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乱鴉の島 [日本の作家 有栖川有栖]


乱鴉の島 (新潮文庫)

乱鴉の島 (新潮文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
犯罪心理学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。島を覆う死の気配。不可思議な連続殺人。孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。

「本格ミステリ・ベスト10〈2007〉」 第1位。
2006年週刊文春ミステリー・ベスト10第5位。ちなみに「このミステリーがすごい! 2007年版」 では19位でした。
孤島ではありますが、因習残る村、というわけではなく、いまや無人島同然の島に集まった人々、という構図です。なので、「獄門島」 (角川文庫)「黒祠の島」 (祥伝社文庫)のパターンではなく、「そして誰もいなくなった」 (ハヤカワ:クリスティー文庫)のパターンですね。有栖川さんご自身の「孤島パズル」 (創元推理文庫) に近いかな?
火村と有栖は闖入者という位置づけで、その他の人たちが「どうして島に集まっているのか」が当初から繰り返し問われてます。
事件の犯人探しとこの謎「島の秘密」の2つがこの作品のメインテーマ(?)です。
有栖川さんといえば、ロジックの魅力あふれる本格ミステリの書き手として有名ですが、この作品では控えめな印象です。これは「島の秘密」とテーマが2つあるからかもしれません。--誤解のないように補足しておきますが、控えめといっても手を抜いているわけではありません。犯人を限定するロジックはいつも通り手堅いですし、キーになるポイントも読者がしっかりと認識できるよう堂々とさらしてあります。さすがの出来栄え。
死体の出し入れをめぐる取り扱いも、被害者がホリエモンの一部をモデルにした登場人物ということとあいまって、着地がカッコよく決まっています。
「島の秘密」の方は、おもしろい着眼点だと思いました。なぜか早い段階で予想がついてしまいまして--根拠なくただただ思いついたのです--、驚きはしなかったのですが、その分、作者の隠し方というか、現わし方を楽しむことができました。ある意味、奇想に属するものともいえるアイデアなので、好みに合わない人もいるかもしれませんね。
有栖川さんの作品は、派手なトリックがあるわけではないことが多いので、地味な印象を持っている人も多いのではないかと思いますが、ロジックのきらめきは十分輝いていると思いますし、きちんとした折り目正しい本格ミステリは実は貴重品なので、大切に読んでいきたいです。
ところで、ポーの「大鴉」は、タイアと読むのですね。勉強になりました。
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