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8・1・3の謎(ポプラ社) [海外の作家 ら行]



<カバー裏あらすじ>
ダイヤモンド王・ケスルバッハがホテルで惨殺された。部屋にはルパンの名刺と謎の数字「813」が。事件をめぐって鬼刑事ルノルマン、名探偵ホームズ、そして冷酷無比の殺人鬼が決死の闘争を繰り広げる。そこにはヨーロッパ中を巻き込む大陰謀が隠されていた……解説/池上永一


2024年2月に読んだ4冊目の本です。
モーリス・ルブランの「8・1・3の謎 怪盗ルパン全集シリーズ(3) 」
子ども向けのものを改めて読んでいます。

いやあおもしろい。
味わいというのはありませんが、とにかくスピーディーに物語がどんどん進んでいく快感。

それもそもはず。
本の冒頭、南洋一郎による「この本を読むひとに」という文章に、
この「8・1・3の謎」は、”8・1・3” と ”Les Crimes D. Aresene Lupin” の2冊を1冊にまとめたもの、と書いてあります。
子どもの頃手に取った版にもこの文章はあったはずで、ということはこの文章も読んでいるはずなのですが、記憶にありませんでした。
その後、大人向けの普通の翻訳では、たとえば新潮文庫などでは、「813」 (新潮文庫)「続813」(新潮文庫)と2冊あるのに、子供向けのポプラ社版では続編が見当たらなかったので不思議に思っていました。
2冊を1冊にまとめたんですね──Wikipediaによると原書は、もともと1冊だったものを2分冊にして今の形になっているようですね。

次から次へと繰り広げられる謎また謎の展開の連続に、ハラハラドキドキ。
訳されたのが昔だけに、全般に古めかしい印象な残りますが、それも味わいのひとつ。
今の子供たちも夢中になって読んでくれているといいな、と思いました。


<蛇足1>
「それだとすれば、まるで、キツネとオオカミのだましっこだ。」(99ページ)
キツネとタヌキではないのですね。

<蛇足2>
「ふたりは足音をしのばせて王子ピエール(じつは貧乏詩人ボープレ)の寝室にしのびこみ、カーテンのかげにかくれた。」(104ページ)
「美しいみどりの芝生のベンチに腰をかけているのは、美少女ジュヌビエーブと王子ピエール(じつは自殺しそこなった貧乏詩人ポープレ)である。」(135ページ)
”(じつは貧乏詩人ボープレ)”や”(じつは自殺しそこなった貧乏詩人ポープレ)”という表記に笑ってしまいました。
書かれている内容はその通りなのですが、大人向けの小説ではこういう書き方はしませんよね。

<蛇足3>
『ルパンは、手錠をかけられて引きたてられていきながら、そこに立っていたドードビル兄弟の兄のそばを通りながら、くちびるも動かさず、たくみな腹話術で、
「リボリ街二十七番地……ジュヌビエーブ……たすけろよ」
 と、他人に聞こえない声でささいた。』(169ページ)
腹話術なので唇を動かさず、というのはいいのですが、他人に聞こえない声、というのはどうなんでしょう?
それは腹話術とは違うスキルのように思えます。
最後の ”ささいた” は ”ささやいた” ですね。

<蛇足4>
「その中指は本物の指と色のちがわない、ゴムのうすいサックがかぶせてあるので、毎朝のきびしい身体検査にも、刑務所長の目をごまかせるのだ。」(171ページ)
当時の技術でこんな精巧なものが作れたのでしょうか?
なんとなく疑問に思ってしまいます。

<蛇足5>
「あと三十分だ。一秒おくれても死刑はおこなわれる。いそげ、いそげ……ルパンは両足をばたばたさせた。」(324ページ)
タクシーで急ぐルパンの描写です。
脚をばたばさせるなんて、ルパン、子どもか!? きっと南洋一郎の趣味でしょうね(笑)。

<蛇足6>
「ルパンはほっとした。おれは無実の人間のいのちを助けたのだ。なんともいえない、いい気持だった。」(325ページ)
いやいや、自分で捕まえて死刑に追い込んだくせに、ぎりぎり死刑執行を食い止めたからって「なんともいえない、いい気持」だなんて、ちょっとルパン勝手すぎませんか(笑)。
これ助けられていなかったら、怪盗紳士なのに、実質殺人に手を染めたことになりますよね。




原題:8・1・3 / Les Crimes D. Aresene Lupin
作者:Maurice Leblanc
刊行:1910年(Wikipediaによる。1917年に分冊化)
訳者:南洋一郎











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