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山手線探偵3: まわる各駅停車と消えた妖精の謎 [日本の作家 七尾与史]


山手線探偵3: まわる各駅停車と消えた妖精の謎 (ポプラ文庫)

山手線探偵3: まわる各駅停車と消えた妖精の謎 (ポプラ文庫)

  • 作者: 七尾 与史
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2014/06/05
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
山手線にだけ神出鬼没に現れる、謎の名探偵――霧村雨のもとに、少女誘拐事件が舞い込んだ! 山手線探偵・霧村は、小学6年生の助手・シホと自称ミステリ作家のミキミキさんと一緒に急遽、捜査を開始する。そして謎が謎をよび、過去の未解決事件「消えた妖精」の真相に辿り着き……。


昨年8月に読んだ本の感想に戻ります。
順番として「ジークフリートの剣」 (講談社文庫)(感想ページはこちら)のあとに読んでいます。

「山手線探偵 まわる各駅停車と消えたチワワの謎」 (ポプラ文庫)(感想ページはこちら
「山手線探偵2: まわる各駅停車と消えた初恋の謎」 (ポプラ文庫)感想ページはこちら
と続いてきたシリーズの第3弾にして、完結編。

目次が今回もかわいいです。山手線の路線図(?)。
今回ページ順に並べ替えると
新宿駅→渋谷駅→高田馬場駅→目黒駅→恵比寿駅→田町駅→代々木駅→浜松町駅→池袋駅→秋葉原駅→上野駅→御徒町駅→西日暮里駅→渋谷駅→目白駅
の順です。

いよいよ「シホと霧村さんの出会いのきっかけとなったあの事件」が出てきます。
ミキミキがなかなか聞き出せなかったこの話、
「今から一部始終を話すわ。覚悟して聞いて。ミキミキさんは真の恐怖を知ることになるから。」(25ページ)
とかなりもったいぶってシホから明かされるのですが、これが、笑えます。笑ってはシホがかわいそうですが。
なにしろ、「テレビドラマなんかによく出てくる、酔っ払いながらカラオケで古い歌を熱唱して若いOLたちの顰蹙を買っている、バーコード頭でメタボ体型の中年。」が「向かいのシートで寝込んでいる女性のバッグの口から」「上半身を覗かせて」いた、というのです。(39ページ)
いわく、おっさんの妖精(笑)。
しかも、その事態は、山手線が高田馬場駅について、新宿駅に行く間に、電車内で結婚式に遭遇、という派手な出来事の後に起こるのです。(どれだけ空いていたのでしょうね、山手線。)

おっさんの妖精の存在そのものが謎なんですが、この謎はミステリ的には解かれませんので、そういう期待は無用です。
ただ、ここからかなりの大事件に発展するのがポイントで、ちょっと小学生が立ち向かうには...という感じもしますが、霧村さんとミキミキという大人がいますし、そこは ”妖精” であることだし、というなのでしょう。
今の若い人、というか、子どもはこういうの楽しむのでしょうか?

ただエンディングは、当然といえば当然かもしれませんが、しっかりとしていまして、シリーズの幕引きというのは寂しくもありますが、納得できるものになっています。

ミステリ的に取り立ててどうこうというものではなかったですが、楽しく読めたシリーズでした。


<2022.2.25>
タイトルと冒頭に掲げる書影&リンクが間違っていたので、修正しました。
失礼しました。



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山手線探偵2: まわる各駅停車と消えた初恋の謎 [日本の作家 七尾与史]


山手線探偵2: まわる各駅停車と消えた初恋の謎 (ポプラ文庫)

山手線探偵2: まわる各駅停車と消えた初恋の謎 (ポプラ文庫)

  • 作者: 七尾 与史
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2013/02/05
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
神出鬼没の山手線探偵・霧村雨。小学生助手のシホと自称ミステリ作家のミキミキさんと一緒に、今日も難事件に挑む!メイドカフェで依頼された今回の調査内容は『初恋の想い人』捜し。しかし山手線探偵のニセモノ出現により、思いもよらない未解決殺人事件に繋がっていく……。


先日の「シャーロック・ホームズの不均衡」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら)がそうでしたが、感想を書けずじまいだったものの落穂拾いもしていきたいと思っています。
この「山手線探偵2: まわる各駅停車と消えた初恋の謎」 (ポプラ文庫)もそんな一冊。読了本落穂拾いその2です。

「山手線探偵 まわる各駅停車と消えたチワワの謎」 (ポプラ文庫)(感想ページはこちら)に次ぐシリーズ第2弾。

相変わらず目次がかわいいです。山手線の路線図(?)。
今回ページ順に並べ替えると
目白駅→新宿駅→秋葉原駅→東京駅→巣鴨駅→渋谷駅→鶯谷駅→目黒駅→日暮里駅→高田馬場駅→五反田駅→品川駅→巣鴨駅→原宿駅
の順です。

「山手線探偵 まわる各駅停車と消えたチワワの謎」のエンディングで「国家の存亡がかかっておる」なんて、ジジイに次の事件を依頼されていたというのに、おばあちゃんの初恋の人探しを依頼されます。静岡県の天竜川上流に位置する龍墓村での、太平洋戦争末期の思い出。
「国家の存亡」の顛末は136ページで知ることになりますが、おいおい、七尾さん、そりゃインチキだよ。そんなのを前巻のエンディングに使うんじゃない!!
この人探しは、過去の殺人事件につながり、この第2巻は、一つの物語を追いかける形で、その事件を解決することとなります。

子供向けを意識して書かれているのでしょうから、あまりあれこれ指摘するのも無粋ということですが、真相が平凡すぎるのは大きな難点だと思ってしまいます。
龍墓村(このネーミングもどうかと思いますけど、そこは七尾与史ならOKとしないといけないのでしょう)の風習を背景に、衝撃の真相、なのではありますが、もうミステリではさんざん書かれてきた展開になってしまっていまして、オープニング早々真相に気づく人がほとんどではなかろうかと。
その分、思わせぶりな部分とか伏線であるとかがわかりやすく、そこを拾っていく楽しみはあるのですが。

さて、なにはともあれ、次の「山手線探偵3: まわる各駅停車と消えた妖精の謎」 (ポプラ文庫)が最終巻のようです。
「シホと霧村さんの出会いのきっかけとなったあの事件」が出てくるのでしょうけれど、シリーズはどう着地するのかな?





<蛇足1>
「シホが嵐組の神田くんの写真集を眺めている間、桐村さんは『殺戮ガール』なる文庫本を立ち読みしていた。」(145~146ページ)
ちゃっかり宣伝しているところが、すごいですね。

<蛇足2>
「二人ともかなりの映画通らしく、霧村さんは『存在の耐えられない軽さ』、ミキミキさんは『ゆきゆきて、神軍』がイチ推しだという。」(214ページ)
ある意味渋い選択ですが、
「シホは二人がオススメする映画のタイトルをそっとノートにメモした。卒業文集の『好きな映画』欄にこの二つを書くのだ」(214ページ)
というのは、やめておいたほうがいいと思うよ、シホくん。

<蛇足3>
「父さんが特攻隊に志願したんだ。」(111ページ)
当時のこと、知らないのですが、特攻隊って、志願すればホイホイなれたのでしょうか? 
人手不足であったからなれたのかも、ですが、そうはいっても飛行機乗りだから訓練も必要だろうに。もともと徴兵されていたという設定だから、そういう風に訓練されていたのかな?
さらに
「僕も父さんについていく。一緒に零戦に乗せてもらうんだ」(111ページ)
というのは、さすがにあり得ない話ですよね......



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山手線探偵 まわる各駅停車と消えたチワワの謎 [日本の作家 七尾与史]


山手線探偵 まわる各駅停車と消えたチワワの謎 (ポプラ文庫)

山手線探偵 まわる各駅停車と消えたチワワの謎 (ポプラ文庫)

  • 作者: 七尾 与史
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
山手線の電車内だけに現れるといわれる神出鬼没の名探偵――山手線探偵・霧村雨。彼を支えるのは、小学5年生の助手・シホと、見当違いな推理を働かせまくる自称作家の三木幹夫。彼らトンチンカン3人組が、日常の謎から殺人事件まで、どんな事件でも解決します!


まず目次がかわいいです。山手線の路線図(?)。
ページ順に並べ替えると
目白駅→大塚駅→日暮里駅→田端駅→恵比寿駅→上野駅→代々木駅→有楽町駅→駒込駅→新宿駅→東京駅
の順です。
ポプラ文庫で、若い人向けのイメージだしね。

ところが、オープニングがいきなり、ダークなシーン。
少年がホームから転落し、差し伸べられた男の手を振り払って電車に轢かれる、その一部始終をビデオカメラにおさめる大学生。
なんだ、なんだと思っていると、肝心の(?) 山手線探偵霧村雨(三十五歳)と助手(?)、広報担当(?) の小学生道山シホ、そして霧村の友人でミステリ作家の三木幹夫(ミキミキ)が登場して、ライトな感じになります。
「連続殺人、画期的な手口、意外な犯人、鮮やかな推理。下町情緒あふれる商店街にコロッケに犬に夕焼け! 人間ドラマもバッチリさ」(304ページ)
というところ!?
山手線を回るように、くるっと回ったように事件はつながって解決されていきます。

ラストでは、「国家の存亡がかかっておる」なんて、ジジイに次の事件を依頼されます。
それに、「シホと霧村さんの出会いのきっかけとなったあの事件。あの謎だらけの事件を解くために、シホは彼の助手になったのだ。あの事件の手がかりも真相も何から何まで山手線の中に隠されているのは間違いない」(314ページ)だなんて。そういうネタ振りは、もっと早くから小刻みにすべきですよ。

とはいえ、気になることは気になるので、続編を楽しみにします。
(シリーズは3巻で完結しているようです)



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死亡フラグが立ちました!  カレーde人類滅亡!? 殺人事件 [日本の作家 七尾与史]

死亡フラグが立ちました! ~カレーde人類滅亡!? 殺人事件 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

死亡フラグが立ちました! ~カレーde人類滅亡!? 殺人事件 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 七尾 与史
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/11/06
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
廃刊寸前のオカルト雑誌「アーバン・レジェンド」の編集長・岩波美里は頭を悩ませていた。謎の殺し屋を追った「死神」特集が大コケした責任を問われた彼女は、新しい題材を探すようライターの陣内に命じる。ネットで話題になっている呪いの映像の真相を追い始めた陣内は、恐ろしい人類滅亡計画に辿りつき……。「死神」に狙われながらも計画を防ごうと奮闘する陣内と天才投資家の本宮の運命は!?

「死亡フラグが立ちました!」 (宝島社文庫) (感想へのリンクはこちら)が帰ってきました。帰ってきた、どころか、もうさらに次の作品「死亡フラグが立つ前に」 (宝島社文庫)も出ています。
(ちなみに、前作「死亡フラグが立ちました!」 の感想ページは、このブログの中でしばらくアクセス数が一位でした。気になっている人、多い作品なんですね。リンクはこちら
前作の感想で「B級というか、ドタバタというか、ハチャメチャというか、勢いで勝負! みたいな印象を受けます。」と書きましたが、その傾向は引き続き健在です。
一方、前回は副題「凶器は…バナナの皮!? 殺人事件」通りのプロットでしたが、今回の副題「カレーde人類滅亡!? 殺人事件」は、それほど内容を反映していません。
感想の「ミステリを好きな人が、ミステリのおもちゃをあれこれいっぱい組み合わせて」という部分は今回もその通りで、メインとなる某ホラー作品の仕掛けをはじめとして(ネタばれになるので、リンクだけここに貼っておきます。ネタばれを気にしない方はクリックしてください)、既視感のあるアイデアが満載です(笑)。
ミステリとしての評価はさすがに高くはできないけれど、たまにはいいかもしれませんね。


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殺戮ガール [日本の作家 七尾与史]


殺戮ガール (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

殺戮ガール (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 七尾 与史
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/05/24
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
10年前、遠足で女子高生30名と教員を乗せたバスが、忽然と姿を消した。「某国による拉致」、「UFOの仕業」など様々な噂も流れたが、結局、手がかりもつかめないまま「平成最大のミステリー」として現在に至っている。この怪事件によって姪を失った刑事・奈良橋は、独自に調査を続けていた。そんな彼は、管轄内で起きた「作家宅放火殺人事件」を担当することになり……。黒いユーモア・ミステリー。

「死亡フラグが立ちました!」 (宝島社文庫) で、このミステリーがすごい!大賞の隠し玉としてデビューした七尾与史の作品です。
「殺戮ガール」というタイトルは相当そのまんまですが、単行本のときのタイトルが「殺しも芸の肥やし 殺戮ガール」で、もっともっと露骨にそのまんまです。こんなにわかりやすく犯人像を明かしてしまって、すごい。
ミステリの要素をふんだんに盛り込んで、にぎやかな作品に仕立てた「死亡フラグが立ちました!」 と違い、プロットはまっすぐです。
タイトル通りの「殺戮ガール」にどうやってたどり着くのか、あるいはたどり着かないのか、それが読みどころでしょう。
「芸の肥やし」というところから、お笑い絡みであることは自明で、まあ、作風に合っているといえば合っているのですが、お笑いを絡める必要性はなく、その部分を剥ぎ取ってみると、宮部みゆきあたりが書いてもおかしくないような気もします。あるいは、貴志祐介あたりが。
非常に恐ろしい犯人像なわけですが、お笑いの要素のおかげで、ギャップがあるというか、非常にアンバランスな印象を受けます。このアンバランスさを受け止められるかどうかで読後感は大きく変わってくることでしょう。
シリアスに書き上げると、まとまりはできたかもしれませんが、シリアル・キラー(?)ものとしてままよくある話になってしまいそうなので、やはりお笑いの要素がこの作品のポイントといえるわけで、難しいところですね。
ラストも、こういうタイプの作品ではこうなるだろうな、というところへ着地してみせるので、定石はきちんと押さえてある印象ですが、駄洒落で茶化してしまうところが、らしいといえばらしい仕上がり。
気になるところ、気に入らないところもいっぱいあるのですが(なによりポイントとなる笑いの質が、あまり好みではありません...)、それでも、この作者、なんだかやってくれそうな気がしてなりません。もうちょっと読んでみたいと思います。
タグ:七尾与史
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死亡フラグが立ちました! [日本の作家 七尾与史]

死亡フラグが立ちました!
七尾与史
宝島社文庫



<裏表紙あらすじ>
“「死神」と呼ばれる殺し屋のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される”。特ダネを追うライター・陣内は、ある組長の死が、実は死神によるものだと聞く。事故として処理された彼の死を追ううちに、陣内は破天荒な天才投資家・本宮や、組長の仇討ちを誓うヤクザとともに、死神の正体に迫っていく。一方で、退官間近の窓際警部と新人刑事もまた、独自に死神を追い始めていた…。

第8回『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉。
タイトルにもある「死亡フラグ」とは、「映画や漫画、ドラマなどで近い将来に登場キャラクターの死亡を予感させる伏線のこと。キャラクターがそれらの言動をとることを「死亡フラグが立つ」という。」と裏の帯で解説されています。
B級というか、ドタバタというか、ハチャメチャというか、勢いで勝負! みたいな印象を受けます。
表紙に「凶器は…バナナの皮!? 殺人事件」と書かれているので、この部分はネタばれOKと思って書いてしまいますが、殺し屋の手段が、プロバビリティの犯罪、というのがまず可笑しい。そのくせ24時間以内に必ず死ぬ、というのだから、いったいどうやって?? と思いますが、そういうところは気にしない、気にしない。
「十通りも仕掛けておけばどれかに引っかかるだろ」って、作中で触れられていますが、ターゲットが必ず死ぬような凄腕の殺し屋の成り立ちとしてはどうもねぇ。つまりナンセンスなお話、として楽しむべき作品、ということかと。なんたって、バナナの皮!
でありながら、いくつかの視点が最後でまとまっていくところとか、ミステリの手法をきちんとこなそうともしていて、そのギャップも楽しめました。主人公(?)である陣内の視点だけでは犯人像が読者に伝わらないし、展開は相応に考えて組み立てられているのだと思います。
解説で、某有名ミステリを露骨に連想させる犯人像が弱点、とありますが、多分、それもわざとではないでしょうか。あちこちに既存のミステリの影を、それこそ露骨に感じる部分がありますし。
やりすぎ感ある、そこまでの犯人像と大きくずれた、大盤振る舞いのラストも、主人公はそれでも窮地を抜け出してくれるんじゃないのかなぁ、と期待して読み終わりました。
ミステリを好きな人が、ミステリのおもちゃをあれこれいっぱい組み合わせて、ナンセンスで、にぎやかな、笑うための話を作り上げた、というものなのではないかと思います。
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