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静かな炎天 [日本の作家 若竹七海]


静かな炎天 (文春文庫)

静かな炎天 (文春文庫)

  • 作者: 七海, 若竹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/08/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフで不運な女探偵・葉村晶の魅力満載の短編集。


2023年2月に読んだ5冊目の本です。
若竹七海「静かな炎天」 (文春文庫)
「このミステリーがすごい! 2017年版」第2位です。


「青い影 7月」
「静かな炎天 8月」
「熱海ブライトン・ロック 9月」
「副島さんは言っている 10月」
「血の凶作 11月」
「聖夜プラス1 12月」
の6話収録の短編集。
各話7月から12月まで、月が振られているのがいいですね。
葉村晶ものとして短篇集は「依頼人は死んだ」 (文春文庫)以来ですが、あちらもこういう趣向だったかな? 実家に戻ったら確かめてみなければ。

葉村晶は相変わらずの不運続きで、トラブルに巻き込まれて、という定番の怪我以外に、四十肩まで襲ってくるという(笑)。
しかも、毎月、毎月。

amazon に各話の簡単な紹介があったので、引用します。

バスとダンプカーの衝突事故を目撃した晶は、事故で死んだ女性の母から娘のバッグがなくなっているという相談を受ける。晶は現場から立ち去った女の存在を思い出す…「青い影~7月~」
・かつて息子をひき逃げで重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。晶に持ち込まれる依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く…「静かな炎天~8月~」
・35年前、熱海で行方不明になった作家・設楽創。その失踪の謎を特集したいという編集者から依頼を受けた晶は失踪直前の日記に頻繁に登場する5人の名前を渡される。…「熱海ブライトン・ロック~9月~」
・元同僚の村木から突然電話がかかってきた。星野という女性について調べろという。星野は殺されており、容疑者と目される男が村木の入院する病院にたてこもっていた。…「副島さんは言っている~10月~」
・ハードボイルド作家・角田港大の戸籍抄本を使っていた男がアパートの火事で死んだ。いったいこの男は何者なのか?…「血の凶作~11月~」
・クリスマスイブのオークション・イベントの目玉になる『深夜プラス1』初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日を描く「聖夜プラス1~12月~」。

いずれも、ふと覗く悪意、邪気が魅力なのですが、その中でも鮮烈なのが表題作「静かな炎天」でしょうか。
葉村晶にしては珍しく、快調に細かな依頼を迅速にこなしてしまうという幸運の中、まさかそんな、とあっけにとられてしまいました。
すばらしい。

こちらがヨタヨタと積読している間に、すでにシリーズの続刊が2冊も出ています。
「錆びた滑車」 (文春文庫)
「不穏な眠り」 (文春文庫)
今年は読むぞ!


<蛇足1>
「住人の留守を狙って忍び込む空き巣には、侵入のための技術がいる。一方で、住人が在宅中、庭に面した窓を開けっ放しにしているその隙をつき、屋内に入り込み、リビングやキッチンにおきっぱなしのバッグなどから現金だけを抜き取って、一分足らずで仕事を終える居空きには、確かな観察眼となによりも度胸が必要だ。」(37ページ)
居空きというのがあるんですね。恐ろしい。

<蛇足2>
「ディック・フランシスの主人公がこういう仕事をしていたな、と思いつつ、さらに情報をかき集めた。」(166ページ)
うわぁ、覚えてないなぁ、どの小説かなぁ、と思ったのですが、巻末の「富山店長のミステリ紹介ふたたび」で説明されていました。(308ページ)
こういうのありがたいです。

このミステリ紹介は、知っている本でも知らない本でも楽しめるとても楽しい好企画ですね。

『血の収穫』 前記ダシール・ハメットの傑作。原題は ”Red Harvest” なので『赤い収穫』という邦題もありますが、『血の収穫』のほうがぐっとくるかな。いろいろご意見もありましょうが、私は「原点に忠実」よりも「生き生きとした日本語」派。『四人姉妹』より『若草物語』、『二年間の休暇』より『十五少年漂流記』、『リトル・プリンス』より『小公子』。昭和の邦題は味がありましたなぁ。

というくだりとか共感して自分の年齢を実感したしたりして。


<2023.8.3追記>
このミステリーがすごい!  のランキング情報を追記しました。


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