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図書室の海 [日本の作家 恩田陸]


図書室の海 (新潮文庫)

図書室の海 (新潮文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
あたしは主人公にはなれない――。関根夏はそう思っていた。だが半年前の卒業式、夏はテニス部の先輩・志田から、秘密の使命を授かった。高校で代々語り継がれる“サヨコ”伝説に関わる使命を……。少女の一瞬のときめきを描く『六番目の小夜子』の番外篇(表題作)、『夜のピクニック』の前日譚「ピクニックの準備」など全10話。恩田ワールドの魅力を凝縮したあまりにも贅沢な短篇玉手箱。

恩田陸初のノン・シリーズの短編集とあとがきに書かれています。
恩田陸という作家は、雰囲気というか、トーンというかを非常に重要視している作家だと勝手に思っています。
恩田陸が作品ごとに作り上げる雰囲気に浸れるかどうかで、読後感が大きく変わってくると考えています。
シリーズ物で第1作ではさほど感銘を受けなかったのに、シリーズが進むにつれて世界観がしっくりと馴染んできて楽しくなる、というのは恩田陸に限らず普遍的なことだと思いますが、単独作品でもお話づくりにおいて雰囲気の占める比重が高いように思えます。ストーリー展開や事件に気をとられるだけではなく、作品が醸している雰囲気、作品の手触りを味わえたかどうか、そういう切り口で読むと一層楽しい作家だと思っています。
というわけなので、ノン・シリーズの短編というと、さすがの恩田陸でも雰囲気醸成が難しいのではないかと読む前は懸念していましたが、余計な心配でした。
長編のようにどっぷり浸る、ということはないかわりに、短い分ストレートにトーンが打ち出されているようです。
短いだけに、雰囲気だけで1編を押し切ったような作品もあり、ひょっとしたら恩田陸らしさはこちらの方が出ていると言うことも可能かもしれません。場合によると、あっけなく幕切れを迎えるとか、尻切れトンボみたいとかいう読後感を招きがちな作風にも思われますが、浸ってみると、こう、じわじわと居心地がよかったりします。
これまでの作品--「六番目の小夜子」 (新潮文庫)「夜のピクニック」 (新潮文庫)「麦の海に沈む果実」 (講談社文庫)--の番外編の趣の作品もあり、恩田陸作品のアラカルト的な短編集ともいえますので、こちらで手触りを確認して、その後長編でどっぷりという楽しみ方もできるかも。
恩田陸作品の楽しみ方をつかんでいなかったころに読んだデビュー作「六番目の小夜子」 (新潮文庫)を読み返してみたくなりました。

タグ:恩田陸
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