友の墓の上で 怪異名所巡り 8 [日本の作家 赤川次郎]
<帯紹介文>
自殺した親友を偲ぶバスツアーを企画する男、兵器設計の仕事を断った技術者、億万長者である若き実業家の妻……。〈幽霊と話せる〉名物バスガイド・町田藍が、人々の感情を読み解き、難事件に立ち向かう! 人気シリーズ第8巻。
シリーズ第8巻の本書には
「友の墓の上で」
「人のふり見て」
「乙女の祈りは永遠に」
「地の果てに行く」
「殺意がひとり歩きする」
「夢は泡に溶けて」
の6編を収録。
マンネリ化していると思っていたシリーズ(失礼)なので、いつも通りさらっと読めて、そこそこ楽しめればいいや、と思って読み始めたのですが、冒頭の表題作「友の墓の上で」でびっくり。
パターン通り幽霊(あるいはそれに類するもの)が出てきて、生きていた頃の思いを伝える、という話だと思っていたら、なるほどねー、町田藍の霊感にそういう使い方があるんだ...と思えました。普通に考えれば、当たり前の使い方なんですが、このシリーズの中に置くと新鮮。
生者と死者の思いが、すっと交錯するところなんて、見事ですねぇ。
そのあとの「人のふり見て」「乙女の祈りは永遠に」「地の果てに行く」では、ゴースト・ストーリー、怪談のいろいろなヴァリエーションを見せてくれます。
そして「殺意がひとり歩きする」。
怪異現象的なことも出てきますが、力点はそこにありません!
人物設定が若干現実離れしているというか、ファンタジックな方向へ振れてしまっていますが、ミステリではそれほど珍しい物語ではないのに、このシリーズの中に置くと、不思議な存在感を示す作品になっています。
ラストの「夢は泡に溶けて」は正統派の(?) 怪談で締めくくっていますが、
前作「とっておきの幽霊 怪異名所巡り 7」 (集英社文庫)の感想(リンクはこちら)でも、マンネリ、マンネリと言って申し訳なかったです。
読者がマンネリと思い込むのを逆手にとって、ありふれた話を一味違った風味に仕立てる、ベテランの技だと感じました。
<2020.7追記>
文庫化されていますので、書影を。
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