて楽になろうなんて、思わないでね。あなたの破滅はここにいる全員の破滅につながるんだから。
なんてセリフが飛び出して来ようとは......
あと、本当のラストの一行、大樹に向かっていうセリフ
みんなが幸せになる方法を考えていたのよ
というのも傑作ですよね。

大満足の一冊でした。


<蛇足>
『「美少女」と「美女の少女時代」は、似て非なるもの--そんな話を聞いたことがある。美少女とは、子犬のような丸っこさを伴うかわいらしさのことだ。だから往々にして、成長すると平凡な顔だちになる。一方美女は、細い分、幼い頃は貧相に見えるらしい。』(32ページ)
これ、本当ですかね?
美少女の定義が違うのかもしれませんが。



タグ:石持浅海
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