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映画:最後の決闘裁判 [映画]

最後の決闘裁判.jpg


映画「最後の決闘裁判」の感想です。
シネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
エリック・ジェイガーによる「最後の決闘裁判」を原作に描くミステリー。600年以上前にフランスで行われた、決闘によって決着をつける「決闘裁判」の史実を基に、暴行事件を訴えた女性とその夫、そして被告の3人の命を懸けた戦いを映し出す。『グラディエーター』などのリドリー・スコットが監督を務め、マット・デイモンとベン・アフレックが脚本とともに出演も果たす。ドラマシリーズ「キリング・イヴ/Killing Eve」などのジョディ・カマー、『マリッジ・ストーリー』などのアダム・ドライヴァーらが共演する。

---- あらすじ ----
中世のフランスで、騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、夫の旧友であるル・グリ(アダム・ドライヴァー)から暴力を受けたと訴える。事件の目撃者がいない中、無実を主張したル・グリはカルージュと決闘によって決着をつける「決闘裁判」を行うことに。勝者は全てを手にするが、敗者は決闘で助かったとしても死罪となり、マルグリットはもし夫が負ければ自らも偽証の罪で火あぶりになる。


原作「最後の決闘裁判」 (ハヤカワ文庫 NF)がハヤカワ文庫から出ていますが、読んでいません。
ノンフィクションです。
ミステリーではありません。なので、シネマ・トゥデイの見どころ欄は間違いです。

決闘で決着をつけるなど、現代の目で見ればありえないような事態ですが、この時代のヨーロッパ(フランス)ではこういうものだった、ということですね。
扱われているのが、レイプ裁判。
現代の法廷でも扱いが難しい ”事件” ですね。そもそも "犯行現場" には当事者二人しかいないもので、証拠も残らないという状況ですから。当時のこと、決闘で決着をつけるのもやむなし、だったかもしれませんね。

評を見ると、「藪の中」に言及しているものがあるようです。
たしかに、当事者のどちらを信じるのか、というのは上述の通り難しく、事件そのものレイプがあったかどうかも含めて「藪の中」だったのかもしれませんが、この映画は違います。「藪の中」に言及するのは間違いだと思います。

この映画、主要登場人物である騎士カルージュ(マット・デイモン)、その妻マルグリット(ジョディ・カマー)、そしてレイプ犯でありカルージュの旧友であるル・グリ(アダム・ドライヴァー)の3人の視点で綴られます。
映画なので映像で見るしかなく、心理の中にまで踏み込むわけではありませんが、それぞれの視点で語られ直すという構成がとられており、レイプシーンも、マルグリット、ル・グリ、二人の視点で繰り返されます。
つまり、レイプがあったこと、それが合意ではなくレイプであったことは明確なのです。
(マルグリットが嫌がったのは演技だったのだ、という言い抜けの余地は可能性としてはありますが、映画を観る限り、そのような解釈の余地はないと思えました)
観客からすれば「藪の中」でもなんでもありません。明々白々です。

したがってこの映画は、本当は何が起こったのか、というお話ではなく、不幸にもレイプされた妻が厳しい時代の中でも声をあげ、夫の軽はずみな意気込みの結果とはいえ、決闘により決着をつけなければならなかった悲劇、を描いたものと捉えなければならないと思います。
もしも映画製作サイドが「藪の中」を意識していたのだとしたら、視点を3人に分散したのは間違いでしょうし、レイプシーンも映像化してはいけなかったでしょう。
観終わると、ずっしりした重い気分になります。

この裁判の後、史実として、決闘裁判は行われていないということですが、この裁判がきっかけとなって行われなくなったわけではなさそうです。
「最後の決闘裁判」と謳われていますが、単にたまたま最後になっただけのようです。
原作を読んでいないので原作の狙いがわからないのですが、この映画の狙いは何なのでしょうか?
わかりませんでした。
非情な当時の裁判事情ということであれば「最後」でなくてよさそうです。(もっとも詳細に調べられているのはこの事件だけなのかもしれません)
中途半端な印象に終わってしまいました。

この映画で印象に残っているのは、アレックス・ロウザーという役者さんが演じている、フランス王(シャルル6世のようです)。見るからに頼りなく、判断力も統率力もなさそうな感じです。
この王が決闘裁判で見せる表情に、ぜひご注目を。
このような非情な、残酷残虐な裁判(ではなく、決闘ですね)を楽しんでしまう群衆の邪気が込められているように感じました。


製作年:2021年
製作国:アメリカ
原 題:The Last Duel
監 督:リドリー・スコット
時 間:153分





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