磔刑の木馬 [海外の作家 さ行]
<カバー裏あらすじ>
回転木馬に磔にされた男。散乱する金貨の中で殺された娘。射殺されたドイツ軍伍長。ナチ占領下パリの連続殺人に挑むはフランス人警部サンシールとゲシュタポ捜査官コーラー。占領軍は伍長の死の代償にパリ市民27名の処刑を決定。彼らの生命を救うため、二人は真犯人を見つけねばならない──好評のシリーズ第二弾。
2023年12月に読んだ最初の本です。
J.ロバート・ジェインズの「磔刑の木馬」 (文春文庫)。
例によって長らくの積読から引っ張り出してきた本で、奥付は2002年6月。
「虜囚の都──巴里一九四二」 (文春文庫)に続くシリーズ第2弾です。
ナチス占領下のパリを舞台に、フランス国家治安警察のフランス人刑事サンシールが、ゲシュタボの捜査官コーラーと組んで事件の捜査に当たる、という枠組みの作品です。
「虜囚の都──巴里一九四二」 (文春文庫)がなかなか面白かったので第2作の本書も購入したのですが、舞台設定が設定だけに重苦しい内容で、なかなか手に取らないうちに、積読の山に埋もれてしまいました。
占領サイドのドイツといっても、軍、ゲシュタボ、SSとさまざまな組織があり、占領されるサイドのフランスも普通の(?) フランス人に、レジスタンスに、ギャングに、とさまざま。
いろいろと思惑が入り乱れる状況です。
ゲシュタボと組んでいる、というだけで捜査はやりにくくなったりしますし、捜査を命ずる上役たちにもそれぞれの思惑があって状況を複雑にしていきます。
解説で関口苑生が書いているように
「場面場面のディテールは詳細に描かれるのだが、物語の繋がり、ブリッジの部分が実に大雑把──といって悪ければ、前後の脈絡を無視したような形で展開されていく」
ので、話の筋が掴みづらく、読むのに時間がかかってしまいました。
引用したあらすじにもあるように、「回転木馬に磔にされた男。散乱する金貨の中で殺された娘。射殺されたドイツ軍伍長」と3つの殺人事件があるのですが、それぞれたどるべき筋がたくさんあるという感じで、相互につながりがあるのかないのかもわからない(まあミステリなんで繋がるはずなんですが)。
掴みにくかった物語の姿が、サンシールの謎解きによって見えてきます。
殺人事件そのもの以外にも、いくつもの物語の要素が絡み合っていて複雑なプロットが浮かび上がってきます。
振り返ってみれば、事件の構図とプロットの複雑さに落差があるようにも思われ、この部分が本書の魅力なのかもしれません。
第3作「万華鏡の迷宮」 (文春文庫)まで訳されていたのですが、買えずじまいで絶版ですね。
読んでみたいな、と思いましたが、残念。
復刊は......難しいでしょうね。
原題:Carousel
著者:J. Robert Janes
刊行:1993年
訳者:石田善彦
タグ:J.ロバート・ジェインズ