SSブログ

青い雪 [日本の作家 あ行]

青い雪

青い雪

  • 作者: 麻加 朋
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/02/22
  • メディア: 単行本

<裏側帯あらすじ>
雪降る夜、ひとりの女が身を投げた。それがすべての始まりだった。 非業の運命に翻弄されながらも、強く生きる人々を描く慟哭の長編ミステリー。
夏の数日をともに過ごす三組の家族を、悲劇が襲う。最年少の五歳の少女が失踪したのだ。事件性も疑われるが、手掛かりが乏しく、行方は知れぬまま。穏やかな避暑地での日々は永遠に失われてしまった──。三組がそれぞれに秘めた複雑な家庭の事情と、長い時を経て現れ出た一通の告発状。絡み合った謎が氷解したとき、明らかになる真実とは?



2024年2月に読んだ5冊目の本。
積読にしていた単行本です。
麻加朋青い雪 (文庫)

第25回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
大谷睦「クラウドの城」 (光文社文庫)と同時受賞でした。

2024年3月に文庫化されました。それで慌てて(?) 読みました(笑)。
文庫の書影はこちら。

青い雪 (光文社文庫 あ 74-1)

青い雪 (光文社文庫 あ 74-1)

  • 作者: 麻加朋
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2024/03/13
  • メディア: 文庫


冒頭のプロローグで、不思議な(?) 出来事が描かれ、その中で女の人が「青い雪」と言います。
これがタイトルの由来だな、とわかるのですが、その後場面は大きく切り替わって、長野県の土筆町で過ごす3家族の子供たちの視点になります。
柊寿々音、石田大介、的場希海、的場秀平。大人の登場人物の視点の場面もごく一部ありますが、概ねこの子供たちで、なかでも中心人物は寿々音。
第一章は寿々音11歳、第二章が18歳、第三章が27歳と、成長していく過程が描かれていきます。

すずねは、うそつき。すてられた子。(48ページ)
[すずねはあくまのこ ははおやはブルースノウ うらみは消え い](112ページ)
すずねに向けられた悪意に満ちたメッセージが物語の底流になり、ブルースノウという語で、プロローグとのつながりが気になってきます。

プロットが非常に丹念に作りこまれているな、と感心しました。
選考委員としてのコメントだと思うのですが、帯に書かれている薬丸岳の「人物の心情を丹念に描き、感動できる物語を紡いでいく力量を評価した」という言葉も納得できます。

ところが、ミステリーにしようとしたためだと思うのですが、真相を伏せるために、ある主要登場人物の心情が(一部を除き)後回しにされています。
薬丸岳のいう感動の大きなポイント(の一つ)と言えるこの人物の心情が後回しというのは、物語の構成としてはよくないように思いましたし、これを含め視点の切り替えが真相を隠すためだけに、あまりにも作者の都合だけで選ばれているように感じられてしまいます。
ひょっとしたらこの物語はミステリーとして語られない方がよかったのかもしれません。

といいつつ、プロローグを振り返ってみたくなるエピローグはとてもよかったですし、最後にさらっと明かされる「青い雪」の意味はとてもすてきだと思いました。
この作者、ミステリー味を薄めていく方向で活躍されるのかもしれませんね......


nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ: