怪盗紳士モンモランシー [海外の作家 あ行]
<裏表紙あらすじ>
囚人493ことモンモランシー。警察から逃げる際瀕死の重傷を負ったが、運良く若き外科医ファーセットの治療の被験者となり、一命をとりとめた男。無事刑期を終えたモンモランシーは高級ホテルに滞在しながら、昼間は紳士、夜は泥棒、ふたつの顔を使い分け、次々とお宝を頂戴していく。だがある日暴れ馬を取り押さえたことで、彼の運命は大きく変わることに。痛快シリーズ第一弾。
今年6番目に読んだ本です。
帯に
「昼間は紳士
夜は泥棒
二つの顔を持つ男
高級ホテルに滞在しながら、ロンドンの地下を縦横に駆け、次々とお宝を頂戴する。」
とありまして、こういう話、なんだか魅かれるんですよねぇ。
で、読んでみて冒頭から、あらら...
紳士が泥棒もする、という話ではないんですね。
泥棒が、紳士になるというお話でした。
勝手に、紳士が泥棒もするんだと思い込んでいました。
怪盗紳士と言えば、アルセーヌ・ルパンですが、たしかにルパンも出自は紳士でなかったかも...(記憶は怪しいですが、wikipedia では、父親は体操教師となっていますね)
ということで、シリーズ第1巻となるこの「怪盗紳士モンモランシー」では、泥棒が紳士になるまでと、なってから、あらすじにもある「運命が大きく変わる」までを描いています。
ということで、あまりミステリーっぽくはない。
泥棒ではあるんですが、この主人公、なかなかいい奴っぽいです。
ほぼ視点人物でもありまして、彼の視点で描かれるストーリーやモノローグ的な部分は、違和感なく読めます。
おもしろいのは、昼間は紳士、夜は泥棒というパターンを使っているのですが、二重人格というか、紳士側がモンモランシー、泥棒側がスカーパーと、それぞれに名前を与えて、あたかも二人の人間であるかのように取り扱っているところです。
どうも、この本の翻訳が固くて(内容の割にはかなり読みにくかったです)、「原作で読むとこのあたりが面白く書かれているんじゃないかなぁ」と何度も何度も読書中に考えました。
一人二役的な部分もそうですし、「運命が大きく変わる」部分も、たとえばバルカン諸国にあるマウラマニアの大使館でのシーンなど、ちょっとドタバタコメディみたいな雰囲気がある展開になるんですが、ちっともそういう感じが出ていないんですよね。重々しい。
ミステリーらしさはほぼないですが、書かれたのは2003年と新しいものの、古き良き時代の大衆小説っぽくて楽しかったです。
次の「怪盗紳士モンモランシー2 (ロンドン連続爆破事件) 」(創元推理文庫)がもう出ていますので、どう展開していくのか楽しみです。
原題:Montmorency
著者:Eleanor Updale
刊行:2003年
訳者:杉田七重
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