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感染領域 [日本の作家 か行]


【2018年・第16回「このミステリーがすごい! 大賞」優秀賞受賞作】 感染領域 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

感染領域 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

  • 作者: くろき すがや
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2018/02/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
九州でトマトが枯死する病気が流行し、帝都大学の植物病理学者・安藤仁は農林水産省に請われ現地調査を開始した。安藤は、発見した謎のウイルスの分析を天才バイオハッカー「モモちゃん」の協力で進めるが、そんな折、トマト製品の製造販売会社の研究所に勤める旧友が変死。彼は熟さず腐りもしない新種のトマト“kagla(カグラ)”を研究していたが……。弩級のバイオサスペンス、登場!


2022年8月に読んだ3冊目の本です。
田村和大「筋読み」 (宝島社文庫)と同時に第16回 『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞を受賞しています。
ちなみに、このときの大賞受賞は蒼井碧の 「オーパーツ 死を招く至宝」 (宝島社文庫)

バイオサスペンスというのでしょうか。
九州で防虫剤の影響か、葉や茎が赤変したトマト。
日本の種苗メーカーのところに生まれた、いつまでも熟さない新品種のトマト・カグラ。
この2つのトマトをめぐって話は展開します。

こういう物語の常として、大企業が背後に、というのが容易に想像されるのですが、この作品には大企業が2つ登場します。
防虫剤メーカーで世界的大企業のピノート、そして、日本のクワバ。

対しますのは、主人公である学者安藤。
この安藤の造型が、ハードボイルド的な感じになっていまして、なかなかいい感じ。
脇を固めますのは、農水省の役人で元恋人の里中と天才バイオハッカーのモモちゃん。
この3人、いずれもあまりにも有能すぎるのが難点ですが、まあこのくらいのハンデがないと、大企業には立ち向かえないでしょうから、やむを得ないですね。

専門的なことがわかりやすく書かれていて、3人をはじめとする登場人物の掛け合いも楽しく、引き込まれて読むことができました。
なのに、最後の最後に躓いてしまいました。
理解が追いつかなくなりました。ついていけなくなりました。
事態の収拾策を主人公たちが立てるのですが、この策の仕組みの説明がわからない......
まあ、仕組みのところは専門的なのでわからなくてもいいとも言えますが、この収拾策自体が、仕組みを理解していないせいもあるとは思うのですが、非常に危なっかしいものに思えて仕方ありません。
まあ、毒を以て毒を制す、ということなのでしょうね。

あと気になったのは、この作品で巻き起こっているトマトをめぐる事象は、非常に深刻なもので、作中でもしきりに大変だとは言われているのですが、正直、ちっとも大変さが伝わってこないんですよね。
時折登場人物を捕まえて、本当に大変さわかっている? と聞きたくなるくらい。

いつものことで文句もつけてしまいましたが、こういう作品好きです。
さりげない箇所ですが、
「たかだかトマトの木一本のために、人を誘拐して暴力をふるったり、クワバ会長を拉致しようとしたりする種子メーカーが、本当にあると思っているのか?」(245ページ)
という部分なんかもとても共感できした。

なので、続編もぜひ読みたい、と思える作品、作家でした。



<蛇足>
「私の空手の腕前は初段だ。実力的には最大限贔屓目に見積もっても、全流派合わせて日本で千五百番手ぐらいだろう。つまりそう強くはない。」(149ページ)
空手の競技人口などは知らないのですが、千五百番手って強いんでしょうか? 強くないんでしょうか?
均すと都道府県でベスト30くらいになるので、なんとなく強そうなイメージ。







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