ハナシがはずむ! [日本の作家 田中啓文]
<裏表紙あらすじ>
万年金欠状態の梅寿の個人事務所<プラムスター>に時代劇オーディションの話が舞い込んだ。一門をあげての参加の末に、合格したのは金髪トサカ頭の竜二。芝居の面白さにハマり込み、落語の修業も上の空。案じた梅寿は地方のボロ劇場に竜二を送り込むが、ここがまた曲者ばかりの芸人の巣。さらには東京vs大阪の襲名を賭けた世紀の対決が勃発して……。ますます快調!青春落語ミステリ第三弾。
「ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺」 (集英社文庫)
「ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺2 」 (集英社文庫)
につづく第3弾。
「道具屋殺人事件」 (創元推理文庫)、 「七度狐」 (創元推理文庫) と落語ミステリを続けましたが、最後の本作は上方落語です。いちばんミステリ味は薄い出来上がりです。
「ハナシがちがう!」 はミステリらしいところがあちこちにあったのですが、「ハナシにならん! 」 ではだいぶ薄れてきて、3作目となる今回はミステリというよりは青春小説、成長小説の色が濃くなっています。
名跡争いが扱われているので、「七度狐」 と読み比べるのも一興?
師匠梅寿に育てられる梅駆(竜二の芸名)というのがこのシリーズのフレームワークで、ごく軽いタッチのなかに、芸を感じる仕掛けがめぐらされています。型破りな師匠が、むちゃくちゃに見えても伝えるべきことは伝えている、というか、竜二が学ぶべきところは学んでいるというか。このあたりが読みどころでしょうか。
この作品から登場する吉原あかりがいい感じです。シリーズキャラとして今後も活躍してくれることを希望します。
ミステリファンとしては、もう少しミステリの風味を効かせてほしいと思いますが、ミステリとして薄味のままでも、このシリーズは読み続けようと思います。