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京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ [日本の作家 円居挽]


京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ (角川文庫)

京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ (角川文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/12/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
時間や場所を問わず、京大構内で営業を始める「三号館」は、謎を持つ人しかたどり着けないという不思議なバー。妖艶な女マスターは、どんな悩みや謎もすっきり解決してくれるという。四つ葉のクローバータクシー、鴨川の川床、京都水族館、祇園祭……街歩きサークルの遠近倫人(とおちかりんと)は、身近で起こった不思議な出来事の謎を「三号館」に持ち込んでみるが……。季節感溢れる古都で起こる不思議と恋。学生たちのほっこり京都ミステリー。


2023年2月に読んだ4冊目の本です。
これまた円居挽の新シリーズ。「京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ」 (角川文庫)
親本が出版されてからもう8年以上経ちますが......

単行本のときのタイトルが「クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー『三号館』へ」ということで、バーで謎解きって、ああよくある設定だな、と思いましたが、そのバーの名前が三番館ならぬ三号館。
これ、絶対意識していますよね! と言いながら、こちらのシリーズは三番館シリーズと違って倒叙ものではないなぁ......
あと、主人公が参加しているサークル名が、加茂川乱歩(笑)。こういうのいいではないですか。

文庫化に際してタイトルが「京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ」 (角川文庫)と変わっています。
副題として「町を歩いて不思議なバーへ」となっていますが、バー自体は京都大学の構内にある、ということですので、町を歩いて、というのは違うなぁ、と思いましたが、町を歩いて謎にぶつかってバーで謎が解けるということなので、これでいいんだなあ、と納得。

「クローバー・リーフをもう一杯」
「ジュリエットには早すぎる」
「ブルー・ラグーンに溺れそう」
「ペイルライダーに魅入られて」
「名無しのガフにうってつけの夜」

と5編収録の連作で、京都大学新入生で主人公の遠近倫人が物語が進むにつれて成長していく、という構成です。王道ですね。

個々の謎解き自体は基本的には軽めなのですが、主人公・遠近倫人のボーイ・ミーツ・ガールストーリーを支えるものになっているのが好印象です。

「この際、真実はどうでもいい。せめて青河さんが喜んでくれる素敵な推理を練らなければ……。」(78ページ)
なんてモノローグもありますし、

ただ、謎めいた三号館の謎解きは、非現実的というか無理な印象が拭えませんし(ついでに言うと個々の謎解きもちょっと無理のあるものが多い印象)、ラストがそこなので三番館と女マスターに焦点が当たって、遠近倫人のお相手となるはずの青河さんの印象が薄れてしまったのは残念。
続編「京都なぞとき四季報 古書と誤解と銀河鉄道」(角川文庫)が出ているので、その後を確かめてみることにしましょう。



<蛇足1>
「そういえば昔、河原町通沿いに丸善があったんだ」(26ページ)
こう書かれているともうないのかと思いますが、今でも丸善はありますね......
ただビルの中にあるので、わかりにくくなってしまっています。

<蛇足2>
「青河さんは家庭教師のアルバイトがあるとかで、五時過ぎに三条京阪で別れた。あわよくば食事でもと思っていた俺は一人寂しく歩いて帰った。
 迷いながら歩いていたのもあって、京大に辿り着いた時にはもう夜になっていた。」(31ページ)
京都のいわゆる碁盤の目の町は、慣れた人にはきわめてわかりやすいとされるものの、知らない人(方角がただちにわからない人)にはかえって迷いやすいと思っています。
それにしても、(大学に入ったばかり、京都へ移って来たばかりの)4月のこととはいえ三条京阪から京都大学まで迷うとはちょっと思えないのですが......

<蛇足3>
「灰原は女子アナめいたハーフ系の美人で、サークルの男性陣からは人気があった。しかし当人は普通の男に興味は無さそうだ。」(79ページ)
普通の男に興味は無い......すごい設定ですね。

<蛇足4>
「昼前に東寺に集まって、予め決めておいたチェックポイントを通りながら観光していくというコースだった」(110ページ)
東寺というのは、京都駅近くで東海道新幹線から見える五重塔のあるあの東寺ですが、広いので待ち合わせ場所には不向きな気がします。携帯があるから、いいのでしょうか?
あるいは、近鉄の東寺駅のことかな?

<蛇足5>
「「乾杯」」(207ページ)
この箇所、括弧が二重になっていて不思議です。なんだろ?

<蛇足6>
「ソーマは神のお酒、つまり神酒(みき)や。」(224ページ)
うろ覚えだったので、調べてみたら、「ヴェーダなどのインド神話に登場する神々の飲料」とのことでした。

<蛇足7>
主人公遠近倫人が放火犯であると疑われるシーンがあります。
そこでは大学からみっちり絞られるという場面も。
しかし、
「あなたが放火犯であるという確証はありませんが、その可能性が高いとする証言を得ています」(242ページ)
というだけの状況で
「最悪は除籍処分ですが、そこまではいかずとも今年度の単位無効はありえます」(243ページ)
などということがあるのでしょうか? 少々乱暴すぎるように思います。
特にこの大学が京都大学であるとなると、かなり違和感があるのですが(京都大学はかなりリベラルな校風で知られているという認識です)。






タグ:円居挽
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