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ささやかな謝肉祭 [海外の作家 か行]


ささやかな謝肉祭 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ささやかな謝肉祭 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1988/01/01
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
匿名の電話の主は私にどんな話をしようとしたのか。私が指定のバーに赴いたときには、それが誰で、どんな話だったのかは、わからなくなっていた。何者かのマシンガンが、そのときバーにいた全員の生命を奪った後だったのだ。犠牲者のなかには元上院議院の町の実力者オーギュスト・ルモアンも含まれていた。私が呼び出されたこととこの惨状には、どんな繋がりが……一介の新聞記者ウェス・コルヴィンがたどりついた、謎に覆われた虐殺事件の意外な全貌とは? 独特のムードをたたえる古都ニューオーリンズを舞台に放つ話題の新シリーズ第1弾。


2024年1月に読んだ4冊目の本です。
積読本サルベージ。
ジョン&ジョイス・コリントンの「ささやかな謝肉祭」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
奥付は昭和63年1月ですから、35年ほど前の訳書です。

舞台となる町・ニューオーリンズの珍しさが売りだったようですね。
寂れた田舎町というほどには小さくなく、かつ寂れてもいないニューオーリンズですが、旧弊な、と言っては語弊がありますね、伝統を守る保守的な土壌のアメリカ南部のニューオーリンズは、この種の古い支配者層の物語を描くにはうってつけの場所だったのかもしれませんね。

読後驚いたのは、ヒューイ・ロングという暗殺される知事が実在の人物だったこと。当方が無知だっただけで、有名な人だったのですね。
この五十年も前の1928年に起きた暗殺事件が物語の底流としてずっと流れています(原書は1986年出版)。
(それにしても、実在の人物、事件を出発点にするにしては、本書は火遊びが過ぎるような気がしないでもありません)

主人公である新聞記者にかかってきた謎の電話。待ち合わせ場所で発生した大量虐殺事件。現場で殺された町の有力者。
一気に物語に引き込まれます。
町の有力者たちが隠している(に違いない)秘密、それを探る新聞記者。
その新聞記者は、有力者の娘に恋してしまった.......

この設定だと、ミステリとしては当然悲劇的な結末へ向けて物語が進んでいくことが容易に想像できるのだけれど、そして実際そういう方向に進んでいくのだけれど、このラストは想像していませんでした。
この結末には否定的な意見を持つ読者もいらっしゃるとは思うのですが、個人的には断固支持!
馬鹿にしていただいて結構! こういうの、いいです。

この作品、
「欲望という名の裏通り」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「ニューオーリンズにさよなら」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
と続くニューオーリンズ三部作の第一作なので、続きを読むのが楽しみです(当然絶版なのですが、幸いにも前作買って積読になっているのです。実家にあるので、帰省しないと読めないのですが)。




<蛇足1>
「イグナチオには、うち代々の土性っ骨がある。おれにあるのは、ちょいとした笑顔と軽口だ。不公平だと思わねえか?」(16ページ)
「土性っ骨」が、想像はつくものの、わかりませんでした。”どしょうっぽね” と読むようです。「土性骨(どしょうぼね)」の音変化らしく、性質・根性を強調、またはののしっていう語、とのことです。

<蛇足2>
ドニーズは殻の柔らかいカニの身を口に運び、私には鎮痛剤代わりにマティーニを頼んだ。」(211ページ)
時代を感じますね。今だと ”ソフトシェルクラブ” と訳されるのでしょうね。

<蛇足3>
本書の原題は ”So Small A Carnival”
受験英語を思い出してしまいました。遥か昔なのに(笑)。冠詞の位置にご注目ですね。


原題:So Small A Carnival
著者:John William Corrington and Joyce H. Corrington
刊行:1986年
訳者:坂口玲子



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