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七度狐 [日本の作家 大倉崇裕]


七度狐 (創元推理文庫)

七度狐 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/07/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
静岡に行ってくれないかな―北海道出張中の牧編集長から電話を受け、緑は単身杵槌村へ取材に赴く。ここで名跡の後継者を決める口演会が開かれるのである。ところが到着早々村は豪雨で孤立無援になり、関係者一同の緊張はいやが上にも高まる。やがて後継者候補が一人ずつ見立て殺人の犠牲に……。あらゆる事象が真相に奉仕する全き本格のテイスト、著者初長編の傑作ミステリ。

「三人目の幽霊」 (創元推理文庫) に続くシリーズ第2弾は、長編です。

扉のあらすじが裏表紙とかなり違っているので、そちらも引用しておきます。
落語と無縁だった間宮緑も職場に定着し、牧大路編集長の透徹した洞察力に舌を巻きつつ落語編集道を驀進中。夏のある日、緑は春華亭古秋一門会の取材を命じられ、静岡の杵槌村を訪れる。この会は、引退を表明している当代古秋が七代目を指名する、落語界の一大関心事だ。開始直前、折からの豪雨に鎖され陸の孤島と化した村に見立て殺人が突発。警察も近寄れない状況にあっては、名探偵の顔を持つ牧も電話の向こうで苛立ちを募らせるばかり。やがて更なる事件が……。犯人探しと名跡の行方、宿悪の累が相俟って終局を迎えたそのとき、全ての謎が解ける!

襲名にかかる跡目争いを軸にしたミステリです。
ミステリ的にはたいへん贅沢に趣向をいっぱい盛り込んでいます。「嵐の山荘」「見立て殺人」「安楽椅子探偵」そして、新本格ミステリではよく取り上げられるあのテーマ(ネタばれにつき明示しません)。杵槌村は四十五年前、先代古秋が行方不明になった場所だ、という因縁話的な要素も加味されています。
落語ということでは、タイトルにもなっている「七度狐」という話が見立てにも利用されています。実際の落語「七度狐」は騙しの回数が7回ないのに、この作品ではきちんと7回騙すバージョンを作っていて、落語が好きだとより一層楽しいのでしょうね。落語に知識がなくとも、もちろん、ミステリとしては問題ありませんので、安心して読んでください。
芸に魅入られた落語家たちを描いており、殺人事件で兄弟が殺されていても、襲名のかかった一門会のために稽古を続ける姿などはその象徴かと。一般人にはちょっと考えられないような入れ込み方ですが、それだけ芸は奥深いということなのでしょう。こういったことを踏まえて明かされる真相も、業を感じます。
最後のエピローグもなかなか余韻を残して印象的でした。

「本格ミステリ・ベスト10 2004」第4位です。

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