SSブログ

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 [日本の作家 は行]


完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

  • 作者: 半村 良
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 1998/09/01
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
神道とともに発生し、超常能力をもってつねに歴史の闇に潜み暗躍してきた異端の集団──鬼道衆。彼らの出没する処、必ず戦乱と流血、姦と淫が交錯する。彼らを最も忌み嫌った徳川政権は徹底的な弾圧を繰り返した。が、八代将軍吉宗が退いた今、鬼道衆の跳梁が再び開始された! 民族や宗教を超え、人類の破壊と再生を壮大なスケールで描く、大河伝奇巨編。


2022年10月に読んだ2冊目の本です。
もともと全7巻の妖星伝を3巻に編集しなおして文庫化されたものです。
まさに大伝奇。
半村良の伝奇小説、大好きです。
「産霊山秘録」 (ハヤカワ文庫JA)
「石の血脈」 (ハルキ文庫)など、とても面白かったですね。夢中になりました。
それでも、妖星伝はさすがに全7巻ということで、ためらっていたのですが、ついに読み出しました。
本当は全部を一気に読もうと思っていたのですが、逆に読んでしまうのがもったいないような気がして、1巻だけで一旦止めることにしました。

いやあ、もう楽しい、楽しい。
時代背景といい、扱われている内容といい、決してとっつきやすいものではないのに、読み始めたらやめられない。
鬼道と命名されていますが、裏の勢力というのか闇の勢力というのか、歴史の流れに組み込まれている点が伝奇の醍醐味ですよね。
「たとえば、伊賀、甲賀など、細作、游偵を業とする者は大伴細人(しのび)を祖と称している。大伴細人は伊賀の人とされ、紀州の昔に大伴氏が在ったことにやや符合する。そのうえ、細作、游偵は孫氏の兵法第十三篇に用閒(ようかん)として明記されている。孫氏とは呉の人。孫氏の書がこの国にもたらされたのは、どうやら紀州に帰化人が増えた頃と一致するらしい」
「なるほど、すると忍びが用いる九字の印や密呪とも重なるわけだな」
「そうなのだ。密呪とはすなわち真言だ。」(228ページ)
あるいは
「四諦三法印」
「苦、集、滅、道で四諦。諸行無常、諸法無我、涅槃寂静で三法印だ。」(238ページ)
「さっきいった四諦三法印は修験道の根本だが、山伏たちの実際の用には、むしろ六神通の方が親しまれている。」
「第一の神通は天眼通」「二番目は天耳通」「三が神足通」「四番は他心痛でこれは読心の術という奴だろう」「第五が今お幾のいった昇月法にあたる宿命通だ。過去未来を見通す力さ」「第六の神通力は」「漏尽通。人間界はいうに及ばず、地獄、極楽、天上界……どこでも木戸ご免さ。」(242ページ)
なんか、わくわくしますよね。

その鬼道たちの話から、さらに大きく拡がっていきます。
なにしろ空を飛ぶ円い船、すなわち宇宙人(補陀洛[ポータラカ]人と呼んでいます)まで絡んできます。
「宇宙のどこに、これほど生命に満ち溢れた、血みどろの星があるのでしょう。あり得ません。ここは極端なまでに生命に満たされているのです。この星の春の醜怪さをご承知のはずです。草花も樹々も、鳥もけものも人も、他の命を奪い合っているのです。そうした殺し合う世界に何がもたらされるか、お気付きでしょうか」
「進化の加速」(595ページ)

物語がどう展開し、どう収束していくのか、この第1巻だけではまったくわかりませんが、日本の江戸時代という背景をはるかに超えて展開してくことは確実で、とても楽しみです。



<蛇足1>
「三人は途中菊川の立て場で軽く腹ごしらえをし、さらに登って子育観音の辺りへさしかかった。」(208ページ)
「立て場」がわかりませんでした。宿場と宿場の間にあって、旅人や人足、駕籠かきなどが休息した場所のことらしいです。

<蛇足2>
「歩度をまったく乱さず、次に踏み出した足の爪先を軸にして、独楽のように体をまわしたのである。」(209ページ)
「歩度」も知らない単語でした。歩く速度や歩幅をまとめて言うことができる便利な単語ですね。

<蛇足3>
「あれが有名な四日市の諏訪明神か」
―略―
「七月のおわりに京の祇園祭り、近江の長浜祭りと並べられるたいそうな祭りをする」(224ページ)
諏訪大社のことかと思ったら場所が違いますね。四日市にも行ってみたいかも。





nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 14

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。