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夢幻花 [日本の作家 東野圭吾]


【第26回柴田錬三郎賞受賞作】 夢幻花(むげんばな) (PHP文芸文庫)

【第26回柴田錬三郎賞受賞作】 夢幻花(むげんばな) (PHP文芸文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/04/07
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた……。宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく“東野ミステリの真骨頂”。第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。


プロローグが2つあります。
一つは凄惨な日本刀による殺人事件。
もう一つは主人公のひとりである蒼太の十四歳の頃の話で、初恋の少女伊庭孝美と入谷の朝顔市で出会う。うまくいきそうだったのに突然親に反対され、孝美からも別れを切り出されてしまいます。
その後、本編?となり、秋山周治が殺される事件で、もう一人の主人公である孫娘の梨乃が発見者となります。

この後の展開は、さすがは東野圭吾というべきでしょうか。
限定された登場人物を緊密に絡み合わせた複雑なプロットで堪能しましたが、今の東野圭吾の立ち位置からしてこれがよかったのかどうか。
東野圭吾といえば、今や押しも押されもせぬ国民的作家なのではないかと思うのですが、そうすると日頃ミステリなど読みつけない人も大勢読まれるわけで、この作品のようなプロットは「作り物めいている」「限られた人物たちのつながりが不自然」とか言われてしまいそうな気がします。
そんな心配をしてしまうほど、きっちり組まれています。

柴田錬三郎賞というのがどういう意図を持った賞なのかわかりませんが、賞のHPでは
傑作『眠狂四郎無頼控』をはじめ、不羈の想像力を駆使した数々の作品でひろく大衆の心をうち、ロマンの新しい地平を切り拓いた故柴田錬三郎氏の業績を称えて、氏の名を冠した賞を設け、現代小説、時代小説を問わず、真に広汎な読者を魅了しうる作家と作品を顕彰します。

と書かれていますので、真に広汎な読者を魅了しうると認定されているわけで、余計な心配でしたね。

ところで、この文庫本のカバーには当然のごとく朝顔が描かれているのですが、黄色い朝顔はないんですよね......
なぜだろう?


<蛇足1>
「このところ、捜査本部に詰めっぱなしだ。」(174ページ)
間違いではないと思いますが、微妙な表現だな、と個人的に思いました。
というのも、「~ぱなし」というのは辞書でみると「物事をしかけたままで、あとの始末をせずに捨てておくこと。」(手抜きをしてgoo国語辞書です)とありまして、この場合は少々ふさわしくなさそうです。
言うとしたら「詰め通し」なのでしょうね。

<蛇足2>
「出入りしている従業員たちの職服も白かった。」(175ページ)
職服という語が初見でした。
職務上着ることが要請される服、すなわち制服のようですね。
おもしろい表現だと思いました。




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