天使にかける橋 [日本の作家 赤川次郎]
天使にかける橋 天使と悪魔 (カドカワ・エンタテインメント)
- 作者: 赤川次郎
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2013/10/30
- メディア: 新書
<裏表紙あらすじ>
見たところは16、7歳の可愛い少女・マリと、黒犬のポチ。マリはなんと「研修中」の天使で、ポチは地獄から「成績不良」でたたき出された悪魔なのだ。水と油のこの二人、なんと訳あって人間界を旅している。
しかし天使といえど仕事は必要。マリは、遊園地〈Nランド〉で働くことに。遊園地の敏腕女社長に気に入られ、アイドル・さおりのステージを手伝うことになったマリだけど、さおりには犯罪者の兄がいて…。(『天使が森に迷うとき』)
学校で、セレブなお屋敷で、凶悪犯たちの住まう島で。いろんな人との出会いと別れを経験し、それでもマリは天使のままでいられるか? 冒険ロマンミステリー、待望の最新刊!!
実に久しぶりの「天使と悪魔」シリーズです。シリーズ第8作。
この「天使にかける橋」 (カドカワ・エンタテインメント)が出たのが2013年10月で、前作「悪魔のささやき、天使の寝言」 (角川文庫)が出たのが2007年9月ということですから、実に6年ぶり。
「鼠、影を断つ」 (角川文庫)の感想のところで(リンクはこちら)、鼠シリーズのおかげで「天使と悪魔」 (角川文庫) のシリーズがお留守になっているようだと書いたのですが、ずいぶん長い留守でした。
文庫版の表紙も一新されているようだったので、あらためてシリーズの書影を並べてみます。
新書の北見隆のものよりも、この文庫の表紙の方が好みです。北見隆の絵は、もっとサスペンス色の強い作品に似合うと勝手に思っています。このシリーズは、サスペンスというよりは、ほんわか系ではないでしょうか?
さて、本書は
「天使が森に迷うとき」
「天使は見守る」
「天使は労働する」
「天使は一人で食事する」
「天使は橋を渡る」
「天使と暗い休日」
の6編収録の短編集です。
人間界で研修中の見習い天使と、その天使に付け入る隙を狙ってくっついている落ちこぼれ悪魔という設定なのに、悪魔であるポチが結構いい奴なのがポイント。悪魔がいい奴っていうのもヘンですが、だからこそポチは悪魔としては落ちこぼれなのでしょうね(笑)。なかなかいいコンビです。
すーっと人の懐に入り込んでいってしまうマリは、天使ならでは、ともいえるかとは思いますが、ちょっと振り返ってみれば赤川次郎の作品に登場するヒロインは、程度の差こそあれ、おおむねマリと共通するところがあります。とすると、赤川次郎の描くヒロインは、全員天使なのかも!?
天使である以上、行動に制約があり(そりゃあ、悪いことはできませんから。嘘もダメですし)、とするとすぐに困った状況に陥るわけで、本当なら、悪意に満ちた人間(や悪魔?)に囲まれてアウト、となるところ、そこはよくしたもので、ちゃんと人の善意に支えられて、切り抜けていく。
ご都合主義といえばご都合主義な展開なんですが、この「ぬるさ」こそがこのシリーズの特色であり、特長だと思います。世の中厳しいことも多く、ままならぬものですが、他人のちょっとした善意が信じられるって、素晴らしい。それを、天使を触媒とすることによって読者に届けてくれるのがこのシリーズなのだと思います。
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