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スナッチ [日本の作家 西澤保彦]


スナッチ (光文社文庫 に 16-4)

スナッチ (光文社文庫 に 16-4)

  • 作者: 西澤保彦
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/09/13
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
昭和五十二年、婚約者に会いに高知を訪れていた二十二歳の奈路充生(なろみつお)は、銀色に輝く奇妙な雨にうたれ意識を失う。再び目覚めたとき、彼は五十三歳になり、体は別の人格に乗っ取られていた。雨の正体は異種生命体だったのだ。人生の最も輝く時代を奪われた喪失感に苦しむ充生を、今度は連続殺人事件が襲う。記憶のない三十一年間にいったい何が!?


読了本落穂ひろいです。
西澤保彦の「スナッチ」 (光文社文庫)
2018年3月に読んだようです。

西澤保彦お得意の特殊設定もの、といえるでしょう。
身体を、異種生命体 ”僕” に乗っ取られた主人公 "ぼく"。(表記で区別されています)
この状態をベツバオリと呼び、そうなると基本的にはもとの人格は喪われるのだが、なにかの拍子で(?)戻ってくることがある。それがサシモドシ。
主人公奈路充生は、31年ぶりにサシモドシで戻ってきた、もとの人格。

西澤保彦の作品では、登場人物たちはディスカッションを繰り返す傾向がありますが、この作品ではディスカッションは、主人公奈路充生と異種生命体の間で交わされます。
これ、便利ですよね。人と人を集める必要がない。主人公の身体さえあればよい。
しかも発声するわけではないので、いつでも、どこでも、自在にディスカッションできます。
アポロ陰謀論とか癌についての議論とか、少々怪しいところもありますが、SF的設定の中で消化可、というところでしょうか。

サシモドシたぼくの周りで(厳密にはぼくの周りと言い難い部分もあるのですが)巻き起こる連続殺人。
一種のミッシング・リンク的な要素もありまして、ちょっと強引な謎解きも、理解しづらい犯行動機も、西澤保彦ならば普通のことなので敢えて欠点と指摘することもないでしょう。
ただ、このリンクも動機もベツバオリに基づいて展開し、ベツバオリに基づいて謎が解かれることに注目すべきかと思います。


<蛇足1>
「高知は、NHK以外は民放がひとつしかないはず。いや、テレビ高知が開局して、ふたつになったんだっけ。」(68ページ)
田舎あるある、という感じでしょうか?
とはいえ東京(とその周辺)が異常なのであって、ここに書いてあるようなことは驚くようなことではありませんね。

<蛇足2>
「粗悪な水や、食材、化学調味料などを使っている店は、すぐに判るんです。その場では、どんなに美味しくいただいても、帰宅してから体調を崩して、ひと晩、へたしたら数日、苦しみますから」(395ページ)
こういう「いただく」の使い方、気になるんですよね。ここでは誰に敬意を表しているのでしょうか?
「食べる」でいけないのでしょうか?

<蛇足3>
「例えば、仮にぼくが身心ともに普通の状態であれば」(383ページ)
普通は ”心身” かと思いますが、ここでは ”身心”。
調べてみると、”身心” もあるのですね。 身心一如とか身心不二という仏教用語も出てきました。



タグ:西澤保彦
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