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PLAY プレイ [日本の作家 山口雅也]


PLAY プレイ (講談社文庫)

PLAY プレイ (講談社文庫)

  • 作者: 山口 雅也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/05/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
外科医が、愛するぬいぐるみたちと興じる、秘密の「ごっこ遊び」。怖ろしい罠が待ち受ける「ボード・ゲーム」。引き篭もりたちが、社会復帰のためにと熱中する「隠れ鬼」。自分の家族がそっくりそのまま登場する「RPG(ロールプレイング)ゲーム」。四つの奇妙な「遊び」をモチーフにした超絶技巧の、ミステリ・ホラー短編集。


5月に読んだ3冊目の本です。
山口雅也「PLAY プレイ」 (講談社文庫)
「遊び」をモチーフにした4編収録の短編集で、上で引用したあらすじで簡単に各話が紹介されています。

「ぬいのファミリー」のモチーフはぬいぐるみ。
大のおとながと言われそうですが、ぬいぐるみに入れ込んでいる外科のエースと家族の話。
4編の中ではおとなし目で導入部という感じなのでしょうが、そこは山口雅也、細かなところまで作りこまれています。

「蛇と梯子」はボード・ゲーム。
インドを舞台にすごろく型のボードゲームに取り込まれていく駐在員家族を描いています。
単純に見えて、重層的な構造をもった物語になっています。

「黄昏時に鬼たちは」は隠れ鬼。
ハンドルネームで呼び合うネットサークルが繰り広げる隠れ鬼のゲーム中に殺人事件が起きます。
ホラーより、ミステリの色彩ですね。
日本の某作(リンクを貼っていますがネタバレになりますのでお気をつけください)と同様のアイデアがより洗練された形で提示されていてびっくりしました。おすすめです。

「ホーム・スウィート・殺人(ホミサイド)」はヴィデオ・ゲーム。
タイトル「ホーム・スウィート・殺人(ホミサイド)」から、クレイグ・ライスの「スイート・ホーム殺人事件」(ハヤカワ・ミステリ文庫)(原題が Home Sweet Homicide )を思い起こしたのですが、作風は全く違います。
スナッフ・フィルムならぬスナッフ・ゲーム。スナッフ・ゲームとは「刺激的な殺人ゲームをごく個人的なものに──つまり、自分の周囲の知り合いをゲームのキャラクターに仕立てて、殺しを楽しめるようにした」(278ぺページ)もの、と説明されます。こういう設定なので、現実と架空の世界の境界線がぼやけていく展開となります。

強弱あれど、いずれも山口雅也の技巧がさえわたる作品ばかりでした。
素晴らしい。
積読が長すぎて、品切れ状態になっているようですが、どこかから復刊されるべき名作だと思います。


<蛇足>
「実際の殺人現場を見たい人に、わざわざポリゴンに仕立てたもの見せたってしょうがないじゃないの」(277ページ)
スナッフ・フィルムの話題でポリゴン?? まさかここでポケモンのわけないし....
とトンチンカンなことを思って調べてみたら、polygon は多角形という意味で「多角形を多数使って立体物の形状を近似する手法」を指すのですね。なるほど。





タグ:山口雅也
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