殺戮ガール [日本の作家 七尾与史]
<裏表紙あらすじ>
10年前、遠足で女子高生30名と教員を乗せたバスが、忽然と姿を消した。「某国による拉致」、「UFOの仕業」など様々な噂も流れたが、結局、手がかりもつかめないまま「平成最大のミステリー」として現在に至っている。この怪事件によって姪を失った刑事・奈良橋は、独自に調査を続けていた。そんな彼は、管轄内で起きた「作家宅放火殺人事件」を担当することになり……。黒いユーモア・ミステリー。
「死亡フラグが立ちました!」 (宝島社文庫) で、このミステリーがすごい!大賞の隠し玉としてデビューした七尾与史の作品です。
「殺戮ガール」というタイトルは相当そのまんまですが、単行本のときのタイトルが「殺しも芸の肥やし 殺戮ガール」で、もっともっと露骨にそのまんまです。こんなにわかりやすく犯人像を明かしてしまって、すごい。
ミステリの要素をふんだんに盛り込んで、にぎやかな作品に仕立てた「死亡フラグが立ちました!」 と違い、プロットはまっすぐです。
タイトル通りの「殺戮ガール」にどうやってたどり着くのか、あるいはたどり着かないのか、それが読みどころでしょう。
「芸の肥やし」というところから、お笑い絡みであることは自明で、まあ、作風に合っているといえば合っているのですが、お笑いを絡める必要性はなく、その部分を剥ぎ取ってみると、宮部みゆきあたりが書いてもおかしくないような気もします。あるいは、貴志祐介あたりが。
非常に恐ろしい犯人像なわけですが、お笑いの要素のおかげで、ギャップがあるというか、非常にアンバランスな印象を受けます。このアンバランスさを受け止められるかどうかで読後感は大きく変わってくることでしょう。
シリアスに書き上げると、まとまりはできたかもしれませんが、シリアル・キラー(?)ものとしてままよくある話になってしまいそうなので、やはりお笑いの要素がこの作品のポイントといえるわけで、難しいところですね。
ラストも、こういうタイプの作品ではこうなるだろうな、というところへ着地してみせるので、定石はきちんと押さえてある印象ですが、駄洒落で茶化してしまうところが、らしいといえばらしい仕上がり。
気になるところ、気に入らないところもいっぱいあるのですが(なによりポイントとなる笑いの質が、あまり好みではありません...)、それでも、この作者、なんだかやってくれそうな気がしてなりません。もうちょっと読んでみたいと思います。
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