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怪談 [日本の作家 柳広司]


怪談 (講談社文庫)

怪談 (講談社文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
残業を終え帰路を急ぐ赤坂俊一が真っ暗な坂道をのぼる途中、うずくまって泣いている女を見かけた。声をかけると、女はゆっくりと向き直り、両手に埋めていた顔をしずかに上げた──その顔は(「むじな」)。ありふれた現代の一角を舞台に、期せずして日常を逸脱し怪異に呑み込まれた老若男女の恐怖を描いた傑作6編。


2022年12月に読んだ9冊目=最後の本です。
「雪おんな」
「ろくろ首」
「むじな」
「食人鬼」
「鏡と鐘」
「耳なし芳一」
の6話収録。

タイトルにも明らかなとおり、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の「怪談」を踏まえた短編集です。

冒頭の「雪おんな」を読んで、テイストに感心してしまいました。
”怪談” と呼ぶには怖くなさすぎるのですが、八雲の「怪談」のテイストとはがらりと変わったミステリ世界を構築しているので。
雪おんなをベースにしていること自体を有効に活用しているように思えます。
ただ、ミステリとして捉えるとあまりにアンフェアな感じがするのが難点です(特に29ページの最終行にはひっかかりを覚えます)。

一転して「ろくろ首」は、ミステリ調の話をラストで怪談テイストに染めてみせる作品。
怪談とミステリというと、カーやマクロイの作品を連想する方も多いと思いますが、それらとは違った行き方なのが印象的でした。

「むじな」はのっぺらぼうなんですね。
第3話ともなるので、ミステリと怪談を行き来する物語であることを前提として読者が読むことを意識して書かれているのだと思いますが、このオチのつけ方は常套的すぎるのが難点でしょうか。

「食人(しょくじん)」という単語がありますが、「食人鬼」は「じきにんき」と読むのですね。
ミステリで食人といえばある一定の作風が思い浮かぶのだと思いますし、それを思わせるような設定で捜査にあたる所轄の巡査の視点で進んでいくのですが、思わぬところに着地してびっくりしました。間違っても「ニンマリしました」と言ってはいけませんね。

「鏡と鐘」はボランティアで不用品を募集しているというHPを勝手に開設され全国から宅配便が送られてきてしまうという発端でスタートしますが、怪談になりそこなった話のように感じられました(いちばん怖いのは人間だ、というのも怪談だとすれば怪談ですが)。その分現実の話として面白かったです。

「耳なし芳一」はライブハウスで人気を掴んだ若者が陥る怪しい都市伝説のようなものが扱われていますが、これは現実と怪談が闘う話なのでしょうか?
怪談サイドの話の背景があまり明かされないがかえって怖いです。
しかし、平家物語の文言をアレンジした曲って、売れますかね?

全体として、怪談とミステリの間を行ったり来たりすることを前提に楽しむ連作という印象を受けました。
オリジナルの(?)小泉八雲の「怪談」は子供の頃に子供向けで読んだだけなので、大人の目で読みなおすのがよいかも、と思いました。




タグ:柳広司
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