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向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏 [日本の作家 赤川次郎]


向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏 (光文社文庫 あ 1-192)

向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏 (光文社文庫 あ 1-192)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/09/13
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
杉原爽香は、恩師の河村布子から、布子の古い知人・小川久子の娘が起こした殺人事件について相談を受ける。どうも冤罪らしいのだ。しかもすでに娘は服役中という。真犯人を見つけ出すため調査に乗り出す爽香たち。たが、真実を隠蔽しようとする勢力が、さまざまな手段で爽香たちの行く手を阻む。冤罪事件の真相解明という、かつてない難題に50歳の爽香が挑む。人気シリーズ第36弾!


2023年12月に読んだ8冊目の本で、2023年12月最後の本です。
シリーズも第36弾で、爽香はついに50歳!。
前作「セピア色の回想録」 (光文社文庫)(感想ページはこちら)では、五十歳マイナス一歳のお祝いの会、というインチキ臭い(笑)設定のパーティが使われていましたが、今回はそういうのはありません──そういえば、栗原英子が今回出てこなかったですね、残念。

今回は正面きっての殺人事件の(再)捜査。
通常だと手に負えないのでしょうが、そこは裏社会にも通じる爽香のこと──実際には、シリーズに時折登場する松下が手助けします。
この冤罪事件のほうは、赤川次郎作品の定番中の定番の設定と展開を見せますので、特段取り立てていうことはないのですが、その他今回爽香ファミリーが巻き込まれる雑多な出来事が、すっと円満に解決していく様子はとても安心できます。これを偉大なるマンネリというのでしょう(悪い意味で言っているのではありません)。

気になったのは、こちら。
「どうしてだか、人に頼られることに慣れてしまっているんです。もちろん、本業もありますし、夫も娘もいますから、できることは限られていますけど、それでも、たいていは何とかご期待に添えることが多いので」(117ページ)
ご期待に添えるは「沿える」の間違いでは? と思いましたが、添えるとする例もあるんですね。
それよりも、こういう発言を爽香がしていること自体が気になりました。
実績を見れば自信過剰とは言えないことは重々承知していますが、本人がそれを口に出すのはまた別問題のように思うので。
頼られているとはいえ、ただでさえ強烈なおせっかいなのに......

さて、来年はなにに巻き込まれてくれるでしょう??

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先導者 [日本の作家 は行]


先導者 (角川ホラー文庫)

先導者 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 小杉 英了
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/10/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
15歳のとき、ある組織から「先導者」として認可された“わたし”。死者に寄り添い、来世でも恵まれた人間として転生できるように導く役割を託されていた。突然の命令に戸惑いながらも、寡黙な世話人、曾祢(そね)の献身に支えられ、“わたし”は過酷な訓練を積んでいく。そしてついに最初の任務を果たすときが来たが……。葛藤しながら生きるひとりの少女の自我の芽生えを、繊細かつ鮮烈に描いた、第19回日本ホラー小説大賞大賞受賞作!


2023年12月に読んだ7冊目の本です。
第19回日本ホラー小説大賞短編賞受賞 小杉英了「先導者」 (角川ホラー文庫)

ホラーはあまり得手ではないのですが、独特の世界観に引き込まれました。
と、伴名錬の「少女禁区」 (角川ホラー文庫)感想と同じ書き出しになってしまいましたが、しっかり構築された世界観に浸れます。

描かれているのは、死後の世界、というか、死んだ直後の世界。
当然ながら死後の世界など想像するしかないわけですが、きわめて想像しがたい世界。
それが作者の手によってとてもリアルに感じられます。
語り手を務めるのは、死者たちを恵まれた来世へと導く役割を担う先導者である ”わたし”。
この ”わたし” が少女という設定なのが大きなポイントになっています。
死者そのものではないけれど、死の仕組みを目の当たりにする先導者という設定が秀逸。

死後の世界と同時に、先導者たるべく研修を受ける先導者の様子や、その日々の暮らしが描かれることで、リアルなはずのない設定がリアルに感じられます。
先導者をめぐる世界も周到に設計されていまして、物語の最終盤で明らかになる設定に到着したときには、本当に感じ入りました。

気になる点をあえて挙げるとすると、宗教に触れた部分でしょうか。
死生観というのは、宗教観へとつながりやすいもので、わかりやすくしようと書き込まれたと思うのですが、宗教という枠組みなしでも、死後の世界を構築しきった世界観をこの作品は持っているので、いらないのでは? と感じました。

「古の時代、人間社会における道徳の源泉は、宗教が教える死後の公正なさばきにありました。それが、この世を生きる人間の規範になっていたのです。
 たとえば仏教なら因果論と六道輪廻の思想、ユダヤ=キリストきょう及びイスラム教なら神の戒律と審判などがその典型で、人は己を超えた大いなる法(ダルマ)や存在の厳正極まるさばきを畏れて、日々の振る舞いを律してきたのですが、時代が下がるにつれて、宗教は形骸化し、人々の信仰心は薄れていきました。
 現代になるともう、神も仏も心から信じる人は稀になり、誰もがみな、人間は死んだら終わりで、死後の世界など抹香臭い連中がしがみつく旧弊な妄想にすぎない、とひていするまでになったのです。
 しかしながら、この世を生きる人間の死後の世界に対する信念なしに、あの世が独立して存在するのではありません。死後の世界というものは、この世を生きる人々の真摯な信仰を礎石にして成り立っていたのです。
 それ故、近代以降、現実に生じたのは、文明化された人々の心の中で死後の世界が崩壊する、そのプロセスとまったく軌を一にした、死後の世界の全面的な零落でした。信仰を捨てるとは、すなわち、その人にとっての死後の世界を、まさに現実において破壊することだったのです。」(140ページ)
非常におもしろい着眼点で、死後の世界と現世が相互に影響しあうのはとても興味深いのですが、その前段、人類は宗教を旧弊な妄想として切り捨てた、というところには疑問を感じざるをえませんでした。
あくまで個人的な感想ですが、日本はかなりこう書かれているような状況になっているとは思いますが、世界的にみてこう言い切れるかどうかは疑問なのでは、と思ってしまいます。
このあたりはもう少し用心深く記述してもらえるとよかったのにな、とは思います。

とはいえ、気になったのはこれくらいで、圧倒的な死後の世界の存在感に浸りきることができましたし、少女の成長物語が、この死後の世界の崩壊とリンクし、作者が用意した世界を打ち破る動きへと向かうラストは、さまざまな感情の入り混じった、複雑な読後感をもたらしてくれます。
いい作品を読んだな、と思いました。



<蛇足>
「人が何をどう信じようとそれはそいつの勝手で、あたしの知ったこっちゃない、あたしのいったことをまるまる信じる阿呆もいれば、あたしの説いた処世術を実践して、もしもの場合を考えて別な道を用意しておく賢児もいるということさ、と高笑いです。」(154ページ)
賢児には "かしこ" とルビが振ってあります。
"かしこ" を漢字でこう書くというのは存じ上げませんでしたが、久しぶりに "かしこ" という語を聞いた(見た?)気がします。
驚いたことに、漢字の変換で、賢児とでるのですね。






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黒衣の花嫁 [海外の作家 あ行]


黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)

黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2023/12/26
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ジュリーと呼ばれた女は、見送りの友人にシカゴへ行くといいながら、途中で列車をおりてニューヨークに舞い戻った。そして、ホテルに着くと自分の持物からイニシャルをすべて消していった。ジュリーはこの世から姿を消し、新しい女が生まれたのだ……やがて、彼女はつぎつぎと五人の男の花嫁になった──結婚式も挙げぬうちに喪服に身を包む冷酷な殺人鬼、黒衣の花嫁に。巨匠ウールリッチの黒のシリーズ劈頭を飾る名作。


2023年12月に読んだ6冊目の本です。
コーネル・ウールリッチの「黒衣の花嫁」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
丸善150周年記念で限定復刊されたもので、奥付は2019年2月の9刷。
(裏側の帯に、丸善、ジュンク堂のコメントがあるのですが、的外れも甚だしく笑ってしまいました。狙いすぎで、かえって大きく外してしまっていますよ)
初読です。

こちらの勘違いによる勝手な思い込みで、「喪服のランデヴー」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)とごっちゃにして読んでしまいました。

引用したあらすじにも出てくるジュリーと呼ばれる女が決意を示すシーンから物語は始まり、
第一部 ブリス
第二部 ミッチェル
第三部 モラン
第四部 ファーガスン
第五部 ホームズ
と、美しい女により男が次々と殺されていくという展開を見せる物語です。

そうとははっきり書いていないのですが、当然、ジュリーが犯人なのだなと読者にはわかる次第です。
このあたりの雰囲気作りは、やはりウールリッチ(アイリッシュ)はうまいですよね。

でも、この物語のストーリーラインで、このラストはないんじゃないかなぁ。
ジュリーサイドの事情がほとんど明かされないことが余計にそう感じさせた要因かもしれません。
かなりの幸運にも助けられ、次々と首尾よく殺しを重ねていくジュリー(と思われる女)に一種の爽快感を覚え(こらこら!)読んでいくと思われるのですが、なんとも言えないモヤモヤ感が残るんですよね。

ウールリッチ(アイリッシュ)はプロットが破綻していることが多く、むしろそれを逆手に取った作品なのかもしれません。

さて、「黒い天使」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想で書いたことを繰り返して感想を結びたいと思います。

まだまだウールリッチ(アイリッシュ)の作品は読みたいので、早川書房さん、東京創元社さん、ぜひぜひ復刊をお願いします。


<蛇足1>
「一つや二つぐらいなら、弱点のあるアリバイというのは聞いたことがありますが、この場合はまるで日向にさらした綿菓子ですからね。」(178ページ)
綿菓子を食べたのは遥か遥か昔で、記憶が定かではありません。綿菓子って、日に当たると溶けましたっけ?

<蛇足2>
「駅で忠実な下僕をこぼして、彼がひとりでのんびりと家に戻ったのは、かれこれ十一時近い時刻だった。」(278ページ)
「こぼす」というのが最初ピンと来なかったのですが、車で行って駅で従僕を降ろしたということですね。ちょっと面白い表現だと思いました。


原題:The Bride Wore Black
作者:Cornell Woolrich
刊行:1940年
訳者:稲葉明雄




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こめぐら [日本の作家 か行]


こめぐら (創元推理文庫)

こめぐら (創元推理文庫)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
必要か不必要かはどうでもいいのだ。したいからする。これは信念なのだ──密やかなオフ会でとんでもない事態が発生、一本の鍵を必死に探す男たちを描く「Aカップの男たち」、うそつきキツネ殺害事件の犯人を巡りどうぶつたちが推理を繰り広げる非本格推理童話「どうぶつの森殺人(獣?)事件」などノンシリーズ作品に、猫丸先輩探偵譚「毒と饗宴の殺人」を特別収録した全六編。


2023年12月に読んだ4冊目の本です。
倉知淳の「こめぐら」 (創元推理文庫)
倉知淳の作品の感想を書くのは久しぶり。「片桐大三郎とXYZの悲劇」(文春文庫)(感想ページはこちら)以来ですね。

基本的にはノンシリーズものを集めた短編集で、「なぎなた」 (創元推理文庫)と2冊同時刊行でした。
読み出してから創元推理文庫特有の英文タイトルが
「Jun Kurachi's Mystery World 2」
となっているのを見て、うわっ、間違えた「なぎなた」を先に読むべきだったか、と思いましたが、短編集なので逆でも問題なかったですね──と信じています。

収録作品は
「Aカップの男たち」
「『真犯人を探せ(仮題)』」
「さむらい探偵血風録 風雲立志編」
「遍在」
「どうぶつの森殺人(獣?)事件」
「毒と饗宴の殺人」
の6つ。

「Aカップの男たち」の馬鹿馬鹿しさたるや堂に入っていまして(変な表現ですが)、この謎解きだとかなり殺伐とした結末になりそうなところを、無難に着地させているのがすごいなと思いました。
しかし、この同好の士は、生きづらそうですね......

「『真犯人を探せ(仮題)』」と「さむらい探偵血風録 風雲立志編」は、作中作、劇中劇という趣向になっていまして、この種の作品があまり好きではないので少々残念。
巻末に付されている「単行本版あとがき」を読むとよくわかるのですが、両作とも、いわば楽屋落ち的な趣向を盛り込んでいるところが注目点でしょうか。

「遍在」は集中では異彩を放つ作品で、ある意味、倉知淳らしくない感じがします。貧乏家庭(?)内のいざこざが、こんな大きな話になろうとは......

「どうぶつの森殺人(獣?)事件」は、お伽噺的な舞台で動物さんが出てくる世界で起こる事件を描いています。
特にミステリとしてカチっと作ってあるわけではないのですが、最後に使われる犯人特定の決め手には驚きました。
「ミステリーランド」の1冊として出してもよかったんじゃないかなぁ......

「毒と饗宴の殺人」は、ボーナストラックということで猫丸先輩登場。
倉知淳はさらっと大胆な仕掛けをするので大好きで、奇想がさらっと炸裂(これも変な表現ですが)するのがいいのですが、この作品で使われているアイデアは、いくらなんでも無理かなぁ。
いや、現実世界で似たような例はあることは知っていますし、それがミステリに仕立てられても当然ということなのですが、個人的に受け入れがたいというか、納得しづらい内容なんですよね。
読んでいて泡坂妻夫の諸作を思い起こしたりもしたのですが、あちらもこちらも「そんなバカな」と思うような着地に落ち込むのですが、納得感の点で差があるように思いました。似たようなアイデアなんですけどね。




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霧に包まれた骸 [海外の作家 は行]


霧に包まれた骸 (論創海外ミステリ)

霧に包まれた骸 (論創海外ミステリ)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2014/10/01
  • メディア: 単行本




2023年12月に読んだ4冊目の本です。
ミルワード・ケネディの「霧に包まれた骸」 (論創海外ミステリ)
単行本で、論創海外ミステリ132です。

ミルワード・ケネディの作品は「救いの死」 (世界探偵小説全集)を読んでいますが、まったく印象に残っておりません(笑)。
面白かったという記憶もないかわりに、つまらなかったという印象もない。
ただ、そのあと出た「スリープ村の殺人者」 (SHINJUSHA MYSTERY)の購入を見送っていますので、可もなく不可もなく、という感想だったのかな、と想像。

で、この「霧に包まれた骸」 (論創海外ミステリ)は、面白かったです!

濃霧の夜に発見されたパジャマ姿の遺体
複雑怪奇な事件の絵模様がコーンフォード警部を翻弄する」

と帯にあり、南米からイギリスに帰国した裕福なヘンリー・ディルと思われる死体発見から始まります。
この死体が本当にヘンリー・ディルのものなのか、次第にそういう疑念が沸き起こってくるあたりから、とても面白くなりました。

このコーンフォード警部、やたらいろんなことに想像をめぐらす刑事さんでして、ああでもないこうでもない、といろいろと考えているうちに迷走します。
この迷走ぶりが楽しい。
事件の設定として、そんなにいろんな可能性が考えられるようにはなっていないので、限られた可能性の中右往左往する刑事さんがいいですね。
迷走するコーンフォード警部を、冷静に導いていきそうな上役も、ミステリでは珍しいタイプ。

そうこうしているうちに、意外な(?) 探偵役が登場し、さっと解決を提示してみせるところもなかなかいい。
あなたが探偵役でしたか......
登場人物も限られていますし、意外な真相とは正直言えませんが、解説で真田啓介が指摘している複雑な犯人像も楽しかったです。
(真田啓介はネガティブにとらえているように解説からは受け止めましたが、個人的にはこの犯人の設定、気に入っています。)

「救いの死」 (世界探偵小説全集)も、読み返してみるかな??


<蛇足1>
「その事件は、新聞に『ホースガーズ・パレード広場で衛兵ならぬ死者が行進』という見出しを授けてくれた。」(7ページ)
第一文から、あまりにも直訳すぎて、意味が一瞬わかりませんでした。
論創ミステリの翻訳のまずさは、引き続き快調のようです(変な表現ですが)。

<蛇足2>
「車はのろのろ走り出しましたが、エンジンは点火していませんでした。寒さのせいでしょう」(13ページ)
エンジンに点火せずに、車が走り出すのですね。
場所は、原題がもじりになっていることからわかるように、ホース・ガーズのあたりですから、坂道ではありません。不思議。

<蛇足3>
「私設車道を縁取る芝生部分を踏みながら、コーンフォードは屋敷のそばまで近づいた。」(48ページ)
立派なお屋敷に関する部分です。
私設車道、という訳語が使われていますが、わかりやすくていいなと思いました。
以前 P・D・ジェイムズ の「死の味」〈上〉〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想で触れたドライブウェイの訳も、この私設車道というのを使えばよかったかも、ですね。

<蛇足4>
「地下鉄のセント・ジェームズ・パーク駅ですか?」
「そうだ。そこで午後十時十五分過ぎに、白髪まじりの鬚をもじゃもじゃ生やした、黒っぽい帽子にレインコート姿の男が、発券所の窓口で駅員に目撃されている。その人物はアールズ・コート駅までの切符を購入した。」
「しかし、午後十時二十五分頃に、セント・ジェイムズ・パーク駅を去った乗客の中に乗車券を失くした男がいて、テンプル駅からの乗車賃を払ったそうだ。切符を失くしたからとすんなり料金を払っている。支払いを済ませると、男は急ぎ足で立ち去った──切符回収係の記憶にあるのは、そいつがレインコートを羽織っていたことだけだ。ここでまた推測となるが──その十分のあいだに、男はトイレでつけ鬚を取り外していたのではないだろうか。」(84ページ)
現在セント・ジェイムズ・パーク駅には、乗客の利用できるトイレはありませんが、当時はあったのですね。おもしろいです。

<蛇足5>
「でも、素人探偵だか人間の本質を学ぶ学生だか──あるいは古めかしく言うところの野次馬に復帰する気なら、それなりに手は尽くさないとね」(179ページ)
この文章自体あまり意味がよくわからないのですが、さておき、野次馬に「古めかしい」という形容をつけているにびっくりしました。そんな古めかしいですか?

<蛇足6>
「秀逸な推理だ。いかにも南米的な血生臭い香りがするぞ」(185ページ)
「南米的な血生臭い」とは南米の人が怒り出しそうないいぶりですが、当時のイギリスの認識はそうだったのでしょうね。

<蛇足7>
「メリマンはふたたび外出し、自家用車を停めている近所の駐車場まで歩いて行った。週末までに洗車を頼んでおこうと思いついたのだ。
 その駐車場の利用者は大半がセント・ジェームズ駅近辺の住人で占められていた。メリマンが着いたとき、手の空いた作業員は一人もいないようだった。」(203ページ)
イギリスの作品の訳でよく見られるのですが、こいう場合の駐車場は(おそらく原語は garage = ガレージ)、むしろ修理工場とかが近いと思われます。

<蛇足8>
「そして──その男はヘンリーの頭を殴った──サンドバックかゴム製のステッキか、その手の道具だったと思います。それはエドガー・ウォーレスとか、その辺りの推理小説作家に訊いてちょうだい。」(305ページ)
非難めいた調子かどうかは定かではありませんが、こういう言い方だとエドガー・ウォーレスの位置づけはあまりよくなさそうですね。


原題:Corpse Guards Parade
著者:Milward Kennedy
刊行:1929年
訳者:西川直子


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珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛 [日本の作家 岡崎琢磨]


珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 岡崎 琢磨
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
狭心症を発症し、突然倒れてしまった珈琲店〈タレーラン〉のオーナー・藻川又次。すっかり弱気になった彼は、バリスタである又姪の切間美星にとある依頼をする。四年前に亡くなった愛する妻・千恵が、生前一週間も家出するほど激怒した理由を突き止めてほしいと。美星は常連客のアオヤマとともに、大叔父の願いを聞き届けるべく調査を開始したが……。千恵の行動を追い、舞台は天橋立に!


2023年12月に読んだ3冊目の本です。

「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
「珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
「珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
「珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
「珈琲店タレーランの事件簿 5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように」 (宝島社文庫 )(感想ページはこちら
に続くタレーラン6冊目。
岡崎琢磨の「珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛」 (宝島社文庫)


このシリーズ、伸びやかに続いている印象。

今回は、タレーランのオーナーであるおじさん藻川が倒れるという非常事態。
弱気になったおじさんは、亡き妻千恵が、生前一週間も家出するほど激怒した理由を突き止めてほしいと切間美星にお願いをする。

回想の殺人ならぬ回想の失踪事件(家出事件)。
大人が家出する理由。
調べ始めるとちらつく男の影。不倫?

とこういう風に物語は流れていきます。
この謎の設定だと、どう転んでもあまりスッキリしなくなりそうなのに、きちんと着地して見せたところがすごいな、と思いました。

技巧を凝らした物語になっていまして、作りこまれた印象。
ある意味狂言回し的な存在として登場する、藻川の孫藻川小原(オハラ)などは、プロローグである老画家のシーンと並んで、キーとなる存在でしょう。
小原を登場させず、美星とアオヤマだけで探求をすすめても物語としては成立するとは思いますが、小原が登場することで ”どう転んでもあまりスッキリしない” 物語に陰影が加わったように感じます。
ただ、この小原の扱いは諸刃の剣で、全体の印象が散漫になったようにも思われます。少々欲張りすぎでしょうか。

シリーズは快調に続いていて、今のところ「珈琲店タレーランの事件簿 8 願いを叶えるマキアート」 (宝島社文庫)まで出ています。
当然買ってあります。









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プールの底に眠る [日本の作家 ま行]

プールの底に眠る (講談社文庫)

プールの底に眠る (講談社文庫)

  • 作者: 白河 三兎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
13年前の夏休み最終日、僕は「裏山」でロープを首に巻いた美少女を見つける。自殺を思いとどまった少女は、私の命をあなたに預けると一方的に告げた。それから7日間、ばらばらに存在する人や思いや過去が繋がりはじめた。結末は何処に? 切なさと驚きに満ちた鮮烈デビュー作。〈第42回メフィスト賞受賞作〉


2023年12月に読んだ2冊目の本です。
白河三兎「プールの底に眠る」 (講談社文庫)
メフィスト賞を受賞したデビュー作です。

若いころに読めばよかったなぁ、というのが読後の第一印象です。

解説が北上次郎で、いつものように熱のこもった文章で白河三兎の魅力が語られています。
「群を抜くセンス」「巧みな構成」「白河三兎の小説はすべて、キャラクターよく、センスよく、台詞もよく、印象的なシーンも多いという傑作ばかり」

その通りだな、と思うのですが、だからといってこちらに響いたかというと、そういうわけではありませんでした。

非常に印象的な物語ですし、印象に残るやりとりも随所にあります。
たとえば

「あなたって少し変わってる」
「僕は普通の高校生だよ」と否定した。
「知らないの? 普通の人間なんてどこにもいないのよ」
「それは慰めの言葉だよ」(29ページ)

「愛する家族を失うくらいなら、一生お小遣いがなくてもいい。好き嫌いしないで、残さずに食べる。祖母ちゃんが戻ってくるなら、僕は何でも言うことを聞く。
 実に子供らしい願いだ。もちろんどこの神様も僕の願いを聞き入れてはくれなかった。願うことの虚しさと、願うことしかできない子供の無力さを幼心に知ったものだ。」(168ページ)

こういうのを読むのはとても楽しい。
高校三年生の主人公僕とセミと呼ばれる中学一年生の少女(ちなみに僕はイルカ)の七日間は、極度に屈折しているもののキラキラしています。

三十路を迎えた僕が十三年前の過去を振り返っているというかたちでつづられているのですが(そのことは冒頭の序章ではっきり書かれています)、そのことをすっかり忘れてしまいました。
なので、高校生にしてはやけに老成した語り手だな、という違和感を抱きながら読むことになってしまいました。
セミのキャラクターが、ませているというのか、こちらも妙に老成したところがあるように感じられたのも、違和感に拍車をかけました。
終章では再び現在の物語になるので、主人公の語りの設定については自分の勘違いを修正できましたが、セミはそのまま大人びていたわけですね。
(誤解のないように念の為言っておきますと、この大人びたセミこそがこの物語の魅力の根源とも言えます)

この魅力的な物語を支えるのが、作者の技巧なのですが、この技巧が個人的にはマイナスに働いてしまったようです。
自らの勘違いのせいでずっと違和感を抱き続けながら読んでいたことで、技巧面での狙いに気づきやすくなってしまったのかもしれません。この技巧の結果北上次郎が「最後にそれが一気に噴出する」という効果が得られるはずが、力が減じられてしまいました。
残念。

白河三兎の別の作品も読んでみたいと思いました。


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磔刑の木馬 [海外の作家 さ行]


磔刑の木馬 (文春文庫)

磔刑の木馬 (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/12/07
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
回転木馬に磔にされた男。散乱する金貨の中で殺された娘。射殺されたドイツ軍伍長。ナチ占領下パリの連続殺人に挑むはフランス人警部サンシールとゲシュタポ捜査官コーラー。占領軍は伍長の死の代償にパリ市民27名の処刑を決定。彼らの生命を救うため、二人は真犯人を見つけねばならない──好評のシリーズ第二弾。


2023年12月に読んだ最初の本です。
J.ロバート・ジェインズの「磔刑の木馬」 (文春文庫)
例によって長らくの積読から引っ張り出してきた本で、奥付は2002年6月。
「虜囚の都──巴里一九四二」 (文春文庫)に続くシリーズ第2弾です。

ナチス占領下のパリを舞台に、フランス国家治安警察のフランス人刑事サンシールが、ゲシュタボの捜査官コーラーと組んで事件の捜査に当たる、という枠組みの作品です。

「虜囚の都──巴里一九四二」 (文春文庫)がなかなか面白かったので第2作の本書も購入したのですが、舞台設定が設定だけに重苦しい内容で、なかなか手に取らないうちに、積読の山に埋もれてしまいました。

占領サイドのドイツといっても、軍、ゲシュタボ、SSとさまざまな組織があり、占領されるサイドのフランスも普通の(?) フランス人に、レジスタンスに、ギャングに、とさまざま。
いろいろと思惑が入り乱れる状況です。
ゲシュタボと組んでいる、というだけで捜査はやりにくくなったりしますし、捜査を命ずる上役たちにもそれぞれの思惑があって状況を複雑にしていきます。

解説で関口苑生が書いているように
「場面場面のディテールは詳細に描かれるのだが、物語の繋がり、ブリッジの部分が実に大雑把──といって悪ければ、前後の脈絡を無視したような形で展開されていく」
ので、話の筋が掴みづらく、読むのに時間がかかってしまいました。

引用したあらすじにもあるように、「回転木馬に磔にされた男。散乱する金貨の中で殺された娘。射殺されたドイツ軍伍長」と3つの殺人事件があるのですが、それぞれたどるべき筋がたくさんあるという感じで、相互につながりがあるのかないのかもわからない(まあミステリなんで繋がるはずなんですが)。

掴みにくかった物語の姿が、サンシールの謎解きによって見えてきます。
殺人事件そのもの以外にも、いくつもの物語の要素が絡み合っていて複雑なプロットが浮かび上がってきます。
振り返ってみれば、事件の構図とプロットの複雑さに落差があるようにも思われ、この部分が本書の魅力なのかもしれません。

第3作「万華鏡の迷宮」 (文春文庫)まで訳されていたのですが、買えずじまいで絶版ですね。
読んでみたいな、と思いましたが、残念。
復刊は......難しいでしょうね。


原題:Carousel
著者:J. Robert Janes
刊行:1993年
訳者:石田善彦



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映画:ウォンカとチョコレート工場のはじまり [映画]

ウォンカとチョコレート工場のはじまり.jpg

映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」の感想です。
「ロスト・フライト」から間を開けず、年末に観ました。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
ロアルド・ダールの児童小説を映画化した『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚(たん)。同作に登場する工場長ウィリー・ウォンカがチョコレート工場を作るまでを描く。監督・脚本は『パディントン』シリーズなどのポール・キング。若き日のウォンカを『君の名前で僕を呼んで』などのティモシー・シャラメが演じ、『ラブ・アクチュアリー』などのヒュー・グラント、オスカー女優オリヴィア・コールマン、『シェイプ・オブ・ウォーター』などのサリー・ホーキンス、『ビーン』シリーズなどのローワン・アトキンソンらが共演する。

---- あらすじ ----
幼いころから世界一のチョコレート店を持つことを夢見ていたウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)は、一流の職人が集まるチョコレートの町へやって来る。彼が作るチョコレートは瞬く間に人々を魅了するが、町を牛耳る「チョコレート組合3人組」にねたまれ、何かと邪魔をされてしまう。この町は夢見ることを禁じられた町だった。さらに、ある因縁からウォンカを付け狙うウンパルンパという謎の人物(ヒュー・グラント)が現れる。


映画の感想が続いてしまいますが「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」です。
今年最初に観た映画です。
ミュージカル仕立て(といっても歌の比重はかなり低めです)。

「チャーリーとチョコレート工場」の続編──続編ではないですね、前日譚です。
「チャーリーとチョコレート工場」は、ジョニー・デップが工場主であるウォンカを演じていましたね。

「チャーリーとチョコレート工場」の原作は、ミステリファンにはおなじみの、あのロアルド・ダール(「チョコレート工場の秘密」というのが一般的なタイトルかと思います)。
子どもの頃読んでいた、というのもありますが、個人的には原書を最後まで読んだ(読めた、というのが正しい)数少ないうちの一冊ということで印象的です。

この映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」についても原作ロアルド・ダールなのかな? そんな作品書いていたかな?と思いましたが、どうやらキャラクターや設定を借りた、オリジナルのようです。
もはや後知恵ですが、ロアルド・ダールが作り上げたチョコレート工場のぶっ飛び方に比べると、やはり(?) おとなしい感じがしましたね。

1971年に「Willy Wonka & the Chocolate Factory」というタイトルの映画があるようですが(日本でVHS化されたときのタイトルは「夢のチョコレート工場」だったそうです)、そちらはダールの作品を映画化したもののようです。紛らわしいですね。

邦題どおり、ウォンカが、チョコレート・カルテルとの戦いを経て、チョコレート工場を始めるまでの物語。
愉快な物語です。
なにより、ヒュー・グラント!
ウンパルンパという、謎の小さなオレンジの紳士を演じています。このキャラクター、「チョコレート工場の秘密」にも出てきたような......
貴重なカカオ豆を産するルンパランドという島の出身で、へんてこな歌を歌って、物語の要所要所を締めにやってきます。すごい。

映画館はほぼ満席で、カップルが多かったですね。
おっさんが一人で観るのは少々変で浮いていたかもしれませんが、肩の凝らない映画で楽しめました。



製作年:2023年
製作国:イギリス/アメリカ
原 題:WONKA
監 督:ポール・キング
時 間:116分



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映画:ナポレオン [映画]

ナポレオン.jpg

映画「ナポレオン」の感想です。
「ロスト・フライト」から間を開けず、年末に観ました。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
『グラディエーター』のリドリー・スコット監督とホアキン・フェニックスが同作以来再び組み、フランスの皇帝ナポレオンの生涯に迫る歴史ドラマ。フランス革命後の混乱が続く国内で、彼がいかにして皇帝の座へと上り詰めたのかを、妻・ジョゼフィーヌとの関係も交えて映し出す。『私というパズル』などのヴァネッサ・カービー、『あさがくるまえに』などのタハール・ラヒムらがキャストに名を連ねる。『ゲティ家の身代金』でもスコット監督と組んだデヴィッド・スカルパが脚本を担当する。

---- あらすじ ----
1789年、自由と平等を求めた市民らによってフランス革命が起こり、絶対王政が崩壊する。フランス国内が大きく揺れ動く中、軍人ナポレオン(ホアキン・フェニックス)は目覚ましい活躍を見せ、皇帝へと上り詰めていくが、妻のジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)との関係はもつれたままだった。その一方でナポレオンは軍を率いて次々と戦争を繰り返し、ヨーロッパ大陸を手中に収めていく。

あまり変わりませんが、映画のHPからも引用しておきます。
1789年 自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り 皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが──。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく。


ナポレオンって、漠っとしたイメージ ── 連戦連戦で皇帝にまでのぼりつめて、ロシアを攻めに行って失敗した、というくらい ── はあってもよく知らないんですよね。世界史もとっていませんし。
なので、映画を観る前は、権力を握るために頑張って、いざ握った後はさぞや華やかな宮殿生活を送っていたのだろうな(革命後とはいえ、それを覆して皇帝の位につくのですから、フランスのこと豪華な王宮のイメージでした)と勝手に思っていたのですが、まったくそんなことはありませんでした。
本当に取り憑かれるように、戦争に次ぐ戦争の日々。落ち着く日々などありはしません。
そりゃあ、妻との間柄も安定しないはずですよね。

戦は、なにかを手に入れる、あるいは守るための手段であるはずが、戦そのものが目的となってしまっているかのよう。
ナポレオンにとっての幸せって、なんだったんだろう?
なにを成し遂げたかったのだろう?

さらに不思議なのは、王位を廃したフランスで皇帝という新たな王座を得るまでになる人物でありながら、カリスマ性が感じられなかったこと。
権力志向の強い人たちに操られていた、というわけでもない。
ただただ戦争に強いというだけで、ここまで担ぎ上げてもらうことは無理ではないかと思うんですが、この映画を観る限り、戦に強いというそのことだけで支持され皇帝位に就いた、そう思えてしまう。
ナポレオンの弟というのが要所要所に出てきていて、ナポレオンを支えているようなのですが、それほど仕掛け人というか参謀と言うか、そういう存在のようにも見受けられない。

だからこそ、妻ジョゼフィーヌとの関係のもつれ具合が強く感じ取れるということなのかもしれませんが......
王は(権力者は)孤独だ、とはよく言われることですが、難しいですね。

ナポレオンのこと、観る前よりもわからなくなりました。

<2024.1.14追記>
冒頭にポスターを追加しました。

製作年:2023年
製作国:イギリス/アメリカ
原 題:NAPOLEON
監 督:リドリー・スコット
時 間:158分



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