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犯罪は老人のたしなみ [海外の作家 あ行]

犯罪は老人のたしなみ (創元推理文庫)

犯罪は老人のたしなみ (創元推理文庫)

  • 作者: カタリーナ・イン ゲルマン=スンドベリ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/09/10
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
新しいオーナーになって、ホームは変わってしまった。食事は冷凍食品、外出も制限される。こんなはずではなかった。ならば自分たちの手で変えてみせるとばかり、79歳のメッタは一緒にホームに入った友人4人と、老人だけの素人犯罪チームを結成した。美術館の名画を誘拐して身代金を要求しようというのだ。老人ならではの知恵と手段を駆使して、大金を手にすることはできるのか。


スウェーデンの作家の作品です。
帯に「老人ホームの仲良し五人組が企てたとてつもない大犯罪とは?」とありまして、老人による犯罪を描いた作品です。
この種の作品はいくつか前例がありますが、たいてい愉快な作品に仕上がっています。
日本語版のタイトル「犯罪は老人のたしなみ」というのも、そういう雰囲気を狙ったものになっています。原題 Kaffe med Rån というのは Google 翻訳 を使ってみると「強盗とコーヒー」くらいの意味らしく、軽やかなイメージですね。
ところが、そう思って期待して読むと、これが思ったより軽快な感じがしません。もちろん、ユーモラスな部分は多々あるのですが、カラっとはせず、なんとなく湿った感じがします。
これは、「老人ホームの暮らしがつらくなったので、犯罪にでも手を染めて刑務所に入ったほうがいい暮らしができる」という犯行動機がそもそも湿っぽいからかもしれませんし、スウェーデンというお国柄なのかもしれません。

事件の方はいろいろと用意されていまして、いずれも老人にもできる犯行計画になっているところが〇。
もちろん、厳密な感じではなくて、うまくいかないんじゃないかな、と思える危なっかしいところ満載なのですが、「まさか老人がそんなことしないだろう」という周りの思い込みが作用します。真面目に考えると犯罪計画、ひいては作品自体が「緩い」わけですが、そういうあたりも楽しむつもりで読むことがこの種の作品には求められると思います。

うまくいくケース、いかないケース双方とも用意されていて、拘置所や刑務所に入るシーンもあり、半年以上の長きにわたる物語になっています。
危機もあれば機知もあり、読むごたえも相応にあります。
ただ、スカッと爽やか、快哉! という感じにはならず、冒頭申し上げたように、どこかしら物哀しいというか、なにかひっかかる部分が残るところが気になりますね。面白くは読んだのですが。

「老人犯罪団の逆襲」 (創元推理文庫)という続編も出ているので、そのあたりの読後感を改めて確かめるために読んでみるのもいいかなぁ、と考えています。


<蛇足1>
「発明家の上、腕の良いコックでもあるのだ。」(24ページ)
とあるのを見て、高校時代の英語の授業を思い出しました。
たとえば、My mother is a good cook. という英文、「母は良いコックだ」と訳すのは間違いだと教わったのです。英語ではこういう言い方をするが、日本語の場合料理人やコックというのは職業を表す語であるので、日本語としては「母は料理がうまい」とせねばならぬ、というわけです。
この作品の場合はスウェーデン語で書かれているわけなので、英語とは事情が違うかもしれませんが、当時の先生が見たら、間違いだー、と説教するかも(笑)。

<蛇足2>
「我々はパラシュートで飛んだり、世界一周できるようなコンディションではないが」(51ページ)
「脱税をしたり金儲けだけ考える連中から」(同)
というセリフが出てきます。
~たり、~たり、という文型はすたれつつあるのでしょうね...





原題:Kaffe med Rån
作者:Catharina Ingelman-Sundberg
刊行:2012年
翻訳:木村由利子



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