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少女禁区 [日本の作家 は行]


少女禁区 (角川ホラー文庫)

少女禁区 (角川ホラー文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/10/23
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
15歳の「私」の主人は、数百年に1度といわれる呪詛の才を持つ、驕慢な美少女。「お前が私の玩具になれ。死ぬまで私を楽しませろ」親殺しの噂もあるその少女は、彼のひとがたに釘を打ち、あらゆる呪詛を用いて、少年を玩具のように扱うが…!?
死をこえてなお「私」を縛りつけるものとは──。哀切な痛みに満ちた、珠玉の2編を収録。瑞々しい感性がえがきだす、死と少女たちの物語。第17回日本ホラー小説大賞短編賞受賞。


2023年5月に読んだ2冊目の本です。
第17回日本ホラー小説大賞短編賞受賞 伴名練「少女禁区」 (角川ホラー文庫)
表題作と、「chocolate blood, biscuit hearts」の2編収録ですが、非常に薄い本ですね。

ホラーはあまり得手ではないのですが、独特の世界観に引き込まれました。
両作とも、恐ろしい内容ながら淡々とつづられる物語のうちに、こちらではない、あちらの世界が浮かび上がる不思議な世界観です。
リリカルな残酷物語?

「chocolate blood, biscuit hearts」は、あたかも囚われているかのように幽閉状態で育てられている富豪姉弟の脱出行(?) 。
近未来と思われる設定で、五感のうち皮膚感覚以外を配信者から受け取るサイネットという仕組みが出てきます。
タイトルからマザー・グースの "「chocolate blood, biscuit hearts」" を連想しましたが、あまり関係ないですね。作中で言及されているのは「ヘンゼルとグレーテル」。
「あたしたちはとどのつまり、子どもでしかなかった。チョコレートの血が流れてて、ビスケットの心臓で動いてた。すべてが甘かったのよ、あたしたちは。」(51ページ)
というセリフもあります。
対する大人は「本物の血と肉をもった大人たち」と表現されています。

「少女禁区」は、時代設定がよくわからないのですが、近過去のように思われます。
冒頭に出てくる「施療所」という単語や出てくる文物からそう判断したのですが、なにより呪詛が一般的で人柱が必要な世界で和という風情ということでそう思ってしまったのかもしれません。
呪術を使いこなす最強の少女と、その僕(しもべ)のような主人公という設定の残酷物語(いじめ、というレベルを超えております)から、人柱をキーに世界をガラッと変えて見せるのが印象的。
ラストの一行がかなり趣深いのですが、ここだけが急に西洋的になっているのが少々気になりました。


<蛇足1>
2023年5月22日の段階で、この本を amazon でチェックしてみたら、もう出版社品切れ状態のようで、古書価がものすごいことになっていますね。
9,680円! 手元にある文庫の定価は 438円です。

<蛇足2>
タイトル「少女禁区」の中にある「禁区」。
「禁区」といったら中森明菜の楽曲なのですが(笑)、当時「禁区」の意味がわからず辞書で調べたら載っていなくて困惑したことを思い出しました。
PCの漢字変換でも出てきませんね。
中国語では「禁区」という語はあるようですが、「禁区」という語は字面のイメージ喚起力があるので、なんとなく意味がわかるのがすごいですね。



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