映画:イノセンツ [映画]
映画の感想です。「イノセンツ」
シネマ・トゥデイから引用します。
見どころ:第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品されたスリラー。ノルウェー郊外の団地を舞台に、超能力に目覚めた子供たちが思わぬ事態を引き起こす。メガホンを取るのは『ブラインド 視線のエロス』などのエスキル・フォクト。ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ、ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイムのほか、『マザーズ』などのエレン・ドリト・ピーターセンらが出演する。
あらすじ:9歳の少女イーダは、重度の自閉症で言葉を発さない姉アナと共に郊外の団地へ引っ越す。イーダは同じ団地の別棟に住むベンから声を掛けられて森で遊んでいたが、ベンはイーダの握っていた木の棒を凝視しただけで真っ二つに折ってしまう。ベンは念じるだけで物体を動かせる特殊な能力を持っていた。イーダが彼の能力の強さを繰り返し試しているうちに、ベンは他人を自在に操れるまでになるが、次第に鬱々とした感情や思考を増幅させ、過激な行動に走るようになる。
映画のHPから INTRODUCTION を引用します。
大友克洋の「童夢」からインスピレーションを得た驚異の映像に、世界が震撼&絶賛
『ミッドサマー』『LAMB/ラム』に続く北欧初のサイキック・スリラー
第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、ノルウェーのアカデミー賞と呼ばれるアマンダ賞で驚異の4冠を獲得。世界の映画祭で16映画賞を受賞し、観客を絶賛と衝撃の渦に巻き込んだ問題作がついに日本上陸。
監督・脚本を手掛けたのは、ノルウェーを代表する映画監督ヨアキム・トリアーの右腕として『母の残像』『テルマ』などの脚本を共同で務め、『わたしは最悪。』で米アカデミー賞脚本賞にノミネートされた鬼才エスキル・フォクト。子供たちの夏休みを、かつて誰も見たことのない“無垢なる恐怖”で紡ぎ上げた。また、世界中に多くの熱狂的ファンを持つ大友克洋の傑作漫画「童夢」からインスピレーションを得た本作は、特異な世界観のみならず、不穏な予兆と驚きに満ちたサイキック描写においても傑出した迫真性を獲得。大人が一切介在しない、子供たちの“危険な遊び”は予測不能な想像を絶する結末へと突き進む。
時は夏休み。
主人公は引っ越したばかりの9歳の少女イーダ。姉アナは自閉症で言葉を発しない。
偶然近くの林で知り合ったベンが超能力をイーダに披露。
超能力を披露してもらうシーンはとてもわくわくできるんですよね。
小さな石を落下途中で向きを変えて飛ばす、という他愛のない(といっても常人にはできないのですが)もので、たぶん他愛のないものだからこそ、素直によろこびが伝わってくる。
もう一人主要人物として出てくる子供がアイシャ。
この3人は同じ団地に住んでいるみたいですね。かなり大きな団地のように思いました。
イーダにはないのですが、アナとイーダ、そしてアイシャは、どうやらテレパシーのようにお互いの考えが読み取れるよう。
これを確認するシーンも楽しいし、自閉症で発語しなかったアナが、テレパシーのおかげもあってなんとか言葉を発するところはちょっと感動すら覚えました。
ところが物語は良い方向には進みません。
その後イーダは超能力のまがまがしい使い方をし始めるのです。猫のシーンに明らかなように、もともとちょっと悪い傾向がうかがわれる少年ではあったのですが。
暴走する超能力者というのはたまに観るテーマで、たとえばこのブログで感想を書いたものでも「クロニクル」(感想ページはこちら)などは同じテーマですね。
あちらは高校生。思春期という時期でしたが、こちらはもっと幼い子ども。
ここがポイントですね。
子どもであるがゆえに、無邪気に伸びやかに超能力を伸ばし、思いのままに使ってしまう。
抑制のきかない怖さが出ています。
ベンの暴走については、早い段階で周りが気づかないのかな、とちらっと思いました。
特に母親のシーンでは、その後周りの人が気づかないのか気になります。
こういう団地では、北欧でも周りはあくまで全く無関係な他人にすぎず、気を配らないものなのでしょうか?
夏のホリデーシーズンで人が少ないということも一役買っているのかもしれません。
ベンの能力が、モノを動かすサイコキネシスやテレパシーから、人を意のままに操ることまでできるようになり、まさに邪悪な方向へ。人を使って、(ベンにとって)嫌なやつを殺させてしまうところまで。
ベンを止めようとしたアイシャをベンが殺そうとしたことから、アナとアイシャ、そしてイーダ(イーダだけ能力がありません)はベンと対立することに。
ここまででも筋を明かしすぎな気がしますが、ここからの凄惨と呼んでもよいような展開はさすがに伏せておいた方がよいのでしょうね。
ただ、ラストにだけは触れておきたいと思います。
<ネタバレが嫌な場合は以下は飛ばしてください>
最終的に、アナがベンと対決し成敗する、という展開になります。
サイキック的な力により心臓麻痺のような感じでしょうか?
途中、イーダが駆け付け、アナと手を握ることで力が増したようなところもあります(この直前、イーダがギブスを壊すシーンがあり、ひょっとしたらイーダの能力も発現したのかも、と思いましたが、よくわかりません)。
ベンをやっつけてしまうこのラスト自体も賛否が分かれるところかとおもいますが、このストーリー展開では是とせざるを得ない気がしています。
この展開自体も恐ろしいのですが、個人的になにより恐ろしいと思ったのは......
このラストの対決シーン、対決の現場は団地の中にある池の両岸で、団地からは見おろせるところ。
対決が盛り上がってくると、周りにいた赤ん坊が泣きだしたりと子供たちの様子が変わってくる。
そして団地の中からも子供たちが窓辺(ベランダ?)に現れ、アナとベンを見始める。
このシーン、不穏なものを感じて注目した、と捉えることも可能ですが、アナの能力に共鳴しているように思えてならないのですね。
アナとイーダが力を合わせて、というだけではなく、共鳴した子供たちも能力を持っていてそれらの力が合わさってベンに対抗したかのよう。
ベンが力尽き、それぞれの子供たちが窓辺を離れるところまで描かれるので、そう思えてなりません。
とすると、この団地で子供たちは能力を(次々と)開花させていることになり、であれば、第二、第三のベンが現れないとも限らない。
こんな恐ろしいかたちでエンディング......
このあとアナは元の自閉症的状態に戻り絵を描き、イーダはお母さんに泣きつき、日常を取り戻すシーンになって終わるのですが、とても恐ろしく感じて映画を観終わりました。
<ネタバレ終了>
内容が内容だけに広くお勧めはしづらいのですが、ざわざわとした感触の残る映画で、とても恐ろしかったので、ご興味のある方はぜひ。
原題:THE INNOCENTS
製作年:2021年
製作国:ノルウェー/デンマーク/フィンランド/スウェーデン
監 督:エスキル・フォクト
時 間:117分
私もベンの母親のその後が
とても気になっています。
ラスト、ベンがあのような事になって、
自宅に行った警察の人が
母親を見たらビックリするだろうな、とか^^;
by 青山実花 (2023-08-30 07:31)
青山実花さん、コメントありがとうございます。
いろんなポイントでざわざわする映画で、落ち着かない気分になってしまいます。
全般的に静かに作られていて、効果音がより一層ざわざわさせてくれるのも大きいかな、と思いました。
by 31 (2023-08-31 07:49)