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聯愁殺 [日本の作家 西澤保彦]


聯愁殺 (中公文庫)

聯愁殺 (中公文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/09/22
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大晦日の夜。連続無差別殺人事件の唯一の生存者、梢絵を囲んで推理集団〈恋謎会〉の面々が集まった。四年前、彼女はなぜ襲われたのか。犯人は今どこにいるのか。ミステリ作家や元刑事などのメンバーが、さまざまな推理を繰り広げるが……。ロジックの名手がつきつける衝撃の本格ミステリ、初の文庫化。

奥付を見ると文庫になったのは2010年9月なのでもう2年以上も前なのですが、あたらしい帯をつけて本屋さんに山積みになっていますね。あたらしく買ったのではなく、積読を引っ張り出して読みました。
西澤保彦は、現実にはありえない設定を前提にミステリを繰り広げる初期の作品(「七回死んだ男」 (講談社文庫)「人格転移の殺人」 (講談社文庫)など)が大好きで、結構読みましたが、そのあとの作品があまり好きではありません。「幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿」 (講談社文庫)から始まる神麻嗣子シリーズも、「彼女が死んだ夜」 (幻冬舎文庫)から始まる匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズというべき??)も、正直あまり楽しんでいません。なんだか人間の厭らしい部分をデフォルメして見せつけるような部分が多く、ちょっと辟易してしまうんですね。
それでも、初期の作品の魅力が忘れられなくて、またやってくれるんじゃないかと期待がふくらんで、ずっと読み進めています。「ストレート・チェイサー」 (光文社文庫)みたいな作品とか、また書いてくれないものかなぁ。
で、この「聯愁殺」ですが、ひさしぶりに素直に楽しめました。シリアル・キラーものではあるので、人間の冥い部分を描くところもあるのですが、全体の仕掛け(?)というか枠組みのピースとして機能しているので、不快には感じませんでした。
最初は、不安いっぱいだったんですよね。また嫌なところ満載の作品ではないか、と。
いつもの西澤作品どおり、一礼比(いちろい)とか双侶(なるとも)とか矢集(やつめ)とか丁部(よぼろべ)とか、難読苗字ばかり(普通の苗字の人は一人も出てきません) ですこぶる読みにくく (最初の1回だけ振り仮名をつけるのではなく、最後まで何度でも何度でも振り仮名を振っておいてほしいです)、ちょっとねちっこい感じの文章もあいまって、本当に不安でした。
ああでもないこうでもないという推理合戦が繰り広げられること自体は西澤作品ではよくあることで、匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)などでもおなじみの趣向ですから、ちょっと無茶苦茶な推論も含め、繰り出されるロジック(?)を楽しんで読んでいったわけですが、いやぁ、作者の企みがどこになるのか、なかなか明らかになりません。
途中、やはり人間の陰の部分が色濃く出てくるのですが、投げ出さず、読み続けてよかったです。
半ば以降で、うすうす犯人の見当がつきまして、やったね!、とちょっぴり優越感(?)に浸りつつ読んだのですが、着地がそれどころではない地点まで連れて行ってくれまして、大満足。犯人の見当がつくだけじゃぁ、この作品が見えたことにはなりません。ダークな結末、という声もありますが、ダークであっても、厭な結末ではない、と思いました。
西澤作品、個人的に、ひさびさのヒットです。

読後、氷川透による解説を読んで、感動(?)を深めました。
この解説、絶品です。
ぜひ、ぜひ、解説まで読んで、「聯愁殺」の素晴らしさを再確認していただければ、と思います。
ちなみにこの作品、「本格ミステリ・ベスト10 2003」第9位です。

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